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離婚における親権争いでは、ほとんどのケースで母親が親権を獲得できます。
しかし、100%親権を勝ち取れるとは限りません。
さまざまな状況から、母親に育児が難しいと判断されると、母親が負けてしまう可能性もあります。
本記事では、親権争いで母親が負ける場合、有利になるためのポイントを解説します。
親権を勝ち取り、子どもと同居したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
親権争いは、一般的に父親よりも母親が有利といわれていますが、必ずしも母親が親権を得られるわけではありません。
親権を決めるときは、父親と母親のどちらに育児実績があるのかがもっとも重視されます。
近年では、共働きによって育児に積極的に参加する父親が増えているため、育児実績次第では、父親と母親の親権争いが互角になる事例もあります。
親権争いで母親が負けるケースは、以下のとおりです。
以下でそれぞれ詳しく見ていきましょう。
母親が子どもを虐待していたり、育児放棄(ネグレクト)をしていたりする場合、親権は認められません。
虐待やネグレクトの事実が確認されれば、子どもの保護が最優先されるため、親権は父親の手にわたるでしょう。
なお、虐待には以下のように3つの種類が存在します。
身体的虐待 | 子どもをたたく、蹴る、髪の毛を引っ張る、強くゆさぶる、など |
---|---|
精神的虐待 | 子どもに暴言を吐く、無視する、しょっちゅう怒鳴りつける、など |
育児放棄 (ネグレクト) | 食事の用意をしない、お風呂に入れない、子どもを不衛生な環境に置いたままにする、病気になっても病院に連れていかない、など |
虐待には殴る蹴るといった身体的暴力以外にも、暴言などの心理的なものやネグレクトなども含まれるのです。
母親がうつ病などの精神疾患を患っている場合は、子どもの面倒を十分に見られず、育児をこなせないと判断され、親権を得るのが難しくなります。
しかし、精神疾患を患っていても必要最低限の育児ができると判断されれば、親権を得られる可能性はゼロではありません。
精神疾患が育児にどのくらい影響を及ぼすのかが、親権を決めるにあたって重要なポイントになります。
子どもが父親と暮らすことを望んでいる場合、その意思が尊重され、母親でも負ける可能性があります。
調停や裁判で親権を決めるときは、子どもが健やかに育ち、安心して暮らせるのを最優先にするために、子ども自身の意思が尊重されます。
そのため、子どもが父親と暮らしたいと強く希望していたら、たとえ母親であっても、親権を得るのは難しいでしょう。
親権争いでは、父親と母親のどちらが子どもの監護にあたっているのかも重視されます。
監護とは、子どもと生活をともにして身の回りの世話をすることを指します。
もし、母親が育児を父親に任せきりにしていたら、父親のほうが親権争いで有利になるかもしれません。
裁判所は実際の育児実績をふまえて、どちらに親権を与えるのかを判断するため、父親が日常的に子どもの世話をしているならば、父親に親権がわたる可能性が高まります。
母親の日頃の様子が、子どもの成長や教育にどう影響を及ぼすのかも、親権争いにおける重要な判断基準です。
たとえば以下のような状況は、子どもを育てるのに適していないと判断される要素です。
子どもは親の状況を敏感に感じ取るため、悪い環境で長期間育つと、将来的な人格形成などに悪影響が及びます。
そのため、育児の環境や母親の生活習慣によっては、たとえ母親であっても親権争いで負ける可能性があるのです。
離婚後に母親が周りに頼れる人が誰もいない状況である一方、父親の近くには祖父母などの育児を手伝ってくれる人がいるときも、母親が親権争いで負ける恐れがあります。
たとえば以下のような状況では、父親に親権がわたる可能性が高いとされています。
子どもの親権を判断するときは、親だけではなく育児を手伝ってくれる人が周囲にいるのかも重視されると理解しておきましょう。
離婚協議や離婚調停を始めた時点で、すでに子どもが父親と一緒に暮らしている場合も、親権争いで母親が負けるケースのひとつです。
なぜなら、親権争いにおいては、子どもの生活を安定したものにすることがもっとも重視されるからです。
子どもがすでに父親と安定した生活を送っている状況では、その環境を変えること自体が子どもにとって負担になると判断されやすいのです。
裁判所は子どもの生活を守るために、さまざまな基準に基づいて親権を決定します。
