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離婚と別居はどちらが得なのか比較|離婚しないで別居するメリット・デメリットも解説

離婚と別居はどちらが得なのか比較|離婚しないで別居するメリット・デメリットも解説

夫婦間のトラブルからお互いが別居することになった場合、そのまま離婚に至るケースも珍しくありません。

ただし、離婚しないで別居するときは、生活費や養育費の確保などを考えておく必要があります。

また、離婚と別居には法的な違いもあるため、将来的な影響も理解しておきましょう。

本記事では、離婚と別居はどちらが得なのか、具体的なメリット・デメリットから検証します。

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離婚と別居の法的な違い

離婚と別居には法的な違いがあるため、婚姻関係の有無が扶養控除や遺産相続に影響します。

夫婦間のトラブルで離婚や別居を検討するときは、以下の違いをよく理解しておきましょう。

未成年の子どもの親権

夫婦が離婚する場合、父母のどちらかが親権者になります。

相手が親権を獲得すると、子どもと触れ合う機会が面会交流だけになるので、面会日や面会時間、場所などが限定されます。

ただし、2024年5月17日に民法改正案が可決となり、今後は共同親権が導入されるため、面会交流の考え方も変わる可能性があるでしょう。

なお、離婚せずに別居する場合、子どもを引き取っているかどうかに関わらず、父母の両方が親権者になります。

相互扶助や婚姻費用の分担義務

夫婦にはお互いを助け合う相互扶助義務や、生活費となる婚姻費用の分担義務があります。

離婚によって婚姻関係が解消されると、相互扶助や婚姻費用の分担義務はなくなるため、配偶者を扶養する必要がありません。

一方、別居の場合は婚姻関係が続いているので、扶養義務や婚姻費用の支払い義務が生じます。

なお、夫婦が離婚しても子どもの扶養義務は残るため、養育費は双方で負担しなければなりません。

ひとり親控除などの支援制度

離婚後に子どもの親権者となった場合、ひとり親の医療費控除など、各自治体の支援制度を利用できます。

別居の場合でもひとり親控除は利用できますが、相手との婚姻関係が続いていると、控除や支援の範囲が限定される場合があるでしょう。

扶養手当や家族手当

勤め先から扶養手当や家族手当を受け取っている場合、離婚すると支給されなくなる場合があります。

扶養手当などの規定は各企業によって異なるので、離婚するときは就業規則を確認しておきましょう。

税法上や社会保険の扶養控除

離婚せずに別居している場合、相手の扶養に入ったまま扶養控除を受けられます。

しかし、離婚すると扶養家族ではなくなるため、税法上や社会保険の扶養控除は適用できません。

婚姻中の夫婦は夫が会社の社会保険に加入し、妻と子どもを扶養するケースも一定数ありますが、妻が親権者となって離婚した場合、子どもも父親の扶養から外れることがあります。

