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婚姻費用とは?内訳と相場から計算方法・請求手順まで徹底解説

婚姻費用とは?内訳と相場から計算方法・請求手順まで徹底解説

別居中の生活費をどのように確保すればいいか、不安を感じている方は少なくありません。

婚姻費用は、夫婦関係が続く限り相手に請求できる費用です。

しかし、金額の計算方法や請求の手順がわからず、時間だけが過ぎてしまうケースもあるでしょう。

婚姻費用の支払いの始期は請求時とされているため、初動が遅れると、受け取れる総額が少なくなります

本記事では、婚姻費用の内訳や相場、計算方法・請求手順を解説します。

算定表だけでは対応できないケースや、未払い時の回収方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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目次

婚姻費用とは

婚姻費用とは、婚姻した夫婦と子が通常の社会生活を維持するために必要な費用です。

夫婦は、互いに婚姻費用を分担する義務があります。

別居していても、法律的に婚姻関係が続いている限り、分担義務は免れないのが原則です。

夫婦の一方が義務を果たさない場合、他方は、婚姻費用の分担を請求できます。

実務では、裁判所が公表している婚姻費用算定表を用いて、婚姻費用の金額を算定するのが一般的です。

ただし、算定表は、迅速かつ簡単に婚姻費用を算定するために、法律や統計資料の標準的な値をもとに作成されています。

そのため、個々の事情によっては、算定表の金額を実際の分担額とするのが不公平になることもあります。

まずは、婚姻費用算定表に含まれる費用・含まれない費用を理解しましょう。

婚姻費用に含まれるもの|衣食住の費用・教育費・医療費など

婚姻費用算定表では、夫婦が同等の生活水準を保つための生活費全般と、子の養育費が考慮されています。

具体的には、以下の費用が含まれます。

費目 詳細
夫婦の衣食住の費用 食費・住居費・水道光熱費・被服費など
子の監護にかかる費用 未成熟の子の養育費
子の教育費 平均的な公立学校の学校教育費(学校納付金・図書代・学用品代・通学関係費・修学旅行・遠足・見学費など)
医療費 通常の生活を送る中で生じる標準的な医療費
葬祭費 冠婚葬祭費
交際費・娯楽費 一般的に必要とされる範囲内での外食費、レジャー費、夫婦各自の小遣いなど

算定表は、統計上の平均値をベースに作成されているため、一時的な大きな支出や障がいなどの特別な事情による支出は考慮されていません。

婚姻費用に含まれないもの|私学・大学の教育費・習い事の費用など

婚姻費用算定表で考慮されていない費目の例は、以下のとおりです。

  • 私立学校・専門学校・大学などの学校教育費
  • 塾や習い事の費用
  • 予期せぬ病気や怪我、障がいなどのための医療費

算定表には、生活維持に直接関係しない支出や、臨時的な支出は含まれていません

婚姻費用と養育費の違い

婚姻費用と養育費は、支払い期間と対象範囲が異なります

  支払い期間 対象範囲
婚姻費用 請求時から離婚成立または同居再開まで 配偶者の生活費+子どもの生活費・教育費
養育費 離婚後から子が経済的に自立するまで 子の生活費・教育費

