配偶者の浮気・不倫が原因で、離婚慰謝料の請求を考えていませんか?
パートナーの浮気によって離婚する場合は、離婚慰謝料の請求が可能です。
一般的に、配偶者に請求できる離婚慰謝料の相場は50〜300万円程度といわれています。
また法律上、浮気相手への慰謝料請求も認められています。
パートナーの裏切りによって負った心の傷は完全には癒せないかもしれませんが、気持ちに区切りをつけるためにも、慰謝料という形に残るものを請求することは非常に重要です。
本記事では、配偶者の浮気・不倫による慰謝料の相場や請求先、手続きのステップを具体的に解説します。
さらに、慰謝料問題を有利に解決するときにおすすめの相談先も紹介します。
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浮気・不倫による離婚慰謝料とは?

浮気・不倫による離婚慰謝料とは、「配偶者の不貞行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償金」のことです。
法律上、配偶者の不貞行為は夫婦間の貞操義務に違反し、婚姻生活の平和を破壊する「不法行為」(民法709条)に該当します。
法律に則って、パートナーに浮気・不倫をされた側には、加害者である配偶者および不倫相手に対して慰謝料を請求する権利が与えられます。
つまり、慰謝料請求は単なる感情的な復讐ではなく、法的に認められた正当な権利です。
不倫による慰謝料は、精神的苦痛に対する補償として位置づけられています。
【ケース別】浮気を原因とした慰謝料の相場はいくら?
浮気による慰謝料の相場は、離婚するかしないかによって大きく異なります。
一般的に、離婚に至る場合は高額になる傾向があるとされています。
なぜなら、「婚姻関係が破綻してしまう」という重大な結果を招いたことが考慮されるからです。
ここでは、浮気を原因とした慰謝料の相場をケースごとに詳しく見ていきましょう。
【離婚する場合】慰謝料の相場は50万円~300万円
浮気が原因で離婚する場合の慰謝料は、一般的に50万円~300万円程度とされています。
ただし、実際に請求できる慰謝料は、状況に応じて大きく異なります。
例として、
- 不貞行為の期間が長い
- 複数の相手と関係を持っていた
- 子どもの前で不貞行為をおこなっていた
などの悪質性が高いケースでは、300万円を超える場合もあります。
さらに、不貞行為によって配偶者がうつ病などの精神疾患を発症した場合や、妊娠中の配偶者を裏切るなども、慰謝料が相場を大きく上回る傾向があります。
逆に、婚姻関係がすでに破綻していた場合や、夫婦間に別居期間があった場合は、慰謝料が減額される可能性があります。
【離婚しない場合】慰謝料の相場は50万円~100万円
離婚しない場合の慰謝料相場は、50万円~100万円程度と、離婚する場合に比べて低くなるのが一般的です。
浮気をしたとしても、婚姻関係は引き続き継続されるので、破綻した場合よりも「精神的苦痛の程度が相対的に低い」と評価される傾向があるためです。
ただし、不貞行為が特に悪質であった場合や、SNSなどで不貞関係を公にするなど社会的な信用も損なわれるような場合には、離婚しなくても100万円を超える慰謝料が認められるケースもあります。
もちろん、最終的な慰謝料額は個々の事情や証拠の状況、交渉力によって変わってきます。
弁護士を始めとする専門家のアドバイスを受けながら、適切な金額を検討することが重要です。
浮気による慰謝料が高額になる10つの要素

浮気による慰謝料の金額は、主にこれらの要素によって大きく変動します。
一般的に、当事者間の話し合いによって慰謝料を決める場合は、金額に上限はなく自由に決められます。
よって、当事者間で合意さえできれば、相場よりも高額な慰謝料を支払ってもらえます。
ただし、そのようなケースはまれです。
調停や裁判といった裁判所での手続きで慰謝料を請求した場合は、相場の範囲内で慰謝料額が決定されます。
ただし、ケースバイケースで慰謝料が高額になる場合もある点は頭に入れておきましょう。
【重要】浮気が原因で慰謝料を請求できる5つの条件
浮気(不貞行為)を理由に離婚慰謝料を請求するには、主に5つの条件を満たす必要があります。
これらの条件が揃わないと、慰謝料請求が認められない、もしくは減額される可能性が高まります。
以下では、それぞれの条件について詳しく解説します。
①配偶者に不貞行為(肉体関係)があった
慰謝料請求においてもっとも重視されるのは、「配偶者が第三者と肉体関係を持ったという事実が存在すること」です。
なぜなら、慰謝料請求とは「配偶者が第三者と不貞行為をおこなっている前提で成立するものだから」です。
たとえば、メールやLINEで恋愛感情込みの親密なやり取りはしているものの、肉体関係を結んでいない場合は、法的に不貞行為とは認められないのが原則です。
