離婚後に姓をそのままにする人の割合や手続き方法、メリット、デメリットを解説
婚姻時に姓を変えた女性が離婚した場合、旧姓に戻すか、そのままにするかを選択することができます。
婚姻時の姓をそのまま使用し続ける場合に得られるメリット、そしてデメリットもあるため、ご自身がどうするべきかは慎重に決めましょう。
また、婚姻時の姓を名乗り続けたい場合は、所定の手続きも必要です。
本記事では、離婚後に姓をそのままにする女性がどのくらいいるのか、姓をそのままにするメリット・デメリットや、具体的な手続き方法などについて解説します。
離婚後にスムーズな選択ができるよう、本記事を読んで姓についての理解を深めておきましょう。
離婚時に姓をそのままにして旧姓に戻さない人の割合は全体の4割超
2022年度の「戸籍統計」によると、離婚した人の約42%が旧姓に戻さず、「婚氏続称制度」を利用して姓をそのままにしている結果となっています。
「婚氏続称制度」とは、離婚後も婚姻時の姓を名乗り続けられる制度のことです。
「婚氏続称制度」については、戸籍法第75条の2及び第77条の2に定められています。
戸籍統計を見る限り、旧姓に戻す人の方が多いものの、姓をそのままにする人が4割以上にも及んでおり、離婚したからといって、必ずしも旧姓に戻す方ばかりでないことが分かります。
離婚後に姓をそのままにするメリット
離婚後に姓をそのままにするメリットについて、解説します。
銀行口座などの名義を変更する必要がない
離婚後に姓をそのままにするメリット1つ目は、銀行口座などの名義を変更する必要がないことです。
姓が変わることによって、さまざまな書類などの名義変更手続きが発生します。
名義変更が必要なものの一例は、以下のとおりです。
- 銀行口座
- 運転免許証
- パスポート
- 国民年金
- 各種任意保険
- クレジットカード
手続きには時間がかかりますし、銀行などは平日の営業時間内に窓口で手続きしなければなりません。
仕事をしている人の中には、手続きに時間を割くことが難しいという方もいるでしょう。
離婚後に姓をそのままにしておけば、名義変更の面倒な手続きはしなくてすみます。
わずらわしさを避けたいのであれば、姓をそのままにしておくのもいいかもしれません。
周囲に離婚した事実を知られづらい
離婚後に姓をそのままにするメリット2つ目は、周囲に離婚した事実を知られづらいということです。
突然姓が変わることで、職場などでの呼び名も変わり、離婚した事実を周囲に知られてしまいます。
離婚は珍しいことではないですし、離婚したからといって極端なマイナスイメージがつくこともないでしょう。
しかし、プライベートなことを詮索されたくない、周りに気を遣われたくないという方は、姓をそのままにしておくほうが気持ちが楽かもしれません。
離婚による子どもへの影響を軽減できる
離婚後に姓をそのままにするメリット3つ目は、離婚による子どもへの影響を軽減できることです。
子どもの姓が急に変わることで、学校などで好奇の目に晒されてしまうかもしれません。
友人に事情を聞かれたり、離婚の事実をからかわれたりと子どもが悲しい思いをする可能性もあります。
子どもの生活への影響を最小限にするためにも、姓をそのままにしておくのはメリットだといえるでしょう。
婚姻時の姓で積み上げた業績に影響が生じるリスクを軽減できる
離婚後に姓をそのままにするメリット4つ目は、婚姻時の姓で積み上げた業績に影響が生じるリスクを軽減できることです。
たとえば論文や書籍、表彰など婚姻時の姓による実績がある方も少なくないでしょう。
旧姓に戻すことによって、これらの実績が自分のものと気付かれづらくなります。
その分、実績に影響が生じる可能性があるのです。
婚姻時の姓のままであれば、こういったリスクを軽減できます。
なお戸籍上の姓は戻しても、仕事をする際は婚姻時の姓を名乗り続けるといった方法をえらぶことも可能です。
離婚後に姓をそのままにするデメリット
では、離婚後に姓をそのままにするデメリットは何があるのでしょうか。
考えられるデメリットについて、解説します。
離婚した気持ちの整理をつけづらくなる
