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公開日:2018.3.8  更新日:2022.10.26
DV

接近禁止命令とは?保護命令の効果や申し立て方法、注意点を詳しく解説

銀座さいとう法律事務所
齋藤 健博
監修記事
Columns225
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配偶者からの暴力行為等のDVにより、生命又は身体に重大な危害を受けている場合、身の安全を確保するための手段の一つとして、接見禁止命令という制度があります。

この記事では、接近禁止命令で禁止できることや申立て方法、接近禁止命令の延長方法などの基礎知識を解説します。

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この記事に記載の情報は2022年10月26日時点のものです

接近禁止命令とは?具体的な内容と効果

接近禁止命令(せっきんきんしめいれい)とは、配偶者からの暴力の防止および被害者の保護等に関する法律(DV防止法)で定められている保護命令の1つを指します(DV防止法第10条1項1号、3項、4項)。

身体的暴力や生命・身体に対する脅迫(○○したら殺す・殴るなど)をしてくる配偶者の接近を禁止する、という制度です。

以下の通り、実際に接近禁止命令を利用している人は減少傾向にあるものの年間2,000人程度おり、多くの方が接近禁止命令によって暴力や脅迫などの恐怖から逃れています。

保護命令申立て件数

参照元:平成27年平成28年平成29年平成30年令和元年:司法統計|裁判所

禁止できる2つの行為

  • 身辺の付きまとい
  • 住宅・勤務先・常在している周辺へのうろつき

ただし、この接近禁止令はメールや電話での接触については禁止していません。

そのため、メールや電話で接触されたり脅迫されたりする可能性があります。

また、接近禁止命令は申立て本人のみ有効であるため、子供への接近や実家への押しかけは禁止できません。

もし、そのようなことに対して禁止したい場合は、接近禁止命令以外の保護命令を追加する必要があります。

どのような保護命令があるのか、追加方法については以下の内容をご覧ください。

接近禁止命令だけでは禁止できないこと(他に取るべき手段)

被害者(配偶者)への接近禁止命令だけでは、相手が電話・メール等を送る行為、相手が申立人の子どもや親族へ接近する行為(連れ去りや嫌がらせ等の暴力)から守ることができません。

そこで、相手からの電話・メール等の防止や子どもや親族を守るため、下記の禁止命令を申立てることも法律上可能となっています。

なお、以下の3つの禁止命令は、被害者への接近禁止命令が発せられていること又はこれと同時に発せられるものとなっており、被害者本人への接近禁止命令が発せられる状況にあることが前提となっています。

  • 被害者への電話等禁止命令
  • 被害者の同居の子への接近禁止命令
  • 被害者の親族等への接近禁止命令

また、被害者が申立ての時において相手と生活の本拠を共にしていた場合は、接近禁止命令と同時に、相手は被害者と一緒に暮らしている住居から命令の効力が生じた日から2カ月の間退去し、さらにその間付近をはいかいしないよう命じられます(退去命令)。

期待できる効果

保護命令に違反した場合は、下記の通り罰則があることから、相手へのけん制ないし抑止力となります。

また保護命令が発令された場合、その内容が地方裁判所から警察や配偶者暴力相談支援センターへ通知されます(DV防止法15条3項及び4項、DV防止法12条1項5号イ~ニ)。

これにより関係機関からの迅速な対応を期待することができます。

なお配偶者暴力相談支援センターに通知をしてもらうには、申立の前に事前に支援センターに相談していること等が必要となりますので、不明点がある場合は申立て前に支援センターの方に相談してみましょう(DV防止法12条1項5号イ~ニ)。

違反した場合の罰則

接近禁止命令に違反した場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法)29条)。

なお、他の保護命令に違反した場合も同様に科されます。

接近禁止命令の申し立てが可能な対象者

相手方とどのような関係でも接近禁止命令ができるわけではありません。

接近禁止命令の申立ての可否については、厳格な要件が定められています。

接近禁止命令の申立ては、婚姻関係(事実婚関係を含む)または同棲関係の継続中、暴力や生命に関する脅迫(死ね・殺すなど)を受けていた場合や、将来的に身体的暴力を振るわれて生命や身体に重大な危害を受けるおそれが大きい場合のみ申立てできます。

以下の要件がいずれも満たされる必要がありますので、注意しましょう。

  1. 申立人と相手方が、婚姻関係・事実婚関係・同棲関係のいずれかにあること
  2. 相手方による暴力行為または脅迫行為が①の関係継続中に行われたこと
  3. 将来的に身体的暴力を振るわれて生命や身体に重大な危害を受けるおそれが大きいこと

