離婚不受理届とは?メリット・デメリットや提出方法を解説
- 「離婚届不受理申出を進めるための具体的な手続き方法は?」
- 「夫婦間でゆっくり話し合ってから離婚条件を決めたい」
離婚届を提出するにあたって、上記のような悩みを持っている方もいるでしょう。
離婚をする際には感情的になってしまう方も多く、どちらか一方が勝手に離婚届を提出してしまうケースも少なくありません。
離婚届を勝手に提出されてしまうと、離婚の話し合いなどがスムーズに進まなくなってしまうため、離婚不受理届の提出も検討しましょう。
本記事では、離婚不受理届の手続き方法やメリット・デメリットなどについて解説します。
離婚条件の話し合いなどで悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
離婚不受理届(不受理申出)とは
離婚届不受理申出とは、夫婦間で離婚条件などを合意していないにもかかわらず、勝手に離婚届を提出されてしまうのを防ぐための制度です。
実際に、相手の合意を得ていないにもかかわらず、離婚届の署名欄に無断で署名したり、勝手に提出したりする行為は犯罪になる可能性があります。
しかし、役所の窓口ではそのまま受理されてしまうこともあり、受理された場合は離婚を取り消すために家庭裁判所での手続きが必要になります。
離婚届不受理申出をおこなえば不正行為を未然に防ぐことができ、不本意な形での離婚を阻止できます。
離婚不受理届を提出したほうがよいケース
離婚不受理届は、相手が離婚届を勝手に提出してしまう危険がありそうなときに提出するのが効果的です。
たとえば、以下のような場合が挙げられます。
- 相手が離婚を急かしてくる
- 夫婦で話し合っていないのに、相手が一方的に離婚を進めようとしている
- 合意を得たうえで離婚届に署名したが、気持ちが変わってしまった など
不本意な形で離婚してしまうと、調停や裁判などにも発展する可能性があります。
特に配偶者が感情的になっている場合や「今すぐにでも離婚したい」というようなことを言っている場合などは、早急に提出の準備を進めましょう。
離婚不受理届を提出する2つのデメリット
離婚不受理届には、メリットだけではなく以下のようなデメリットも存在します。
- 役所の窓口に行く必要がある
- 提出したことが知られると揉める可能性がある
離婚届不受理申出を進める際は、メリット・デメリットを踏まえて慎重に検討しましょう。
1.役所の窓口に行く必要がある
原則として、離婚不受理届は申出をする本人が役所の窓口にて直接提出する必要があります。
しかし、仕事・家事・育児などで日々忙しい方にとっては、役所に行く時間を確保するのが難しいこともあるでしょう。
もし窓口に行くのが難しい場合、郵送や代理人による提出などの方法が一部の自治体で認められていますが、手続きには一定の時間がかかるため注意が必要です。
2.提出したことが知られると揉める可能性がある
離婚届不受理申出をおこなうと、相手が離婚届を提出したときに受理されず、結果として離婚不受理届を提出したことが知られてしまうかもしれません。
離婚不受理届を提出した場合、相手に対して直接的な通知はおこなわれませんが、相手に知られると離婚の話し合いの際に揉める可能性もあるでしょう。
離婚不受理届を提出する4つのメリット
離婚不受理届を提出する主なメリットは、以下のとおりです。
- 勝手に離婚届を提出されても受理されずに済む
- 離婚条件の話し合いで妥協しなくて済む
- 知らないうちに親権が取られずに済む
- 手続きが簡単で費用がかからない
ここでは、具体的なメリットについて詳しく解説します。
1.勝手に離婚届を提出されても受理されずに済む
離婚不受理届を提出する大きなメリットのひとつは、配偶者が勝手に離婚届を提出したとしても受理されないという点です。
法律上、一方的に離婚届を提出されても離婚は認められませんが、もし役所で受理されてしまうと戸籍が変わってしまいます。
訂正するには家庭裁判所の手続きが必要になるため、不安であれば早めに離婚不受理届を提出しましょう。
2.離婚条件の話し合いで妥協しなくて済む
離婚の話し合いでは、親権・慰謝料・財産分与などのさまざまな離婚条件について協議する必要があります。
離婚協議中に離婚不受理届を提出しておけば、勝手に離婚届を提出されて受理されるリスクがなくなります。
離婚条件について妥協せずに落ち着いて話し合いを進められるため、自分の立場をしっかりと主張できるでしょう。
3.知らないうちに親権が取られずに済む
未成年の子どものいる夫婦が離婚する際は、子どもの親権者を決定する必要があります。
離婚自体には合意していても親権を争っているときには、親権者を勝手に記載した離婚届を提出されたりするような事態を防ぐためにも、離婚不受理届を提出しておくのが有効です。
なお、離婚届を提出して形式的に離婚が成立した場合、当事者同士の話し合いだけでは親権者を変更できません。
