離婚調停中に注意すべき発言と行動とは?離婚調停を有利に進めるポイントも解説
離婚調停中は、うっかり発してしまった言葉も不利になる発言とされるケースがあるため、一つひとつの言動に注意が必要です。
離婚の原因によっては感情的な言葉を発したくなってしまう場合もあるでしょう。
しかしたった1つの言動や行動で調停委員の心証を悪くしてしまうことがあります。
また、離婚調停が成立してしまうと調停内容を覆せなくなるため、安易に離婚に合意しないように気をつけましょう。
本記事では、離婚調停中にやってはいけない行動や注意すべき発言をご紹介します。
離婚調停中に不利な言動をしないために知っておくべき質問内容や、離婚調停を有利に進めるための5つのポイントも解説するので、ぜひ参考にしてください。
離婚調停中にやってはいけない11のこと

離婚調停中は、これらの行動に注意が必要です。
以下で注意すべき行動を解説していくので、覚えておくようにしましょう。
①離婚調停の無断欠席
調停に出席できない場合、必ず裁判所に連絡して無断欠席は避けてください。
無断欠席をすると、以下のデメリットが生じる可能性があります。
- 5万円以下の過料
- 裁判官・調停委員の心証が悪くなる
- 解決が長引く
- 離婚訴訟において不利な事実とされる可能性がある
離婚調停は平日の日中、1ヵ月~2ヵ月に1回程度おこなわれます。
第一回期日は裁判所が期日を指定するため、どうしても予定をあけられない場合があるかもしれません。
もしどうしても予定をあけられない場合は、必ず裁判所に連絡するなどしておきましょう。
②離婚調停の録音・撮影
離婚調停中は、「民事訴訟規則第77条」で撮影や録音が禁止されています。
第七十七条
民事訴訟に関する手続の期日における写真の撮影、速記、録音、録画又は放 送は、裁判長、受命裁判官又は受託裁判官の許可を得なければすることができない。期日 外における審尋及び法第百七十六条(書面による準備手続の方法等)第三項に基づく協議 についても、同様とする。引用元:民事訴訟規則|写真の撮影等の制限
「家事事件手続規則第126条2項」でも、民事訴訟規則第77条を準用するとあるため、どのような理由があっても、基本的に録音などは認められません。
第百二十六条
2 民事訴訟規則第六十八条から第七十六条まで及び第七十七条前段の規定は、家事調停の 手続の期日及び前項の調書について準用する。
(以下省略)
ただし、メモを取ることは禁止されていないため、備忘録を残しておきたい場合は筆記用具を持ちこんでメモを取りましょう。
③必要な資料の提出不備
必要な資料を提出しなかったり不備があったりする場合は、不利益が生じる可能性があり、相手方の納得が得られずに調停が長引く恐れがあります。
離婚調停に必要な書類は、以下のとおりです。
- 申立書
- 事情説明書
- 子どもの事情説明書(未成年の子どもの場合)
- 連絡先等の届出書
- 進行に関する照会回答書
- 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 年金分割のための情報通知書
上記以外に、養育費が必要な子どもがいる場合は収入がわかる書類、財産分与を希望する場合は夫婦の財産がわかる書類など、状況に応じて資料を提出する必要があります。
調停中に相手方を説得するための資料があれば、積極的に提出していきましょう。
ほとんどの書類はコピーで問題ないため、不備のないように準備してください。
ただし、必要な資料の提出は選択が困難であるため、弁護士などの専門家と相談しながら精査していくとよいでしょう。
④証拠の捏造
自分に有利になるようにと、証拠を捏造することは絶対にしてはいけません。
証拠を捏造すると、裁判官や調停委員の心証が悪くなるだけでなく、「私文書偽造罪」に該当する可能性も否定できないため、かえって不利な結果を招いてしまいます。
「私文書偽造罪」は、事実を証明する文書などを偽造した場合に、3ヵ月以上5年以下の拘禁形に処される、刑法第159条で定められた法律です。
第百五十九条
行使の目的で、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者は、三月以上五年以下の拘禁刑に処する。
一 他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造し、又は偽造した他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造する行為
