用語解説
- 不貞行為(ふていこうい)
- 不貞行為とは、夫婦・婚約・内縁関係にある男女のどちらかが、配偶者以外の異性と自由意志で肉体関係を持つ「貞操義務違反」です。法律上は民法第770条第1項に規定された、法定離婚事由として認められる離婚原因のひとつです。
法定離婚事由とは、法的な離婚理由として定められているものという意味です。
つまり、配偶者の不貞行為を証明できるものがあれば、裁判で離婚請求や慰謝料請求をした際にその主張が認められやすくなります。
逆にいえば、不貞行為が確実におこなわれていたと証明できない場合は、配偶者がいわゆる不倫をしていたことが事実であっても、言い逃れや反論の余地を与えてしまうことになります。
キスやハグは肉体関係を持ったことの証明にならないため、証拠としては弱いといわれることもありますが、それでは、具体的にどこからが不貞行為になるのでしょうか。
この記事のPOINT
こんなことがわかります
- 「浮気」「不倫」「不貞行為」の違い
- メールや写真などは不貞行為の証拠として認められるか
- 不貞行為前に夫婦の関係が破綻していた場合は不貞行為とみなされるか
- 離婚の有無で慰謝料は大きく変動する
- 不貞行為の決定的な証拠を集めたい方は弁護士に相談しましょう
これって不貞行為?と不倫でお悩みのあなたへ
配偶者の不貞行為を疑っていても、どこからが不貞行為にあたるのか、どうやって不貞行為の証拠を集めればいいのか悩んでしまいますよね。
結論からいうと、不倫に関する悩みを抱えているなら、弁護士への相談をおすすめします。法的観点からアドバイスや意見をもらえるので、心強い味方になってくれるでしょう
弁護士に相談することで、以下のようなメリットを得ることができます。
- 配偶者の行為が不貞行為にあたるか判断してもらえる
- 慰謝料を請求できるかの判断や、慰謝料額の目安を試算してもらえる
- 不貞の証拠集めについての注意点やアドバイスをもらえる
- 話を聞いてもらうことで精神的に楽になる
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この記事に記載の情報は2024年09月20日時点のものです
不貞行為とは民法で定められた離婚事由
不貞行為は、婚姻届を提出している法律上の夫婦はもちろんのこと、何かの事情によって婚姻届を提出していないものの、事実上夫婦同然の生活を送っている内縁関係の夫婦も対象としています。
夫婦にはお互いが性的に純潔を保ち、配偶者以外と性行為をおこなってはならないという貞操義務があります。
一方の配偶者がこの義務に違反した場合、もう一方の配偶者は法的に離婚請求が可能となります。
民法770条第1項で定められる離婚原因の最初の項目に、この「不貞行為」が定められています。
不倫との違い
不倫と不貞行為との違いは明確にはありませんが、「不倫」は概念的なものと捉えてもよいかもしれません。
不貞行為は「既婚者が配偶者以外の異性と、自由意志で肉体関係を持つこと」と定義されています。
しかし不倫は必ずしも肉体関係があることに限定されるわけではなく、人によってどこからが不倫か、という判断は異なるものです。
そのため、裁判では民法で明示されている「不貞行為」の有無に着目しますが、「不倫」の中に「不貞行為」があると考えるのが妥当でしょう。
浮気との違い
「浮気」も不倫と同様に、概念的なものにすぎません。
あえていえば、浮気も不貞行為も「相手の信頼を裏切る」という点では一緒ですが、浮気と不貞行為との大きな違いは「婚姻関係の有無」になります。
不貞行為は法律上、はっきりと「配偶者に」と明記していますので、結婚している男女のどちらかがほかの異性と性的な関係を持っているのが不貞行為、単純な交際関係であるような場合を浮気といっていいでしょう。
もっとも、婚姻関係がないような場合でも、内縁関係があると判断されれば、パートナーの不貞行為は損害賠償の対象になります。
不貞行為になる・ならない場合の例
肉体関係のない浮気は不貞行為とはならない