妻と子どもは無保険になるため、離婚後は自分で社会保険等の保険に加入しなければなりません。

また、離婚すると所得税の扶養控除が使えないので、生計維持者の手取り額が減少する場合があります。

法定相続人の地位

婚姻関係にある夫婦の場合、配偶者は必ず法定相続人になるので、夫や妻の財産を相続できます。

ただし、離婚するとお互いが法定相続人になれないため、法律上は第三者の扱いになり、相手の財産は相続できません。

なお、子どもは親の離婚に関係なく、父母のどちらが亡くなっても第一順位の法定相続人になります。

離婚と別居はどちらが得なのかを比較

相手にDVや不貞行為に悩んでいる場合、離婚が最善策になる可能性があります。

しかし、専業主婦が離婚すると収入の確保が難しいため、すぐには婚姻関係を解消せずにいったん別居した方がよい場合もあるでしょう。

離婚しないで別居するときは、以下のメリット・デメリットを参考にしてください。

離婚しないで別居するメリット

夫婦が離婚せずに別居すると、以下のメリットがあります。

最終的に離婚を選択する場合でも、別居している期間が長ければ、一概には言えませんが、離婚が認められやすい一つの要素となり得るでしょう。

DVやモラハラの被害を受けない

別居するとDVやモラハラの被害を受けないため、身の安全を確保できます。

暴力や暴言を受け続けると肉体的・精神的なダメージが蓄積するので、場合によっては重大な後遺症や精神障害が残る可能性があります。

相手に無断で別居し、報復される恐れがあるときは、住所を告げずに転居してください。

ウィークリーマンションなどに転居すると、敷金や礼金がかからず、生活家電も揃っているので、急いで別居したいときは検討してみましょう。

精神的ストレスから解放される

性格の不一致や価値観の違いがある場合、別居によってストレスから解放されます。

金銭感覚や育児の考え方などに大きな違いがあると、「一緒にいるだけでストレスを感じる」といったケースが少なくありません。

ストレスが大きくなると仕事に集中できない、または子どもに強く当たってしまうなど、さまざま悪影響が出てしまうでしょう。

「離婚するほどでもないが、相手と距離を置いてみたい」などの状況であれば、別居を検討してみるのも一つです。

パートナーの扶養に入ったままでいられる

離婚しないで別居した場合、相手の扶養に入ったままになるため、相手が扶養を外さない限り、自分で社会保険料を支払う必要がありません。

相手は配偶者控除によって税負担が軽くなり、扶養家族は原則3割負担の医療費で病院の治療などを受けられます。

また、相手の扶養に入ると国民年金の第3号被保険者になるので、保険料を負担しなくても国民年金の受給資格を継続できます。

別居中でも婚姻費用を受け取れる

婚姻費用は生活費全般を指しており、住居に関する費用や食費、衣服代、医療費や交通費、交際費などが含まれます。

夫婦には婚姻費用を分担する義務があるため、収入の少ない妻が別居した場合、生活費の不足分は夫が負担しなければなりません。

婚姻費用の額は世帯収入や社会的地位、子どもの有無などによって変わりますが、夫婦関係が続いていれば、お互いが同程度の水準の生活になっている必要があります。

離婚するかどうかを冷静に判断できる

別居すると1人の時間を確保できるので、離婚するかどうかを冷静に判断できます。

夫婦の離婚は裁判所も慎重に扱っており、訴訟で離婚を争う場合でも、判決の前に和解案を提示されるケースも一定程度あります。

1人の時間を確保できたら、離婚と別居のどちらが得なのか、経済的な自立や子どもの養育、将来的な遺産相続などを整理してみるとよいでしょう。

離婚裁判に至った際に離婚しやすくなる可能性がある

裁判によって離婚する際、別居期間が長くなっていると離婚が認められやすい一つの要素とされます。

夫婦の離婚を裁判で離婚を争う場合、基本的には不倫や浮気、DVやモラハラなどの有責行為の有無や婚姻を継続しがたい重大な事由の存否等が焦点になるため、別居の事実だけで離婚できるというものではありません。

ただし、別居期間が7~10年程度になると、裁判所も夫婦関係の修復が困難だと判断する可能性は、一般的には高くなるでしょう。

離婚裁判を短期間で終結させたいときは、長期的な別居も検討してください。

離婚しないで別居するデメリット

離婚しないで別居するときは、以下のデメリットも理解しておきましょう。

相手の浮気や不倫を証明したい場合、別居前に証拠を確保する必要があります。

住居や仕事の確保が難しい場合がある

専業主婦が家を出て別居する場合、住居や仕事の確保が難しくなる場合があります。

収入が十分でない未就労の場合は家賃の滞納リスクが高いと思われてしまう場合があるため、家主や不動産会社に敬遠され、賃貸借契約を結べない場合があります。

自分で保証人を探す、または保証会社を設定すると契約だけは結べる場合もありますが、安定収入がなければ家賃滞納が発生するリスクがあります。

生活費や養育費が不足する場合がある

夫婦は生活費や養育費を分担しなければなりませんが、別居すると、相手の考え次第で、相手からの支払いが滞る場合があります。

裁判所に調停を申し立て、相手と和解できたとしても、生活費などの支払いが再開されるのは数ヵ月後になる場合があるため、そのような事態も想定し、ある程度当面の資金を自分で準備しておく必要がある場合があります。