二 他人の電磁的記録印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する電磁的記録文書等を偽造し、又は偽造した他人の電磁的記録印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する電磁的記録文書等を偽造する行為引用元:e-GOV法令検索|私文書偽造等
証拠の捏造はリスクにしかならないので、絶対におこなわないでください。
⑤面会交流をしない
子どもと同居している親が面会交流に応じない場合は、監護者や親権者を判断する際に不利な事実として扱われる可能性があるのです。
面会交流とは、子どもと暮らしていない親と子どもの交流です。
裁判所は、面会交流は子どもにとって有益で、特別な事情がない限りは面会交流を実施すべきと考えている傾向があります。
ただし、子どもと別居している親が、子どもを虐待していた、子どもが別居している親との交流を強く拒絶している、連れ去りの危険性がある場合等の特別の事情がある場合は、この限りではありません。
面会交流をどの程度実施すれば良いか分からない場合は、弁護士などの専門家に相談するのが良いでしょう。
⑥離婚調停中の不貞行為・交際
離婚調停中の不貞行為・交際は控えましょう。
夫婦が別居して、ある程度の期間が経過した後に不貞行為が始まった場合は、不貞行為が離婚の成否に大きく影響しないケースもあります。
例えば、家庭内別居として離婚調停中も同居を継続しているケースでは、「婚姻関係が破綻している」と認められない可能性が高いです。
不貞行為をしながら離婚を請求した場合、有責配偶者からの離婚請求とみなされ、裁判で離婚が認められなくなる可能性が高くなります。
また、別居直後に不貞行為が始まっていた場合も、別居前から不貞行為があったのではないかと配偶者から疑われてしまい、調停が長引く可能性もあります。
新たな交際相手との関係が表面化すれば、相手側の感情を刺激し、冷静な話し合いが難しくなる恐れもあります。
調停中はあくまで現在の婚姻関係の整理を優先し、不要な火種を作らないよう慎重に行動しましょう。
⑦離婚調停中の当事者同士の接触
離婚調停中は、基本的に当事者同士の接触は避けてください。
相手方が調停を申し立てたり弁護士をつけたりしている場合は、直接やり取りをしたくない意思表示といえます。
無理に当事者間で接触しようとすると、大きなトラブルに発展する可能性が高くなります。
相手の意向を無視した接触は、ストーカー的行為と誤解されるリスクもあり、離婚調停や離婚訴訟で不利な要素になることもあるため、注意が必要です。
連絡を取る必要がある場合は、調停を通じて伝えるか、弁護士を通しておこないましょう。
⑧安易な合意
離婚調停中、安易な合意はしないようにしましょう。
離婚調停は、あくまで話し合いの場のため、当事者同士の合意があれば調停成立となり、離婚が成立します。
調停が成立しても必ずしも裁判になった場合の裁判所が下す判断と同じになるとは限りません。
裁判所の介入があるからと「不利な条件にはならないだろう」と安易に合意してしまう方もいますが、必ずしも公平な内容であるとはいえないため、注意が必要です。
一度合意して調停が成立してしまえば、不利な内容でも覆すことはできません。
なるべく公平な条件で離婚したいと考える場合には、離婚条件を慎重に検討したほうがよいでしょう。
⑨子供を連れ去る
離婚協議中や調停中に、相手の同意を得ずに一方的に子どもを連れて家を出る行為は、親権者として不適格であると判断される可能性があります。
たとえ親であっても、もう一方の親の同意なく子どもを連れ去る行為は、刑法第224条の「未成年者略取および誘拐罪」にあたる可能性があります。
第二百二十四条
未成年者を略取し、又は誘拐した者は、三月以上七年以下の拘禁刑に処する。
しかし、配偶者からのDVや虐待から逃れるために、緊急避難的に子どもを連れて別居せざるを得ない場合もあるでしょう。
別居せざるをえない場合は自己判断で行動せず、まずは警察や配偶者暴力相談支援センター、弁護士などに相談しましょう。
そして身の安全を確保した上で、法的に正しい手続きをふむようにしてください。
⑩相手への嫌がらせ
相手への嫌がらせ行為は、自分の立場を悪化させるだけなので絶対にやめましょう。
嫌がらせ行為は、倫理的に問題があるだけでなく、慰謝料の増額や法に抵触するリスクも伴います。
