「妻が不倫・浮気している」「妻と性格が合わずうんざりしている」
このような理由で「妻と離婚したい」と思っても、子どもや金銭的な問題により、なかなか離婚に踏み切れないという人も少なくありません。
妻が離婚してくれないと悩む夫もいるでしょう。
離婚は、財産分与や慰謝料、親権問題などの多様な問題を解消しなければならないため、事前の準備と正しい知識が不可欠です。
全体像を理解しないまま話し合いを始めると、本来主張できたはずの権利が主張できず、あとで取り返しのつかない後悔をするかもしれません。
本記事では、夫が妻と離婚したいと決意する理由10選や離婚に応じない妻の理由7選を解説します。
離婚したい夫が確認すべきことや離婚する方法、離婚に応じてくれない妻への対処法も解説するので、ぜひ参考にしてください。
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なぜ離婚したいのか?夫が妻との離婚を決意する理由10選

妻との離婚を考え始めるとき「自分と同じような理由で悩んでいる人はいるのだろうか」と孤独を感じるかもしれません。
しかし、離婚理由は人それぞれですが、共通する悩みも多く存在します。
ここでは、多くの夫が離婚を決意する具体的な理由を10個紹介します。
1.何をしても正反対で険悪になる・性格が合わないから
令和6年の司法統計年報(申立ての動機別)でみても、夫側からの離婚理由で最も多いのが「性格の不一致」です。
結婚当初は魅力に感じた性格の違いも、共に生活する中で埋めがたい溝に変わることがあります。
性格の不一致には、以下のような理由が挙げられます。
- 金銭感覚の違い
- 休日の過ごし方の違い
- 子育ての方針
- 衛生観念の違い
- 生活習慣の違い
価値観の違いは、どちらが正しいという問題ではありません。
しかし、話し合いをしても平行線だったり、一方的に価値観を押し付けられたりすると、会話そのものがなくなり、家庭は安らぎの場ではなくなります。
2.妻のDV・モラハラがつらいから
DVは、殴る・蹴るだけではありません。
目には見えませんが、攻撃的な言葉や態度も精神的なDVです。
妻から、以下のような行為を受けている場合は、モラハラ(モラルハラスメント)に該当します。
- 「お前はダメな人間だ」「稼ぎが悪い」といった言葉で人格をされる
- ため息や無視で精神的に追い詰めてくる
- 細かいミスを執拗に責め立ててくる
- 生活費を渡さない
日常的に繰り返されるDVやモラハラは、被害者の自尊心を奪い、正常な判断能力を失わせてしまいます。
また子どもにDVやモラハラの矛先が向いてしまう可能性もあり、子どもの精神面に大きな影響を与えるかもしれません。
離婚を決意した場合は、相手の発言を録音や日記で記録する、医師の診断書を取っておくなど、客観的な証拠を集めましょう。
3.家庭に居場所がない・帰宅しても気持ちが休まらないから
我が家が安らぎの場ではなく、むしろ緊張を強いられる空間になっている、というのも離婚を考える理由のひとつです。
- 家に帰っても妻との会話が一切ない
- 常に妻の機嫌をうかがいながら過ごさなければならない
- 自分の趣味や友人と過ごす時間を否定される
- 子どもとしか話をせず、自分はいないものとして扱われる
上記のような状況が続くと、心身ともに疲弊し、家に帰ること自体が大きなストレスとなってしまいます。
仕事のパフォーマンスに影響が出たり、うつ病などの精神疾患につながったりするケースも少なくありません。
もちろん仕事を理由に家事・育児にかかわって来なかった、などの理由から、妻が夫に対して不満をもっていることもあるでしょう。
しかし不満があるからといって、夫に対してハラスメントのような行為を繰り返す妻では、夫も離婚を考えてしまいます。
4.セックスレスで愛情を失ったから・セックスを求められるから
夫婦間の性生活の問題も、関係に亀裂を入れる大きな要因です。
長期間にわたるセックスレスは、愛情の確認ができない寂しさや、パートナーとして求められていないという疎外感につながります。
妻側から一方的に拒否され続けると、夫としての自信を失い、夫婦としての絆を感じられなくなるのは自然なことです。
逆に、妻からの性的な要求が過度で、それに応えるのが苦痛だというケースもあります。