婚姻費用は、離婚成立までの配偶者の生活費と子の監護教育費を含む費用です。

養育費は、離婚後に子のためだけに支払われる費用です。

婚姻費用はいくらもらえる?3つの算定方法

婚姻費用の金額は、夫婦双方の収入・子の人数と年齢をもとに算定します。

大まかな目安は、裁判所公表の算定表で確認できます。

より詳細な金額を知りたい場合は、標準算定方式の計算式でも算出可能です。

「ベンナビ離婚」の自動計算ツールを活用すれば、手軽にシミュレーションもできます。

①婚姻費用算定表で目安額を確認する

裁判所が公表している婚姻費用算定表を使えば、義務者・権利者それぞれの年収と子の状況から月額の目安を確認できます。

婚姻費用に関する表は表10〜19です。

子の人数・年齢によって参照する表が異なるため、各家庭の状況に合った表を選びます。

裁判所|養育費・婚姻費用算定表

引用元:裁判所|養育費・婚姻費用算定表

たとえば、0~14歳の子が一人いる場合は、表11を参照します。

縦軸が義務者(支払う側)の年収、横軸が権利者(支払いを受ける側)の年収です。

両者が交差するマスに記載された金額を確認しましょう。

裁判所|養育費・婚姻費用算定表

引用元:裁判所|養育費・婚姻費用算定表
※ただし、マーカーおよび金額の枠線はアシロ編集部にて加工

夫婦双方が給与所得者で、義務者の年収が600万円、権利者の年収が100万円の場合、婚姻費用の目安は、月額10万円〜12万円です。

年収の数値は給与所得者と自営業者で異なります。

給与所得者は税金や社会保険料を控除する前の総支給額、自営業者は確定申告の申告所得を用いるのが原則です。

②標準算定方式で1円単位で計算する

1円単位で正確に計算したい場合は、家庭裁判所の実務で用いられる標準算定方式を使います。

子の数が多い場合や、年収が高い場合も標準算定方式による計算式で、婚姻費用の計算が可能です。

標準算定方式では、以下の手順で分担すべき婚姻費用を算定します。

Step1:権利者と義務者の基礎収入を算出する

まず、義務者と権利者の基礎収入を算出します。

基礎収入を求める計算式は、以下のとおりです。

義務者の基礎収入(X)= 総収入(年収)× 基礎収入割合
権利者の基礎収入(Y)= 総収入(年収)× 基礎収入割合

義務者の基礎収入をX、権利者の基礎収入をYとして、それぞれ算出してください。

基礎収入割合は、給与所得者・自営業者の別と年収水準によって異なります。

以下の表で確認しましょう。

基礎収入割合

Step2:生活費指数に基づき権利者と同居の子の生活費を算出する

次に、生活費指数に基づき、権利者と同居の子の生活費を算出します。

計算式は、以下のとおりです。

権利者と同居の子の生活費(Z)= ( X+Y )× 権利者側の指数合計 ÷ 全体の指数合計

生活費指数は以下のとおりです。

区分 生活費指数
権利者・義務者 100
14歳以下の子 62
15歳以上の子 85

たとえば、14歳以下の子が一人いる場合、権利者側の指数合計は100+62=162、全体の指数合計は100+100+62=262になります。

Step3:義務者が負担すべき婚姻費用の年額を算出する

Step1・2で求めたZ・Yを、以下の計算式に当てはめます。

義務者が負担すべき婚姻費用年額(M)= Z -Y

ZからYを引いた値が、義務者の支払うべき婚姻費用の年額(M)です。

Mを12で割ると月額が算出できます。

家賃と住宅ローンの二重負担や私立学校の学費など、特別に考慮すべき事情に基づく費用(A)がある場合は、以下の計算式で加減します。

義務者が負担すべき婚姻費用年額(M)= Z -Y ± A

義務者がすでに支払っている場合は控除し、別途支払うべき場合は加算する仕組みです。

③自動計算ツールでシミュレーション計算する

「ベンナビ離婚」が提供する婚姻費用の自動計算機では、年収・子の情報を入力するだけで目安額を確認できます。

算定表を自分で読み解く手間なく、目安を把握したい方に便利なツールです。

ただし、シミュレーション結果はあくまで目安です。

個別の事情により、実際の金額は増減する可能性があります。

【補足】実際の婚姻費用分担額は10万円超〜15万円以下が最多

夫を義務者・妻を権利者の婚姻費用の月額

令和6年度の令和6年 司法統計年報によると、夫を義務者・妻を権利者の婚姻費用の月額は、10万円超〜15万円以下が全体の約20.7%で最多です。

次いで6万円超〜8万円以下が約14.5%、8万円超〜10万円以下が約14.1%と続きます。

6万円超〜15万円以下の範囲に全体の約半数が集中しており、実質的な相場の中心といえるでしょう。

婚姻費用の支払い期間はいつからいつまで?