家庭裁判所にて親権者変更の調停などを申し立てることが必要となります。
4.手続きが簡単で費用がかからない
離婚届不受理申出は、大きなコストをかけずにおこなえる簡単な手続きです。
ただ書類を準備して役所の窓口で提出するだけで済むため、勝手に離婚届が提出される不安があるなら積極的に利用することをおすすめします。
離婚不受理届の提出方法
離婚届不受理申出をおこなうための手続きはシンプルです。
ここでは、基本的な手続きの流れについて解説します。
1.必要書類を準備する
離婚届不受理申出をおこなう際に必要なものは、以下のとおりです。
- 記入済みの離婚届不受理申出書
- 運転免許証・パスポート・マイナンバーカードなどの本人確認書類
- 印鑑 など
離婚届不受理申出をおこなう際は「離婚届不受理申出書」が必要です。
申出書は役所のホームページからダウンロードできます。
本人確認ができる書類や印鑑も必要になるので、あわせて用意しておきましょう。
離婚不受理届の書き方・サンプル
離婚届不受理申出書のフォーマットは以下のとおりです。
引用元:不受理申出|札幌市
近くの役所窓口や役所のホームページからダウンロードし、離婚届不受理申出書を入手しましょう。
主な記入項目は以下のとおりです。
- 申出人の氏名・住所・生年月日・本籍地
- 配偶者の氏名・住所・生年月日・本籍地
- 申出理由(任意で詳しく記入できますが、簡潔にしても問題ありません) など
申出人の署名と捺印も必要となるため、実印を必ず準備しておきましょう。
2.市区町村役場に提出する
必要書類が用意できたら、市区町村役場に提出しましょう。
離婚届不受理申出書は本籍地以外の市区町村役場でも提出できますが、その場合は本籍地の市区町村役所へ原本が送付されるため手続きに時間がかかる可能性があります。
なお、基本的には窓口にて直接おこなう必要がありますが、病気などのやむを得ない事情で窓口に行けない場合は郵送や代理人による提出が認められることもあります。
もしやむを得ない理由で郵送または代理人が申請する際は、離婚届不受理申出をおこなうことを記載した公正証書などが必要になります。
離婚不受理届の有効期限
離婚届不受理申出には有効期限はありません。
かつては6ヵ月の有効期限が設定されていましたが、2008年に戸籍法が改正されたことで現在では無期限となっています。
一度申出をおこなえば、取り下げないかぎり離婚届が勝手に提出されて受理されるのを防止できます。
離婚不受理届の取り下げ方法
離婚届不受理申出については、効力が不要であれば取り下げることも可能です。
もし取り下げたい場合は、申出時と同様に所定の用紙に必要事項を記載して署名押印を済ませたあと、本人確認書類を役所に持参しましょう。
なお、申出をおこなった本人が離婚届を提出する場合は、撤回の手続きは不要です。
離婚不受理届よりも先に離婚届が出された場合の対処法
離婚届不受理申出の手続きが間に合わずに離婚届が受理されてしまった際の対処法としては、以下の2つが考えられます。
手続きには時間と労力がかかるため、可能な限り早めに対処しましょう。
1.離婚無効確認調停を申し立てる
離婚届が受理されてしまった場合は、離婚無効確認調停を申し立てましょう。
離婚無効確認調停では、家庭裁判所が離婚の無効を判断するための調停手続きがおこなわれます。
調停では、調停委員が間に入って両者の話し合いを促進し、離婚届の受理を取り消すかどうかについて話し合いで解決を図ります。
2.離婚無効確認訴訟を提起する
離婚無効確認調停では合意に至らなかった場合、離婚無効確認訴訟を起こすことになります。
裁判にて離婚が有効か無効かを両者が争い、最終的には裁判官によって判決が下されます。
なお、判決前に和解案が提案されるケースもあります。
判決が確定したあとは、1ヵ月以内に役所で戸籍の訂正手続きをおこないましょう。
離婚不受理届に関するよくある質問6選
ここでは、離婚不受理届に関するよくある質問について解説します。
1.離婚不受理届を提出すると相手にバレる?
離婚届不受理申出をしても、基本的に役所は通知しないため自動的に相手にバレるようなことはありません。
ただし、相手が離婚届を提出しようとしたときには不受理となるため、提出時には知られることになります。
なお、離婚届不受理申出をしている状態で離婚届が提出されると、申出をした人には役所から「離婚届の提出があったが不受理にした」という旨の通知が届きます。
2.離婚不受理届を提出しなくても離婚届が受理されないケースはある?
たとえ離婚届不受理申出をしていなかったとしても、以下のようなケースにおいては離婚届は受理されません。
- 子どもの親権が決まっていない
- 証人欄の署名押印がない
- そのほかにも離婚届の不備がある など
特に不備などがなければ、離婚届不受理申出をしないかぎり離婚届は受理されます。
3.離婚届を勝手に出しても問題ない?離婚は成立してしまう?
