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離婚時に公正証書を作成すべき理由と作成方法の手順

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
離婚時に公正証書を作成すべき理由と作成方法の手順
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離婚する際は公正証書を作成しておくことで、のちのちあなたの身を助けてくれるかもしれません。

公正証書とは、公正役場の公証人が法律に則って作成する公文書です。

公文書には高い証明力があるうえ、通常の合意文書よりも強制力が強いため、離婚の際に取り決めた内容を公正証書として残しておくことをおすすめします。

この記事では、離婚時に公正証書を残すメリット・デメリットや、公正証書の作成手順などを解説します。

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結論からいうと、養育費・慰謝料・財産分与・年金分割などの複雑な財産処理を要するようなケースでは、弁護士への相談・依頼をおすすめします。

 

弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットを得ることができます。

  • 公正証書の書き方について、法的な視点から相談できる
  • 依頼すると、面倒な公正証書作成を一任できる
  • 依頼すると、強制執行や裁判の際にも安心
  • 依頼すると、財産分与などで得られる金額が上がる可能性がある

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離婚時における公正証書の作成手順

離婚において公正証書を作成する流れは以下の通りです。

  1. 夫婦で話し合って離婚の内容を決める

  2. 離婚協議書を作成する

  3. 離婚協議書を公正証書にする

そのため、まずは夫婦間でお互いに合意できるまで離婚内容を協議し、離婚協議書を作成します。

1:公正役場に持っていくもの

公正証書は公証役場で作成してもらいます。原則として、夫婦一緒に公証役場に行かなければいけません。

その際の持ち物は以下の通りです。

  • 離婚協議書:離婚の内容を明記したメモ

  • 戸籍謄本:夫婦双方のもの

  • 印鑑証明/実印:夫婦双方のもの

  • 身分証明ができる物:運転免許証・パスポート

  • 不動産の登記簿謄本・物件目録など:財産分与等がある場合に必要

  • 年金手帳と年金分割のための情報通知書:年金分割を行う場合に必要

2:公正証書に絶対に記すべき内容

公正証書には、夫婦の合意によって決まった離婚の内容が記載されます。

この記載内容について後で揉めた場合、この公正証書が証拠となるため、特に争いの火種になりやすい以下の項目については必ず記載すると良いでしょう。

  1. 離婚を合意した事実

  2. 慰謝料(一方が有責である場合)

  3. 財産分与

  4. 婚姻費用(離婚前に別居期間がある場合)

  5. 親権者の指定

  6. 養育費

  7. 子どもの面会交流

  8. 年金分割

離婚を合意した事実

夫婦両者が離婚について合意した事実を記載します。離婚届の提出日を記載することもあります。

慰謝料

慰謝料は、配偶者の一方に不倫行為やDVなどの離婚原因についての責任がある場合、他方の配偶者がこれにより被った精神的苦痛の補償を求めるための金銭です(離婚すれば必ず発生するものではありません)。

一方にそのような有責性がある場合には、慰謝料に関する事項なども記載しましょう。

浮気の場合、話し合いの時は認めていても、いざ公正証書に記載する段階になって言い逃れされるケースも多いため、そのような場合に備えて証拠を取っておくことをおすすめします。

浮気の証拠を取るためには、探偵などに浮気調査を依頼するのが有効です。その場合は、事前に浮気調査の相場料金などを調べておくと良いでしょう。

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財産分与

婚姻期間中に夫婦の協力によって築いた財産を、それぞれの貢献度によって個人財産へと分配することを財産分与といいます。

以下のように、財産分与の際にどのような財産が分配されるのか記載しましょう。

  • 財産分与対象の財産

  • 財産分与として譲り渡すもの

  • 財産分与の支払期限

  • 財産分与の支払回数

婚姻費用

婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を継続するために双方が負担すべき費用です。

特に問題となりやすいのは、「離婚前に一定期間の別居生活が続いていたものの、夫から妻(妻のほうが収入があれば妻から夫)に対する生活援助が一切なされなかった」というケースです。

別居期間中でも、夫婦間では平等な生活レベルが保障されなければならないため、夫は妻(妻のほうが収入があれば妻から夫)に対し、ある程度の支援(費用負担)をする必要があります。