婚姻費用の支払いの始期は、実務上は請求時とされています。

終期は離婚または別居解消時です。

婚姻費用分担の始期|請求時

婚姻費用の支払いの始期は、実務上、請求時とされています。

請求時以前まで遡って婚姻費用の分担を認めると、義務者が負担する額が多額に及び、公平を欠くおそれがあるためです。

請求時とは、婚姻費用分担請求の意思を明確に示した時です。

具体的には、以下の時点が想定されます。

  • 内容証明郵便などで婚姻費用分担請求の意思を示した時
  • 婚姻費用分担調停または審判の申立時
  • 当事者間で婚姻費用の支払いについて合意書を交わした時

何らかの形式で婚姻費用分担請求の意思表示をしたことがわかれば、その時点で請求があったものとして扱われるのが一般的です。

婚姻費用分担の終期|離婚時または別居解消時

婚姻費用の支払いの終期は、以下のいずれかの時点です。

  • 離婚が成立した時
  • 同居を再開した時
  • 別居解消後も家庭内別居となる場合は、生計を一にした時

月の途中で離婚が成立した場合、当該月の婚姻費用は離婚が成立した日までの日数で日割り計算をします。

婚姻費用の支払い(分担)方法

婚姻費用は、毎月払いが原則です。

ただし、事前の合意がある場合は、離婚時・離婚後に清算するケースもあります。

毎月払いが基本

婚姻費用は、毎月払いが原則です。

生活費として毎月必要になるものであり、支払いの終期が不確定である点からも、一括払いにはなじみません。

実務上は、当月分を当月払いとするのが一般的です。

離婚時・離婚後の清算は事前の合意が必要

別居時に契約書や公正証書などで、具体的な婚姻費用の分担の合意がなされていた場合は、未払い分の一括清算が可能です。

事前の合意がない場合は、別居時に遡って過去の婚姻費用を請求するのは認められないのが原則です。

婚姻費用算定表はおかしい?算定表だけでは適正額を出せないケース

裁判所が公表している婚姻費用算定表は、あくまで標準的なケースを前提とした目安です。

家庭の個別事情によっては、算定表の金額を用いるのが公平とはいえない場合があります。

本章では、婚姻費用の算定の際に考慮される事情を紹介します。

子どもが私立学校に通学している

子どもが私立学校に通学しているケースでは、算定表の金額をそのまま適用するのが適切でない場合があります。

婚姻費用算定表は、公立学校の教育費を前提に作成されているためです。

以下のいずれかの場合には、私立学校の教育費を婚姻費用に加算する必要があります。

  • 義務者が私立学校の進学を承諾している場合
  • 義務者の学歴や収入・資産状況などから、義務者に負担させるのが相当と認められる場合

加算額の計算には、私立学校の教育費から平均的学校教育費を控除した残額を、当事者双方の基礎収入に応じて按分負担する方法を用いるのが一般的です。

平均的学校教育費は、子どもの年齢により、以下のとおり異なります。

子どもの年齢 平均的学校教育費
0~14歳まで 13万1,379円
15歳以上 25万9,432円

加算を求める場合は、学費や授業料の明細のほか、義務者が私立学校への進学に同意していたことがわかる資料を提示しましょう。

子どもが大学に進学している

子どもが大学に進学しているケースでは、算定表の金額をそのまま適用すると、公平を欠く場合があります。

婚姻費用算定表は公立高校までの教育費を前提としており、大学の学費は含まれていないためです。

以下のいずれかの場合には、大学の学費を婚姻費用に加算する必要があります。

  • 義務者が大学進学を承諾している場合
  • 義務者の学歴や収入・資産状況などから、大学進学費用を負担させるのが相当と認められる場合

加算額の計算方法は、私立学校のケースと同様です。

大学の教育費から平均的学校教育費(15歳以上:25万9,432円)を控除した残額を、双方の基礎収入に応じて按分します。

なお、子どもが奨学金を受給している場合やアルバイト収入がある場合は、義務者への加算が減額・否定されるケースもあります。

支払う側が住宅ローンと家賃を二重払いしている

義務者が、権利者が住む家の住宅ローンと自分自身の家賃を負担しているケースも、算定表だけでは適正な金額を出せない場合があります。

算定表では、権利者の住居費は特別経費として考慮済みであるためです。

義務者が、権利者の住む家の住宅ローンを支払っている場合、権利者は住居費の支払いを免れていることになります。

住宅ローンの支払いには資産形成の側面がある一方、住宅ローンの支払いを考慮しなければ、義務者に二重の負担を強いる結果となります。

ただし、住宅ローンには資産形成の側面もあるため、ローン全額が控除されるわけではありません。

実務上は、算定表の婚姻費用月額から、権利者が負担すべき標準的な住居関係費を差し引く方法が用いられます。

権利者の年収に応じた住居関係費は、以下のとおりです。

権利者の年収 住居関係費(月額)
200万円未満 2万2,247円
250万円未満 2万6,630円
300万円未満 3万5,586円
350万円未満 3万4,812円
400万円未満 3万7,455円
450万円未満 4万5,284円
500万円未満 4万6,562円
550万円未満 4万6,659円
600万円未満 5万0,890円
650万円未満 5万5,167円
700万円未満 5万8,376円
750万円未満 6万3,085円
800万円未満 6万4,056円
900万円未満 6万4,469円
1,000万円未満 6万8,332円
1,250万円未満 7万8,065円
1,500万円未満 7万8,903円
1,500万円以上 9万1,554円