最初は我慢できても、何年も続けば「もう夫婦である意味がない」と感じ、離婚を考えるきっかけとなるでしょう。
5.金銭的に苦しいのに働いてくれないから
夫の収入だけでは家計が厳しい状況にもかかわらず、妻が以下のような行為をしていると、将来への不安から離婚を考えるようになります。
- 子育てが一段落しても働く気を見せない
- 自分の収入に見合わない高価なものをねだる、買い続ける
- 家計の状況を伝えても、節約に協力してくれない
このような状況は、単なる価値観の違いを超え、夫婦としての協力関係の欠如を示しています。
なかには夫に内緒で借金を繰り返す妻もおり、トラブルに発展するケースもあります。
6.妻が不倫・風俗をしていたから
妻の不貞行為は、夫婦間の信頼関係を根底から破壊する行為であり、民法第770条1項1号で定められた明確な法定離婚事由です。
不倫の事実が発覚すれば、夫は離婚を請求することができ、裁判になった場合も離婚が認められる可能性が非常に高いです。
さらに、不貞行為は精神的な苦痛を受けたとして、妻とその不倫相手の両方に対して慰謝料を請求することもできます。
離婚や慰謝料請求を有利に進めるためにも、不貞行為を証明する客観的な証拠を集めましょう。
7.家事をしない・料理がまずいから
「妻がまったく家事をしない」「部屋がゴミ屋敷のようだ」といった、日々の生活における不満の積み重ねも、離婚を考えるきっかけになり得ます。
もちろん、夫婦共働きが当たり前の現代において、家事をどちらか一方が全て担うべきという考え方は時代に合っていません。
しかし、専業主婦でありながら最低限の家事を放棄していたり、共働きでも夫にばかり負担が偏っていたりすると、離婚を考える十分な理由になります。
8.妻がヒステリックだから
些細なことで感情が爆発してしまう妻のヒステリックな言動に、心が休まらない日々を送っている男性も少なくありません。
感情の起伏が激しいパートナーとの生活は、常に相手の顔色をうかがう緊張状態を強いられ、精神的に大きく消耗します。
家庭が安らげる場所ではなく、いつ怒りのスイッチが入るかわからない恐怖の空間となってしまうでしょう。
妻のヒステリックな言動は、モラハラに該当する可能性があります。
離婚を決意している場合は、暴言や無視などの記録を証拠として残しておきましょう。
9.子育てに関する考え方が違う・子どもへ悪影響があるから
子どもの教育方針やしつけに関する価値観の対立は、夫婦間で譲れない問題のひとつとなりがちです。
以下のようなケースは、子どもの精神にも悪い影響を与える可能性があります。
- 子どもを過度に束縛する
- 育児放棄(ネグレクト)に近い状態である
- ヒステリックに叱りつけて子どもの心を傷つけている
妻の教育方針が、子どもの将来に悪影響を及ぼすと強く感じる場合「子どものために離婚しよう」という決断に至ることがあります。
10.子どもにしか関心を持たず自分に無関心だから
子どもが生まれたあと、妻の全ての関心が子どもに集中し、夫は家庭の中でまるで空気のような存在になってしまう。
いわゆる「産後クライシス」をきっかけに、夫婦の溝が深まるケースは少なくありません。
もちろん、出産後の女性が子ども中心の生活になるのはある程度自然なことです。
しかし何年経っても夫へのねぎらいの言葉がない、スキンシップを拒絶されるなどの状態が続くと、夫側は深い孤独感を感じます。
家族のために懸命に働いているにもかかわらず、パートナーとして尊重されず、愛情を感じられない生活は非常につらいものです。
なぜ妻は離婚したくないのか?考えられる7つの理由

夫の妻と離婚したいという固い決意とは裏腹に、妻が「絶対に離婚したくない」と強く拒否するケースは少なくありません。
感情的に反発されたり、話し合いにすら応じてもらえなかったりすると、途方に暮れてしまうでしょう。
しかし、妻が離婚を拒むのは、単なる意地やわがままだけが理由とは限りません。
ここでは、妻が離婚に応じない理由で考えられるものを7つ解説します。
1.子どもがいるから
「子どものために離婚はできない」というのは、妻が離婚を拒否する大きな理由のひとつです。
多くの母親は、自分の気持ち以上に子どもの幸せを優先して考えます。
母親としての強い責任感から、たとえ夫婦関係が冷え切っていても「子どもが成人するまでは」と現状維持を選択しがちです。