したがって、たとえば「相手と交際関係にあっても同棲関係に至っていない」という場合には、①の要件が満たされず、接近禁止命令の申立てを行うことはできません。

また、「婚姻関係・事実婚関係・同棲関係の継続中には暴力や脅迫がなく、同関係が終了した後に暴力や脅迫が開始された」という場合には、②の要件が満たされないため、接近禁止命令の申立てはできません。

そのため、上記のようなケースで「現在相手から暴力行為や脅迫行為を受けている」という場合には、接近禁止命令による解決ではなく、暴行・脅迫について警察に被害申告して刑事事件として立件してもらって刑事的な解決を目指すのが適切でしょう。

接近禁止命令を行う4つの手順

接近禁止命令は、主に以下のような流れで発令されます。

ここでは、接近禁止命令(保護命令)の申立て方法について解説します。

接近禁止命令までの流れ

1.DVセンターか警察に相談(DVの場合)

事前準備として、まずはDVセンター(配偶者暴力相談支援センター)または警察に相談をしましょう。

「このような機関に相談した」という事実が必要になります。

  • 警察への相談:相談ホットライン「#9110」
  • DVセンターへの相談

もし「相談経験がない・相談以外の方法が良い」という場合は、公正役場に行って宣誓供述書を作成する必要があります。

2.接近禁止命令の申立て

接近禁止命令は、申立人もしくは相手方の住居地または暴力・脅迫が行われた場所を管轄している裁判所に申し立てます。

また、接近禁止命令以外の保護命令も一緒に申し立てることが可能です。

必要書類

申し立てる際は、以下の書類を揃える必要があります。

  • 申立書2部(正本・副本)
  • 戸籍謄本及び住民票(法律上の夫婦である場合)
  • 相手と同棲している事実を証明する資料(法律上の夫婦ではない場合)
  • 身体的暴力・脅迫を受けていた証拠

費用

申立てに必要な費用は以下の通りです。

  • 申立て手数料(収入印紙):1,000円
  • 予納郵便切手:2,500円
予納郵便切手内訳
500円 2枚
280円 2枚
100円 5枚
50円 5枚
10円 17枚
1円 20枚

手続きには何枚も必要になりますので、買い間違いや買い忘れがないように気を付けましょう。

3.口頭弁論・審問

口頭弁論・審問では、暴力や脅迫の真偽について相手側の意見を聞きます。

裁判所は、この意見を聞いて接近禁止命令を発令するかしないかを決めます。

ただし、緊急を要する事情がある場合(身体や生命に危険がある場合など)には、口頭弁論・審問を行わずに接近禁止命令を発令させることもあります。

4.接近禁止命令の発令

接近禁止命令は、基本的に口頭弁論や審問の際に直接言い渡されます。

しかし、相手が口頭弁論や審問に来なかった場合には、書留送達で相手宅に決定書が送られます。

書留送達で送る際に相手が受け取りを拒否したとしても、送達したことになり、効力が発揮されます。

接近禁止命令に関する注意点

接近禁止命令が発令されない場合がある

裁判所は、接近禁止命令を発令する法律上の要件を満たすかどうかを証拠に基づき判断します。

そのため、申立書だけでなく、客観的な証拠が必要です。

客観的な証拠が不十分な場合は、接近禁止命令が発令されず、接近禁止命令が発令されない可能性があります。

また、仮に証拠があったとしても、申立てから数ヶ月前の暴力に関する証拠のみであり、現時点で暴力を受けている等の証拠がない場合、将来生命・身体に危害を受けるおそれが大きいとは言えないとして、申立てが認められない可能性もあります。

さらに、接近禁止命令を含む保護命令は、精神的なDVに対しては適用の対象外となってしまっています。

この点については内閣府の「女性に対する暴力に関する専門調査会」も保護命令の対象を拡大すべきと提言しており、法改正が待たれるところです。

相手が命令を守らない場合もある

違反すると罰則の適用がある接近禁止命令が発令されたとしても、相手方が罰則を恐れない場合は、命令を守るとは限りません。

接近禁止命令の発令後も、うかつな行動は避けるべきでしょう(命令後は、相手の行動範囲には近づかない、相手と通じる人物と接触をしない、夜間一人きりでの外出を控える)。

身の危険を感じたら、警察に連絡してください。接近禁止命令が発令されると、裁判所から管轄の警察本部長又は警視総監に連絡がいくことになっています(DV防止法15条3項)ので、迅速に対応してくれるでしょう。

街中でばったり遭遇した場合は罪に問えない

「偶然町中で会ってしまった」という場合には、相手を罪に問うことができません。

ただし、偶然遭遇したことをきっかけに、声をかけられた・付きまとわれた・以降何度も会う等の場合には、接近禁止命令に違反している可能性がありますので、警察または弁護士に相談しましょう。

