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DVの被害に遭ったら、まずは警察に相談しましょう。
一般的に警察は「民事不介入」といわれていますが、DV被害においては別です。
実際に、令和4年度においての警察へのDV相談は、8,389件といわれており、令和3年度から4.7%も増加しています。
本記事では、実際にDV被害を警察に相談した際にどのような対応をしてくれるのかについて解説するので、DV被害で悩んでいる方は参考にしながら、すぐに相談してください。
DV被害の警察相談は、常に8,000件を超えています。
警視庁で公開されているDV相談件数のデータによると、平成30年から令和4年までの間、相談件数が8,000件を下回ることはありません。
以下では、警視庁のデータをもとに、相談件数や検挙率、DV被害相談者の傾向などを見ていきましょう。
DV被害の相談件数について、5年間の相談者の推移を見ていきましょう。
上記のように平成30年から相談件数が大きく下がることはありません。
令和3年には一時的に相談件数が少なくなりましたが、令和4年においては前年より増加しています。
つまり、それだけの方がDV被害に悩まされていて警察に頼っているということです。
DVには、DV防止法が定められていますが、DVに起因する法律違反も見られます。
下記は、DVによって検挙された人数のデータです。
DV防止法違反での検挙数は少ないですが、DVに起因する刑法犯の検挙数は令和4年で780件にも及びます。
単純計算で、約8,000件のDVによる相談のうち約10%は検挙されているということになります。
DV被害を受けている相談者の傾向についても見ていきましょう。
前提として、DV被害を受けているのは女性だけとは限りません。
令和4年度のDV相談者の性別は、女性が6,657件、男性が1,732件でした。
相談者の年齢については、30代が最も多い2,419件、次いで20代が2,031件です。
平成30年から令和2年までにおいては40代の方の相談も多くありましたが、令和3年以降、40代の相談件数は減少傾向にあります。
また、相談者とDV行為者の関係については、婚姻関係(元含む)が最も多く、令和4年度においては相談件数8,389件のうち6,070件が婚姻関係です。
次いで、同棲関係(元含む)が1,988件となりました。
「警察は民事不介入」と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
詳しくは後述しますが、民事不介入とは警察が民事、つまり家庭などの紛争に介入すべきではないという決まりです。
DVは民事紛争の一つであるため、これまでは民事不介入とされてきました。
しかし、DVやストーカーによる深刻な犯罪が多発したため、平成26年にDV防止法が施行。
現在は、DVを警察に相談すれば、DV保護法の対象となり、DV被害者が守られるようになっています。
以下では、「民事不介入」や「DVで警察がなぜ介入できるのか?」について解説します。
民事不介入とは、民事紛争に警察が介入すべきではないという原則です。
これを「民事不介入原則」といいます。
民事紛争については、当事者同士での話し合いや民事訴訟で解決すべきと考えられているため、警察の介入は控えるべきだとされているのです。
たとえば、離婚請求や単純な痴話げんかの場合は、民事不介入原則の対象となります。
家庭内での民事紛争は、民事不介入原則になりますが、犯罪行為が関係する場合には民事不介入原則の対象外です。
しかし、DVにおいては単なる当事者同士の言い争いではなく、暴力事件の側面をもちあわせています。
たとえば、DVによって相手に暴行を加えた場合には「暴行罪」、暴行によって怪我を負わせた場合には「傷害罪」が適用されます。
さらに、実際に手をあげてなくとも「殴るぞ」というような相手が怖がるような言葉で脅すのは「脅迫罪」です。
これらの犯罪行為に該当した場合は、刑事事件として発展する可能性があります。
警察にDV相談をすると、DV防止法によって被害者は守られます。
場合によっては加害者の逮捕、被害者への保護施設の紹介などもおこなわれます。
そのほか、身体的暴力や生命にかかわる脅迫を受けている場合は、保護命令の申し立ても可能です。
保護命令の申し立てをすることで、加害者はDV被害者やその家族に近づけなくなります。
もし保護命令に違反した場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金。
以下では、5つの保護命令について解説します。
被害者への接近禁止命令が発令されると、相談から6ヵ月間、DV被害者の住まいや身辺(勤務先・よくいく場所等)に付きまとうことを禁止されます。
ただし、接近禁止命令を発令してもらうには、以下2つの要件を満たしていなければいけません。
「配偶者」とされていますが、事実婚の関係にあるものや同性相手についても対象に含まれます。
退去命令が発令されると、加害者(パートナー)は、2ヵ月間、被害者と住んでいる場所から退去しなければいけません。
住居の周辺を徘徊することも禁じられています。
強制執行されるものではありませんが、命令に従わない場合は罰則を受けます。
細かい指定はありませんが、発令を受けてから2週間程度で引っ越すのが一般的です。
もし加害者が金銭的な問題ですぐに引っ越し等をできない場合は、加害者が出ていくまでの間、支援施設等で暮らしましょう。
