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離婚をする際、年金分割ができますが、年金分割をしないとどうなるのか気になる方も多いでしょう。
年金分割とは、離婚に際して夫婦が婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割する制度です。
本記事では、離婚後に年金分割をしないとどうなるのか、対象となる年金制度や年金分割手続きの流れを解説します。
離婚後の年金分割における注意点もあわせて紹介するので、離婚後に受け取る年金を減らしたくない方は、ぜひ参考にしてください。
離婚の際に年金分割をしなければ、将来の年金受給額に大きな影響が出ます。
特に、婚姻期間が長い専業主婦(主夫)であれば、年金分割をおこなわない場合とおこなった場合を比べると、もらえる年金額の差は大きくなるでしょう。
そのため、離婚時にはしっかりと年金分割手続きをするべきです。
ただし、共働きや配偶者よりも年収が高いなどの状況であれば、自分の年金が分割される可能性もあるため注意が必要です。
全ての年金制度において年金分割ができるわけではありません。
年金分割の対象となる年金制度は、以下のように定められています。
年金制度 | 内容 |
---|---|
厚生年金 | 民間企業で働く人を対象とした公的年金制度 |
共済年金 | 国家公務員や地方公務員、私学教職員などが加入する年金制度 |
一方で、年金分割の対象とならない年金制度は以下のとおりです。
年金制度 | 内容 |
---|---|
国民年金 | 20歳以上・60歳未満の全ての方が加入する年金 |
国民年金基金 | 自営業やフリーランスの国民年金に上乗せする公的年金制度 |
確定給付企業年金 | 従業員が受け取る「給付額」が約束されている企業年金制度 |
婚姻中に夫婦両方が国民年金にしか加入していない場合は、離婚後に年金分割をおこなえないため注意が必要です。
年金分割制度には、合意分割・3号分割という2種類が存在します。
請求条件や対象期間がそれぞれ異なるので、自分はどちらの種類に該当するのかを確認しましょう。
合意分割とは、話し合いによって、年金を何割に分けるのかを夫婦間の合意を得て決める方法です。
以下では、合意分割を進めるための請求条件と対象期間をまとめました。
なお、請求条件については全てを満たす必要があります。
制度開始日 | 平成19年4月1日 |
---|---|
対象期間 | 婚姻期間 |
※平成19年4月以前の期間も年金分割の対象となる
夫婦間の話し合いで合意に至らなければ、調停や審判によって決める必要があります。
ただし、審判においては、分割割合の上限である50%ずつの割合で判決されるケースがほとんどです。
3号分割とは、請求者が「3号被保険者」であるときに適用される年金分割の方法です。
3号被保険者は以下の全ての条件を満たす人のことを指します。
3号分割をおこなうには、以下の4つの請求条件と対象期間を全て満たす必要があります。
制度開始日 | 平成20年4月1日 |
---|---|
対象期間 | 平成20年4月以降に配偶者の扶養に入っていた期間(第3被保険者期間)に限る |
※平成20年4月以前の年金支払い分については3号分割の対象とならず、「合意分割」の対象となる
また、3号分割における分割割合は一律50%です。
3号分割は相手の合意がなくても、3号被保険者の方のみで請求できます。
合意分割をおこなうときは、以下の流れに沿って手続きを進めます。
次に、具体的な手順と注意点について解説します。
以下で詳しくみていきましょう。
まずは、「年金分割のための情報通知書」を入手しましょう。
情報通知書を入手するには、「年金分割のための情報提供請求」を記入して請求者の住所地を管轄する年金事務所に提出する必要があります。
「年金分割のための情報提供請求」は、年金事務所で直接受け取れるほか、日本年金機構のWebサイトからもダウンロードできます。
書き方や提出方法の詳細は、日本年金機構のホームページで確認しましょう。