ただし、直接的な性的関係の証拠がなくても、写真や動画、録音データなどでホテルへの出入りや二人きりで宿泊した事実を証明できれば、肉体関係があったと推認される場合もあります。
②不貞行為を証明する有効な証拠が揃っている
離婚の慰謝料請求をするときは、相手が不貞行為を認めない場合に備えて、客観的に肉体関係があった事実を示す証拠が必要です。
裁判になった場合、証拠がなければ請求が認められない可能性があります。
また、配偶者を直接問いただす段階でも、証拠は不可欠な要素となります。
不貞行為を証明する有効な証拠としては、以下のとおりです。
- 写真
- 動画
- 通話履歴
- カーナビの履歴
- 探偵の調査報告書
- LINEやメールやSNSのやり取り
- 不倫を認める念書や記録データ
- 領収書やクレジットカードの利用明細
なお、証拠を集めるときは無断での録音や盗撮、相手のスマートフォンを無断でチェックするのはNGです。
違法な方法で収集した証拠は法的に採用されない可能性があるため、注意が必要です。
確実に証拠を集めたい場合は、弁護士や探偵事務所に相談し、証拠収集の方法についてアドバイスを受けるか、証拠集めを直接依頼するのをおすすめします。
なお、具体的な証拠集めの方法に関しては、【弁護士監修】浮気の証拠になるもの15選!自分で集めるときの注意点も解説でも詳しく解説しています。
③慰謝料請求権の「時効」が成立していない
民法上、慰謝料権利権には「時効」が存在するので、期間内に請求しなければ慰謝料を請求する権利が消滅してしまいます。
不貞行為に基づく慰謝料請求権の時効は、民法第724条に基づき「損害および加害者を知ったときから3年間」または「不法行為の時から20年」とされています。
つまり、配偶者の不貞行為と相手を知ってから3年以内に請求しなければ、時効により請求権が消滅する可能性があります。
不貞行為が継続していた場合は、最後の不貞行為から3年と解釈されることが多いですが、個々のケースによって解釈が異なる場合もあります。
また、裁判所への調停・訴訟の申し立てや内容証明郵便での請求によって、時効を止めることも可能です。
時効が迫っている場合は、早急に弁護士に相談するのがおすすめです。
④不貞行為が引き金となって夫婦関係が破綻した
不貞行為が原因で、婚姻関係が修復不可能な状態になった事実を証明することも重要です。
慰謝料は不貞行為による精神的苦痛への賠償であり、関係破綻はその苦痛の大きさを示す重要な要素だからです。
裁判所は、「婚姻関係が破綻した原因が不貞行為にあるか」を慎重に審査します。
もし不貞行為の開始前からすでに夫婦関係が修復不可能な状態(婚姻関係の破綻)にあったと認められれば、慰謝料請求は認められないか、大幅に減額される可能性が高くなります。
例えば、数年間別居状態にあって夫婦としての実態がなかった場合や、双方がすでに離婚に合意していた場合は、不貞行為と婚姻破綻の因果関係が否定される可能性があります。
一方で、表面上は円満に見えた夫婦関係が不貞行為をきっかけに急速に悪化した場合などは、不貞行為との因果関係が認められやすくなります。
⑤相手が既婚者だと知っていた(知ることができた)
不倫相手に慰謝料を請求するには、相手が配偶者を既婚者だと知っていたか、注意さえすれば知れた(過失)という事実が必要です。
配偶者が既婚者だという事実を知っており、確信犯で浮気をしたのでなければ、相手に不法行為責任を問うのは困難と言えます。
例えば、職場でのW不倫のように、互いが既婚者であることを知った上での関係であれば、不倫相手の故意は明らかです。
また、SNSのプロフィールに家族の写真が掲載されていたり、結婚指輪を着用していたりするなど、通常の注意を払えば既婚者だと分かる状況であれば、過失が認められる可能性は高いでしょう。
一方で、配偶者が「自分は独身だ」という嘘をついており、不倫相手に疑念を抱かせる余地がなかった場合は、不倫相手の故意・過失が否定され、慰謝料請求が認められない可能性があります。
浮気の慰謝料は誰に請求できる?パターン別に解説
浮気問題は、浮気された側と配偶者、浮気相手、ケース次第では浮気相手の配偶者が絡み合う複雑なものですが、実際は誰に請求できるのか知らない方も多いのではないでしょうか。
ここでは、浮気の慰謝料は誰に請求できるのかについてパターンごとに解説します。
配偶者にのみ請求する場合
このようなケースは、離婚協議と併せて配偶者に慰謝料を請求する方が主に該当します。
多くの場合、離婚手続きの段階で慰謝料請求も一緒に進めるのが効率的です。
例えば、離婚条件として、慰謝料を含む解決金の支払いをするように相手へ合意を求められます。
この方法なら、離婚と慰謝料問題を一度に解決できます。
また、不倫相手の特定が難しい場合や、不倫相手に資力がない場合も、配偶者にのみ慰謝料を請求するのが現実的な選択となります。
