監護権とは?親権との違いや分離のメリット・注意点をわかりやすく解説
「離婚後も子どもと一緒に暮らしたい」という気持ちから、監護権に関心を持つ方は少なくありません。
しかし、親権と監護権は何が違うのか、監護権者は何ができるのかを正確に理解している方は多くないでしょう。
2026年4月施行の改正民法下では、離婚後も共同親権を選択できるようになりました。
共同親権の導入に伴い、監護者の権利義務が明文化されたほか、父母間で柔軟に子の監護を分担できる旨の規定が新設されています。
本記事では、監護権の法的性質や親権との違い、分離のメリット・注意点を解説します。
子にとってよりよい養育の形を考えるための参考にしてください。
監護権とは

監護権とは、親権のうち子の監護・教育に関する権利義務(身上監護権)を指します。
具体的には、子と生活を共にしながら養育・教育を行うことや、居所を定めること、職業を許可することなどが含まれます。
身上監護権(監護権)の具体的な内容は、以下のとおりです。
| 権利義務 | 内容 |
|---|---|
| 子の監護教育における人格尊重義務 | ・子の監護教育において、子の人格を尊重し、子の年齢・発達の程度に配慮する義務 ・体罰や虐待など子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない義務 |
| 居所指定権 | 子の居所(生活の拠点)を指定する権利および義務 |
| 職業許可権 | 子の営業・就業の許可・取消し・制限ができる権利および義務 |
| 身分上の行為の代理権 | 子の身分に影響を与える法律上の行為(認知・縁組・相続など)を代理する権利 |
監護権と親権の違い
親権とは、父母が未成年の子の利益のために行使する権利義務の総称です。
監護権とは、親権の一部で、子の監護教育に関する権利および義務のことを指します。
親権の内容は、以下のとおり、身上監護権と財産管理権に大別されます。
| 身上監護権(子の監護教育) | 財産管理権(子の財産管理) |
|---|---|
| ・子の監護教育における人格尊重義務 ・居所指定権 ・職業許可権 ・身分上の行為の代理権 |
・財産管理と代理権 ・利益相反行為における特別代理人の選任の請求 |
身上監護権は、子と生活を共にしながら、日常の養育・教育・居所指定・職業許可などを担う権利義務です。
財産管理権は、子の財産を保全・管理し、財産上の法律行為を代理する権利義務です。
親権は、子の身上および財産上の広い事項を対象とする権利義務であるのに対し、監護権は親権の一部である子の身上の権利義務のみを指します。
親権と監護権は分離できる
婚姻中は原則として父母双方に親権があるため、監護権も父母に属しています。
以下のような場合には、監護権と親権とを切り離して、監護権者と親権者を別個に指定できます。
- 別居する父母間で、監護権者の指定を求める場合
- 離婚に際し、親権者とは別に監護権者を指定する必要がある場合
- 離婚後、共同親権を選択したうえで監護権者の指定を求める場合
親権と監護権を分ける場合の具体例は以下のとおりです。
| 親権 | 父親 |
|---|---|
| 監護権 | 母親 |
| 役割 | 父親:パスポートの申請、銀行口座の開設・解約、手術の同意など 母親:食事・衣類・住まい、教育・しつけなど |
ただし、父母の一方を単独親権者に、他方を監護権者に指定する場合には、メリット・デメリットの両面があることも覚えておきましょう。
親権と監護権を分けるメリット
親権者と監護権者を分ける主なメリットは、以下のとおりです。
- 早期に離婚が成立する可能性がある
- 離婚後も父母双方が子育ての当事者として関与し続けられる
- 非同居親が子との法的なつながりを維持できる
単独親権を選ぶ場合、父母のどちらも親権を譲らなければ、離婚の話し合いが膠着します。
父母の希望にもよりますが、親権と監護権を分けることで、お互いに納得した形で離婚成立に至る場合もあるでしょう。
非同居親が親権者として財産管理や法定代理を担うことで、子とのつながりも維持できます。
通常、子が成長するにつれて財産の管理や契約をする機会が増えていくため、親権者として定期的・継続的に交流を保てるでしょう。
もっとも、親権争いの妥協案として分属する場合は、本当に子の福祉にかなう解決なのか、慎重に検討する必要があります。
親権と監護権を分けるデメリット
親権者と監護権者を分ける主なデメリットは、以下のとおりです。
- 子の財産に関する手続きのたびに親権者の同意が必要になる
- 父母の意見対立により重要な意思決定が滞るリスクがある
- 子どもが板挟みになり、精神的負担を抱えるおそれがある
監護権者は、単独で、子の監護教育、居所の指定・変更および営業の許可・取消・制限ができます。
しかし、財産の管理・法定代理などの財産管理権は親権者に属するため、携帯電話の契約・口座開設などには親権者の同意が必要です。