離婚届を勝手に提出すると、以下のような罪に問われる可能性があります。
しかし、離婚届不受理申出をしていないと、勝手に離婚届が提出されても形式上は離婚が成立してしまうこともあります。
4.相手が離婚不受理届を提出しているか確認することは可能?
相手が離婚不受理届を提出しているかどうかを確認する方法はありません。
離婚届を提出しても役所が受理してくれなかったときに、離婚不受理届が提出されていたことが明らかになります。
5.相手が離婚不受理届を提出して離婚できない場合の対処法は?
相手が離婚届不受理申出をおこなっている場合、離婚を成立させるためには相手を説得して離婚不受理届を取り下げるように交渉してみましょう。
もし交渉が難しいときは、離婚無効確認調停・離婚無効確認訴訟の申し立てが有効です。
離婚無効確認調停・離婚無効確認訴訟の結果によっては離婚が成立するケースもあります。
6.離婚不受理届の提出は本籍地以外の役所でも可能?
離婚届不受理申出は、本籍地以外の役所でも手続き可能です。
ただし、提出後には本籍地の市区町村役所へ原本が送付されるため、通常よりも手続きに時間がかかるおそれがあります。
さいごに|離婚不受理届に関する疑問や不安があるなら、弁護士に相談を
離婚届不受理申出に関する疑問・不明点があるときは、離婚問題を得意とする弁護士に相談しましょう。
「どの法律事務所を選べばよいかわからない」とお悩みの方は、当サイト「ベンナビ離婚」がおすすめです。
ベンナビ離婚では、離婚問題が得意な全国の弁護士を掲載しています。
お住まいの地域を選択するだけで対応可能な弁護士をすぐに一括検索でき、適切なアドバイスや解決策を提供してもらえます。
離婚に不安のある方や納得のいかない条件での離婚を避けたい方は、まずは無料相談から始めてみることをおすすめします。
【初回相談0円・クレカ決済可】【女性弁護士・歴10年以上のベテラン弁護士在籍】|慰謝料・財産分与など、離婚条件のお悩みなら|≪雑誌ananにて紹介されました!≫|※夜間・早朝のご相談は、原則営業時間内にご返信します※
事務所詳細を見る
【LINE無料相談がお勧め】◆早く離婚したい◆慰謝料を減額したい◆不倫の責任をとらせたい◆家族や会社に知られたくない◆早く解決して日常に戻りたい
事務所詳細を見る
◆辛い胸の内をまずお聞かせください◆デリケートな問題だからこそあなたの心に寄り添い、新たな一歩を力強くサポートします!お子様の将来やお金の不安をなくすため<離婚後も徹底サポート>をお約束します◎
事務所詳細を見る当サイトでは、有料登録弁護士を優先的に表示しています。また、以下の条件も加味して並び順を決定しています。
・検索時に指定された都道府県に所在するかや事件対応を行っている事務所かどうか
・当サイト経由の問合せ量の多寡
離婚調停に関する新着コラム
-
離婚では、親権や養育費、財産分与など話し合うべきことが多岐にわたりますが、当事者同士の話し合いだけで解決が難しいケースも少なくありません。そんな時に役立つのが調...
-
離婚調停は、夫婦の話し合いだけでは離婚できそうにない場合に利用できる手続きです。本記事では、離婚調停を実際におこなった方の体験談をまとめています。手続き方法や進...
-
離婚調停の答弁書には、自分の意思や期日に出席できるかどうかを記入します。本記事では、離婚調停における答弁書を書くときのポイントや注意点を解説します。急に裁判所か...
-
パートナーが離婚に合意してくれなくて悩んでいませんか。本記事では、裁判離婚のメリット・デメリットや具体的な流れ、注意点について解説します。裁判離婚に発展した場合...
-
離婚届を勝手に提出されたら、離婚協議が円滑に進まなくなるでしょう。このような状況を避けるための制度が離婚不受理届(不受理申出)です。本記事では、離婚不受理届の手...
-
離婚調停は、どれくらいの期間がかかるのかが気になりませんか。本記事では、離婚調停の平均期間や長引きやすいケース、離婚調停が長期間になるメリット・デメリットを解説...
-
本記事では、離婚にかかる弁護士費用の相場や費用を安く抑える方法について解説します。離婚問題を解決したいけど費用面への負担が心配でなかなか弁護士に依頼できない方も...
-
離婚調停では弁護士をつけるケースが多いものの、「弁護士に依頼すると費用がかかるので、自分でやりたい」と考えている方もいるかもしれません。本記事では、弁護士なしで...