子どもが理由の場合は、離婚することが子どもにとって必ずしもマイナスではないことを、冷静に話し合う必要があります。
2.離婚をしたら金銭的に苦しくなるから
経済的な不安も、妻が離婚を拒む理由のひとつです。
妻が専業主婦やパートタイムで働いている場合、離婚後の生活に大きな不安を抱くのは当然のことでしょう。
母親が子どもの親権者になった場合、子どもが小さければ保育園や親族を頼るなども考えなければなりません。
夫からの養育費や財産分与だけでは、子どもを十分に育てられるかと、不安も大きくなるでしょう。
3.今の生活に特に不満がないから・問題はないと思っているから
夫にとっては限界に達している夫婦関係も、妻にとっては「特に問題ない」あるいは「夫婦なんてこんなもの」と認識されている場合があります。
妻が現在の生活スタイルに大きな不満を抱いていない場合、夫がなぜ離婚したいのかを根本的に理解できません。
妻が夫の不満や苦しみに気づいていないため、夫婦間に深刻な認識のズレがあることを自覚する必要があります。
感情的にならず、あなたがどれほど悩み苦しんでいるのかや、離婚の決意が固いことなどを、冷静に伝えることから始めなければなりません。
4.セックスレスは大した問題じゃないから
夫にとって離婚を考えるほど深刻なセックスレスも、妻にとってはそれほど重要な問題ではないと考えていることがあります。
出産後はホルモンバランスの変化や育児の疲れから、夫を性的な対象として見られなくなる女性は少なくありません。
妻はあなたを「子どもの父親」「家族」としては大切に思っていても、男女の関係に戻ることに抵抗を感じている可能性があります。
価値観の違いを埋めるため、あなたがセックスレスをどれほど苦痛に感じているかを、真摯に伝える必要があります。
5.離婚の手続きが面倒だから
離婚は、離婚届を提出するだけで成立しますが、手続きはそれだけではありません。
財産分与の手続きや親権・養育費の処理など、決めるべき法的問題は多数あります。
それぞれの両親への報告や、子どもの転校や姓の変更など、やるべきことは膨大です。
煩雑な手続きを考えただけで「面倒くさい」「今の生活を変えたくない」と感じ、離婚そのものに消極的になる妻もいます。
面倒がっている妻の場合、夫が主体となり、離婚後の手続きの段取りや計画を示せば、妻の心理的なハードルを下げられる可能性があります。
6.世間体があるから
「離婚はみっともない」「失敗者の烙印を押される」といった世間体を気にして、離婚を頑なに拒否する妻もいます。
親や親戚、古くからの友人、あるいは職場やママ友のコミュニティなど、周囲の目を気にするタイプの場合、離婚という事実を受け入れがたいのでしょう。
夫から見れば本質的ではないと感じるかもしれませんが、妻にとっては自身のプライドや社会的評価に関わる重大な問題です。
この感情を軽視せず、「周囲への説明は一緒に考えよう」といった配慮を示すことも、ときには必要です。
7.まだ好きだから
夫にとっては愛情が冷え切っていても、妻はまだ夫に対して愛情や未練を抱いている可能性も十分に考えられます。
妻は、現在の夫婦関係の悪化を「一時的なすれ違い」や「乗り越えられる試練」と捉えており、関係修復を諦めていないかもしれません。
妻が夫に対して愛情を抱いている場合、同情から曖昧な態度を取ってしまうと、かえって妻を傷つけ、問題を長期化させてしまいます。
離婚の意思が固いのであれば、期待を持たせるような言動は避けましょう。
関係修復の可能性がないことを、誠実に毅然とした態度で伝える必要があります。
妻と離婚したい夫がまず確認すべきこと7つ

事前にやるべき事項を把握しておくと、冷静な判断と有利な条件交渉ができる可能性が高まります。
ここでは、妻と離婚したい夫が確認しておくべきことを、7つ解説します。
1.慰謝料がいくら発生するか
慰謝料の金額に法的な定めはありませんが、一般的な相場は50万円~300万円程度です。
婚姻期間の長さや有責行為(夫婦関係を破綻させた原因)の内容・程度、精神的苦痛の大きさなどを考慮して決められます。
なお、離婚したからといって「必ず慰謝料が発生するわけではない」ことを把握しておきましょう。
慰謝料とは、以下のような相手の有責行為によって受けた、精神的苦痛に対する損害賠償です。
- 不貞行為(不倫・浮気)
- DVやモラハラ
- 悪意の遺棄(生活費を渡さない、一方的に家を出るなど)