パスポートの取得や進学先などの決定、手術などの医療行為の同意にも、原則として親権者の同意が必要です。
父母の関係が悪化すると、重要な意思決定が滞るリスクも考えられます。
父母間の意見の対立で、子どもが板挟みになるおそれもあるでしょう。
親権者と監護権者を別に定める場合の手続き
監護権者の指定は、別居中・離婚時・離婚後のいずれのタイミングでも可能です。
親権者と監護権者を別に定める手続きには、以下のとおり、協議・調停・審判・裁判による方法があります。
①父母間の協議
父母の協議で双方が合意できれば、監護権者を指定できます。
口頭でも合意は有効に成立しますが、書面化を強く推奨します。
親権者は戸籍に記載されますが、監護権者は戸籍に記載されないためです。
父母間の協議で監護権者を定めた場合、書面化していなければ対外的に証明できません。
父母の協議で監護権者を指定する場合は、後のトラブル防止のため、離婚合意書や公正証書などを必ず作成しましょう。
②子の監護者指定の調停・審判
父母間で協議が整わない場合や協議ができないときは、家庭裁判所に子の監護者指定の調停または審判の申立てが可能です。
監護者指定は、調停を前置しなければならない旨の規定がないため、最初から審判の申立ても可能です。
調停では調停委員が双方の主張を聞き、合意形成を支援します。
調停が不成立となった場合は審判に移行し、調査官による子の生活状況・意向調査などを経て、家庭裁判所が監護者を決定します。
審判手続では、子が15歳以上のときは、裁判官が子の陳述(意見)を聴かなければなりません。
子が小学校高学年ぐらいになると、事実上意見を聴かれるのが一般的です。
家庭裁判所の決定に不服がある場合は、審判書の送達を受けた日の翌日から2週間以内であれば、即時抗告が可能です。
③離婚調停・離婚裁判
離婚調停の中でも、親権争いが激化した際の妥協的解決として、親権と監護権の分属が合意される場合があります。
ただし、子の福祉の観点から、親権と監護権が父母に分属するのは望ましくないと考えられており、両者を分離するケースは限定的です。
裁判所は一般に親権と監護権の分属に慎重であり、子の利益の観点から特に必要な事情がある場合に限って認められる傾向があります。
親権者・監護権者を決める際の判断基準
親権者や監護権者を指定する際に、家庭裁判所が重視するのは、父母のどちらを指定するのが子の利益・子の福祉にかなうかです。
判断基準となる要素は、親権者指定と監護権者指定とで、大きく変わりません。
ただし、監護権者の指定では監護の継続性と子の生活の安定がとりわけ重視されます。
親権者指定の判断基準
裁判所は、父母のどちらを親権者に指定するのが、子の利益・子の福祉にかなうかという基準で判断します。
判断にあたっては、一般に、以下のような事情が考慮されます。
| 父母双方の事情 | 子の事情 |
|---|---|
| ・監護に関する意欲・能力 ・健康状態 ・精神的・経済的家庭環境 ・居住・教育環境 ・子に対する愛情の程度 ・実家の資産 ・親族・友人などの援助の可能性 |
・年齢 ・性別 ・兄弟姉妹との関係 ・心身の発育状況 ・従来の環境への適応状況 ・環境の変化への適応性 ・子自身の意向 ・父母や親族との結びつき |
どちらを親権者にするかは、子の福祉の観点から総合的に判断されるため、離婚原因となる父母の有責行為などはあまり考慮されません。
ただし、子の目の前で配偶者に暴力を振るうなどの事実があれば、親権者として不適格と評価される可能性があります。
監護者指定の判断基準
監護権者の指定においても、子の利益・子の福祉にかなうかどうかが重視され、親権者指定と同様の基準で判断されます。
もっとも、監護権は子を現実に養育する権利義務であるため、監護の継続性や子の安定が重視されます。
具体的には、別居・離婚前後に子の監護にどの程度関与していたか、子との親和性はあるかなどが総合的に考慮されるでしょう。
また、親権者とは別に監護権者を指定することが子の利益にかなうか否かという点も、判断基準に加わります。
父母の都合だけを理由とした分離は認められにくく、子の福祉の観点から分離が望ましいと認められる具体的な事情が必要です。
親権・監護権の獲得が難しい場合の代替策
親権・監護権のいずれも取得できなかった場合でも、親子交流の実施により、子との関わりを維持できます。
親子交流とは、離れて暮らす親と子が定期的に面会したり、電話や手紙などで交流したりすることです。
民法改正前は面会交流と呼ばれていましたが、改正後は親子交流や交流という用語に改められました。
親子交流の頻度・方法・場所・宿泊の有無なども、父母の協議で定められます。
協議が整わない場合は、家庭裁判所の調停・審判で解決を図りましょう。
親子交流は、子が両親からも愛されているという安心感を得たり、健やかに成長したりするために、基本的に有益なものと考えられています。
そのため、親子交流の具体的な内容・方法を取り決める際には、子の利益を最優先に考慮しなければなりません。
共同親権の導入で監護権はどうなる?