離婚後に姓をそのままにするデメリット1つ目は、離婚した気持ちの整理をつけづらくなることです。
離婚後に新しい生活をはじめるときに、姓がそのままだと離婚した実感がわきづらくなることもあるでしょう。
新しい気持ちで生活を始めたいときは、旧姓に戻すことを検討したほうがよいかもしれません。
あとから旧姓に戻したくなっても、認められづらくなってしまう
離婚後に姓をそのままにするデメリット2つ目は、あとから旧姓に戻したくなっても、認められづらくなってしまうことです。
離婚後に姓をそのままにすることを選んでも、あとからやっぱり旧姓に戻したいと思う方もいるかもしれません。
その場合、家庭裁判所に「氏の変更許可申し立て」をおこなう必要があります。
氏の変更許可は、やむを得ない理由がない限りは認められません。
なんとなく旧姓に戻したいといった理由だと、氏の変更は許可されない可能性があります。
一度「婚氏続称制度」を利用してしまうと、そう簡単に旧姓に戻ることができなくなるので注意が必要です。
元配偶者や元配偶者の家族に嫌がられる可能性がある
離婚後に姓をそのままにするデメリット3つ目は、元配偶者や元配偶者の親族に嫌がられる可能性があることです。
婚姻時の姓を名乗るかどうかは、ご自身で自由に決めることができます。
元配偶者の許可は不要です。
しかし元配偶者やその親族からすると、離婚した相手が自分達と同じ姓を使い続けることに嫌悪感をいだくかもしれません。
再婚後に離婚した場合に、旧姓に戻すことができなくなる
離婚後に姓をそのままにするデメリット4つ目は、再婚後に離婚した場合に、旧姓に戻すことができなくなることです。
離婚後に再婚し、再び離婚した場合に選べる姓は、「ひとつ前の姓」もしくは「婚姻時の姓」と決まっています。
そのため、一度目の離婚で婚姻時の姓をそのまま使用した場合、再婚してまた離婚しても旧姓(2つ前の姓)には戻れないのです。
離婚後の姓は、再婚やその先のことまでしっかり考えて決めるようにしましょう。
親戚とは違う苗字になってしまう
離婚後に姓をそのままにするデメリット5つ目は、親戚とは違う苗字になってしまうことです。
親や兄妹、その他親族と苗字が異なることで、なんとなく疎外感を覚える方もいるでしょう。
そして、離婚後も婚姻時の姓を使用し続けるのであれば、両親の戸籍に戻ることはできません。
同一戸籍に入ることができるのは、姓が同じ者だけだからです。
また親族で苗字が違うと、宗派によっては同じお墓に入れないということも考えられます。
家族や親戚とのつながりを意識するのであれば注意しましょう。
離婚後に姓をそのままにするための手続き方法
離婚後は、特別な手続きをしなくても姓は旧姓に戻ります。
しかし、離婚後も婚姻時の姓を名乗りたいなら、所定の手続きが必要です。
ここからは、離婚後に姓をそのままにする為の手続方法を解説しましょう。
離婚時に、特別な手続きをしなければ原則として旧姓に戻る
先ほどもお伝えしたとおり、離婚後に特別な手続きをしなければ原則として旧姓に戻ります。
婚姻時に姓を変更した側は、離婚届を提出して受理されれば、自動的に旧姓に戻ることになります。
別途手続きは不要です。
離婚届を出すだけなので、旧姓に戻したいという方にとっては手続きが楽だといえるでしょう。
離婚後3ヵ月以内なら「婚氏続称の届」にて手続きが可能
離婚後3ヵ月以内であれば「婚氏続称の届」にて手続きが可能となります。
「婚氏続称の届」とは、離婚後も婚姻時の姓を名乗りたいときに役所へ提出する届け出のことです。
離婚後3ヵ月以内に提出する必要があり、提出期限は原則延長されません。
期限が過ぎてしまうことを避けるために、離婚届と一緒に提出するのがおすすめです。
離婚後3ヵ月経過後は、「氏の変更許可申し立て」ができるが認められにくい
離婚後3ヵ月経過した場合は、家庭裁判所へ「氏の変更許可申し立て」をおこないましょう。
ただし氏の変更は、「やむを得ない事由」が無ければ認められません。
「姓をどちらにするか悩み、3ヵ月経過してしまった」というだけでは、氏の変更は難しいといえるでしょう。
離婚後の姓についてよくある質問
最後に、離婚後の姓についてよくある質問を紹介します。
離婚したら子どもの姓はどうなりますか?