性格の不一致や価値観の違いといった、どちらか一方に明確な責任がない理由での離婚では、慰謝料が発生しない可能性があります。
逆に、自分に不貞行為などの原因がある場合は、妻から慰謝料を請求される立場になります。
2.財産分与はどこまでするか
財産分与は、離婚の原因がどちらにあるかに関わらず、夫婦が婚姻期間中に協力して築き上げた財産を原則2分の1ずつ分け合う手続きです。
妻が専業主婦であったとしても、家事や育児といった内助の功によって財産形成に貢献したとみなされるため、財産分与は適用されます。
財産分与の対象となる主な財産は、以下のとおりです。
- 預貯金(夫婦どちらの名義でも)
- 不動産(家、マンション)
- 自動車
- 株式、投資信託
- 年金
一方で、親からの相続財産や婚姻前に貯めた預金などは「特有財産」と呼ばれ、財産分与の対象にはなりません。
また住宅ローンなどの負債も、財産のマイナス分として考慮されます。
夫婦の共有財産がどれだけあるのか、正確にリストアップすることから始めましょう。
3.親権はどちらがもつか
未成年の子どもがいる場合、離婚後の親権者を父母のどちらか一方に定める必要があります。
子どもが小さい場合は、離婚後の親権は母親に認められるケースが多いです。
夫側は子どもと暮らせなくなる可能性が高いため、自分が親権をもちたい場合は、主体的に育児に関わってきたことを証明する、育児日記や写真などが必要です。
なお、2026年の法改正以降は共同親権が可能となります。
改正前に離婚しても、家庭裁判所に申立てをすれば、単独親権から共同親権に変更できる場合もあることを把握しておきましょう。
4.養育費をいくらにするか
親権者にならなかったとしても、親であることに変わりはありません。
子どもが経済的に自立するまでにかかる、生活や教育にかかる費用の「養育費」を支払う法的な義務があります。
養育費の金額は夫婦の話し合いで決めますが、養育費算定表が参考にされるケースが多いです。
養育費算定表は、夫婦の収入状況や子どもの人数・年齢に基づいて、養育費を算出できます。
たとえば、夫の年収が600万円、妻は専業主婦、未就学児の子どもが1人だった場合の養育費は、6〜8万円が目安です。
口約束は後々のトラブルの原因になるため、取り決めた内容は必ず離婚協議書や公正証書といった書面に残しておきましょう。
5.面会交流をどうするか
親権者ではない側には、面会交流権という子どもと面会する権利が認められます。
離婚の際、子どもの利益を最優先に考えて、面会交流の具体的なルールを決めておきましょう。
決めておくべき主な内容
- 頻度:月1回、2週間に1回など
- 時間と場所:土曜日の午前中、〇〇公園でなど
- 宿泊の可否
- 学校行事への参加
- 連絡方法
離婚当初は「子どもに会わせない」と感情的に言われることもあるかもしれません。
しかし、面会交流は法的に認められた権利であり、不当に拒否された場合は家庭裁判所に調停を申し立てることも可能です。
6.年金分割でどのくらい減額されるか
年金分割とは、離婚時に婚姻期間中の厚生年金(または共済年金)の保険料納付記録を夫婦で分け合う制度です。
合意分割と3号分割の2つの方法があり、合意分割は、夫婦の話し合いで上限50%までを分割します。
3号分割は、年金分割を求めた側が3号被保険者(会社員・公務員の配偶者で扶養に入っている者)だった場合に、一律50%で分割が適用されます。
夫の年金額が減少し、妻の年金額が増える可能性があることを把握しておきましょう。
自分の年金記録を確認し、どの程度の影響があるのかを事前に確認しておくことが大切です。
7.離婚前に別居したら婚姻費用はいくら必要か
離婚に向けた話し合いを進めるために、別居を選択するケースは少なくありません。
しかし別居したからといって、すぐに夫婦の扶養義務がなくなるわけではないため、注意してください。
夫が妻よりも収入が多い場合は、妻に対して生活費として婚姻費用を支払わなければなりません。
妻と子どもが一緒にいる場合は、養育費も婚姻費用に含まれます。
婚姻費用は、婚姻費用算定表を参考に算出されるのが一般的です。
たとえば、夫の年収が600万円、妻の年収が300万円、15歳以上の子どもが1人いる場合の婚姻費用は、10〜12万円が目安です。
どの程度の金額を負担しなければならないのか、事前に確認しておきましょう。