電話等禁止命令は、発令されてから6ヵ月間、以下の行為を禁止されます。
いずれかに違反した場合は、罰則が課せられます。
子どもがいる場合は、被害者の子どもへの接近も6ヵ月間禁じられます。
子どもへの接近が禁止されるのは、子どもの連れ去りによって、被害者が加害者に会わざるを得なくなることを防止する必要があるためです。
具体的には、子どもの住居や学校などの近くをうろつくことが禁止されます。
ただし、子どもへの接近禁止命令が単体で発令されることはありません。
基本的には、接近禁止命令と同時に発令されます。
被害者への接近禁止命令が発令されているときは、被害者の親族への接近も6ヵ月間禁止されます。
加害者が被害者の実家に押しかけたり暴れたりして、加害者が被害者に会わざるを得なくなることを防止する必要があるためです。
具体的には、親族の住居や勤務先周辺をうろつくことを禁止されます。
ここでいう「親族」とは、単に血縁関係だけではなく、被害者の親しい友人や職場の人間など、社会生活で密接な関わりをもつ人も含まれます。
実際に警察へDV相談する際の流れについて解説します。
警察へDV相談をすれば保護などをおこなってくれますが、相談してすぐに保護されるわけではありません。
基本的には、以下の流れにそっておこなわれます。
上記のように、警察に相談する際には、詳細の聞き取りがおこなわれるので、相談者はあらかじめDV被害による内容を説明できるようにしておいたほうがよいです。
上手く伝わらなかった場合は、緊急性がないまたは虚偽だと思われてしまう可能性もあります。
実際に、夫と離婚したい妻がDV被害者を演じるケースもあるため、警察は慎重に行動しなければならないのです。
そのため、警察へ相談へ行く際には、証拠などを用意しておくとよいでしょう。
最寄りの交番では、DV相談はできないと考えてください。
交番にはDV相談窓口がないからです。
もちろん緊急時に交番に駆け込むことは可能ですし、場合によっては保護してくれるケースもあります。
しかし、交番に勤務する警察はDVの専門ではありません。
また、DV加害者が交番まで迎えに来て「妻(加害者)と口論になって混乱しているだけ」のような説明をしてしまい、その場で対応してもらえないケースもあります。
そのため、DVを相談する際には、緊急を要している場合を除き、警察署または警察本部に相談へ行ってください。
DV被害は、警察以外にも相談できます。
警察に行けないまたは警察では不安な場合は、以下3つの機関・専門家に相談するのもひとつの方法です。
それぞれがどのような相談に対応してくれるのか、特徴について解説します。
配偶者暴力相談支援センターは、各都道府県が設置するDVの相談施設です。
主に、DV被害者の保護のため、主に以下のような活動をしています。
配偶者暴力相談支援センターの場所は、以下から確認できます。
DV相談ナビは、DV被害をどこに相談すればよいかわからない方のために設置された電話相談サービスです。
「#8008」の番号に電話をすると、最寄りの配偶者暴力相談支援センターにつなぎ、電話相談や面談、同行支援や保護等をおこなってくれます。
ただし、ご相談は各機関の相談受付時間内のみです。
もし時間的な問題で相談受付時間に電話ができない場合は、令和2年4月20日から開始された「DV相談+」を利用しましょう。
DV相談+では、24時間の電話相談(0120-279-889)のほか、メールやSNSによる相談もできます。
10言語にも対応(英/中/韓/スペイン/ポルトガル/タガログ/タイ/ベトナム/インドネシア/ネパール)しているので、日本人以外の被害者でも相談可能です。
DVによる離婚等を検討しているのであれば、弁護士へ相談しておきましょう。
弁護士に相談することで、現在の自分の状況がDVにあたるかどうかを適切に判断してくれます。
また、依頼を受けた弁護士のほとんどは、加害者に対して受任通知とともに接触禁止文言を記載してくれます。
その後の慰謝料や養育費、親権等の交渉なども有利に進められるので、DV被害の大小に関わらず、一度弁護士に相談しておくとよいでしょう。
DV被害で悩んでいるなら、できるだけ早く警察に相談すべきです。
しかし、警察に相談する前に準備と覚悟をしておきましょう。
準備は「逃げる準備」です。
警察に相談してすぐに保護などにならない場合、家に帰ってから報復される可能性があります。
そのため、警察に相談する際は、必ず相談後の逃げ先を確保しておきましょう。
覚悟は、「犯罪者の配偶者になる覚悟」です。
配偶者がDVで逮捕されてしまえば、加害者ではあるものの、犯罪者の配偶者となってしまいます。
場合によっては子どもにも悪影響を与えるリスクもあるでしょう。
上記のケースを避けるために、緊急を要するDV被害でない場合は、あらかじめ離婚をする選択を検討してください。
DV被害に遭ったら、基本的にはすぐに相談してください。
DV被害に耐えてしまうと、どんどんDVがエスカレートしてしまう可能性もあります。
DV被害は警察のほか、相談窓口がいくつもあるので、自身の状況に合う相談先を選びましょう。
また、離婚を選択する場合は、事前に弁護士へ相談しておくとよいです。
今DV被害で悩んでいるのであれば、ぜひ一度弁護士へ相談してください。
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