別居の原因が請求者側にある

権利者の不貞行為やDVが原因で別居に至った場合、婚姻費用が減額される可能性があります。

自ら婚姻破綻の原因を作って別居を開始しておきながら、他方に婚姻費用の分担を求めるのは、信義に反するためです。

ただし、有責配偶者からの婚姻費用の請求は、一律に否定されるわけではありません。

日々の生活に関わる婚姻費用の支払いは迅速になされるべきであり、破綻原因の判断は離婚訴訟などでおこなわれるべきだからです。

婚姻費用分担の審判では、権利者側に有責行為があることが明白で、同行為が破綻原因であることが明らかな場合に、申立てを却下します。

子どもがいる場合は、権利者自身の生活費部分はゼロとされ、子どもの養育費相当額のみが認められることもあります。

請求者側が働けるのに働かない

権利者が働ける状況なのに働かない場合は、算定表の金額をそのまま適用するのが適切でない場合があります。

権利者が無収入または低所得である状態に合理的な理由がない場合、現実の収入を基礎にするのは公平ではないためです。

合理的な理由がない場合は、賃金センサスや従前の収入状況をもとに、潜在的能力に応じた収入を算定の基礎とします。

たとえば子育て中の専業主婦でも、自身が健康で、子どもも就学していれば、短時間労働が可能なケースもあるでしょう。

資格や過去の勤務経験・退職からの経過年数などによっては、早期に復職が可能な場合もあります。

ただし、裁判例では、最年少の子が3歳になるまでは無収入でもやむを得ないと判断されるケースが多いです。

婚姻費用のスムーズな支払いを実現するためのポイント

婚姻費用のスムーズな支払いを受けるには、別居前に支払いの合意を取り付けるのが望ましいです。

相手が支払いを滞らせる可能性がある場合は、公正証書の作成や裁判所の手続きの利用を検討してください。

弁護士に依頼すれば、請求段階から支払いが滞ったときの対応まで、一貫して任せられます。

別居前に金額と支払い方法の合意を得る

別居前に夫婦で話し合い、婚姻費用の支払いについて、合意を得ておくのが望ましいです。

あらかじめ合意しておけば、別居後にスムーズに支払いを受けられます。

別居後の生活費の見通しも立てやすくなるでしょう。

取り決めるべき事項および書面への記載例は、以下のとおりです。

取り決めるべき事項 書面への記載例
婚姻費用の月額 「婚姻費用として、月額〇万円を支払う」など
支払い期日 「当月分を毎月〇日限り支払う」など
支払い方法 「振込送金の方法により支払う」「振込手数料は〇〇の負担とする」など
支払い期間 「別居開始日の属する月から離婚成立日または同居再開日の属する月まで」など

書面による事前の合意があれば、不払いが生じた場合も、別居開始時に遡って未払い分を請求できる可能性もあります。

合意内容を公正証書化する

婚姻費用の支払いに関する合意内容は、強制執行認諾文言付き公正証書にするのがおすすめです。

強制執行認諾文言を盛り込んでいれば、支払いが滞った場合も、裁判手続を経ずに強制執行が可能です。

公正証書は、最寄りの公証役場で作成できます。

必要書類は、以下のとおりです。

  1. 夫婦間で合意した内容をまとめたメモ
  2. 夫婦双方の身分証明書(運転免許証・マイナンバーカード・住民票など)
  3. 戸籍謄本(家族全員の記載のあるもの)
  4. 認印または実印(実印の場合は、印鑑登録証明書も必要)