配偶者には法的な責任があり、婚姻関係を破壊した責任を負うべきという考え方から、配偶者に対する請求を優先する人も少なくありません。
さらに、配偶者との間ですでに離婚条件について話し合いが進んでいる場合は、その中に慰謝料も含めて一括で解決できれば、余計な手間や時間を省けるでしょう。
不倫相手にのみ請求する場合
離婚を望まない場合や、配偶者に資力がない場合に選択されることが多いのがこのパターンです。
離婚を望まない場合、あなたの家計を握る配偶者に慰謝料を支払わせた場合、結局はあなたの家庭の経済的負担になってしまうので、慰謝料を請求するメリットがあまりありません。
そのため、夫婦関係は修復を目指しながらも、ケジメのひとつとして不倫相手に慰謝料を請求するケースが多くみられます。
また、配偶者に十分な資力がなく、慰謝料の支払い能力に問題がある場合も、不倫相手にのみ請求することが合理的です。
特に不倫相手の収入が高い場合には、現実的な賠償を期待できる可能性があります。
さらに、不倫相手が積極的に関係を求めていたり、婚姻関係を破壊する行動をとっていたりした場合も、不倫相手にのみ慰謝料を請求するのを検討するのもひとつの選択肢です。
【二重取りは不可】配偶者と不倫相手の両方に請求する場合
不貞慰謝料は、不貞行為をおこなった配偶者と不倫相手の双方に請求できますが、どちらか一方から満額を受け取れた段階で、もう一方からは請求できなくなります。
なぜなら、民法719条において、「不貞行為は二人の共同不法行為であり、両者が連帯して損害賠償責任を負うもの」と定められているからです。
仮に200万円の慰謝料が認められる場合、配偶者から100万円、不倫相手から100万円というように分割して請求することは可能ですが、200万円以上の慰謝料は請求できません。
仮に、夫から150万円の慰謝料を受け取れた場合、不倫相手には残り50万円までしか請求できません。

また、ダブル不倫の場合は、自身の配偶者と不倫相手に請求できますが、不倫相手側の配偶者にも慰謝料請求の権利が発生します。
例として、自分の夫と不倫したA子さんに慰謝料を請求するとしましょう。
その場合、A子さんの夫は、不倫相手であるあなたの夫と不倫をしたA子さんの両方に慰謝料を請求できます。
ダブル不倫の場合、世帯単位でみると慰謝料額が増大する可能性があるという点を頭に入れておきましょう。
不倫の離婚慰謝料を請求する3つのステップ
慰謝料請求は、
- 話し合い(協議)
- 調停
- 訴訟(裁判)
という3つのステップで進めるのが一般的です。
原則として、まずは当事者間での話し合いで解決を目指し、どうしても話が進まない場合に法的手続きへ移行するのが、時間的にも金銭的にも負担を最小限に抑えられます。
ここでは、3つのステップを進めるときのポイントを具体的に解説します。
STEP①:話し合い(協議)による請求
相手方と直接交渉し、慰謝料額や支払い方法について合意を目指すのが第一のステップです。
双方の合意を得られれば、もっともスピーディーかつ円満に解決できる可能性があります。
話し合いを進めるときは、まずは不貞行為の事実と慰謝料請求の意思を明確に伝えます。この際、浮気をした証拠を提示すれば相手が言い逃れできなくなります。
ただし、あまりにも感情的になりすぎると冷静な話し合いが難しくなるので、必要に応じて弁護士に交渉を依頼するのも検討すべきでしょう。
相手が話し合いに応じ、金額や支払い条件について合意を得られた場合は、必ず示談書・合意書を作成し、双方による署名・押印を進めましょう。
書面には、慰謝料額、支払い方法、支払い期限、不履行時の対応をしっかりと明記すれば、「言った・言わない」などのトラブルを防げます。
ただし、相手が話し合いに応じない場合や誠実に対応してくれない場合は、次のステップである調停に移行することを検討しましょう。
STEP②:離婚調停・慰謝料請求調停の申し立て
当事者だけで冷静な話し合いが不可能であり、相手が交渉を拒否する場合に取るべき手続きは、家庭裁判所で調停委員を介して話し合い、合意による解決を目指す「調停」です。
調停を進める場合は、まずは家庭裁判所に調停申立書を提出します。
申立書には、当事者の情報、不貞行為の事実、請求する慰謝料額とその根拠を記載する必要があります。
申し立てが受理されると調停期日が指定され、調停委員が双方から事情を聴取し、解決案を提示してくれます。
調停委員は、主に弁護士、医師、大学教授などの豊富な知識経験や専門知識を持つ一般人の中から選ばれます。
双方が調停案に合意すれば調停が成立し、調停調書が作成されます。
調停調書には裁判の判決と同等の効力があるので、相手が支払いを履行しない場合は強制執行の申し立てが可能です。
調停は裁判よりも費用が安く、手続きも比較的簡素なので、話し合いが難しい場合は選択肢のひとつとして検討する価値があります。
