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親権変更は難しい?離婚後に親権を取り戻せるケースと調停の手続きを解説

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現在の民法上のルールでは、夫婦が離婚する際には子どもの親権者を決めますが、あとで親権変更が必要になるケースもあります。

ただし、親同士の取り決めでは親権を変更できないため、子どもの親権を獲得したいときは、以下の疑問などを解消しておかなければなりません。

  • 親権変更はどんな手続きが必要?
  • 親権変更が難しいといわれる理由は何?
  • 親権変更が認められる確率はどのくらい?
  • 親権変更はどんなケースで認められる?
  • 親権者変更を成功させるコツはある?

親権者変更は調停を申し立てる必要があるので、手続きの流れを理解しておくとよいでしょう。

本記事では、親権変更が認められるケースや、親権変更を成功させるためのポイントなどをわかりやすく解説します。

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親権変更が難しい理由

離婚後の親権は「単独親権」になっており、父母のどちらかが子どもを監護しなくてはなりません(※新しく施行される民法では共同親権が導入されました)。

親権者は離婚時に決定しますが、離婚後に頻繁な変更があると、子どもの生活環境が何度も変わってしまうため、精神的にも不安定な状態になってしまいます。

そのため、親権変更を容易に認めるべきではなく、きちんとした理由が必要になります。

親権変更には合理的かつ特別な理由が必要

監護親から非監護親へ親権を変更する場合、合理的かつ特別な理由が必要です。

親権変更は家庭裁判所が判断するので、合理性の面では親の収入や監護能力、住居や教育環境などが考慮されるでしょう。

また、親権変更の目的や動機についても、合理的な理由が求められます。

さらに、子どもの年齢や本人の意思も考慮され、現監護親による監護養育に大きな問題が生じていない場合には、親権変更は認められない可能性が高いです。

親権の変更を実現したいときは、裁判所に認めてもらえるだけの理由があるかどうか、客観的にチェックする必要があります。

親権変更が成功する確率

政府統計の人口動態調査をみると、2018年から2022年までに離婚した夫婦については、親権の状況が以下のようになっています。

  子ども1人 子ども2人
総数 父親 母親 総数 父親 母親 その他
2018年 55,682 7,218 48,464 45,644 5,255 38,097 2,292
2019年 55,251 7,283 47,968 44,566 4,962 37,347 2,257
2020年 51,406 6,716 44,690 41,883 4,618 35,171 2,094
2021年 48,979 6,298 42,681 39,431 4,270 33,105 2,056
2022年 45,551 5,475 40,076 34,640 3,680 29,435 1,525