2026年4月1日施行の改正民法では、離婚後の共同親権制度が導入されました。
監護権のあり方にも大きな変化が生じています。
共同親権を選択した場合でも、父母の一方を監護権者に指定できます。
また、監護の分掌という新たな選択肢も設けられました。
改正後も父母の一方を監護権者に指定できる
離婚後の共同親権下でも、父母の一方を監護権者に指定できます。
共同親権下で父母の一方を監護権者に指定した場合、監護権者は身上監護権を単独で行使できます。
改正民法では、監護権者でない親権者は、監護権者による身上監護権の行使を妨げてはならない旨も明確にされました。
日常的な行為を含め身上監護に関する事項について、父母間で意見対立が生じた場合には、監護権者の意見が優先されることになるでしょう。
なお、父母双方が親権者となる場合、監護権者の定めがなくても、監護教育に関する日常行為は、父母の一方が単独で親権を行使できます。
後述の監護の分掌の定めも規定されたため、監護権者の指定以外の方法で柔軟な解決を図れるケースもあるでしょう。
監護の分掌(分担)も可能になる
改正民法は、監護の分掌についても、父母の協議で定められる旨規定しています。
監護の分掌とは、子の監護を父母が分担することです。
具体的には、子の監護を担当する期間を父と母で分担したり、監護に関する事項の一部を切り取って、父母の一方に委ねたりできます。
たとえば、進学先の選択や留学などの教育に関する重大な行為を含む教育全般を、父母の一方に委ねるといった取り決めが可能です。
平日は母が監護を担当し、土日祝日は父が担当するといった期間の分担なども定められます。
ただし、父母の関係が良好でないと監護の分担をめぐって新たな紛争が生じるおそれもあります。
監護の分掌の定めをするときは、具体的内容を詳細に書面化しましょう。
父母の協議が整わない場合は、家庭裁判所の調停または審判を利用できます。
監護権者の変更が認められる可能性があるケース
父母の協議で合意が得られれば、監護権者の変更は可能です。
親権者変更と異なり、家庭裁判所の調停・審判を経る必要はありません。
父母間で協議が整わない場合は、家庭裁判所に調停・審判を申し立てられます。
変更が認められるためには、監護者が指定されたあとの事情変更が必要です。
監護者の変更の可否も、子の利益にかなうかどうかが判断基準となります。
なお、監護者の変更とは、現在の監護権者の監護権を取り消して、通常の親権者のみに戻す場合も含みます。
監護権者が育児放棄をした
育児放棄(ネグレクト)が続いている場合、監護権者の変更が認められる可能性があります。
食事を与えない・長時間放置するなど、子の健全な発達を妨げる状態が続いていれば、現在の監護が不適切と評価されやすいためです。
育児放棄を理由に変更を申し立てる場合は、写真・動画・学校や保育所からの記録など、状況を裏付ける証拠を確保しましょう。
監護権者が子を虐待した
子への虐待が確認された場合、監護権者の変更が認められる可能性があります。
身体的暴力・精神的暴力・性的暴力のいずれも、子の安全と福祉を損なうと判断されやすいためです。
虐待を裏付ける証拠としては、医療機関の診断書・学校や保育所からの報告書・子の発言記録などが有効です。
監護権者が海外赴任などで監護をできなくなった
長期の海外赴任などで監護権者が子と生活を共にできなくなった場合も、変更が認められる可能性があります。
物理的に監護できない状態が続けば、子の安定した生活環境が損なわれるためです。
監護権者が病気などで長期にわたり養育が困難になった場合も、同様に変更が認められる可能性があります。
このようなケースでは、父母の合意で変更するのが一般的です。
監護を怠った監護権者が問われ得る刑事責任
監護権者による育児放棄や虐待が深刻な場合、刑事責任を問われる可能性もあります。
保護責任者遺棄罪・不保護罪|3月以上5年以下の拘禁刑
育児放棄が続いている場合、保護責任者遺棄罪および不保護罪に問われる可能性があります。
子を危険な場所に置き去りにする行為が遺棄、同居しながら食事や医療を与えない行為が不保護にあたります。