ただし、調停でも合意に至らない場合は、最終的に訴訟に移行する必要があります。
STEP③:訴訟(裁判)による請求
話し合いや調停で解決しない場合に、裁判所に最終的な判決を求める手続きが訴訟です。
裁判所が証拠に基づき法的判断を下し、紛争を強制的に解決する方法となります。
具体的な流れとしては、まずは地方裁判所に訴状を提出します。
訴状には、当事者の情報、慰謝料の請求額、その慰謝料額が認められるべき理由を記載します。
訴状が受理されると、相手方に送達され、口頭弁論(裁判期日)が設定されます。
口頭弁論では、双方が主張や証拠を提出し、必要に応じて証人尋問や本人尋問がおこなわれます。
裁判官は提出された証拠や尋問の結果に基づいて判断を下し、最終的に判決が言い渡されます。
訴訟は確実な解決が期待できる一方で、費用や時間がかかり、精神的負担も大きいので、可能であれば話し合いや調停での解決を図るのが望ましいでしょう。
特に訴訟では、不貞行為の証拠や損害額の立証が厳格に求められるので、事前に十分な証拠を収集しておくことが重要です。
離婚する場合に慰謝料以外にも決めるべき重要事項
浮気離婚では、慰謝料以外に、財産分与、年金分割、親権、養育費、面会交流など、ほかにも決めるべき重要条件があります。
これらの条件は離婚後の生活に大きく影響するので、漏れがなく、かつ不利な条件にならないように取り決める必要があります。
以下では、それぞれの項目について詳しく解説します。
【夫婦で築いた財産を公平に分ける】財産分与
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦協力で築いた財産(共有財産)を、原則2分の1ずつ分け合うことです。
夫婦協力で形成された財産は、名義に関わらず公平に分配されるべきという考え方に基づいています。
財産分与の対象となる具体的な財産の一例は、以下のとおりです。
※借金も分与対象となる場合がある
重要なのは、財産の名義ではなく、その財産が「夫婦の協力によって形成された」かどうかという点です。
たとえば、夫名義の預金でも、結婚後に稼いだ給与を貯めたものであれば、原則として財産分与の対象となります。
ただし、結婚前から所有していた財産や、相続・贈与によって取得した財産は、原則として財産分与の対象外となります。
また、別居期間が長い場合は、別居後に形成された財産は財産分与の対象とならない可能性があります。
財産分与は慰謝料とは別の権利なので、浮気があったからといって財産分与の割合が増減するわけではありません。
両者を混同せず、それぞれ適切に請求することが重要です。
【婚姻期間中の厚生年金等を分割する】年金分割
年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金もしくは共済年金の納付実績を夫婦間で分割する制度です。
これによって、専業主婦(夫)などで自身の年金が少ない方でも、将来的には一定の年金を受け取れます。
年金分割には、「合意分割」と「3号分割」という以下の2種類に分けられます。
手続き
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概要
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条件
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合意分割
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原則として婚姻期間中の納付記録の50%まで分割できる
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当事者の合意に基づいて分割割合を決める
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3号分割
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第3号被保険者であった期間の配偶者の厚生年金を50%ずつ分割できる
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2008年4月以降の婚姻期間のみが対象となる
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年金分割の手続きは、離婚後2年以内に年金事務所でおこなう必要があります。
特に専業主婦(夫)だった方や、配偶者より収入が少なかった方にとっては、将来の生活保障に関わるきわめて重要な権利のひとつと言えます。
年金分割は、離婚時に一度きりの手続きであり、その後の人生に長く影響する制度です。