妻と離婚する3つの方法
妻と離婚するには「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」という3つの方法があります。
ここでは、離婚する3つの方法について解説します。
1.協議離婚(夫婦の話し合いによる離婚)
協議離婚は、夫婦が話し合いによって離婚に合意し、離婚届を市区町村役場に提出することで成立する方法です。
裁判所を介さないため、迅速かつ費用をかけずに離婚できるという大きなメリットがあります。
しかし、早く終わらせたい一心で、お金や子どもの問題について曖昧なまま離婚届を提出してしまうと、あとで深刻なトラブルに発展する可能性があります。
後から「言った」「言わない」の水掛け論になり、養育費などの支払いが滞るかもしれません。
協議離婚をした場合は、話し合った内容を離婚協議書にまとめ、公正証書にしておきましょう。
特に、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておけば、養育費などの支払いが滞った際に、裁判を起こさなくても相手の給与などを差し押さえる強制執行が可能です。
2.離婚調停(家庭裁判所での話し合い)
夫婦間での話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に離婚調停(夫婦関係調整調停)を申し立てることになります。
調停は、裁判のように白黒つける場ではなく、あくまで話し合いによる解決を目指す手続きです。
離婚調停では、調停委員が間に入り、夫婦双方から別々に事情を聞いてくれます。
相手と直接顔を合わせることなく、調停委員を介して自分の意見を伝えられるため、感情的な対立を避け、冷静に話し合いを進められるのがメリットです。
ただし、調停は平日の日中におこなわれるため、仕事を休んで出廷する必要があります。
また次の期日までは1ヵ月ほど間が空くため、解決までには半年から1年程度の期間がかかるのが一般的です。
3.離婚裁判(裁判官による判決)
離婚調停でも合意に至らなかった場合、離婚を求める側が家庭裁判所に訴訟を起こすことで、離婚裁判へと移行します。
裁判ではこれまでの話し合いとは異なり、裁判官が法と証拠に基づいて、離婚を認めるか否かの判決を下します。
ただし、裁判で離婚を認めてもらうためには、民法で定められた法定離婚事由に該当していることを証明する証拠が必要です。
「性格が合わない」という理由だけでは、離婚が認められない可能性があることを理解しておきましょう。
離婚裁判は、手続きが非常に複雑で、解決までには1年以上かかることも珍しくありません。
時間や労力がかかり、精神的負担も大きくなるため、自分でおこなわずに弁護士に依頼するのがおすすめです。
法的に離婚が認められる4つの条件【法定離婚事由】
妻がどうしても離婚に応じてくれない場合、最終的な手段として離婚裁判を申し立てることになります。
しかし、裁判で離婚を認める判決を下すには、その理由が民法第770条第1項で定められた「法定離婚事由」のいずれかに該当している必要があります。
第770条
1.夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
引用元:民法第770条|WIKIBOOKS
ここでは、法定離婚事由の4つの条件について解説します。
1.不貞行為
不貞行為は、配偶者以外の第三者と自由な意思で肉体関係を持つこと、つまり不倫や浮気を指します。
重要なのは「肉体関係」があったかどうかという点です。
ふたりきりで食事をしたり、手をつないだりしただけでは、法的な不貞行為とは認められません。
不貞行為を理由に離婚を請求する場合、その事実を客観的に証明する、以下のような証拠が必要です。
- 肉体関係があったことが推測できるメールやSNSのやり取り
- 裸に近い状況や性交渉をしているときの写真や映像
- ラブホテルの出入りをしている写真
日常的なメッセージのやり取りやふたりきりで食事などは、不貞行為として立証する力は弱いといえます。
しかし、ほかの証拠とあわせることで有力な証拠となり得るため、できる限り多くの証拠を集めましょう。
2.悪意の遺棄
「悪意の遺棄(あくいのいき)」とは、正当な理由がないのに、夫婦の同居・協力・扶助といった義務を意図的に放棄することを指します。