配偶者以外の異性と、以下のような行為をすることは浮気・不倫になるのかもしれませんが、法律に定められている「不貞行為」とはなりません。
- メールのやり取りをする
- 映画を観に行く
- ドライブに行くなどのデート
- 別れ際のキス
不貞行為として認められるのは、あくまでも肉体関係・性的関係を配偶者以外の異性と持った場合です。
プラトニックな関係は不貞行為とは認められません。
ラブホテルに入って相当時間出てこなかったら不貞行為と認められることが多い
ほかの異性との性交渉があった場合はもちろんですが、「性交渉があったと推認できるにいたる十分な状況」が認められた場合も不貞行為として考えられています。
たとえば、ラブホテルに二人で入ってしばらくの間、出てこなかった場合などが該当します。
なぜなら、ラブホテルは世間一般ではセックスをする目的で利用するものと考えられているからです。
風俗は一度だけでは不貞行為とは認められない
たとえ風俗でもほかの異性と性交渉を持てば浮気になりますが、一度だけでは離婚理由としての不貞行為とまではなりません。
しかし、風俗が大好きで何度話し合っても風俗通いが治らない場合には「婚姻を継続し難い重大な事由」になり離婚請求ができる可能性があります。
逆にパートナーが風俗店で働いていた場合も「婚姻を継続し難い重大な事由」には該当する可能性がありますが、それだけでは離婚理由としての不貞行為の証明としては弱く、ほかにも婚姻を継続し難いといえる具体的な事実が必要となります。
不貞行為を原因に離婚請求する場合の注意点
1回限りの不貞行為は裁判では離婚理由と認められないことが多い
魔が差して、もしくは酔っ払って、一度だけ配偶者以外の異性と肉体関係を持ったとしても、それは不貞行為となります。
しかし、過去の裁判例では1回のみの不貞行為を理由に、離婚を認めたケースはほとんど存在しません。
ある程度頻繁に不貞行為をおこなっている事実がなければ、離婚裁判で不貞行為を離婚理由として認めてもらうことは難しいからです。
ただし、一度だけの不貞行為によって婚姻関係が破綻したと判断できるケースでは、法的な離婚理由のひとつである「婚姻を継続し難い重大な事由」として扱ってもらえる可能性があります。
別居中に起こった不貞行為でも離婚理由にできない
配偶者が不貞行為をおこなった際、すでに夫婦は別居しているケースでも、不貞行為は離婚の理由となるのでしょうか。
別居や家庭内別居などで客観的に夫婦関係が破綻している場合は、不貞行為を離婚理由や慰謝料請求の対象とはできない可能性が高いです。
不貞行為が離婚理由となるのは、あくまでも不貞行為があったことで、夫婦仲が悪くなり婚姻関係が破綻した事実が必要だからです。
そもそも、別居が長期間になり、すでに夫婦関係が破綻しているといえる状況であれば、不貞行為とは別でそれ自体が「婚姻を継続し難い重大な事由」として、離婚理由となります。
不貞行為をした人からの離婚請求は原則できない
不貞行為をした配偶者自身(有責配偶者)が、不貞行為の相手との再婚を目的に離婚請求をおこなうことは原則的に認められません。
特に、以下のようなケースでは離婚請求が認められない可能性が高まります。
- 夫婦間に未成年の子どもがいる
- 離婚することで配偶者が経済的に困窮してしまう可能性が高い
しかし、不貞行為をおこなった有責配偶者であっても、すでに夫婦の関係が破綻しており、回復する見込みがないと第三者が判断できる場合は、一定の基準内で離婚請求が認められる可能性もあります。
離婚請求が認められるかどうか判断ができない方は、一度弁護士に聞いてみることをおすすめします。
弁護士に相談すれば、慰謝料のほかに養育費や財産分与、親権などの離婚条件もあわせて解決できるでしょう。
不貞行為の慰謝料請求は時効に注意
不貞行為の時効は3年です。
不倫から3年経過しても慰謝料を請求しないのであれば、慰謝料を請求できる権利が消滅します。
そもそも不倫の事実に気づかなかった場合には除斥期間があり、20年経つと請求権が消滅します。