その他、追加書類の提出を指示される場合もあります。

公正証書作成の相談や事前打ち合わせは、夫婦の一方でも可能です。

公正証書作成当日は、原則として夫婦双方の出頭が必要です。

婚姻費用分担調停・審判を申し立てる

話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の婚姻費用分担調停・審判手続を利用するのも有効です。

調停では、双方が合意に至れば、調停が成立します。

調停が不成立の場合は自動的に審判へ移行し、裁判官が婚姻費用の金額を決定します。

調停調書や審判書は裁判の判決と同じ法的効力をもつため、支払いが滞った場合に直ちに強制執行に移れるのも利点です。

緊急性が高い場合は仮払い仮処分を活用する

当面の蓄えがなく、生活に困窮するおそれがある場合は、仮払い仮処分の申立てを検討しましょう。

調停成立または審判までの数ヵ月間、生活費の支払いがない状態が続く可能性があります。

手続きには、調停前の仮処分と審判前の保全処分の2種類があります。

調停前の仮処分は、調停申立てから成立までの間に利用できる手続きです。

裁判所が必要と判断した場合、義務者に婚姻費用の仮払いを命じます。

ただし、強制力はありません

命令に従わない場合のペナルティも、10万円以下の過料にとどまります。

審判前の保全処分は、調停申立て後から審判確定前まで利用できる手続きです。

保全命令が認められれば、義務者の財産の仮差し押さえも可能です。

強制力がある分、要件は調停前の仮処分より厳しく、より差し迫った事情が求められます。

弁護士のサポートを受ける

弁護士のサポートを受けるのも有効です。

当事者同士で話し合うと感情的になりやすく、合意に至るまでに時間がかかるケースも少なくありません。

弁護士に依頼すれば、配偶者と直接やりとりする必要がなくなるため、精神的な負担が軽減されるでしょう。

婚姻費用は、収入・子どもの年齢・各家庭の事情によって金額が変わるため、算定や交渉には専門的な知識が求められます。

弁護士に依頼すれば、適正な金額の算定から相手との交渉、調停・審判への対応まで一任できます。

当事者間で合意できた場合は公正証書の作成もサポートしてもらえるため、支払いが滞ったときもスムーズに強制執行に移れるでしょう。

婚姻費用の未払いが発生したときの対処法

取り決めた婚姻費用が支払われない場合は、履行勧告・履行命令・強制執行の手続きをとれます。

各手続きの内容と効果を把握しておきましょう。

履行勧告|家庭裁判所による督促

調停や審判で取り決めた内容を相手が守らない場合、家庭裁判所に履行勧告の申出ができます。

履行勧告とは、家庭裁判所が義務者に対して婚姻費用の支払いを促す手続きです。

履行勧告の申出は、婚姻費用の調停・審判をした家庭裁判所に対しておこないます。

書面・口頭・電話のいずれでも申出可能で、手数料も無料です。

ただし、法的な強制力がないため、相手が勧告に応じなくても、支払いを強制できません。

また、申出の対象は、家庭裁判所の調停・審判で取り決めた事項に限られます。

公正証書など、当事者間の合意で取り決めた婚姻費用の履行は申出の対象外です。

履行命令|期限を定めた支払い命令

調停や審判で取り決めた内容を相手が守らない場合、家庭裁判所に履行命令の申立てができます。

履行命令とは、家庭裁判所が義務者に対して、相当な期間を定めて婚姻費用の支払いを命じる手続きです。

履行命令の申立ては、婚姻費用の調停・審判をした家庭裁判所に対し、書面または口頭でおこないます。

申立手数料として500円分の収入印紙と、数千円分の郵便切手代が必要です。

正当な理由なく履行命令に従わない義務者には、10万円以下の過料に処せられます。

ただし、過料はあくまで制裁であり、権利者に支払われるものではありません

相手方の経済的な事情で不払いが生じている場合、履行命令によってかえって生活をひっ迫させるおそれもあります。

申立ての是非は、状況に応じて慎重に判断しましょう。

強制執行|差し押さえによる強制回収

調停調書・審判書・強制執行認諾文言付き公正証書などの債務名義がある場合は、強制執行の申立てを検討できます。

強制執行とは、裁判所が債務名義にもとづいて債権の内容を強制的に実現する手続きです。

未払いの婚姻費用について、強制執行を申し立てる際は、相手方の給与債権や預貯金債権を差し押さえるのが一般的です。

婚姻費用は特例により、給与の2分の1まで差し押さえが認められています。

また、将来の給与も継続して差し押さえが可能です。

相手方の勤務先や財産が不明な場合は、財産開示手続や第三者情報取得手続の活用により、勤務先や財産を特定できる可能性があります。

婚姻費用に関する不安・悩みは「ベンナビ離婚」で弁護士に相談

婚姻費用についてお悩みなら、「ベンナビ離婚」の活用がおすすめです。

婚姻費用をめぐる問題は、金額の算定から回収まで長期化しやすく、各段階で専門的な知識が必要です。

精神的な負担も大きくなりがちなため、早めに弁護士への相談をおすすめします。

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婚姻費用に関するよくある質問

本章では、婚姻費用に関するよくある質問にQ&A形式で回答します。

Q.婚姻費用を請求できないケースはありますか?

