「慰謝料」が得意な弁護士に相談して悩みを解決!
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悪意の遺棄(あくいのいき)とは、民法 第770条に規定された法律で離婚が許される理由(法定離婚事由)の一つで、「配偶者に悪意で遺棄されたとき」に該当します。
たとえば、「生活費を渡さない」「正当な理由のない別居」「健康なのに働こうとしない」といった行為が挙げられます。
民法 第752条には、夫婦間の義務である「同居の義務」「協力義務」「扶助の義務」が定められており、これに違反したとして、離婚原因になったり、慰謝料を請求することができます。
なお、悪意の遺棄による離婚慰謝料の相場は50万円〜300万円といわれています。
悪意とは、「夫婦関係の破綻をもくろんでいたり、破綻しても構わないという意思」とされ、遺棄とは「正当な理由もなく同居・協力・扶助の義務を怠ること」をいいます。
具体的にはどういった行動が悪意の遺棄に該当するのか、そして慰謝料を獲得するにはどんな証拠があればいいのか、解説していきます。
配偶者との関係に悩まされている方へ
配偶者が悪意の遺棄に該当する行為をした場合、離婚と慰謝料請求をすることが可能です。
ただ相手の行為が悪意の遺棄に該当するかは、
- 生活費負担の状況
- 配偶者への影響
- 夫婦の経済力の差
- 子供の有無 など
様々な要素を考慮して判断されます。
悪意の遺棄に該当するのか考えている方は、弁護士への相談・依頼がおすすめです。
次のようなメリットがあります。
- 悪意の遺棄に該当するかの見通しが分かる
- 相手との離婚交渉を任せることができる
- 慰謝料請求手続きを一任できる など
まずは離婚問題を得意としている弁護士にお気軽にご相談ください。
悪意の遺棄における3つの義務
民法では、「夫婦は同居し、互いに協力、扶助し合わなければならない」という規定を設けています。(民法 第752条)
夫婦になった以上、同居義務(一緒に住まなければならない)、協力義務(協力し合わなければならない)、そして扶助義務(助け合わなければならない)という三つの義務を示した法律です。
同居義務とは?
夫婦は一緒に住まなければならないという義務を示したものです。
同居義務に関しては、あくまで倫理的な規範を示しただけのものであり、法的な強制力はありません。
ただし、強制力は無くても、正当な理由も無く同居をしないのは離婚原因となることもあります。
協力義務とは?
夫婦は互いに協力すべきであるという規定です。「夫婦は互いに協力し合って結婚生活を送るべし」というそのままの意味ですね。
具体例でいうと、夫が妻に家事の全てを強制するとか、生活費を全く出さないということは、協力義務に違反しているとされることがあります。
扶助義務とは?
夫婦は互いに扶助し合うべきと定めています。
言い換えれば、「夫婦の一方が扶助を必要とするような場合は、もう片方が同等の生活を送れるように援助すべし」ということです。
たとえば妻が病気や怪我で動けなくなった場合、夫は妻に対して同程度の生活を送れるように支援したり、生活費を出すなどの面倒をみる必要があります。
即離婚?悪意の遺棄となる11の行動
配偶者(夫・妻)が正当な理由もなく以下のような行為をおこなった場合、悪意の遺棄に該当する可能性があります。
どのような行動があるかチェックしておきましょう。
生活費を配偶者に渡さない
悪意の遺棄に該当する行為の中でも、もっとも多い離婚理由です。
近年では女性の社会進出が増加しており、男女間での収入格差も年々縮まりつつありますが、十分ではありません。
引用元:厚生労働省|平成 29 年賃金構造基本統計調査の概況
主な家事・育児の担い手はいまだ女性であり、女性側は家庭にお金を入れてもらえなければ、困窮してしまいます。
引用元:内閣府男女共同参画局|男女共同参画白書(概要版) 平成30年版 第3章 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)
理由も無く同居を拒否する
なんとなく一緒にいたくないなどの理由は基本的に認められません。
ただ、相手が理由はわからないが、別居に同意している場合は悪意の遺棄とはなりません。
頻繁に家出を繰り返す
いい年をした大人が何をやっているのか?という気もしますが、家出をした結果、家事や仕事に影響を与えてしまうようでは悪意の遺棄になる場合があります。
必要も無いのにアパートで1人暮らしをしている
理由のない別居と考えられもしますが、アパートの家賃も無駄にしているので、協力義務にも違反していると考えられます。
配偶者を虐待して追い出す、家を出ざるを得ないようにしむける
扶助義務、協力義務、同居義務の全てに違反していますので、悪意の遺棄に該当します。
浮気相手のところで生活している
浮気がいつしか本気になり、全く帰ってこないパターンです。
この場合は悪意の遺棄のほかに不倫にも該当します。慰謝料請求を考えた場合、相当の額を請求できることがあります。
生活費は送ってくるが、愛人宅に入り浸る
お金だけ渡しておけばいいんだろという相手の顔が目に浮かぶような行為ですね。
こんなことをされた日には即座に離婚を考えるでしょう。
