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離婚などの家事事件において、「即時抗告」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
しかし、即時抗告とはそもそも何なのか、即時抗告をしなければならない場面・手続きは何かなどについて詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。
本記事では、即時抗告の概要や即時抗告をしなければならない場面、即時抗告をするメリットなどをわかりやすく解説していきます。
即時抗告とは、裁判所の決定に対する不服申し立ての一種で、法律で特に定めている事件に限り申立てをおこなうことができます。
逆にいうと、法律で特に定められていない事件では申立てをおこなうことができません。
即時抗告自体は家事事件に限らず一般的な民事事件や刑事事件でもできます。
家事事件においては審判の判断に不服がある場合に即時抗告ができます。
さらに詳しい内容を以下で見ていきましょう。
裁判所に対する不服申立ての手段として、即時抗告の他に通常の抗告というものがあります。
抗告とは、家事事件に限らず民事事件や刑事事件で一般的におこなわれる不服申立ての方法であり、裁判所の決定、命令または審判に対して不服がある場合におこないます。
通常抗告には不服申立ての期間の定めがありませんので、いつでも申し立てることが可能です。
これに対し即時抗告とは、特に迅速な確定が必要とされるため不服申立ての期間が定められている抗告をいいます。
民事訴訟では即時抗告は裁判の告知を受けてから1週間以内におこなわなければなりませんが、家事事件の場合は審判の告知から2週間以内におこなう必要があります。
一般的な抗告では、不服を申し立てたとしても審理は停止されません。
一方、家事事件の即時抗告においては、審判の判断が確定することはないため、即時抗告をすることによって結果が出るまで安心して争うことができます。
離婚の際に即時抗告をする場面は、審判の判断に不服がある場合と定められています。
離婚の場合、離婚調停から始まり、細かな条件でお互いの合意が得られず不成立になりそうな場合に、裁判官の判断により職権で審判に移行して判断を下します。
その判断に納得できない場合には2週間以内に即時抗告をおこなうことができます。
審判の結果に納得できない場合、即時抗告をすることによりメリットが得られます。
以下では、主なメリットとして2つを挙げた上で説明します。
即時抗告をおこなった場合のメリットは、裁判官が下した審判の結果を停止させることができる点です。
養育費請求調停において、養育費の額に争いがあって不成立になりそうな場合は審判に移行します。
確定した金額に納得がいかない場合、即時抗告をすることで、即時抗告の判断が出るまでの間は支払いを停止できるので、その間に新たな証拠を集めるなどの対策を打つことができます。
もう一つのメリットは、即時抗告によって高等裁判所に判断してもらえる点です。
家事審判がおこなわれるのは家庭裁判所ですが、即時抗告をすると高等裁判所が判断を下します。
よって、上級審により別の裁判所に再審理をしてもらうことができます。
家庭裁判所の判断に納得できない場合には、高等裁判所で再審理してもらうことによって納得いく判断をしてもらうことができるかもしれません。
即時抗告をした場合、メリットの他にデメリットもあります。
以下では、即時抗告の主なデメリットを2つ挙げて説明します。
このようなデメリットがあることを理解して即時抗告をおこなうかを検討しましょう。
即時抗告をする場合、弁護士に相談する場合は裁判所への支払い以外にも費用がかかります。
裁判所に支払う実費は養育費などの場合1,800円ですが、弁護士に依頼する場合は10~30万円程度の弁護士費用がかかります。
あまり費用をかけたくない人にとってデメリットといえるでしょう。
即時抗告を申し立てるためには、抗告状を作成し、証拠書類を収集して提出しなければなりません。
書類の作成や収集に手間と時間がかかるため、即時抗告をする場合はそのようなデメリットがあることを認識しておきましょう。
審判の判断に納得がいかない場合に即時抗告をすることができますが、はじめの審判の判断よりも不利な判断が出る可能性があります。
つまり「即時抗告をしないほうが良かった」ということにもなりかねないため、即時抗告をする際には慎重な判断が求められます。
即時抗告をするための費用の内訳として、実費である裁判所への手数料と、弁護士に依頼した場合の弁護士費用の2つがあります。