情報通知書を受け取ったら、その内容をもとに年金分割について配偶者と話し合いましょう。
当事者同士での話し合いで決着しないときは、家庭裁判所に調停を申し立て、調停委員を介して再度話し合います。
ここでも、合意しなければ審判の手続きに移り、家庭裁判所が按分割合を決めます。
年金の分割割合が決まったら、以下の必要書類を準備し、年金事務所で請求の手続きをしましょう。
ただし、年金分割の請求は基本的に夫婦2人で手続きをおこなう必要があります。
万が一、ひとりだけで請求の手続きをしたい場合には、次の対処法がおすすめです。
請求手続きをすると、約2週間~3週間ほどで「標準報酬改定通知書」が夫婦どちらにも送付され、手続きは完了します。
「標準報酬改定通知書」には、年金分割により変更された年金記録が記載されているので、確認しておきましょう。
3号分割の手続きは、第3号被保険者本人だけで手続き可能です。
配偶者からの同意も必要ありません。
手続きの具体的な流れは、以下のとおりです。
合意分割と同じように、「標準報酬改定通知書」は約2週間~3週間ほどで郵送されます。
なお、3号分割手続きに必要な書類は次のとおりです。
必要書類を揃えたうえで、手続きを進めましょう。
ここからは、年金分割手続きにおける注意点を3つ解説します。
後悔しない選択をするために、以下を参考にしてください。
年金分割における手続きの期限は、原則、離婚した日の翌日から2年以内です。
ただし、元配偶者が死亡した場合、死亡から1ヵ月以内に手続きを進める必要があります。
万が一に備えて、離婚後はすみやかに手続きをしておきましょう。
年金分割の対象となるのは、婚姻期間中に支払った厚生年金のみです。
また、分割対象となるのは年金の受給額ではなく、厚生年金の保険料納付記録となります。
老齢厚生年金などの受給額は、当事者ごとの分割後の記録に基づいて計算される点も押さえておきましょう。
年金分割により増額される側の分割後の持分割合である「按分割合(あんぶんわりあい)」の上限は50%です。
按配割合では、以下のルールに基づき、上限を決める必要があります。
最後に、離婚時に年金分割をするときによくある疑問について回答します。
同じ悩みを抱えている方は、ぜひ参考にしてください。
年金の受け取り開始日は、それぞれの年金受給開始日になります。
年金受給が始まっていない場合は、年金分割をしたからといってすぐにお金を受け取れるわけではないので注意しましょう。
支給が始まる条件は以下のとおりです。
万が一、60歳未満で離婚し、それまで扶養に入っていた場合は、59歳11ヵ月までは年金を払う必要があるため、気をつけましょう。
年金分割を受けられるのは、専業主婦だけではありません。
共働きの夫婦でも、夫・妻の両者が年金分割の対象となり、合意分割が可能です。
ただし、共働き期間のうちどちらかがパート勤務などで扶養に入っていた場合は、扶養期間に支払った年金分のみ3号分割が適用されます。
元配偶者が再婚したり死亡したりしたケースにおいても、年金はもらえます。
また、夫や妻がそれぞれ再婚したとしても、年金分割の内容は変わりません。
ただし、死亡においては、死亡していない方へ分割済みの年金納付分が戻ることはないので、注意が必要です。
年金分割で受け取れる金額は、結婚年数によって変わります。
年金分割は、夫が厚生年金に加入していれば、結婚中に社会保険が発生していた期間分を分割します。
ただし、受け取れる金額は最大で保険料納付記録の2分の1なので、頭に入れて置きましょう。
離婚後に年金分割をしなければ、将来的にもらえる年金額が少なくなる可能性があります。
そのため、離婚の際はしっかりと年金分割の手続きをしておくのがおすすめです。
ただし、年金分割は厚生年金や共済年金などが対象であり、そのほかの年金制度は対象ではありません。
手続きの期限も離婚した日の翌日から2年後(原則)と決められているため、将来的に十分な年金を受け取れるように早めに手続きするようにしましょう。
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