子どもが1人の場合、父親が親権者になる割合は平均12.8%になっており、子どもが2人であれば、11.0%が5年間の平均値です。

父親が親権者になれる確率は高くても13%程度と推測されます。

親権変更が認められやすいケース

親権者の決定には子どもの利益と福祉が考慮されるため、以下のようなケースは親権者変更が認められやすくなります。

母親が監護親になった場合でも、状況次第では父親への親権変更が可能でしょう。

親権者の収入が少ない場合

親権者の収入が少なく、子どもの食事や教育が不十分になっている場合、親権者変更を認められる可能性があります。

また、親権者の収入が低いために満足な医療が受けられず、子どもの成長に悪影響を及ぼす状況であれば、裁判所も親権者変更を考慮してくれるでしょう。

ただし、金銭的な問題は、非監護親からの養育費の支払いが十分になされていてカバーできるという状況であれば、親権者変更の決定的な理由とはならないでしょう。

子どもが親権変更を望んでいる場合

子どもが非監護親との生活を望んでいる場合、親権変更できる可能性があります。

ただし、幼い子どもは判断能力が不十分と考えられており、原則的には15歳に達していることが条件です。

子どもが15歳以上であれば、明確な意思表示ができるものと考えられており、調停や審判の際にも本人の意見が聴取されます。

なお、子どもの成熟度によっては、15歳未満でも本人の意思を尊重するケースがあります。

親権者が子どもを虐待している場合

親権者による子どもの虐待や育児放棄があれば、親権変更が認められやすくなります。

子どもへの暴力や食事を与えないといった間接的な虐待がある場合、身体的・精神的な成長に大きな悪影響を及ぼすため、親権者と引き離す必要があります。

また、親権者が子どもの身の回りの世話をしておらず、生活面が劣悪な環境になっていると、家庭裁判所も親権変更の必要性を認めてくれるでしょう。

子どもへの暴力がしつけの範囲を超えており、殴る・蹴るなどの行為が続いているときは、すぐにでも親権変更しなければなりません。

親権者の監護能力が不十分な場合

親権者の監護能力に問題があれば、親権変更を認めてもらえる要件になります。

たとえば、親権者が異性との交際を優先し、子どもの世話を他人に任せきりにした場合、監護義務を果たしているとはいえません

また、保育料や給食費などの未払いや、体調不良の子どもに病院の診察を受けさせないケースも、監護能力に問題があるといえるでしょう。

親権者本人がけがや病気になり、子どもを監護できなくなった場合も、親権変更できる可能性があります。

子どもの養育環境に大きな変化がある場合

親権者が仕事の都合で海外赴任するなど、子どもの養育環境に大きな変化があれば、親権変更が認められる可能性があります。

転勤先が政情不安定な国だった場合、子どもが戦争や犯罪に巻き込まれる恐れがあります。

また、子どもが国内での勉強を強く希望している場合も、本人の意思が尊重されるため、親権変更できる可能性があるでしょう。

親権者が死亡した場合

親権者が死亡すると、基本的には未成年後見人が法定代理人となり、子どもを監護します。

ただし、非監護親との生活が子どもの利益や福祉につながる場合、親権を変更できる可能性があります。

なお、親権者の死亡によって非監護親が親権者になるときは、家庭裁判所に審判の申し立てが必要です。

親権変更は調停の申し立てが必要

親権変更は家庭裁判所が決定するため、調停を申し立てる必要があります。

調停の申し立てから親権変更までの流れや、必要書類は以下を参考にしてください。

親権者変更調停の流れ

家庭裁判所に親権者変更調停を申し立てるときは、以下の書類が必要です。

  • 申立書
  • 当事者目録
  • 事情説明書
  • 監護親と非監護親および子どもの戸籍謄本
  • 1,200円分の収入印紙
  • 連絡用の郵便切手代

申立書と当事者目録の様式は家庭裁判所の窓口や、裁判所のホームページで入手できます。

必要書類が揃ったら家庭裁判所に提出し、親権者変更調停を申し立ててください。

申立てが受理されると、まず家庭裁判所と申立人で調停期日を取り決め、相手方に呼出状が送られ、1回目の調停期日が開かれます。

必要に応じて2回目以降の調停期日を開き、調停委員を交えた話し合いが進むと、最終的には調停案が提示されます。

双方が親権変更に合意すると調停成立となり、調停調書が交付されるので、失くさないように注意しましょう。

なお、調停が不成立になったときは自動的に審判へ移行し、裁判官が親権変更の可否を判断します。

調停成立後の役所の手続き

家庭裁判所が親権変更を認めたときは、調停成立日または審判確定日から10日以内に役所へ出向き、親権者変更の届出を提出します。

届出先は親権者の住所地、または子どもの本籍地の役所になっており、調停調書や審判書の謄本、確定証明書なども提出するケースがあるので、事前確認しておきましょう。

親権者変更にかかる時間

親権者変更にかかる時間はケースバイケースですが、短くても2~3ヵ月程度が必要でしょう。

調停期日は2回以上開かれる場合が多く、基本的には月に1回のペースです。

当事者間で事前に話し合い、親権変更に合意があれば短期間で決着しますが、相手が親権を絶対に渡さないスタンスであれば、調停成立に半年以上かかる場合もあります。

審判に移行した場合はさらに時間がかかるので、親権変更は長期戦を想定しておきましょう。

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親権者変更を成功させるためのポイント

親権者変更の調停を申し立てる場合、以下のポイントを押さえると成功率が高くなります。

調停を有利な流れにしたいときは、弁護士のサポートを受けておきましょう。

調停で主張する内容を整理しておく