夫婦は同居し、互いに協力し助け合って生活を送る義務(民法752条)がありますが、それを一方的に放棄する行為です。
具体的には、以下のようなケースが該当します。
- 十分な収入があるにもかかわらず、生活費を一切渡さない
- 理由もなく一方的に家を出て行き、戻ってこない
- 健康上の問題もないのに働こうとせず、ギャンブルなどに明け暮れる
単なる夫婦喧嘩での家出や単身赴任などは、正当な理由があるため「悪意の遺棄」にはあたりません。
3.3年以上の生死不明
配偶者が失踪するなどして、生きているのか亡くなっているのかまったくわからない状態が3年以上続いている場合に認められる離婚事由です。
警察に捜索願を出しても見つからず、音信不通の状態が続いている場合などが該当します。
条件を満たせば、相手がどこにいるかわからなくても、裁判手続によって離婚を成立させることが可能です。
4.その他婚姻を継続しがたい重大な事由
「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」とは、夫婦関係が完全に破綻しており、もはや修復の見込みがない状態のことです。
具体的には、以下のようなケースが挙げられます。
- DVやモラハラ
- 長期間の別居
- セックスレス
- 過度な浪費や多額の借金
- 親族との深刻な不和
- 過度な宗教活動
- 強度の精神病
なお、2024年5月21日公布の改正民法で、もともとは法定離婚事由にあった「配偶者が精神病にかかり回復の見込みがないとき」という項目は削除されます。
しかし、精神疾患を理由に離婚ができなくなるという意味ではありません。
精神病が原因で婚姻関係が破綻したと認められる場合は「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚できる可能性があります。
妻が離婚してくれない時の対処法4選

妻が離婚を拒む背景には、経済的な不安や子どもへの想いなど、彼女なりの切実な理由があるはずです。
まずはその心理を理解しようと努め、冷静かつ段階的に対処していきましょう。
ここでは、妻が離婚してくれないときの対処法を4つ解説します。
1.妻が離婚を拒む理由を理解して不安を解消する
離婚交渉の第一歩は、相手の言い分に耳を傾けることです。
なぜ妻は離婚したくないのか、その本当の理由を探りましょう。
妻が口にする「子どもの将来が心配」「一人で生活していく経済力がない」などの不安は、離婚を諦める理由にならないかもしれません。
しかし、頭ごなしに否定せず「君が不安に思うのはもっともだ」と、共感の姿勢を示しましょう。
妻がもつ不安や懸念を一つひとつ聞き出し、自分ができる配慮や具体的な解決策を提示することで、妻の頑なな態度が和らぐ可能性が高まります。
2.妻が離婚後の生活に不安を抱かないよう有利な条件を提示する
妻が離婚を拒む理由が「経済的な不安」だった場合は、具体的な金銭的条件を提示することが有効です。
たとえば、以下のような条件が挙げられます。
- 財産分与を妻に多めに渡す
- 養育費を確実に支払うことを約束し、公正証書を作成する
- 妻と子どもが今の家に住み続けられるよう、住宅ローンの支払いを継続する
上記の提案は、夫の離婚への真剣な意思を示すと同時に、妻の経済的な不安を和らげられます。
3.別居して婚姻関係の破綻を客観的に示す
話し合いを重ねても進展がみられない場合、次のステップとして別居を検討してみましょう。
別居には、お互いに頭を冷やすための冷却期間という意味合いもありますが、法的にはより重要な意味合いをもっています。
3〜5年以上の長期的な別居は、離婚時に「夫婦関係が客観的に見て破綻している」とみなされやすいです。
離婚を有利に進められる可能性があるため、妻に別居の話をしてみてもよいでしょう。
なお、夫が妻よりも収入がある場合は、婚姻費用として妻に生活費を渡す必要がある点に注意してください。
4.弁護士に相談して専門的な交渉を依頼する
当事者同士での話し合いが限界に達し、別居してもなお状況が変わらない場合は、弁護士に交渉を依頼するのもひとつの手段です。
弁護士という第三者が間に入ることで、感情的な対立がクールダウンし、話し合いが法的な土俵で進むようになります。
また協議離婚から離婚調停や離婚裁判になったとしても、煩雑な手続きを弁護士に一任できるため、精神的負担も軽減します。
