婚姻とは1組の男女が法律上の夫婦となること|婚姻の要件と効果とは


婚姻(こんいん)とは男女の婚姻意思が合致して夫婦になることをいいます。民法上では婚姻という言葉を使いますが、世間一般では結婚という言葉が使われることが多いようです。
婚姻には事実上婚姻意思が合致している事実婚と婚姻届が提出される法律婚の2つがありますが、世間一般で「婚姻」「結婚」と言った場合には後者を指す場合がほとんどです。婚姻関係となった夫婦の間には事実婚・法律婚を問わず互いにいくつかの義務が生じます。この記事では婚姻とはどういったものなのかをわかりやすく説明した後に、婚姻の条件や効果を解説します。
※この記事は2022年5月の情報をもとに作成しています
婚姻とは
婚姻とは、男女の婚姻意思が合致して夫婦となる身分行為です。そして法律的にも夫婦として認められるためには婚姻意思が合致するだけでなく、役所に婚姻届を提出する必要があります。一般的に結婚といった場合は、このような法律婚を意味することがほとんどです。
第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
引用:日本国憲法
(婚姻の届出)
第七百三十九条 婚姻は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
2 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。
引用:民法
なお、婚姻届を提出する行為を入籍と言ったりもします。入籍は厳密には他人の戸籍に入ることを意味しますが、結婚と同じ意味で使われることが多いです。
婚姻とは |
婚姻意思が合致して夫婦になること |
---|---|
結婚とは |
法律婚をすること |
入籍とは |
他の人の戸籍に入ることだが結婚と同義で用いられることが多い |
婚姻の要件
婚姻関係は男女の意思の合致により成立するのが原則です。そのため、男女が相互に婚姻意思を有する状態となっていれば、婚姻関係は認められます。
第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
引用:日本国憲法
しかし、このような事実婚を超えて法律婚まで認めるためには以下のような要件を満たす必要があります。
- 婚姻適齢であること
- 重婚ではないこと
- 近親婚ではないこと
- 再婚禁止期間を過ぎていること など
婚姻適齢であること
男女ともに婚姻年齢は18歳以上です。
2022年4月の法改正で成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことにより、18歳以上であれば親の同意なく婚姻が可能になりました。
(婚姻適齢)
第七百三十一条 婚姻は、十八歳にならなければ、することができない。
引用:民法
なお、誕生日が2006年4月1日までの女性は、2022年4月1日以前と変わらず、18歳未満であっても婚姻が可能です。その場合には親の同意書が必要になります。
単婚であること
日本は一夫一妻制をとっているため、一度に結婚できる相手は一人のみです。そのため、既に法律婚状態にある男女は離婚等により当該状態を解消しない限り、別の異性との結婚届を提出することはできません(提出しても受理されません)。
なお、本規定は一応重婚となる事実婚も禁止するものではありますが、このような事実婚が法的に保護されるのかされないのかはケース・バイ・ケースとなるでしょう。
(重婚の禁止)
第七百三十二条 配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。
引用:民法
3親等以外であること
婚姻は祖父母、父母、子、孫などの直系血族や叔父叔母、兄弟、甥などの3親等以内の血族とは認められません。
(近親者間の婚姻の禁止)
第七百三十四条 直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。
2 第八百十七条の九の規定により親族関係が終了した後も、前項と同様とする。
引用:民法
(直系姻族間の婚姻の禁止)
第七百三十五条 直系姻族の間では、婚姻をすることができない。第七百二十八条又は第八百十七条の九の規定により姻族関係が終了した後も、同様とする。
引用:民法
(養親子等の間の婚姻の禁止)
第七百三十六条 養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第七百二十九条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。
引用:民法
養子と養親の傍系血族(兄弟姉妹、おじ・おば、おい・めいなど)との婚姻は認められています。また、いとこなど4親等以上の親族との結婚は許されています。
再婚禁止期間を過ぎていること
妊娠している女性が再婚する場合、前の婚姻を解消してから100日以上経過していなければ婚姻は認められません。これは父子関係を明確にする制度ではありますが、現在はDNA鑑定で親子関係を証明することができますから、時代遅れの制度と言えるかもしれません。
なお、善婚解消時に妊娠していない場合や前婚解消後に出産済の場合には再婚禁止期間を待たずに婚姻が認められます。
(再婚禁止期間)
第七百三十三条 女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合
二 女が前婚の解消又は取消しの後に出産した場合
引用:民法
婚姻の効果
婚姻関係(事実婚を含みます)が成立したことによって生じる効果を解説します。主に相互扶助義務・生活費分担義務・貞操義務などがあります。
相互扶助義務
民法では夫婦間で助け合い生活をする相互扶助義務や一緒に生活をする同居義務を定めています。
(同居、協力及び扶助の義務)
第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
引用:民法
夫婦ですから当然といえば当然ですが、生活を共にして協力し合うことが義務となっています。もちろん同規定により同居や協力を物理的に強制されることはありませんが、これらの義務に正当な理由なく違反すれば何らかの法的責任を負う可能性はあります。
生活費分担義務
夫婦には資産や収入に応じて生活費、医療費、教育費などを分担して負担する義務があります。この義務は別居していたとしても、婚姻関係が破綻していない限り当然には消滅しません。
(婚姻費用の分担)
第七百六十条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
引用:民法
貞操義務
民法で夫婦は互いに貞操義務を負うことが明確に定められているわけではありませんが、解釈上、婚姻関係にある夫婦は、配偶者以外の者と性的関係を持ってはならないと考えられています。不貞行為とはこの貞操義務に違反する行為のことです。
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
引用:民法
婚姻の終了
婚姻関係の終了は事実婚と法律婚で異なります。事実婚の場合は夫婦の離婚意思が合致すれば直ちに離婚となります。他方、法律婚の場合は離婚意思の合致だけでなく、離婚届が受理される必要があります。
なお、相手配偶者が死亡した場合、事実婚であれ法律婚であれ婚姻関係自体は消滅しますが、相手配偶者との姻族関係は当然には消滅しません。姻族関係を消滅させるためには姻族関係終了の手続が必要です。
まとめ
婚姻について簡単に説明しました。婚姻に事実婚と法律婚があることは覚えておいて損はないでしょう。
事実婚であれ法律婚であれ婚姻関係を結ぶと当事者間には様々な義務が生じます。実生活でこれらの義務を意識することは多くないかもしれませんが、夫婦の関係性や生活に直結する内容でもありますので、一度確認しておくとよいかもしれません。


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