調停委員は意見聴取や資料から親権者を判断するため、調停で主張する内容は事前に整理してください。

家庭裁判所の調停室にはメモやノートを持ち込めるので、離婚に至る経緯や離婚後の生活、子どもとの関係性などを記載しておきましょう。

給与明細や確定申告書の写しなどがあれば、収入面に問題がないことを証明できます。

面会や養育の実績を残しておく

面会交流の内容を日記などに記録している場合、調停の際に提示してみましょう。

また、養育費を振り込みで支払っているときは、通帳のコピーも有効な資料になります。

親権者の変更調停では双方に意見聴取があるので、扶養義務を果たしているかどうかをみられるでしょう。

面会交流と親権変更の関連性は高くありませんが、親権者が正当理由なく面会交流を拒否している場合、子どもの福祉に反しているものとみなされます。

親権者が子どもの監護を怠っており、一方で非監護親のみ扶養義務を果たしている状況であれば、親権変更が認められる可能性があります。

親権者の養育状況を調べておく

共通の知人などを通じて親権者の養育状況を調べると、調停に向けて事前対策を打てます。

面会交流の際には、子どもとの会話で養育状況がある程度わかるでしょう。

親権者変更の調停では調査官による調査もありますが、事前に情報がわかれば、申し立てするかどうかの判断材料になります。

ただし、親権者に気付かれると、問題のある養育状況を隠蔽されかねないため、慎重な対応が必要です。

親権変更を弁護士にサポートしてもらう

家庭裁判所に親権変更を申し立てるときは、弁護士のサポートも受けておきましょう。

弁護士に養育費や面会交流の状況を伝えると、調停委員に主張する内容を組み立ててくれます。

申立書や事情説明書の作成に不安があるときは、弁護士に作成を依頼してください。

また、弁護士は調停の同席が認められており、その場でアドバイスも聞けるので、有利な展開に持ち込みやすくなります。

状況判断から親権変更が難しいときは、監護権を獲得して子どもとの交流を深めるなど、代替案も提案してくれるでしょう。

親権変更にかかる弁護士費用

親権者変更調停を弁護士にサポートしてもらうと、一般的には以下の費用がかかります。

  • 法律相談料:30分5,500円、1時間1万1,000円程度
  • 着手金:15万~30万円程度
  • 報酬金:15万~30万円程度
  • 日当:1時間あたり1万1,000円程度

初回の法律相談料は無料になる場合が多いので、ひとまず相談からスタートするとよいでしょう。

家庭裁判所に近い法律事務所の場合、出頭時の交通費を請求しないケースもあるので、細かな費用体系もよく確認してください。

親権変更に関するQ&A

家庭裁判所に親権者変更調停を申し立てるときは、以下のQ&Aも参考にしてください。

一般的に困難とされる母親から父親への親権変更でも、状況次第では家庭裁判所が認める可能性があります。

母親から親権を奪うのは難しい?

2014年2月12日の東京家庭裁判所審判では、母親から父親への親権変更を認めています

親権変更の経緯は以下を参考にしてください。

  1. 夫婦の離婚後、母親が当時10歳の子どもの親権者になる
  2. 母親は子どもを連れて実家に戻り、父母や姉などの親族と暮らしていた
  3. 母親は親族と不仲になり、子どもの監護も怠るようになった
  4. 子どもは母親の親族が監護することとなった
  5. その後、母親は子どもを実家に残して賃貸住宅に転居した
  6. 子どもと父親の面会交流は続いているが、母親と子どもの接触はほとんどない

母親は子どもの監護や扶養義務を果たしていないため、父親が親権者に相応しいことは明らかです。

また、子どもに十分な判断能力があり、母親との生活を望んでいなかったことや、母親が低収入だったことも審判に影響しています。

祖父母は親権者になれる?

養子縁組すると、祖父母は孫の親権者になれます。

本来、祖父母は孫の親権者になれませんが、養子縁組すると法律上の親子関係が成立するため、親権を獲得できます。

養子縁組が難しい場合でも、本来の親権者が不在であれば、祖父母が孫の未成年後見人になる方法もあります。

また、祖父母が孫の監護権を取得できれば、身上監護を通じて子どもとの関わり合いを持てるでしょう。

親権者の再婚相手が子どもを養子にしても親権変更できる?

親権者の再婚相手と子どもが養子縁組した場合、親権変更は認められません

再婚相手が子どもの養親になると、監護親と養親による共同親権が適用されます。

親権変更は単独親権を前提としているため、共同親権が適用された夫婦間の子どもについては、親権者を変更できなくなります。

なお、子どもが養親から虐待されており、保護が必要なときは、親権喪失や親権停止の審判、親権者の職務執行停止などを裁判所に申し立ててください。

さいごに|親権者変更調停は弁護士にサポートしてもらいましょう

親権変更はかなり難しいので、調停を申し立てるときは弁護士に相談し、事前の対策を練ってください。

調停委員は子どもの利益や福祉を優先するため、養育費を滞りなく支払い、面会交流も継続しているなど、養育の実績を積み上げておかなければなりません。

特別な事情がなければ親権変更は認められないので、相手の養育状況も調べておく必要があるでしょう。

弁護士のサポートがあれば、親権変更の確率が高くなります

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この記事の監修者
シティクロス総合法律事務所
竹中 朗 (東京弁護士会)
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編集部

本記事はベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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