離婚せずに別居するときは、婚姻費用や養育費を確実に受け取れるよう、相手と協議し、約束を交わしておくことも重要です。

パートナーとの関係修復が難しくなる場合がある

別居するとお互いの気持ちが離れていくため、相手との関係修復が難しくなります。

それぞれの生活が経済的に自立している場合、「1人でやっていける」「相手がいなくても問題なし」といった考え方になる可能性もあるでしょう。

関係修復が十分に可能でも、別居をきっかけに離婚する夫婦もいるため、相手と距離を置くかどうか慎重に考えておく必要があります。

パートナーが財産を隠す場合もあり得る

夫婦が別居した場合、一概には言えませんが、相手が財産を隠す恐れがないとは言い切れない場合があります。

別居中の婚姻費用は夫婦で分担する必要があり、お互いの収入や資産、子どもの有無などを考慮して金額を決定します。

しかし、夫婦関係が冷え切っていると、相手は「お金を渡したくない」「相続させたくない」などと考えてしまうでしょう。

財産を隠されると、離婚時の財産分与も少なくされるリスクもあります。

離婚や慰謝料を求められる可能性がある

夫婦には同居義務があるため、合理性のない理由で別居すると、離婚や慰謝料を求められる可能性があります。

たとえば、自分が浮気相手と生活するために無断で別居した場合、夫婦関係を破たんさせる「悪意の遺棄」となります。

悪意の遺棄となる場合は、すべてとは限りませんが、慰謝料請求の対象になり得るので、相手に数十万円や数百万円を支払う場合もあります。

また、身勝手な理由で別居した場合、自分には離婚する意思がなくても、相手から離婚を切り出されるかもしれません。

相手が離婚の意思を固めると、関係修復は難しくなります。

不貞行為などの証拠を集めにくくなる

別居して家を離れると、不倫や浮気の証拠を集めにくくなります。

不貞行為の証拠には以下の種類があり、相手の財布やスマートフォン、車などに残っているため、別居すると収集が難しくなるでしょう。

  • メールやLINE、SNSなどのやりとり
  • ホテルを利用した際の領収書
  • スマートフォンの通話履歴や画像・動画
  • カーナビの履歴やドライブレコーダーの映像

相手に「不貞行為を調べられている」と察知された場合、証拠を隠滅される恐れもあります。

浮気や不倫は慰謝料請求の対象になるので、証拠は同居中に集めておいたほうが良い場合があります。

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別居中にしてはいけないこと

別居中には「してはいけないNG行為」があるため、以下を参考にしてください。

場合によっては慰謝料請求されたりする可能性があります。

調停や裁判中に自力で強引に子どもを連れ出す行為

調停や裁判などの最中に、それらの手続きを無視し、一方的に強引に子どもを連れ出すと、親権を争う裁判等の場合、「親権者として不適格」と判断される可能性もあるでしょう。

別居中の不倫

別居中に不倫すると、一般的には、自分が有責配偶者とされる場合があります。

有責配偶者は離婚請求を起こしても信義則上認められない場合があるため、相手が調停や離婚裁判を起こした場合、離婚するには、相手の希望条件に沿った不利な条件に従う方向性でしか離婚できなくなる可能性があります。