慰謝料とは異なり、将来にわたって継続的に受け取れる権利なので、必ず請求しましょう。
【親権・養育費・面会交流】子どもに関すること
未成年の子どもがいる場合、慰謝料だけでなく
- 親権者
- 養育費
- 面会交流
という3つの要素を決めることが必要です。
これら3つの要素については、以下の表でまとめました。
要件
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概要
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詳細
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親権者
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未成年の子どもを監護・教育し、財産を管理する権利を持つ人
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親権には、子どもの財産管理権と身上監護権が含まれる
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養育費
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子どもが経済的に自立するまで、監護親が監護親に支払う子どもの生活費
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双方の収入や子どもの年齢、人数などをもとに決定する
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面会交流
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別居中の親と子どもが定期的に会って交流する機会を保障するもの
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面会頻度や方法、実施場所などを具体的に取り決める
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これらを取り決めるときは、離婚協議書や調停調書、判決文に明確に記載し、法的効力を持たせることが大切です。
特に養育費については、公正証書を作成しておけば、支払いが滞った場合に強制執行を申し立てられます。
【別居中の場合】離婚成立までの生活費
離婚成立まで、収入が多い方が少ない方に夫婦や未成熟子の生活費(婚姻費用)を支払う義務があります。
なぜなら、たとえ別居中であっても法律上夫婦である以上、生活費の分担は必要だからです。
婚姻費用とは、別居中の配偶者もしくは子ども両方の生活費です。
金額は双方の収入、生活水準、子どもの有無などによって異なりますが、裁判所が定める算定表に基づいて計算されるケースが多いとされています。
別居中の婚姻費用の支払いが滞る場合は、家庭裁判所に「婚姻費用分担請求調停」を申し立てれば、正式に金額を決定してもらえます。
調停で決まった婚姻費用は、離婚が成立するまで毎月支払われることになります。
婚姻費用は離婚成立まで発生し続けるので、別居期間が長引いた分だけ金額も膨らみます。
また、過去に遡って請求することも可能なので、別居開始から早めに請求手続きを進めるのが望ましいでしょう。
浮気の離婚慰謝料請求は弁護士に相談することが重要
浮気による離婚慰謝料請求は、法的専門知識や交渉術が必要になるので、できるだけ早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に依頼すれば、精神的負担が軽減され、手続きが有利に進みやすくなります。
また、適正価格で慰謝料を受け取れる可能性も高まります。
特に配偶者や不倫相手が交渉に応じない場合や、証拠が不十分な場合には、弁護士のサポートが重要となります。
弁護士は法的知識に基づいて最適な解決策を提案し、必要な書類の作成や手続きを代行してくれます。
さらに、証拠収集の方法や時効の管理など専門的なアドバイスを受けられるのも大きなメリットです。早い段階で弁護士に相談して、より有利な条件で離婚問題の解決を目指しましょう。
【浮気された側】慰謝料問題を弁護士に相談するメリット
浮気被害に遭った際、弁護士に慰謝料請求を相談すれば多くのメリットが得られます。
まず、弁護士は慰謝料相場や増額要素に精通しているので、不貞行為の悪質性や期間、精神的苦痛の程度を考慮して適正額を見極め、慰謝料を確実に回収するためにサポートしてくれます。
また、個別の事情に応じて親身にアドバイスしてくれるのも大きなメリットです。
婚姻期間や子どもの有無、相手の資力などを踏まえ、交渉戦略や離婚の可否といった総合的な判断を下してくれます。