不貞行為で離婚をするための5つの証拠
不貞行為を理由として裁判で離婚請求するためには、離婚請求する側が他方配偶者の「不貞行為を確認できる、もしくは推認できる証拠」を用意しなければなりません。
不貞行為の立証には詐称や偽造された証拠も多く、裁判所は不貞行為に関する証拠を厳しく制限しています。
一般的に離婚裁判においての論点は、不貞行為によって、夫婦の婚姻関係が破綻したといえるかとなります。
以上を踏まえたうえで、不貞行為を証明するための主な証拠を5つ紹介します。
1:メールの履歴
最近は携帯電話やパソコンでのメールやLINEの履歴で配偶者の浮気が判明するケースが多い傾向にあります。
しかし、単に配偶者がほかの異性と連絡を取っていたという事実だけでは、不貞行為を推認させる証拠とはいえません。
また、単に配偶者がほかの異性と会っていた事実があっても、それだけでは不貞行為を推認させることはできません。
たとえば「愛人とラブホテルに行った」ことや「一緒に寝た」などのやり取りがメールやLINEでされていた事実があれば、それは不貞行為があったことを強く推認させる証拠となります。
裁判で証拠として提出しましょう。
2:決定的な写真やビデオ
不貞行為の証拠として最も有効なものが写真や映像です。
しかし、配偶者が異性とラブホテルに出入りしている場面、異性と旅行中の様子、異性の部屋に出入りしている写真などでは、必ずしも不貞行為があったとは言い切れないため、決定的な証拠とまではいえません。
決定的なものは、配偶者と異性がベッドの上で服を着ていない状況の写真などです。
ただ、不貞行為をしている配偶者は不貞行為をばれないように行動していることが多いため、このような写真が配偶者の携帯電話やカメラに残っている可能性は低いでしょう。
3:音声データ
配偶者の不貞行為が疑われるケースでは、夫婦で話し合うことがあるでしょう。
その会話の際に、ICレコーダーなどで話し合いを録音しておきます。
そこに、配偶者が自身の不貞行為を認める内容が録音されていると証拠になります。
ただし、裁判では録音された音声の再生は原則おこなわないため、音声を文章に書き起こして裁判所に証拠として提出する必要があります。
4:探偵社や興信所など調査会社の調査報告書
ここまで挙げてきた3つの証拠は、現実的には収集することが困難です。
なぜなら、浮気や不倫は堂々とおこなうものではなくバレないようにコソコソとおこなうものだからです。
また、相手の行動を把握するための証拠集めは相手に気づかれないように長期的におこなう必要があります。
そのため難易度が高く、不貞行為の決定的な瞬間をおさえられるまでにかなりの根気を要します。
また、証拠集めに必死になりすぎた場合、不貞相手の家に侵入するなど、あなた自身が違法なことをしてしまう可能性もありえます。
相手から「プライバシーの侵害だ」と言われ、あなたの立場が悪くなってしまうこともあるかもしれません。
そのため、調査のプロである調査会社や探偵に依頼することが得策です。
これらの機関では裁判に必要な配偶者の不貞行為の証拠を集めてくれます。
5:そのほかに証拠となるもの
上記の4つ以外で不貞行為を証明する証拠は、主に以下のようなものです。
そのほか証拠
- 不貞行為を証明する手紙やメモ、日記など
- 不貞行為の相手からの手紙やプレゼント
- 友人や関係者などの第三者の証言
- 不貞行為の証拠となるクレジットカードの利用明細
- 不貞行為の相手と宿泊したホテルの領収書
不貞行為の慰謝料と増額しやすい要素
不貞行為の慰謝料相場は100万円から300万円
決まった慰謝料の金額はありませんが、相場としていわれている額は100万円〜300万円です。
また、慰謝料の金額は主に以下のような要素を基に総合的に判断して決定されます。
不貞行為の慰謝料を増額させる10の要素
不貞行為の慰謝料を増額させる10の要素
- 不倫相手との年齢差
- 不倫の主導者
- 婚姻期間の長さ
- 離婚前の婚姻生活の状況