そのため、夫からの支援が無かったケースでは、妻は夫に対し、本来支払われるべきであった婚姻費用の分担を求めることができるのです。記載事項としては以下の通りです。

  • 婚姻費用の相手負担額

  • 支払期限・方法

親権者の指定

子どもがいる場合は、親権者を決めておかないと離婚ができません。

書面には、子どもの名前と、それぞれの生まれた順番がわかるように(長男・長女・次男・次女など)記載します。養育方針なども記載しておくと良いでしょう。

養育費

子どもを育てるうえで必要な費用を養育費といいます。

この費用には、衣食住のための費用・教育費・医療費・娯楽費・交通費など、子どもが自立するまでにかかる全ての費用が含まれます。

養育費については以下の項目を記載すると良いでしょう。

  • 養育費支払いの有無(以下は支払う場合のみ)

  • 養育費の金額

  • 養育費の支払期間

  • 養育費の支払方法

子どもの面会交流

離婚しており、子どもと離れて暮らしている側が定期的に子どもに会うことを面会交流といいます。

面会交流については以下の項目を記載すると良いでしょう。

  • 面会の頻度

  • 面会の日時

  • 1回あたりの面会時間

  • 面会の方法と取り決め

年金分割

年金分割とは、婚姻期間中に納めた年金は夫婦共同で納めたものとして、将来の年金分配を行おうとするものです。

離婚時に年金分配を取り決めたのであれば、この項目についても記載しておきましょう。

3:公正証書の作成に必要な書類

公正証書を作成する際に必要な書類としては、以下の通りです。

  1. 夫婦それぞれの印鑑登録証明書
  2. 運転免許証又は住民基本台帳カード(顔写真入り) 
  3. 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明) 
  4. 離婚事実の記載された戸籍謄本(離婚届を提出済みの場合
  5. 届出済証明書類 
  6. 財産分与の対象財産を特定するための資料(財産分与がある場合
    1:不動産の登記簿謄本、固定資産評価証明、ローン関係資料
    2:自動車の車検証  
  7. 年金手帳及び年金分割のための情報通知書(年金分割関係の条項を設ける場合

4:公正証書の作成にかかる費用

公正証書作成の費用は、その目的価額によって定められています。

ここでの目的価額とは「その行為によって得られる請求側の利益」のことを指し、具体的な金額は以下を参考にしてください。

目的の価額

手数料

100万円以下

5000円

100万円を超え200万円以下

7000円

200万円を超え500万円以下

11000円

500万円を超え1000万円以下

17000円

1000万円を超え3000万円以下

23000円

3000万円を超え5000万円以下

29000円

5000万円を超え1億円以下

43000円

1億円を超え3億円以下

4万3000円に5000万円までごとに、1万3000円を加算

3億円を超え10億円以下

9万5000円に5000万円までごとに、1万1000円を加算

10億円を超える場合

24万9000円に5000万円までごとに、8000円を加算

引用元:手数料(公正証書作成等に要する費用)|日本公証人連合会

5:公証人との面談

公正証書の作成にあたっては公証人との面談が必要になりますが、こちらは夫婦の一方が行くだけで問題ありません。

その際は、あらかじめ日時を予約したうえで簡単なメモ(二人の合意内容を記載したもの)必要な書類・資料等を持参してください。

公証人が合意内容に従って公正証書の原案を作成し、後日二人で公正証書の原案の内容を確認します。

6:作成当日の手続き

ここまでの手続きが問題なければ、公正証書案の最終確認を二人で行います。

その際は、印鑑・実印(印鑑登録証明書を提出した場合)・認印(運転免許証の写しを提出した場合)などを持っていきましょう。

手数料については、作成当日に現金払いというケースが多いようです。

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離婚時に公正証書を残すメリットとデメリット

協議離婚の際に公正証書を作成するべきか判断するためにも、ここでは公正証書を作成するメリットとデメリットを解説します。

公正証書を作成するメリット

まず、公正証書を作成するメリットとしては以下の通りです。

証拠としての価値が高い

一般的に、証拠能力の高い書面のことを公文書といいます。公文書とは役所などが作った書類のことであり、公正証書は公文書の一つなのです。

そのため、公正証書に財産分与の金額や支払期日などについて記載されていれば、「その内容が離婚前に夫婦間で合意があり約束されたものだ」と第三者が判断できます。

もし元配偶者が、公正証書に記載された金額を支払わなかったとしても、取り決められている金額を回収することができます(例外的に相手に支払い能力がない場合は困難となります)。