初回相談無料という法律事務所も多くあるので、一度相談してみましょう。
離婚しても子どもと離れたくないときの3つの手段
離婚を決意しても、子どもと離れたくないと強く願うのは当然のことです。
日本は母親のほうが親権をもちやすい現状ですが、諦める必要はありません。
ここでは、離婚しても子どもと離れたくないときの3つの手段を解説します。
1.子どもの養育を積極的におこない、親権を獲得する
父親が親権を獲得するのは、簡単ではないですが不可能ではありません。
裁判所が親権者を決める際に重視するのは、親の性別ではなく「どちらの親と暮らすのが子どもの幸せに繋がるか」です。
以下5つの条件を満たしていると、親権を獲得しやすくなる傾向にあります。
- 監護実績がある
- 離婚後も監護体制を整えられる
- 子どもと一緒に過ごす時間を十分にもてる
- 親権者が心身ともに健康である
- 経済状況が安定している
上記を具体的に証明できるように準備することが、親権獲得への第一歩です。
なお、子ども自身の年齢や意見なども重視されるため、条件を満たしていても親権を獲得できない可能性があることも理解しておきましょう。
2.親権が得られない場合は身上監護権を得る
親権を相手に譲る場合でも「監護権」を得る方法があるため、子どもと一緒に暮らし、育てることを諦める必要はありません。
親権には、未成年の子どもの世話や教育をおこなう「身上監護権(監護権)」と、財産を管理する「財産管理権」があります。
監護権は、親権者が行使して負担することとなりますが、親権者と監護権者を分離することも可能です。
つまり、親権は母親だが財産管理のみ任せ、身の回りの世話をおこなう監護権を父親がもつ、という役割分担ができます。
しかし、円滑な子育ての観点から、親権者と監護権者の分離には慎重であるべきと考えられているのが実情です。
身上監護権のみを獲得する方法を検討する場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
3.面会交流で子どもとの時間を確保する
面会交流とは、親権や身上監護権のない親が子どもと交流することです。
親権や監護権を得られなかった場合でも、親子関係が消滅するわけではありません。
両親とのつながりを維持することが子の福祉に資すると考えられているため、離婚後も子の福祉の観点から、子どもと面会して交流することを求める権利があります。
面会交流は、話し合いや調停、審判で、子どもと会う頻度や時間帯などの内容を取り決められます。
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妻と離婚したい夫によくある質問10選
さいごに、妻と離婚したい夫から多く寄せられる質問と回答を解説します。
自身の状況と照らし合わせながら、疑問の解消に役立ててください。
1. 妻と離婚したい時はどうすれば良いですか?
まずは感情的にならず、冷静に準備を進めることが重要です。
なぜ妻と離婚したいのか理由を整理し、離婚の情報収集や準備をおこないましょう。
財産分与のリストアップや養育費の見通しを立てたり、妻に不貞行為やDVなどがあれば証拠集めたりしてください。
準備が整ったら、妻に離婚の意思を伝えて、妻と離婚する方法のひとつである協議離婚を始めます。
話し合いで合意できなければ、家庭裁判所に離婚調停や離婚裁判を申し立てる、という流れです。
本記事で解説した知識を基に、自身の状況を整理することから始めてみてください。
2. 妻から離婚を切り出された場合の対処法は?
妻から離婚したいと言われたら動揺し、返す言葉もみつからない状態かと思いますが、まずは冷静に相手の話を聞く姿勢が大切です。
関係の修復を望む場合は、感情的に反論せず、なぜ離婚したいのかを聞いてみてください。
そして自分の至らなかった点を認め、関係改善に向けた具体的な行動を約束しましょう。
すぐに結論を出さず、冷却期間を置くことや、夫婦カウンセリングの利用を提案するのもひとつの方法です。
離婚に同意する場合は財産産分与や親権、養育費などの条件について、その場で安易に同意するのは避けましょう。
弁護士に相談するなど、冷静に交渉の準備を始めることが重要です。
3. 妻の浮気・不倫が原因で離婚したい場合はどうすべきですか?