法定刑は、3月以上5年以下の拘禁刑です。
監護権者は子に対する保護責任者にあたるため、長期間にわたり子の生存に必要な保護を怠れば、本罪が成立する可能性があります。
保護責任者遺棄等致死傷罪|3年以上20年以下の拘禁刑
遺棄や不保護の結果、子が死亡または負傷した場合は、さらに重い保護責任者遺棄等致死傷罪が成立する可能性があります。
死亡させた場合の法定刑は3年以上20年以下の拘禁刑、負傷させた場合は3月以上15年以下の拘禁刑です。
子を自宅に放置して熱中症で死亡させたケースや、浴室に放置して低体温症で死亡させたケースで、本罪による実刑判決が出た裁判例があります。
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監護権に関してよくある質問
本章では、監護権について、読者からよく寄せられる疑問にお答えします。
Q. 親権と監護権はどっちが強いですか?
どちらが強いとは一概には言えませんが、含まれる権利の範囲では親権の方が広いです。
親権は財産管理権と身上監護権の両方を含むのに対し、監護権は身上監護権のみを指します。
財産管理や法律行為の代理は親権者にしかできません。
一方、子と一緒に暮らして日々の養育をおこなうという観点では、監護権の方が実質的な関与が大きいといえます。
どちらを優先すべきかは、何を重視するかによって変わります。
Q. 監護権は何歳まで認められますか?
監護権は、子が18歳になるまで認められます。
2022年4月の民法改正により成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
子が成年に達すると親権・監護権はともに消滅し、本人が自らの意思で居所や職業を決定できるようになります。
なお、養育費については子の経済的自立を基準に判断されるため、18歳を超えても支払い義務が続く場合があります。
Q. 監護権があることを証明・確認する方法はありますか?
監護権は戸籍に記載されないため、書面による記録が証明手段となります。
離婚届には監護権者を記入する欄がなく、戸籍にも記載されません。
協議で監護権者を定めた場合は、離婚協議書や公正証書に監護権者である旨を明記しておく必要があります。
調停や審判で監護権者が決まった場合は、裁判所が作成する調停調書・審判書が証明書類となります。
口約束のみでは後のトラブルの原因になるため、必ず書面に残しましょう。
Q. 祖父母などの第三者を監護権者に指定できますか?
父母の協議または調停・審判により、祖父母など父母以外の親族を監護権者に指定できる場合があります。
ただし、祖父母自身による監護者指定の申立ては認められていません。
祖父母を監護権者にするには、父母のいずれかによる申立てが必要です。
Q. 監護権のみ獲得していた場合、再婚しても問題ありませんか?
再婚しても、原則として監護権への影響はありません。
引き続き監護権者として子を養育できます。
ただし、再婚相手と子が養子縁組をおこなう場合には、親権者の承諾が必要です。
また、再婚相手による虐待が確認されるなど、再婚後の監護環境によっては、監護権者の変更が認められる可能性はあります。
再婚や養子縁組を検討する場合は、事前に弁護士への相談をおすすめします。
まとめ
監護権は、子と同居して日々の養育をおこなう権利義務であり、親権の一部である身上監護権を指します。
父母の協議または家庭裁判所の手続きにより、親権者とは別に監護権者を指定することも可能です。
監護権者は子と生活をともにして日常の養育をおこなえる一方、財産管理や法律行為の代理は親権者に属します。
親権と監護権の分離にはメリットもありますが、父母間の意思決定が滞るリスクもあるため、慎重な検討が必要です。
2026年4月施行の改正民法では離婚後の共同親権制度が導入され、共同親権下でも監護権者の指定や監護の分掌が可能になりました。
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