強制力が強い

もし元配偶者が財産を十分に持っているにもかかわらず、公正証書で決められた額の養育費の支払いを怠った場合、あなたは困ってしまうでしょう。

相手が任意で払ってくれない場合には、裁判を起こすのが通常です。しかし公正証書があれば、裁判所からの判決を待たなくても、相手の財産をいきなり差し止めることができます

つまり、通常は裁判所を通じなければ強制的に給与や預金を差し押さえることはできませんが、公正証書があれば裁判所の判決と同じ効果があるということです。

そのため相手が支払いの約束を破った場合には、裁判費用や手間をかけずに回収することが可能となります。

特に養育費を毎月支払ってもらう約束をしているケースでは、養育費支払いの滞りはそのまま生活苦に直結してしまうため、公正証書を作成することは重要と言えるでしょう。

内容が正確

公正証書は、夫婦間で合意した離婚の条件をもとに公証人が作成します。

公証人は日常的に法律実務を扱っているため、素人の目よりも内容が正確で確実性も高まります。

公正証書を作成するデメリット

一方、公正証書を作成するデメリットとしては以下の通りです。

作成に費用がかかる

公正証書の作成費用は、原則として目的価額によって決められています。そのため、目的価額が大きければ大きいほど作成費用もかさむことになります。

作成に時間がかかる

公証役場にもよりますが、公正証書を作成するには一般的に2~3週間程度かかるケースが多いようです。

また、公証役場には平日の9~17時に夫婦で揃って出向かなければならないため、日中仕事をしている方などは予定の調整が難しく、時間がかかってしまうこともあるでしょう。

離婚時に公正証書の作成を専門家に依頼するかどうかの判断基準

公正証書は証明力や強制力が強い反面、面倒な手続きや費用が必要となります。

離婚において公正証書の作成を専門家に依頼するか否かは、離婚の内容によって判断した方が良いでしょう。

例えば、離婚にあたって、養育費・慰謝料・財産分与・年金分割などの複雑な財産処理を要するようなケースでは、基本的に依頼すべきと言えます。

もちろん上記のようなケースであっても、夫婦だけで作成することもできます。

しかし配偶者に必ず守ってもらいたい項目があり、それが果たされない可能性を感じるのであれば、万が一を想定してきちんとした公正証書を作成するために依頼した方が安心でしょう。

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公正証書による強制執行を行う場合

公正証書を作成していれば、相手が書面に記載されている内容を守らない場合に強制的な回収が可能ですが、以下の条件を満たしていなければ効力は発揮されません。

  1. 公正証書が金銭の支払いを目的とする債権について作成されていること
  2. 公正証書に「債務者が直ちに強制執行に従う」という旨の文言(強制執行受諾文言)が記載されていること

強制執行の申立てに必要なもの

公正証書を用いて強制執行を申し立てる場合、まずは公証役場にて執行文の付与を受け、債務者への送達の手続きを申し立てなければなりません。

つまり、公正証書による強制執行の申し立てには、以下の要件が求められます。

  • 執行文の追加
  • 債務者への送達

執行文の追加

執行文とは、債権者(請求する側)と債務者(支払う側)の間に債権が存在し、執行力を有することを証明する文章です。

公正証書による強制執行の場合、公証証書を作成した公証役場にて手続きを行います。

債務者への送達

債務者に強制執行を行うには、必ず債務名義(この場合は公正証書正本)を送達する必要があります。

当該送達も執行文と同様、公証証書を作成した公証役場に申し立てる必要があります。

裁判所への強制執行の申立て

執行文の追加と債務者への送達が完了した段階で、執行文付きの公正証書正本と債務者への送達証明書を提出し、裁判所に対し強制執行の申立てを行うことで相手の財産を差し押えることができます。

まとめ

通常、離婚にはさまざまな条件や内容が含まれます。そのなかには、離婚後のあなたの生活に不可欠な約束などもあるでしょう。

しかし、もし約束が破られてしまった場合、すぐに対処可能かどうかは公正証書の有無によって大きく異なります。

したがって、離婚時に話し合った内容は少なくとも書面に明確な形で記録して双方で署名するようにし、余裕があればこれを公正証書にしておくことをおすすめします。

離婚時の公正証書作成に不安がある方へ

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弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットを得ることができます。

  • 公正証書の書き方について、法的な視点から相談できる
  • 依頼すると、面倒な公正証書作成を一任できる
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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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編集部

本記事はベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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