判決によっては高額な慰謝料を支払うケースもあるので、軽々な異性との交遊は慎むべきでしょう。

考えなしに別居期間を長引かせること

特に理由もなく別居期間を長引かせると、相手から離婚請求される可能性があります。

たとえば、10年別居を続けているのに離婚しないケースであれば、調停や裁判でも夫婦関係の修復見込みなしと判断される場合があります。

収入の大部分が婚姻費用だった場合、離婚によって支払いが停止すると、生活設計が立ちにくくなる場合があります。

離婚しないで別居するときの注意点

離婚しないで別居するときは、以下の注意点をよく理解しておきましょう。

別居が長期化すると離婚の可能性も十分にあるため、仕事や収入の確保、財産分与なども考えておく必要があります。

共有財産を把握しておく

別居するときは相手名義の預金や株式、不動産を把握してください。

婚姻生活中に築いた財産は「夫婦共有の財産」になるため、将来的に離婚する場合、財産分与の対象になります。

相手が取得した財産を把握していなかった場合、離婚時に適正な預金や株式がもらえない場合もあるので、同居中に財産を調べておいたほうが良いでしょう。

なお、相手が婚姻前から所有していた財産や、親から相続した財産については、特有財産といい、夫婦の共有財産になりません。

不貞行為やDVなどの証拠を集めておく

相手と別居するときは、事前に可能な限り不貞行為やDV、モラハラなどの証拠を集めておいた方が良いでしょう。

別居後は証拠を確保しにくいため、相手に有責行為があっても慰謝料請求できなくなり、理不尽にも離婚も認められない場合もあります。

DVやモラハラは映像や音声データが有力な証拠になりますが、撮影や録音が難しいときは、被害の状況を日記などに記録しておきましょう。

住居と仕事を確保しておく

夫婦の関係性が悪化した場合、別居の前に住居と仕事を確保しておいたほうが良いでしょう。

「夫婦だから婚姻費用をもらえる」と考えても、相手が突如支払わなくなった場合、危機的状況になる場合があります。

経済的に自立できる収入が見込めないときは、住居と仕事の見通しなどを確保し、生活基盤の安定を考えておいた方が良いでしょう。

持ち出すものを決めておく

DVやモラハラの被害から逃れるための別居であれば、まず持ち出すものを決めておきましょう。

急いで別居すると、「ドライヤーがない」「薬やコンタクトレンズを忘れた」などの状況になるため、必需品を整理してください。

賃貸アパートなどに転居するときは寝具も必要になり、電気やガスなどは印鑑がなければ契約できません。

子どもへの影響を考えておく

夫婦が別居するときは、子どもへの影響を考えておいたほうが良いでしょう。

幼い子どもは親の事情を理解できない場合があるため、いきなり父母が別居すると戸惑ってしまうでしょう。

母親と一緒に別居したとき、場合によっては、「父親からは愛されていないからか?」等と考えてしまう可能性もあります。

別居は子どもの健全な成長に影響を及ぼすので、本人の気持ちのケアも大切にしてください。

面会交流のルールを決めておく場合もある

自分が子どもと同居しており、相手にアルコールやギャンブル依存などがある場合、自由に面会させると子どもに悪影響を与えかねません。

また、相手が子どもと同居している場合も、離れている側の自分が気ままな都合だけで面会を続けると、「今後は会わせない」と拒絶される可能性もあります。

別居するときは面会交流の頻度や日時、場所や子どもの引き渡し方などを決めても良いでしょう。

子どもの養育費も請求する

子どもの養育費は婚姻費用に含まれるため、離婚せずに別居するときでも夫婦で分担しなければなりません。

夫婦が離婚して婚姻費用がなくなっても、養育費の支払い義務は残るので、相手に請求することは可能です

子どもと同居している親に有責行為がある場合、「養育費は支払ってもらえないだろう」と考えてしまい、相手に請求しないケースがありますが、このあたりは子のためのものですので、慎重に検討しましょう。

その理由として、養育費は子どもの監護や教育などに欠かせないことから、同居親の有責性に関わらず、相手に請求可能となっているものです。

さいごに|離婚と別居のどちらがよいか迷ったら弁護士へ相談を!

離婚と別居のどちらが得になるかはケースバイケースですが、経済的合理性も考えながら検討しておく必要があるでしょう。

婚姻関係の解消でモラハラやDVの被害はなくなっても、生活するお金等がなければ生活が破たんし、子どもの養育にも影響が生じ得ます。

夫婦の別居は慎重に検討すべき価値がある大切なものですので、判断に迷ったときは弁護士に相談してみましょう。

別居に至る状況を弁護士に伝えると、別居が現実的かどうか、離婚と別居のどちらがよいのか、客観的・長期的な視点を得ることができると思います。

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この記事の監修者
渡邊律法律事務所
渡邊 律 (栃木県弁護士会)
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本記事はベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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