以下のような嫌がらせ行為はおこなわないでください。
- SNSやブログで相手方の個人情報を出して誹謗中傷する行為
- LINEやメールなどで執拗な連絡をする行為
- 相手方の職場や実家に押しかけたり、待ち伏せする行為
嫌がらせの事実が発覚すれば、調停委員からの心証は最悪になります。
冷静な話し合いができる相手ではないと判断され、自分の主張がどんなに正当なものであっても、信憑性まで疑われてしまうでしょう。
直接的な接触は避け、どうしても感情のコントロールが難しい場合は、弁護士を代理人に立て、冷静な交渉の盾となってもらうことも有効な手段です。
⑪一方的な別居
相手に何も告げずに、あるいは相手方の反対を押し切って、正当な理由なく一方的に家を出て別居する行為は、不利な状況になる可能性があります。
民法第752条では、夫婦の同居は義務であると定められています。
第七百五十二条
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
正当な理由のない一方的な別居は、義務を放棄して夫婦関係を破綻させる行為にあたるとみなされ、民法第770条第1項第2号にある「悪意の遺棄」に該当する可能性があります。
悪意の遺棄に該当すると、有責配偶者とみなされ、自分からの離婚請求が認められにくくなる可能性があるため、注意してください。
ただし、相手からのDVやモラハラ、生活費を渡さないといった正当な理由があって別居した場合は、悪意の遺棄にはあたりません。
現在別居を考えているのであれば、自己判断で家を出ず、弁護士に相談して適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
離婚調停中に注意すべき8つの発言

離婚調停中は、感情的になってしまい不適切な発言をしてしまうケースがあります。
しかし、調停で不利になってしまう可能性があるため、注意しなければいけません。
以下でとくに気を付けるべき発言を解説します。
①調停委員に対する暴言
調停委員に対する暴言を吐かないように注意してください。
当然、ほとんどの方は暴言を吐かないように注意していますが、相手方の発言に対して感情的になってしまい、つい声を荒げてしまうケースもあります。
暴言を吐いてしまえば、調停委員ひいては裁判官の心証も悪くしてしまいます。
相手の発言に反論する場合も、丁寧な言葉で反論するようにしましょう。
納得のいかない内容があっても、冷静かつ理性的な対処をするように心がけてください。
②虚偽の主張
虚偽の主張は、リスクにしかなりません。
よくあるのが「不貞行為をした・していない」などのケースです。
もし虚偽の主張をしてしまった場合、相手方に証拠を提出されてしまえば、主張が虚偽であると発覚してしまいます。
当然、虚偽の主張をしたとなれば交渉や裁判でマイナスに働く可能性が高くなります。
一度でも嘘をついたとみなされれば、本当のことを主張しても信用してもらえなくなる恐れがあるのです。
失った信頼を取り戻すのは非常に困難となるため、真実だけを主張するようにしてください。
③相手に対する悪口
相手に対する悪口は、大きくマイナスになるとはいえませんが、決してプラスにもなりません。
調停委員が聞きたいのは、相手に対する不満や悪口ではなく、事実だからです。
どれだけ相手の悪口を伝えても、具体的な事実がなければ調停委員の判断が変わることはありません。
むしろ「感情的になりやすい」という印象をもたれて、マイナスに働く可能性があります。
冷静に理論立てて自分の主張を伝えることで、調停委員から信頼を得やすくなるでしょう。
④具体的ではない主張
具体的ではない主張は、解決を長引かせてしまったり、相手方の主張のほうが信用できるという印象を持たれる可能性があります。
たとえば、離婚における不貞行為に関する内容の場合に「不貞行為をしている。証拠はないけど、なんとなくしている気がする」程度の内容では、当然信用してもらえません。
また相手方が「なぜ浮気していると誤解させてしまったのか」を調停委員に伝えれば、相手方の主張が信用できると考えられてしまう恐れがあるのです。
主張は、日時や状況、言動などの客観的な情報や証拠をできる限り添えて、自分に有利に働くようにしましょう。
⑤矛盾する発言
矛盾する発言は、調停委員の信用を失う可能性があるため注意してください。
たとえば、離婚理由として「育児を一切してくれない」と主張したとします。