発令から時間が掛かってしまう場合もある

申立人の生命や身体に危険があるため、接近禁止命令は基本的に優先的に処理されますが、状況によっては、もう一度裁判所に呼ばれたりしてなかなか発令されないこともあります。

医師の診断書がある場合でも、診断内容が軽い打ち身・切り傷・かすり傷などの場合には、判断が遅くなる可能性が高くなります。

接近禁止命令を延長するには再度の申立てが必要

接近禁止命令の期間を伸ばしたい場合には、再度申立てを行う必要があります。

ここでは、再度申立てを行う方法やタイミングなどを解説します。

申立てできるケース

接近禁止命令発令中、相手が「接近禁止命令が終わったら痛めつけてやる」「接近禁止命令が終わったら力ずくでも子供に会う」などと発言しており、効力期間が終了してから身体的暴力を受ける恐れがある場合、申し立てることが可能です。

申立て方法

再度の申立てになるため、新しい事件として取り扱われます。

そのため、再びDVセンターや警察への相談、または宣誓供述書の作成が必要です。

以前受けた暴力や、今の時点で身体的暴力を受ける恐れがあることなどを相談または記載し、再び接近禁止命令を申し立てる必要性があることを示すのが大切です。

また再度申立ての際にも、口頭弁論や審問が必要になります。

申立てから約1週間後に行われますが、現在発令されている命令の効力期間の終了と、再度申立てた命令の開始日が開かないように申立てを行いましょう。

必要書類

必要書類は基本的に上記で紹介したものと同じですが、再度申立ての際は、前回申立てた際に作成した保護命令申立書と保護命令謄本の写しが必要ですので、それぞれ用意しましょう。

接近禁止命令は取消せる

発令後に状況の変化があった場合には、申立書を作成して、接近禁止命令を発令した裁判所に申立てることで、命令の取消しを求めることもできます。

なお、申立人であればいつでも取消しの申立てが可能ですが、相手方は一定の条件が満たされない限り、命令の取消しを求めることはできません。

ここでは、命令の取消しに必要となる費用や、申立人ではなく相手方が申立ての取消しを求める場合の条件を解説します。

相手方が取消しの申立てを行う場合

相手方による申立ての取消しは、以下の条件のうち、①と②または①と③が満たされない限り認められません。

  1. 申立人の意義がないこと
  2. 退去命令の場合、保護命令の効力が生じた日から起算して2週間を経過した後に申立てたものであること
  3. 接近禁止命令・子への接近禁止命令・親族等への接近禁止命令・電話等禁止命令の場合、保護命令の効力が生じた日から起算して3ヶ月を経過した後に申立てたものであること。

したがって、申立人が取消しに同意していない限り、相手方からの申立てによって接近禁止命令が取り消されることはなく、申立人としては一方的に命令が取り消される心配はありません。

必要費用

申立てにかかる印紙代は、申立人・相手方ともに500円です。

しかし、予納切手の金額は「申立人が取消しの申立てを行う場合」と「相手方が取消しの申立てを行う場合」で大きく異なります。

【申立人が取消しの申立てを行う場合】
申立人が取消しの申立てを行う場合、82円切手が2枚で計164円かかります。

【相手方が取消しの申立てを行う場合】
相手方が取消しの申立てを行う場合、2,500円分の予納郵便切手が必要になります。

内訳は以下の通りです。

予納郵便切手内訳
500円 4枚
82円 2枚
50円 3枚
20円 4枚
10円 9枚
1円 16枚

切手が全部で38枚必要になるため、買い忘れや買い間違いには十分注意してください。

最後に

もし接近禁止命令が出ているにもかかわらず相手に付きまとわれた場合には、罰則として100万円以下の罰金または1年以下の懲役が科せられますので、警察または弁護士に相談することをおすすめします。

警察に相談をする場合には刑事事件として、弁護士に相談をした場合には民事事件として処理を進めるのが通常ですが、一番大切なことはいまの状態を脱却することではないかと思います。

弁護士に相談して、裁判所で民事保全などの手段を講じることまでしなかったとしても、代理人弁護士として窓口にはなってくれるでしょう。

もちろん、「偶然町中で会ってしまった」という場合には、相手を罪に問うことができません。

ただし、声をかけられた・付きまとわれた・何度も会うなどの場合には、接近禁止命令に違反していることになりますので、警察または弁護士に相談しましょう。

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この記事の監修者
銀座さいとう法律事務所
齋藤 健博 (東京弁護士会)
男女問わず不倫問題全般を得意とし、円満解決の実績もあり。不倫が原因の男女トラブル、離婚慰謝料の請求や親権獲得など、幅広い相談に対応している。

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編集部

本記事は離婚弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※離婚弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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