子どもの親権を決定する判断基準として、以下の8つが挙げられます。
これらの基準を正しく理解しておけば、親権争いに備えられるでしょう。
親権を決定する際は、親として子どもに必要なことをしてきたかどうかが重要なポイントになります。
具体的には、親の健康状態に問題がないか、子育てができる体力や能力があるかなどをもとに判断されます。
一般的には、子どもの監護をしていた親に親権を与えるべきだと判断されやすい傾向です。
なぜなら、一緒に暮らしている親との生活が安定しているのに、その親子関係をむやみに変えたら、子どもの情緒が不安定になり、人格形成にも悪影響が出る可能性があるからです。
裁判所は、子どもが健やかに育つためにも、どちらに親権をわたすべきなのかを慎重に判断します。
家事事件手続法によると、子どもが15歳以上の場合は、親権を決める際に子どもの意見を聞くことが法律で義務付けられています。
15歳以上になれば、子どもにも物事の判断能力がある程度身についているという考えから生まれた法律です。
しかし、実務上では10歳頃から子どもの気持ちを聞いて、意思を裁判や調停に反映させる場合もあります。
子ども自身の意思は、親権決めにおいて非常に重視される要素であると理解しておきましょう。
子どもが複数人いる際、通常は兄弟姉妹が引き離されないように配慮すべきだとされています。
なぜなら、離婚後も兄弟姉妹と一緒に暮らすことは、お互いにとって得られるものが多く、人格形成にもプラスの影響を与えると考えられているからです。
この原則に基づき、裁判所は両親の離婚によって兄弟姉妹が別れてしまうのを避けるように努めています。
親権争いにおいては、子どもとの心理的な結びつきが強い親を親権者として優先すべきだとされています。
かつては、子どもが乳幼児の場合は父親よりも母親が必要とされるという「母性優先の原則」が支持されていました。
しかし、近年では共働きをしながら子どもの面倒を見る父親も増えているため、母親に限らず、より強い心理的結びつきを持つ親が優先される傾向があります。
子どもの養育環境も、親権における重要な判断基準のひとつです。
裁判所は、子どもが一番安心して暮らせる環境を用意できる親に親権を渡します。
子どもの養育環境を判断する際のポイントは、以下のとおりです。
なお、普段仕事で忙しくて子どもと過ごす時間を十分に取れない方もいるでしょう。
そのようなケースでも、自分が家にいない間は、祖父母などが代わりに子どもの面倒を見てくれるような環境があれば、親権争いが不利にならずに済む可能性があります。
親権者の健康状況も、親権を決める際に重要な判断基準となります。
裁判所は、親が子どもを適切に育てられるのかを判断するために、親の健康状態をチェックします。
親が身体的または精神的な健康上の問題を抱えている場合、子どもを育てられなくなるリスクがつきまとうため、親権争いが不利になってしまうかもしれません。
子どもと一緒に生活したいと望む親が、別居している親との面会交流に寛容であるかどうかも重要視されます。
親権を得られなかった親が、子どもと定期的に面会をする権利を「面会交流権」といいます。
別居している親との繋がりは、子どもの情緒を安定させ、健やかに育つために極めて重要です。
親権者を決めるときは、子どもが別居中の親に会いたいという気持ちを尊重できるかがポイントとなるでしょう。
親権を決めるときは、近隣に祖父母や兄弟姉妹、親戚が住んでいるかどうかも重要です。
周りに子育てを手伝ってくれる人が多いのであれば、親権争いが有利に進みやすいでしょう。
たとえば、父親の仕事が忙しくても、母親よりも父親のほうが子育てを協力してくれる人がいるなら、父親が親権を得られる可能性高くなります。
親権争いが激化している夫婦では、不利な立場におかれやすい父親側から、さまざまな主張がなされます。
その中でも、母親による不倫や浮気・借金問題などは、親権争いにおいて父親が問題提起しやすい傾向にあります。
ただしこれらの問題は、必ずしも母親側が親権争いに負ける決定打にはなりません。
その理由について以下で解説します。
不倫・浮気が親権争いで母親に不利になるかどうかは、具体的な状況によって左右されます。
一般的には、不倫・浮気が子どもの生活に直接悪影響をきたさない限り、母親が親権争いに負ける決定打にはなりません。
ただし、不倫に夢中で子どもの世話を怠ったり、不倫相手が子どもに暴力をふるったりする状況であれば、母親には親権が渡らないかもしれません。
母親に経済力がなく借金があったとしても、親権争いで負ける決定的な要因にはなりません。