さらに、証拠収集についても法的に有効な証拠の判断基準や法的に問題のない証拠集めの方法収集についても具体的に教えてくれます。
加えて、精神的負担を軽減できるのも大きなメリットです。
弁護士が交渉を代行すれば、配偶者や不倫相手との直接対峙を避けられるので、精神的ストレスを最小限に抑えた上で交渉を論理的に進められるでしょう。
【浮気した側】慰謝料問題を弁護士に相談するメリット
浮気をしてしまった側が弁護士に慰謝料問題を相談することにも、多くのメリットがあります。
もっとも大きなメリットは、慰謝料を減額できる可能性が高まる点です。
弁護士は慰謝料相場や減額事由に精通しているので、夫婦関係がすでに破綻していた証拠や不倫期間の短さなど、減額要因を適切に主張してくれます。
また、当事者同士では感情的対立から話し合いが長期化しがちですが、弁護士が介入すれば、冷静かつ建設的な交渉が可能になります。
法的手続きや書類作成にも精通しているので、時間や心理的負担を最小限に抑えられるでしょう。
さらに、弁護士には守秘義務があるので、浮気問題を周囲に知られるリスクも抑えられます。
なお、清算条項を含む合意書を作成してもらえれば、「慰謝料が思ったより少なかった」といった理由をつけて慰謝料を追加で請求される可能性をなくせるので、将来的に起こり得る経済的リスクを最小限にできるでしょう。
ただし、弁護士の役割は浮気をしたことの責任逃れを手伝うことではありません。
あくまで、「浮気問題を法的観点に基づいて解決を目指すこと」というのはしっかりと理解しておきましょう。
【ケース別に解説】浮気が原因で慰謝料が発生した判例
浮気が原因で慰謝料が発生した実際の裁判例を知っておけば、具体的にどのような状況でどの程度の慰謝料が認められるのかを理解できます。
以下では、浮気が原因で慰謝料が発生した判例を3つ紹介します。
ケース①:慰謝料が比較的低額だった判例
1つ目に紹介するケースは、夫の浮気によって妻が50万円の慰謝料を勝ち取った判例です。
このケースでは、夫の不貞行為は約2ヵ月という比較的短い期間であり、その後の夫婦関係も修復され、離婚には至りませんでした。
このことから、裁判所は妻の精神的苦痛は相対的に低いと判断しました。
さらに夫が不貞行為を認めて反省している点や不倫相手との関係も完全に解消されている点などもふまえ、慰謝料は50万円で留まりました。
このケースから、不貞行為の期間やその後の夫婦関係の状況、加害者の反省の度合いが慰謝料額の算定において重要な要素となることがわかります。
特に離婚に至らないケースでは、夫婦関係が修復される可能性が慰謝料額に大きく影響することが示されています。
ケース②:相場通りだが比較高額だった判例
次に紹介するのは、夫の浮気が原因で妻がPTSDを発症し、300万円の慰謝料が認められた判例です。このケースでは、夫の不貞行為が約1年間続き、さらにその後は離婚に至っています。
この判例で特に重視されたのは、妻がPTSDを発症し、専門的な治療を受けなければならなくなったという点です。
医師の診断書やPTSD治療のための通院記録が証拠として提出され、不貞行為による精神的苦痛が通常よりも深刻であることが認められました。
また、夫が不貞行為を最後まで認めようにしなかった点も慰謝料額が高額になる要因となりました。
このケースからは、不貞行為によって精神病などの健康被害が生じた場合や加害者が不誠実な態度を取った場合は、慰謝料が高額になる傾向があることがわかります。
ケース③:慰謝料が相場よりも高額となった判例
最後に紹介するのは、夫の浮気だけでなくDV(ドメスティック・バイオレンス)もあったため、慰謝料1,000万円という高額な賠償が認められた判例です。
このケースでは、約3年間にもわたる不貞行為に加えて、妻に対する身体的・精神的暴力が継続的に繰り返されていました。
裁判所は、夫からの不貞行為に加えて、DVによる肉体的・精神的苦痛も考慮し、慰謝料額を算定しました。
特に、暴力行為が子どもの面前でおこなわれたことや妻がPTSDと診断され長期間の治療を要したことが、慰謝料が跳ね上がる決定打となりました。
また、夫が高収入であったのも考慮され、経済力に応じた賠償責任が課されました。
このケースからは、不貞行為だけでなく暴力といった不法行為の有無や、不倫をした側の経済力によって、慰謝料が通常の相場を大幅に超える可能性があることがわかります。
浮気が原因で離婚した場合の慰謝料に関するよくある質問
浮気が原因で離婚する場合、慰謝料についてさまざまな疑問を持つ方は少なくありません。
ここでは、浮気が原因で離婚する場合に慰謝料について、よくある質問と回答例を紹介します。
もちろん実際の状況は個々のケースによって異なりますが、ひとつの情報として頭に入れておきましょう。
Q:肉体関係なしだと浮気の離婚慰謝料の請求はできない?