-
面会交流は非監護親と子どもの権利ではありますが、状況によっては実施しない方がいいケースもあります。この記事では、面会交流をしない方がいいケースや拒否したい場合の...
-
離婚調停における服装の決まりはありませんが、調停委員の印象を悪くしないためにも十分注意を払う必要があります。本記事では、離婚調停に適した服装を解説しているので参...
離婚調停に関する人気コラム
-
あなたの離婚希望に対して、配偶者が離婚したくないと言っている場合、どのような対策をとれば相手が離婚に納得してくれるのかを解説してきます。
-
離婚調停はどういった流れで進んでいくのか、申し立て方法やかかる期間などを時系列ごとにご紹介!調停期日当日に何を話すのかなど、できるだけ1回の話し合いで有利に調停...
-
離婚調停を開く際にかかる費用を解説します。弁護士に依頼する場合と自分で開く場合とでは費用が大きく違います。それぞれの費用の内訳をくわしく解説します。また、離婚調...
-
離婚調停では、話し合いを円滑に進めるために陳述書を書く場合があります。離婚調停の時間は有限ですので、事前に陳述書を提出しておくことで時間の短縮をはかれるというメ...
-
離婚した時の親権は母親有利だと思っていませんか?たしかに母親有利ですが、父親が絶対に親権を取れない訳ではありません。当記事では、離婚調停をした時の親権争いのポイ...
-
離婚調停は弁護士に依頼することで有利に進めることができます。しかし本当に依頼は必要か、高額な費用がかかるのではとお悩みの方のために、離婚調停を弁護士に依頼するメ...
-
配偶者と別居することになり「生活費をやりくりできるか不安」という方も多いかもしれませんが、別居中であっても「婚姻費用」として生活費を請求することが可能です。この...
-
離婚調停は、夫婦間の話し合いで離婚の合意ができない場合や、話し合いすら成立しない場合に利用されます。この記事では離婚調停の流れや進め方、費用、有利に進めるための...
-
調停離婚の成立後にも、離婚の手続きがあります。やっと調停が成立して離婚できたとしても、まだ気は抜けません。この記事では、調停離婚成立後にすべき手続き4つと、その...
-
調停調書と公正証書の違いを知っておくことで、離婚後に金銭の支払いが滞った・子供に会わせてもらえないなどのトラブルの抑制効果を期待できます、トラブル発生時にスムー...
離婚調停の関連コラム
-
別居中に離婚話を進めることは可能ですが、注意点もあります。別居中に離婚話を進めるための対処法を説明し、別居中の離婚話を進めるうえで準備すべきこと、注意すべきこと...
-
協議離婚と調停離婚の大きな違いは、当事者同士で話し合うか、間に第三者が入るかということです。それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらを選ぶべきかは状況により...
-
離婚調停を開く際にかかる費用を解説します。弁護士に依頼する場合と自分で開く場合とでは費用が大きく違います。それぞれの費用の内訳をくわしく解説します。また、離婚調...
-
本記事では、離婚にかかる弁護士費用の相場や費用を安く抑える方法について解説します。離婚問題を解決したいけど費用面への負担が心配でなかなか弁護士に依頼できない方も...
-
調停は勝ち負けの争いではないため、「離婚調停で勝つには」などと考える必要はありませんが、調停委員へ何を話すかで結果は変わるでしょう。 本記事では、離婚調停で聞...
-
離婚調停の答弁書には、自分の意思や期日に出席できるかどうかを記入します。本記事では、離婚調停における答弁書を書くときのポイントや注意点を解説します。急に裁判所か...
-
離婚調停はどういった流れで進んでいくのか、申し立て方法やかかる期間などを時系列ごとにご紹介!調停期日当日に何を話すのかなど、できるだけ1回の話し合いで有利に調停...
-
離婚調停で何を聞かれるのかわからないと困っている方は多いかもしれません。 本記事では、離婚調停で聞かれること、離婚調停で準備すべきこと、離婚調停で注意すべきこ...
-
本記事では、家庭裁判所に離婚の相談をすることができるかや、家庭裁判所を利用して離婚をする場合の手続きの流れなどを説明し、家庭裁判所を利用して離婚をする場合に弁護...
-
離婚届を勝手に提出されたら、離婚協議が円滑に進まなくなるでしょう。このような状況を避けるための制度が離婚不受理届(不受理申出)です。本記事では、離婚不受理届の手...
-
離婚調停前や離婚調停中の別居は不利になるのでしょうか?本記事では、離婚調停前~離婚調停中の別居について解説します。注意点も解説しますので、離婚をスムーズに進める...
-
離婚調停は弁護士に依頼することで有利に進めることができます。しかし本当に依頼は必要か、高額な費用がかかるのではとお悩みの方のために、離婚調停を弁護士に依頼するメ...
離婚調停コラム一覧へ戻る