なぜなら、母親の経済力は母親自身の収入だけでなく、父親からもらう養育費をトータルして判断されるからです。
たとえ専業主婦であっても、子育てができるほどの養育費をもらえるのであれば、親権を得られるケースもあります。
ただし、ギャンブル中毒や浪費が原因での借金など、子どもの教育に悪影響を与える問題があるときは、母親が親権争いで負けてしまう恐れがあります。
母親が親権争いで負けないためのポイントは、以下のとおりです。
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
父親と母親のどちらと暮らしたいのか、子どもの意思を確認しておきましょう。
子どもの意思は家庭裁判所の調査官が確認してくれますが、その際は子どもの発言だけでなく、年齢・態度・表情などをふまえ、総合的に判断されます。
離婚する事実だけでなく、離婚後の生活環境なども子どもへきちんと説明し、意思を確認しましょう。
たとえ親権を得られなかったとしても、子どもの親である事実は変わりません。
離婚後も子どもが別居中の親と定期的に会えれば、自分は愛されている事実を認識できます。
離婚相手と子どもを会わせたくないと思っていても、面会交流を拒否すると親権争いで不利になりやすい傾向にあります。
ただし、父親に暴力癖があり、子どもが父親と会うのを怖がっている場合などは例外です。
親権争いに備えるためには、親権を勝ち取るためのアピール材料を十分に揃えておく準備が重要です。
実際には、調停や裁判において父親と母親の両方が「自分のほうが育児に積極的だった」と主張するケースは決して珍しくありません。
しかし、本当に子育てに積極的だったのはどちらなのか、裁判官も主張を聞くだけでは判断できません。
そこで、これまでの監護実績を証拠として残しておくのをおすすめします。
なお、これらの情報は具体的な監護実績として役立ちます。
これらの証拠をしっかりと残しておけば、親権争いにおいて有利な立場になれるでしょう。
調停委員を味方にするためには、子どもを一生懸命育ててきた事実を伝えてください。
調停委員は、当事者双方の話を聴きながら、調停手続を進行させます。
自分の主張を理解してもらうために、これまでの経緯や心情をわかりやすく伝えましょう。
その際は、自分の主張を述べるだけではなく、相手の立場や調停委員の意見にも耳を傾ける姿勢が大切です。
そのような姿勢を意識して取り掛かれば、調停委員に自分の気持ちや立場を理解してもらえるでしょう。
弁護士に依頼し、調停委員に「絶対に親権を勝ち取りたい」という意思を伝えましょう。
弁護士を雇えば、親権を取りたいという姿勢を調停委員にアピールできるはずです。
また、弁護士は多くの離婚調停を経験しており、親権を獲得するためのノウハウをもっています。
自分一人で離婚調停に臨むのではなく、弁護士に依頼して万全の体制で親権争いを進めましょう。
最後に、子どもの親権についてよくある疑問と回答例について解説します。
厚生労働省の「人口動態調査」によると、2022年において父親が子どもの親権を取得した割合は約11.1%でした。
現状として、父親が親権を持つ割合は決して高くありません。
しかし、母親よりも父親のほうが子育てに積極的である場合は、父親に親権が渡る可能性は十分にあります。
専業主婦であっても、親権が認められる可能性は十分にあります。
たとえ母親が働いていなくても、祖父母による子育ての援助や父親から養育費をもらえるなら、子育てをするための収入や環境があるとみなされるでしょう。
もし母親が親権争いで負けたとしても、子どもと会えなくなるわけではありません。
父親と面会交流を取り決めれば、定期的に子どもと会えるようになります。
また、養育費による援助をおこなえば、子どもとの繋がりを保てるでしょう。
たとえ親権を得られなくても、親として子どもにできることはあるのだと理解しておきましょう。
夫婦間の親権争いは、非常に複雑な問題です。
一人で悩まず、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士は法律の専門知識と経験を持ち、あなたの立場や状況に応じた最善のアドバイスを提供してくれます。
また、適切な手続きや証拠の収集などの親権を得るために必要なサポートを受けられます。
あなたが安心して子どもと暮らせるよう、弁護士の力を借りて親権争いを乗り切りましょう。
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