以下では、この2つの費用について説明します。
即時抗告を申し立てる際、家庭裁判所に手数料を支払う必要があります。
家事事件の場合の即時抗告の費用は事件の類型によりますが、1,200円または1,800円のいずれかです。
即時抗告を弁護士に依頼する場合、弁護士費用がかかります。
弁護士費用は着手金と報酬金に分かれます。
着手金は即時抗告に着手する際に支払われる費用で、納得いかない結果になった場合でも戻ってきません。
一方、報酬金は希望の結果が得られた場合に発生する費用で、希望の結果が得られなかった場合には支払う必要はありません。
それぞれの費用の相場は以下のとおりです。
法律事務所の料金規定や事案の複雑さによって上下しますので、詳細は法律事務所に問い合わせてみましょう。
着手金 |
10万~30万円程度 |
---|---|
報酬金 |
20万~30万円程度 ※上記とは別に、得られた経済的利益の10%~20%程度がかかる場合があります。 |
即時抗告をおこなう場合、結果が出るまでに多くの段階を踏む必要があります。
以下では、即時抗告をしてから結果が得られるまでのイメージを持ってもらうために、即時抗告の流れを各段階に分けて詳しく解説します。
家庭裁判所での審判手続では、裁判官が審判を下すことになります。
審判が下されると、当事者の双方に審判書が送付されますが、審判の内容に納得がいかない場合には即時抗告を検討することになります。
即時抗告を申し立てる場合、審判書を受け取った日(告知の日)の翌日から2週間以内に、審判を下した家庭裁判所に対し即時抗告の申し立てをしなければなりません。
内容の検討や抗告状の作成期間を考えると、2週間という期間は短いため、期間が経過しないよう注意してください。
期間が経過してしまうと審判が確定して即時抗告を申し立てることはできなくなりますので、ひとまず抗告状だけを提出しておき後日に抗告理由書を提出する方法がよいでしょう。
即時抗告を申し立てる場合、審判書を受け取った日の翌日から2週間以内に抗告状を提出する必要がありますが、期間が短いため、具体的な理由を記載せずとりあえず抗告状を提出するということも認められています。
その場合、抗告状の提出から14日以内に、具体的理由を記載した抗告理由書を家庭裁判所に提出する必要があります。
具体的理由の記載は時間がかかりますので、期間が経過しないよう注意する必要があります。
家庭裁判所に即時抗告が受理されると、抗告状などの書類は高等裁判所へ移ります。
高等裁判所は、相手方に抗告状の写しを送付します。
相手方は、反論がある場合には主張や証拠提出ができます。
高等裁判所は、理由がないことが明らかなとき等を除いて、当事者の陳述を聴かなければならないこととされています。
即時抗告を申し立てた場合、基本的には高等裁判所から陳述の聴取がありますので、準備をして臨むことが重要です。
高等裁判所は、抗告状、抗告理由書、提出された証拠、当事者の陳述を総合考慮し、審判を取り消すべきかどうかを判断します。
即時抗告に理由があると判断した場合には、基本的に家庭裁判所に代わって自ら裁判をおこないます。
一方、即時抗告に理由がないと判断した場合には、即時抗告を棄却することになります。
高等裁判所での審理の結果、即時抗告に理由がないと判断された場合には即時抗告が棄却されることになります。
高等裁判所の判断に納得がいかない場合、告知を受けた日から5日以内に特別抗告または抗告許可を申し立てることができます。
特別抗告とは、高等裁判所の決定が憲法に違反している場合に申し立てることができます。
許可抗告とは、最高裁判所の判例等と相反する場合に申し立てることができます。
特別抗告や抗告許可の申し立て期間は非常に短いので期間を経過しないよう十分に注意しなければなりません。
また、申し立ての理由が非常に限定されていますので、特別抗告や許可抗告が認められる可能性は低いといってよいでしょう。
つまり、審判の判断に不服がある場合には、高等裁判所での即時抗告の審理に全力を尽くすことが重要です。
調停から審判に移行した結果、審判で納得いかない判断が下されてしまった場合には即時抗告を検討しましょう。
即時抗告は申し立ての期間が短いことに加え、抗告状や抗告理由書の作成、証拠書類の収集など、専門的な知識が必要です。
即時抗告を検討している場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、即時抗告をすべきかアドバイスがもらえますし、依頼すれば即時抗告に関する手続きを一任できます。
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