その後に「子どもと遊んでばかりで自分を相手にしてくれない」という発言をすると、矛盾が発生してしまいます。
主張に一貫性を持たせるには、事前に自分が伝えたい内容を整理しておくことが大切です。
矛盾が発生すると、ほかの発言も説得力がなくなってしまう恐れがあるため、一つひとつの発言に気を付けるようにしてください。
⑥離婚の条件にこだわりすぎる発言
離婚の条件にこだわりすぎる発言はなるべく控えるようにしましょう。
離婚調停は、あくまで「話し合い」を通じてお互いの妥協点を探り、合意を目指す手続きです。
自分の希望を伝えることは大切ですが「親権や財産分与などの全ての希望を、100%通してもらわない限り離婚しない」といった発言は、自分の立場を悪くしてしまいます。
条件に固執し続けると、調停委員から協調性がないという印象を持たれる可能性が高いです。
調停に臨む前に、自分からの条件で「絶対に譲れない」「譲歩も検討できる」というような、優先順位をつけておきましょう。
また、自分の希望が法的に妥当なものかどうかを弁護士などの専門家に相談しておくのが良いでしょう。
⑦相手方に直接交渉する発言
相手方に直接交渉を持ちかける発言はやめましょう。
離婚調停は、当事者である夫婦が顔を直接合わせることはありません。
当事者同士が冷静に話し合いを進めるために、別々の待合室で待機し、交互に調停室に入って調停委員と話をする、という仕組みです。
そこで「相手方と直接話をさせてほしい」と要求すると、調停委員は「相手を威圧しようとしている」と判断する可能性があり、心証を悪くしてしまいます。
相手方がDVやモラハラを離婚理由として主張している場合は特に、自分の立場を不利にするでしょう。
直接話したい気持ちを抑え、相手方に伝えたいことを簡潔に調停委員に告げるようにしてください。
⑧ほかに交際相手がいるという発言
離婚の成立前に、新たな交際相手の存在を自ら口にすることは非常にリスクが高いです。
一般的には、婚姻関係が完全に破綻した後に始まった交際であれば、法的な問題となる「不貞行為」にはあたらない、と判断されます。
しかし、>問題は「いつの時点で関係が破綻していたか」という点です。
たとえ別居期間が長く、夫婦関係が破綻していることが明らかだとしても、相手と意見が食い違ってしまうと調停が不利になりかねません。
相手から恋人の件を指摘された場合にのみ、交際が始まった時期と、以前から婚姻関係が破綻していた事実を伝えましょう。
別居を開始した時期がわかるもののような客観的な証拠があると、不利になる可能性を軽減できます。
離婚調停中に不利な言動をしないために知っておくべき質問内容
調停中には不利な言動に注意しなければいけません。
しかし、調停委員からの不意な質問に対して、うっかりと不利な発言をしてしまう場合もあります。
あらかじめ調停委員から聞かれる質問内容があるため予習しておきましょう。
以下の質問は離婚調停において一般的な質問です。
申立人に対しての質問内容例
申立人に対しては、主に以下の質問がおこなわれます。
- 離婚理由
- 離婚を考えるまでの経緯
- 離婚の話し合いをした場合は相手方の反応
- 離婚条件の希望
- 親権について
- 現在の生活状況
- 離婚後の生活設計
とくに離婚理由や経緯については、抽象的な内容にならないように、自分のなかである程度まとめておくとよいです。
相手方に対しての質問内容例
離婚調停を申し立てられた相手が聞かれる質問は、以下のような例があります。
- 調停に対してどのように感じているか
- 離婚についてどのように考えているか
- 離婚を求められている理由について心当たりはあるか
- 離婚の話し合いをした場合は相手方の反応
- 離婚する場合の希望条件
申し立てる側と申し立てられた側では質問内容が異なるので、状況に合わせて回答内容を整理しておきましょう。
離婚調停中に相手の対応に問題がある場合
離婚調停において自分が気を付けるべき言動について解説しましたが、相手方に問題があるケースもあります。
たとえば「相手が調停に来ない」「相手が嫌がらせをしてくる」などのケースです。
離婚問題において、どのようなケースもないとはいい切れないため、相手方の対応に問題がある場合の対応についても理解しておきましょう。
相手が調停に来ない場合は調停不成立
裁判所の呼び出しに応じず、離婚調停に相手が来ない場合(状況にもよりますが、2回程度連続で欠席した場合)は、調停不成立となります。