- 不倫相手の認識・意図
- 不貞行為の期間・回数
- 子どもの有無
- 約束の保護
- 子どもへの影響
- 浮気相手の社会的地位
不倫相手との年齢差
不倫相手との年齢差は、大きければ大きいほど慰謝料は増額していきます。
不倫の主導者
どちらに主導権があったのかを判断する重要な指標とされ、不倫を先導したほうがより重いとみなされます。
婚姻期間の長さ
結婚期間が長いほど、婚姻相手に与えた精神的苦痛は大きいと判断されます。
短期間は5年以下、中期間は6年~10年以下、長期間が10年以上の結婚期間といわれています。
離婚前の婚姻生活の状況
夫婦関係が円満であるほど、夫婦関係に与えたダメージが大きいと判断されます。
不倫相手の認識・意図
不倫相手に慰謝料請求をするには、相手に故意または過失があることが必要になります。
つまり、結婚をしていることを知りながら肉体関係を持った場合は不貞行為の故意があると判断され、慰謝料の金額が高くなる傾向にあります。
不貞行為の期間・回数
あくまでも目安ですが、短期間が半年以内、中期間が半年~1年程度、長期間が1年以上の不倫期間といわれています。
不貞行為の頻度・回数も同様です。回数が多くなれば多くなるほど、慰謝料の金額が高くなる傾向にあります。
子どもの有無
夫婦に子どもがいる場合は家族全体に影響が及ぶため、子どもがいるケースのほうがより慰謝料が増額される傾向にあります。
約束の反故
不倫相手が不貞行為を二度としないと約束したにもかかわらず、約束を破って再び不貞行為をした場合、さらなる精神的な損害が発生し、慰謝料の増額要素になります。
子どもへの影響
不貞行為が原因で子どもの成長に悪影響があったといえるような場合、慰謝料は増額するケースがあります。
これは離婚の際の親権にも関わってくる大きな問題です。
浮気相手の社会的地位
収入資産や社会的地位が高い場合は、慰謝料の金額も高くなる傾向にあります。
これは、不倫について責任がある者には相当の支払い義務が認められるべきであるという考えからです。
離婚の有無で慰謝料は大きく変動する
慰謝料の額は、不倫された側がどの程度の精神的苦痛を受けたかによって決定していきますが、離婚の有無によって、その相場は大きく変動します。
慰謝料の相場
- 離婚や別居をせず夫婦関係を継続する場合:50万円~100万円
- 不倫が原因で別居に至った場合:100万円~200万円
- 不倫が原因で離婚に至った場合:200万円~500万円
不貞行為が原因でも離婚しないということは、そこまで精神的な苦痛を感じなかったのではないかと判断される可能性があるからです。
まとめ
あなたの配偶者があなた以外の異性と継続的に肉体関係を持っている状況があれば、その相手の行為を理由に離婚請求や慰謝料の受け取りができます。
十分な証拠が存在する場合にはじめて、離婚請求や慰謝料請求の意思が認められます。
そのため、もし配偶者の浮気・不倫が疑わしい・発覚した場合は、証拠集めから始めてみるとよいでしょう。
これって不貞行為?と不倫でお悩みのあなたへ
配偶者の不貞行為を疑っていても、どこからが不貞行為にあたるのか、どうやって不貞行為の証拠を集めればいいのか悩んでしまいますよね。
配偶者の行為が不貞行為にあたるかわからない、慰謝料を請求できるかわからないなどの悩みを抱えているなら、弁護士への相談をおすすめします。
法的観点からアドバイスや意見をもらえるので、心強い味方になってくれるでしょう
弁護士に相談することで、以下のようなメリットを得ることができます。
- 配偶者の行為が不貞行為にあたるか判断してもらえる
- 慰謝料を請求できるかの判断や、慰謝料額の目安を試算してもらえる
- 不貞の証拠集めについての注意点やアドバイスをもらえる
- 話を聞いてもらうことで精神的に楽になる
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【参考元】法律的にどこからが不倫(浮気)なの?|広島市の探偵事務所|浮気調査は探偵社フォーチュン広島