肉体関係なしだと、浮気の離婚慰謝料の請求は一般的に難しいとされています。
なぜなら、浮気による離婚慰謝料が認められるのは、基本的に不貞行為(肉体関係を伴う浮気)があった場合のみだからです。
法律上、配偶者の不貞行為に対する慰謝料請求は、「夫婦の一方が配偶者以外の者と肉体関係を持つこと」を前提としています。
そのため、メールやLINEでの親密なやり取りだけだったり、肉体関係を伴わないプラトニックな関係性だったりした場合は、原則として慰謝料請求の対象とはなりません。
ただし、肉体関係がなくても、あまりにも親密な関係が継続し、夫婦の精神的な結びつきを著しく害するような場合には、例外的に慰謝料が認められる可能性があります。
もしくは、慰謝料には至らなくても、そのような行為が原因で離婚に至った場合には、有責配偶者として離婚給付(財産分与や養育費など)で不利に扱われる可能性もあります。
Q:浮気が原因で離婚する場合、配偶者と浮気相手の年収次第で慰謝料額は変わる?
配偶者については、年収次第で離婚慰謝料の相場が変わる可能性があります。
年収が高い場合、通常の慰謝料額では被害者の精神的苦痛は十分に慰謝されないと考えられるので、慰謝料が増額される余地があります。
一般的に、裁判所は加害者の支払い能力も慰謝料算定のひとつの要素として考慮します。
特に高収入の配偶者の場合、生活水準の高さを考えると、相応の慰謝料額が必要とされる傾向があります。
例えば、年収1,000万円以上の場合は、慰謝料額が相場よりも高くなるケースもあるでしょう。
一方、浮気相手においては、たまたま高年収であったとしても、それだけで慰謝料を増額する理由とはなりづらいのが実情です。
ただし、浮気相手が経済的に裕福であり、その資力を利用して積極的に不貞関係を続けた場合は、その悪質性の高さから高額な慰謝料が認められる可能性はあります。
いずれにせよ、年収は慰謝料額を決める唯一の要素ではなく、不貞行為の期間や態様、精神的苦痛の程度といったさまざまな要素をふまえて総合的に判断されます。
Q:妻の浮気に対して慰謝料を請求する場合と夫が浮気した場合、相場は変わる?
このような場合、慰謝料請求の相場は基本的に変わりません。
どちらのケースにおいても、浮気による離婚慰謝料の相場は、50万~300万円程度とされています。
法律上、夫婦は平等な権利を持ち、同等の義務を負っています。
そのため、原則として不貞行為による精神的苦痛に対する賠償である慰謝料も、性別によって差が設けられることはありません。
重要なのは、個々のケースにおける不貞行為の態様や期間、精神的苦痛の程度などの具体的な事情です。
ただし、実務上は夫の収入が妻より高い傾向があるので、夫が浮気した場合の慰謝料が高くなるケースが見られることはあります。
これは、性別による差ではなく、「収入」という要素が慰謝料額を決めるうえで大きく影響した結果です。
まとめ
浮気が原因で離婚する場合の慰謝料の相場は、離婚する場合は約50万円~300万円、離婚しない場合は約20万円~100万円程度ですが、個々の事情によって大きく変動します。
特に不貞行為の期間や態様、悪質性、精神的苦痛の度合いなどが慰謝料額に影響を与えます。
浮気が原因である離婚慰謝料の問題は、複雑な法律が絡むだけでなく、感情が入ってしまいこじれてしまいがちです。
早い段階で弁護士に相談すれば、精神的負担を軽減しながら適切な解決を図れます。
特に証拠収集や交渉など、専門的な知識が必要な場面では、弁護士のサポートが大きな助けとなるでしょう。
浮気による慰謝料請求と離婚は、人生の中でも特に困難な局面のひとつです。
しかし、適切な知識と支援を得られれば、この困難を乗り越え、より良い未来へと歩みを進めるでしょう。
この記事が、そうした道のりの一助となれば幸いです。