もし調停不成立になってしまった場合には、離婚訴訟を起こすことになります。
ただし、相手に以下のような法定離婚事由がない場合は、訴訟での離婚は認められていません。
第七百七十条
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。引用元:e-GOV法令検索|裁判上の離婚
法定離婚事由がない場合でも長期間の別居を続ければ、婚姻関係の破綻が認められ、離婚が認められる可能性があります。
婚姻関係の破綻として認められる別居期間は、一般的に3年〜5年程度(有責配偶者からの離婚請求ではない場合)です。
相手が嫌がらせなどをしてくる場合は警察へ相談
離婚調停中に相手から電話やメールで嫌がらせ行為をされた場合は、警察に相談しましょう。
脅すような発言があった場合には脅迫罪、待ち伏せされたりしつこくつきまとわれたりするようであればストーカー規制法の対象になります。
また、調停では、申立人と相手方がそれぞれ個別に調停委員と話をするため、原則として当事者同士で顔を合わせることはありません。
しかし、調停期日に出席する際、裁判所周辺で待ち伏せされるケースも考えられます。
調停へ出席する際に不安がある場合は、家族や知人、弁護士に付き添ってもらうようにしてください。
相手のつきまといや待ち伏せなどの可能性がある場合、裁判所の担当書記官に申入れをすると、当事者同士が接触することがないように配慮してくれることもあります。
相手が財産を処分しようとする場合は審判前の保全処分
離婚調停では、慰謝料や財産分与などの金銭の支払いについても話し合いをおこないます。
なかには金銭の支払いを免れるため、相手方が財産を勝手に処分するケースがあることに注意しなければいけません。
少しでも財産隠しや処分の可能性があると感じるのであれば、離婚調停の申し立てと同時に「審判前の保全処分」をしておきましょう。
審判前の保全処分では、相手の財産を仮差押えできるため、保全処分が認められれば相手が財産を処分することが禁止されます。
ただし、審判前の保全処分を申し立てるには、仮に差し押さえるべき財産を設定しておかなければなりません。
別居している場合は、相手の財産を調査することが難しくなるので、同居しているうちに財産を確認しておきましょう。
離婚調停を有利に進めるための5つのポイント
ここまで、離婚調停で不利になる「やってはいけないこと」を中心に解説してきましたが、調停を少しでも有利に進めるために意識すべきことが気になる方も多いでしょう。
自分の主張を効果的に伝え、納得のいく解決を目指すための5つの具体的なポイントをご紹介します。
①調停委員を味方につける
調停を有利に進めるなら、調停委員に「この人の話は信頼できる」「誠実な対応をする人だ」と思ってもらわなければなりません。
調停委員は中立な立場ですが、最終的な調停案を作成するのは調停委員であり、その判断にはあなたの印象が少なからず影響します。
調停委員を味方につける、というと難しく聞こえるかもしれませんが、特別なことをする必要はありません。
大切なのは、社会人としての基本的なマナーを守り、真摯な姿勢で臨むことです。
清潔感のある落ち着いた服装を心がけ、相手の悪口をいわず、丁寧な言葉遣いを心がけましょう。
また、感情論ではなく冷静に客観的な事実を述べることで、誠実な人だと印象付けられます。
誠実な態度は主張の説得力を高め、調停委員は状況をより深く理解しようと努めてくれるでしょう。
②調停で聞かれることに答えられるようにしておく
離婚調停は、限られた時間の中で効率的に話し合いを進める必要があります。
思いつくままに話すのではなく、事前に聞かれそうなことを想定し、自分の考えを整理しておきましょう。
調停では、主に以下のような事項について質問されます。
- 離婚したい理由・離婚したくない理由
- これまでの夫婦関係の経緯
- 養育費はいくらを希望するか、その算定根拠
- 慰謝料を請求するか、その理由と希望額
質問に対して、自分がどうしたいのか、なぜそう思うのかを具体的に説明できるようにしておきましょう。
金銭や子どもの将来に関わる重要な条件については、自分の希望だけでなく、その希望が法的に見て妥当なのか、相場はどのくらいなのかを事前に調べておくと、より説得力のある主張ができます。
考えをまとめたメモを作成し、調停当日に持参するのも有効です。
③具体的なエピソードや客観的な証拠を提示する