両親が離婚しても、子どもの姓が自動的に変わることはありません。
何もしなければ、子どもは今までの姓を名乗り続けることになります。
たとえば、婚姻時に夫を筆頭者とする戸籍を作成していた場合、離婚して戸籍から抜けるのは母親のみです。
子どもは父親の戸籍に入ったままとなるので、姓も当然に変わりません。
これは、母親が子どもの親権を獲得しても同じです。
ご自身が旧姓に戻す場合、子どもも同じ姓を名乗らせ同じ戸籍に入れるためには、ご自身の戸籍を新たに作っておくことが必要不可欠です。
ご自身は両親の戸籍に復することもできますが、戸籍は3世代以上、同一の戸籍に入ることが認められていないため、子どもはその戸籍に入ることができないのです。
ご自身の戸籍を新たに作ったら、子どもの姓を旧姓に変える「子の氏の変更許可申し立て」をおこないましょう。
許可が下りれば、子どもを自分の戸籍に入籍させられます。
子どもの姓を変えたくないけれど、自分の戸籍に子どもを入れたいという場合は、自分も婚姻時の姓を名乗る必要があります。
そのために、まずご自身が「婚氏続称の届」を提出し、新しい戸籍を作るわけです。
つぎに家庭裁判所へ、「子の氏の変更許可申し立て」をおこないましょう。
裁判所の許可が下りれば、自分の戸籍へ子どもを入籍させるという流れになります。
離婚後、姓をそのままにしたうえであとから旧姓に戻すことはできますか?
家庭裁判所の許可が下りれば、旧姓に戻すことが可能です。
離婚後に婚姻時の姓を名乗り続けていたものの、しばらくしてから旧姓に戻したいのであれば、家庭裁判所へ「氏の変更許可申し立て」をおこないましょう。
ただし許可を得るには、旧姓に戻すべきやむを得ない事由が必要です。
どんな理由があれば旧姓に戻せるのか、具体的な指針があるわけではありません。
裁判所の判断によるというのが正直なところです。
参考までに、過去にどのようなケースで氏の変更が認められたのかを紹介します。
- 離婚後、本心では旧姓に戻りたかったが、子どもの学校生活への影響を考えて婚氏を名乗り続けたケース
- 氏の変更の目的が、消費者金融からの借り入れといった不当なものではないケース
- 自営業をしていた関係で、離婚後もやむなく婚氏を名乗っていたが、仕事を辞めたので婚氏を名乗る必要がなくなったケース
ご自身が旧姓に戻したい理由で裁判所からの許可が下りるのかどうかは、一度弁護士へ相談してみましょう。
さいごに | 離婚後の姓の選択は慎重に!不安な点があれば弁護士に相談を
離婚後、姓をそのままにする人は全体の4割を超えています。
一般的には旧姓に戻るイメージがありますが、実情は約半数の方が婚氏を使用しているようです。
姓をそのまま使用したいなら、離婚後3ヵ月以内に「婚氏続称の届」を役所へ提出しましょう。
すでに3ヵ月が経過している場合は、家庭裁判所への「氏の変更許可申し立て」が必要です。
しかし、やむを得ない事由が無ければ、氏の変更は認められません。
離婚後も姓をそのままにしておけば、銀行口座などの名義変更も不要ですし、職場などで離婚の事実が知られにくいなどのメリットがあります。
一方で、離婚後も元配偶者のことを嫌でも思い出してしまいますし、今後再婚して離婚してしまった場合に旧姓には戻せないというデメリットもあります。
離婚後に姓をそのままにするのか、旧姓に戻すのか、いずれも慎重に考えるべき問題だといえるでしょう。
ご自身の今後の生活やお子さんのことを考えてどちらの選択をとるべきなのか、離婚後の姓で悩んでいるなら弁護士への相談がおすすめです。
弁護士に相談すれば姓の問題だけでなく、養育費や面会交流など、離婚後の元配偶者との関係に関わる事項全般の法的アドバイスにも応じてもらえるでしょう。
ひとりで抱え込みすぎず、不安な点は弁護士へ相談してみましょう。
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