婚姻費用の請求が認められない可能性があるケースは、主に以下の3つです。

  • 離婚が成立した場合または同居を再開した場合
  • 権利者(請求する側)が有責配偶者にあたる場合
  • 収入の多い側が子どもと同居している場合

離婚が成立した日、または同居を再開した日以降は、婚姻費用を請求できません。

ただし、同居後も家庭内別居が続いている場合は、生計を一にするときまで婚姻費用を請求できます。

請求する側が有責配偶者にあたる場合は、信義に反するとして請求が認められない可能性があります。

ただし、子どもを連れて別居している場合は、子どもの養育費相当分は認められるでしょう。

収入が多い側が子どもと同居している場合、収入が少ない側から請求しても、婚姻費用の分担義務が生じないと判断される可能性があります。

Q.同意のない別居でも婚姻費用の支払い義務は生じますか?

相手の同意のない別居でも、婚姻関係が続いている限り、原則として婚姻費用の支払い義務は生じます

ただし、別居の原因が権利者(請求する側)にある場合は、婚姻費用分担請求が認められない、あるいは金額が減額される可能性があります。

婚姻費用の分担義務は婚姻関係から生じるものであるため、一方的な別居であることのみを理由に支払いを拒否するのは難しいです。

一方、不倫など別居の原因を自ら作った側が請求する場合は、有責配偶者にあたるとして請求が制限されるケースもあります。

別居の経緯や有責性の程度によって判断が異なるため、詳しくは弁護士に相談することをおすすめします。

Q.請求者側が実家暮らしの場合、婚姻費用は減額されますか?

権利者が実家に無償で暮らしていても、原則として婚姻費用は減額されません

本来、義務者が果たすべき費用負担分の支援を、権利者の両親がおこなっているに過ぎないためです。

夫婦の婚姻費用分担義務は、生活保持義務と解釈されています。

生活保持義務は、親族の負う生活扶助義務に優先します。

そのため、義務者は、自分より下順位の扶養義務者の資力を理由に、自己の義務を免れることは認められません。

Q.離婚せず、婚姻費用をもらい続けるのは許されますか?

婚姻関係が継続している限り、婚姻費用をもらい続けるのは問題ありません

ただし、別居期間が長引くと、最終的には離婚を受け入れなければならない状況になるでしょう。

別居が長期に及んでいると、婚姻を継続し難い重大な事由として、裁判で離婚が認められるケースがあるためです。

相手に不貞やDVなどの有責行為がない場合は、3〜5年程度の別居期間で離婚が認められる可能性があります。

Q.婚姻費用を調停で取り決めるデメリットは何ですか?

婚姻費用を調停で取り決める主なデメリットは、時間がかかる点と、合意後に金額を変更しにくい点です。

調停は話し合いを前提とした手続きであるため、双方の意見が折り合わなければ、長期化する傾向があります。

また、調停で取り決めた金額の変更(増額・減額)を求めるには、合意時に予測できなかった重大な事情の変更が必要です。

まとめ

婚姻費用とは、婚姻した夫婦と子どもが通常の社会生活を維持するために必要な費用です。

別居していても、婚姻関係が続いている限り、分担義務は免れないのが原則です。

金額は、夫婦の収入と子どもの人数・年齢をもとに算定します。

裁判所公表の算定表で目安を確認でき、より正確な金額は標準算定方式で計算可能です。

ただし、算定表や標準算定方式は標準的なケースを前提としているため、個々の事情によっては、算定表の金額を調整する必要があります。

支払いの始期は請求時であるため、別居後はできるだけ早く意思表示をすることが重要です。

相手との合意内容は公正証書に残しておくと、未払い発生時に強制執行へ移行しやすくなります。

話し合いがまとまらない場合や未払いが続く場合は、「ベンナビ離婚」を活用のうえ、弁護士への相談を検討してください

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本記事はベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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