調停委員に自分の主張を理解してもらうためには、主張を裏付ける根拠をセットで示すことが大切です。
例えば「相手の浪費がひどかった」という主張だけでは、ただの不満と受け取られかねません。
お金を何に使っていたのか、相手の浪費によりどんな苦労をしたのか、注意しても改善が見られず罵倒されていた、などの具体的なエピソードを交えて説明しましょう。
このように話すことで、調停委員は夫婦の状況をリアルにイメージできます。
さらに、その主張が事実であることを示す客観的な証拠を提示できれば、信憑性は格段に高まります。
④陳述書を提出する
離婚調停の場で、限られた時間内に全ての事実や主張を伝えるのは、簡単なことではありませんが「陳述書」の提出で解決できます。
陳述書とは、離婚に至るまでの経緯や自分の主張、離婚条件についての希望などを時系列に沿ってまとめた書面のことです。
法律で陳述書の提出が義務付けられているわけではありませんが、事前に提出すると離婚調停をスムーズに進められます。
調停委員に事情を理解してもらいやすくもなるため、口頭での説明が苦手な方でも、自分の主張を正確に把握してもらえるでしょう。
陳述書に決まった書式はありませんが、A4用紙にパソコンで作成するのが一般的です。
何を記載すべきか悩む場合は、弁護士に相談しましょう。
有効な主張がどれかをアドバイスをもらえるため、話し合いを有利に進めるための強力なツールとなります。
⑤弁護士に依頼する
離婚調停は法律の専門家である弁護士に依頼するのをおすすめします。
離婚調停は、自分で進めることも可能ですが、全て一人で完璧にこなすのは、精神的にも時間的にも大きな負担がかかります。
弁護士に依頼すると、以下のようなメリットが得られます。
- 法的に的確な主張ができる
- 有利な証拠の収集をサポートしてくれる
- 相手方との交渉を全て任せられる
- 書類作成を代行してくれる
- 不利な条件で合意してしまうリスクを軽減できる
弁護士は、利益を最大化するために尽力してくれます。
一人で抱え込まず専門家の力を借りることが、納得のいく解決への一番の近道といえるでしょう。
離婚調停中に弁護士がおこなえる5つのサポート
離婚調停は、弁護士に依頼すると不利になるような言動を防止できます。
また、感情論ではない法的観点からの主張もおこなえて、代理人としての出席も可能です。
ここでは、離婚調停において弁護士がおこなえるサポートについて解説するので、少しでも離婚調停に不安を感じるのであれば、弁護士への依頼を検討してください。
①離婚調停の代理人として出席できる
弁護士は、離婚調停の代理人として出席できます。
本人が病気やケガなどの何かしらの事情で離婚調停に出席できない場合には、代理人に対応を全て任せることも可能です。
ただし調停手続きにおいて、代理人はあくまで本人の意向を尊重して対応する立場であるため、弁護士に全てを任せることはおすすめしません。
代理人は、相手方や調停委員から新しい提案が出された場合に、その場で話し合うことができず、一度提案を持ち帰り、本人と協議する必要があります。
結果的に、離婚調停が長期化してしまうので、自らは欠席して弁護士に代理人として出席してもらう場合は、やむを得ず出席できないケースのみにしてください。
弁護士に依頼した場合、大半のケースでは、離婚調停期日に弁護士が同席する形で依頼者本人と一緒に出席します。
②法的観点を含めた主張ができる
離婚調停期日に弁護士に同席してもらうことで、法的観点を含めた主張ができるようになります。
調停は裁判所でおこなわれるため、法的根拠がない内容よりも、やはり根拠がある内容のほうが認められやすいです。
民法や判例に基づいた的確な主張ができれば、調停委員の理解も得やすくなり、主張の説得力が大きく高まります。
財産分与や養育費などの争点では、正確な法的知識があることで自分に不利な内容を避けやすくなり、有利な状況になる可能性が高まるでしょう。
③相手方や調停委員に対する適切な反論ができる
弁護士は、常に依頼者の味方であるため、相手方にとって有利な主張や相手方にだけ都合のよい主張に対して、弁護士が反論してくれます。
調停委員が相手方の主張や希望のとおりに説得を試みるケースもあります。
弁護士が反論をおこない、依頼者にとって不利にならないようにサポートしてくれるため、安心して調停に臨めるでしょう。
④当事者の精神的な負担を軽減できる
弁護士に依頼すれば、先の見えない不安や相手方への不信感からなる精神的負担を軽減することが出来ます。