妻の不貞行為(浮気・不倫)は、法定離婚事由に該当します。
有利に離婚を進めるために、肉体関係があったことを示せる証拠を集めましょう。
確実な証拠があれば、離婚請求はもちろん、慰謝料の請求も可能です。
証拠集めの段階から弁護士に相談すると、より確実で安全に進めることができます。
4. 子供がいる場合でも妻と離婚できますか?
子どもがいても、妻と離婚することは可能です。
ただし、未成年の子どもがいる場合は、親権者を父母のどちらかに決めなければなりません。
日本では母親が親権者になるケースが多いですが、父親が親権を獲得することも不可能ではありません。
妻が浮気のような不貞行為をしていて、子どもの監護もしていなかった場合は、親権を獲得できる可能性が高まります。
親権を得られなくても、面会交流権があるため、弁護士に相談しながら離婚を進めましょう。
5. 妻との関係を修復することは可能ですか?
お互いに関係を修復したいという気持ちがあれば、可能性は十分にあります。
何が原因で関係が悪化したのか、お互いの不満を冷静に話し合う場を設けましょう。
そして自分の非を素直に認め、感謝の気持ちを伝え、今後の行動を具体的に変えていく姿勢が求められます。
当事者だけだと感情的になってしまう場合は、家庭裁判所の円満調停や、民間の夫婦カウンセリングなど、第三者の力を借りるのも有効です。
6. 妻が離婚に応じてくれない場合はどうしたら良いですか?
妻が離婚してくれない、話し合いでの解決が難しいという場合は、離婚調停に移行します。
離婚調停も不成立だった場合は、離婚裁判になり、離婚を認めてもらうためには法定離婚事由(不貞行為や長期の別居など)が必要です。
妻の不貞行為の証拠を集めたり、弁護士に依頼して交渉してもらったりといった方法が考えられます。
7. 共働きで家事分担が原因の離婚は認められますか?
「家事分担に協力してくれない」という理由だけで、直ちに法的な離婚が認められるのは難しいでしょう。
しかし、共働きの家事分担について何度も話し合いを求めたにもかかわらず、協力しない場合は、離婚が認められる可能性があります。
何度話し合っても相手が応じない、家庭内での会話が一切なくなる、といった状況の場合は、弁護士に一度相談してみましょう。
8. 更年期障害やうつ病の妻と離婚したい場合の注意点は?
妻が病気の場合、離婚の話し合いは慎重に進める必要があります。
強度の精神病で回復の見込みがない場合は、離婚が認められるケースもありますが、更年期障害は一過性のため、離婚は認められないかもしれません。
離婚が認められるためには、これまで献身的に看病やサポートをしてきたが、それでも婚姻関係を続けるのは困難であるとアピールする必要があります。
また離婚後の妻の生活や療養について見通しを立て、財産分与などで十分に配慮することなどが重要です。
弁護士に相談し、適切な対応をとることをおすすめします。
9. 離婚時の慰謝料や養育費はどうなりますか?
慰謝料は、妻の不貞行為やDVなどが原因とした、精神的苦痛に対して支払う損害賠償金です。
そのため、妻が有責配偶者であれば、慰謝料を請求できます。
養育費は、子どもの生活や教育のための費用です。
親権を獲得できなかった場合は、妻と子どもに養育費を支払う必要があります。
養育費の金額は、養育費算定表を参考に、夫婦間で話し合うケースが一般的です。
10. 妻と離婚した後に後悔することはありますか?
妻と離婚後、後悔する夫も少なくありません。
ひとりになって初めて妻の存在の大切さに気づいた、養育費の支払いが想像以上に重い、事由に子どもに会えない、などがよく聞く後悔した内容です。
離婚という大きな決断を下す前に、離婚後の生活を具体的にシミュレーションし、本当に後悔しないかを冷静に考える時間を持つことが大切です。
まとめ|妻と離婚したい時、悩んだら弁護士に相談しよう
離婚は、冷静な準備と正しい知識がなければ、本来得られるはずだった権利を失い、将来に大きな悔いを残すことになりかねません。
もしあなたが今、一人で悩んでいるのであれば、離婚問題に強い弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士を探す際には、離婚問題に強い弁護士を探せるポータルサイト「ベンナビ離婚」の活用が便利です。
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初回無料相談や電話・オンライン相談に対応している事務所も多いため、利用するハードルが低いメリットもあります。
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