離婚調停は一人で対応していると「自分の主張は本当に正しいのか」「不利な条件で終わってしまうのでは?」といった孤独感や焦りに苛まれることも少なくありません。
しかし、弁護士は法律の専門家であると同時に、あなたの味方です。
弁護士に依頼すると、客観的なアドバイスにより不安が解消し、冷静に調停に臨むことができます。
万が一、調停が不成立となり離婚裁判に移行した場合でも、弁護士は引き続き全ての対応をおこなってくれます。
大変な局面でも全面的にサポートしてもらえるため、精神的な負担を大幅に軽減できるというのは大きなメリットです。
⑤離婚訴訟に発展した際の継続的なサポートをおこなえる
離婚調停が不成立となった場合、離婚訴訟へ移ります。
訴訟は法的な知識や具体的な主張・証拠などが求められるため、弁護士のサポートが調停以上に有用に働きます。
弁護士に離婚調停の時点から依頼しておけば、調停に引き続いて離婚訴訟も対応してくれて、専門的な手続きも一任できます。
離婚調停から訴訟までを見据えたサポートを得るには、離婚問題に強い弁護士を選ぶことが重要です。
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離婚調停中にやってはいけないことに関するよくある質問
ここでは、離婚調停中にやってはいけないことに関する、よくある質問と回答をご紹介します。
「離婚調停中でも生活費は請求できる?」「異性と遊んだりご飯を食べたりしても大丈夫?」「妊娠中でも調停はできる?」という質問に回答しているため、気になる方は参考にしてみてください。
離婚調停中の生活費は請求できますか?
離婚調停中の生活費は、相手方に請求できます。
離婚調停中に生活費が苦しくなった場合、婚姻費用分担請求で生活費を求められます。
婚姻費用というのは、夫婦や子どもが生活するために必要な費用です。
民法第752条では、夫婦がお互いに助け合って生活すべきと、協力扶助義務が定められており、離婚調停中は離婚が成立していない「法律上の夫婦」として認められます。
ただし、婚姻費用の金額は、相手と話し合って合意ができれば自由に決められますが、合意できない場合は、離婚調停とは別に「婚姻費用分担請求調停」をおこなう必要があります。
婚姻費用は、原則として婚姻費用分担請求調停を申し立てた月の分から請求可能です。
また、離婚が成立した場合には請求できなくなってしまうので、婚姻費用分担請求調停は、なるべく早い時期に申立てる必要があります。
なお、未成年の子どもがいる場合は、婚姻費用の代わりに養育費を請求することも可能です。
離婚調停中に異性と遊んだりご飯を食べたりしても大丈夫ですか?
結論からいうと、調停中に異性の友人と食事をしたり、複数人で遊んだりしたからといって、ただちに法律上の不貞行為と判断されるわけではありません。
しかし友人関係であっても、二人きりで会うなどの相手に誤解を招くような行動は極力避けるべきです。
あなたの意図とは関係なく、相手方がその事実を捉えて、調停を不利に進めようとする材料に使いかねないからです。
離婚が正式に成立するまでは、既婚者であるという立場に変わりはありません。
無用な疑いをかけられ、自分が不利な状況に陥るリスクを避けるためにも、離婚成立までは異性との個人的な交流は控えましょう。
妊娠中でも離婚調停はできますか?
妊娠中でも、離婚調停を申し立てることは可能です。
ただし、離婚調停は心身に負担がかかる可能性があるため、健康を最優先に考えてください。
妊娠中は体調が変化しやすく、精神的にも不安定になりがちな時期です。
体調が優れない場合は、離婚調停の期日変更を申し出ることも可能です。
心身への負担が大きい時期だからこそ一人で抱え込まず、弁護士に相談して負担を軽減してもらいましょう。
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離婚調停中は、一つの言動で自分の立場を不利にしてしまう恐れがあるため、注意して行動しましょう。
しかし、上手く言葉にできず、感情的になってしまうケースもあるでしょう。
弁護士に依頼すれば、不利になるような言動をしないためのサポートや適切な反論などもおこなってくれます。
離婚調停に関する不安を抱えているなら、一度弁護士へ相談しましょう。
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