実家に帰ったまま自宅に帰ってこない
配偶者の実家への依存度が高く、ほとんど自宅に帰ってこないというケースが見られます。
配偶者が実家に入りびたり、実家から帰ってこないのは同居義務違反となる場合があります。
単身赴任の夫から生活費が送られてこない
場合によっては単身赴任が頻繁にある夫を持つこともあるでしょう。
その場合、同居義務違反にはなりませんが協力義務や扶助義務を怠ってしまうケースもあります。生活費の確保が難しくなると、離婚の可能性が出てきます。
健康な夫が働こうとしない
なんの理由もないのに働こうとしないのは、離婚原因となり得ます。
一方が全く家事を手伝おうとしない
家事は女性の仕事という古臭い考え方を持っている方もいます。
逆に、妻が家事を放棄し、夫がすべてをおこなっている家庭もあります。
全く手伝わないことで配偶者妻がストレスを感じるならば、悪意の遺棄となる場合があります。
悪意の遺棄とはならない行為
-
単身赴任による必要な別居
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配偶者のDVなどに耐えかねて別居する場合
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夫婦関係を見直す為の別居
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子どもの教育上必要な別居
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治療のために必要な別居
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夫婦関係が破綻したゆえの別居 など
※夫婦関係破綻後の別居は破綻の結果であり破綻の原因ではない
主に別居に関するものが多いですが、生活費を渡しても自分のために全部使うという行為も悪意の遺棄になる場合がありますので注意しましょう。
女性側の離婚ランキング2位|悪意の遺棄となった判例
冒頭でご紹介したとおり、悪意の遺棄は女性側の離婚理由で、性格の不一致に続く2番目に多い理由でした。
また、男性側でも、同居に応じない・家庭を捨てて省みないといった理由がランクインしています。
悪意の遺棄関係でどんな判例があるのかも見ておきましょう。
妻の置き去り---浦和地裁
夫は半身不随の身体障害者で日常生活もままならない妻を、そのような不自由な生活、境遇にあることを知りながら自宅に置き去りにし、正当な理由もないまま家を飛び出して長期間別居を続け、その間妻に生活費を全く送金していないから、夫の前記行為は民法770条1項2号の「配偶者を悪意で遺棄したとき」に該当する。
引用元:これって悪意の遺棄じゃないですか?
夫のあまりに多い出張、生活費を入れない例—大阪地裁
夫がたとえ仕事のためとはいえ、余りに多い出張、外泊等家族を顧みない行動により、妻に対する夫としての同居協力扶助義務の義務を十分に尽くさなかったことをもって今直ちに原告に対する「悪意の遺棄」に当たるとするにはやや足りないけれども、なお「婚姻を継続しがたい重大事由」があるとするに十分であり、その責任の過半が夫にあることもまた明らかである。
引用元:これって悪意の遺棄じゃないですか?
夫の家出、愛人宅に入り浸りー東京高判
会社倒産後に夫が家出して不貞相手と同棲し、アルコール依存症等で入院中、妻がこれを見舞わず、その生活費や入院費も負担せず、夫の帰宅も受け入れないことが悪意の遺棄に当たらず、また、妻が夫の財産を仮差押えし、夫も別の不貞相手と同棲する等の破綻状態が10年以上続いて回復不能であるが、有責配偶者たる夫からの離婚請求は認められないとした事例。
引用元:悪意の遺棄に関する判例
ある判例では、わずか2ヶ月間で「悪意の遺棄」に当たるとしたケースもありますので、別居期間の長短より、遺棄の意思が明確かどうかに重点がおかれていると見るべきでしょう。
悪意の遺棄で請求できる慰謝料の相場
悪意の遺棄で請求できる慰謝料は基本金額を100万円とし、「同居義務違反に関する事情」「協力・扶助義務違反に関する事情」を考慮して増減を決定していきます。
大体の相場としては約50万円〜300万円と考えて良いと思います。
ただし、以下の事情に該当するケースでは、慰謝料が増額される可能性があります。
- 婚姻期間が長い
- 未成熟の子どもがいる
- 反省の態度が見られない
- 不倫相手と同居するために出ていった
- 悪意の遺棄の内容が著しく悪質であるなど
悪意の遺棄による慰謝料については「離婚した際の慰謝料の金額」で詳しく解説しています。
悪意の遺棄で慰謝料を請求する方法
悪意の遺棄で慰謝料を請求する流れは、以下のとおりです。
- 話し合う
- 内容証明郵便を送付する
- 調停を申し立てる
- 訴訟を提起する
はじめに、慰謝料の支払い義務や支払いについて相手方と話し合います。
そのまま慰謝料の話し合いがまとまった場合には、内容について合意書を作成します。
後から、再度、トラブルにならないよう、弁護士に相談し、法的に有効な合意書を作成しましょう。
一方で、話し合いがまとまらない場合や、相手が応じない場合には内容証明郵便を送付することがあります。
その場合、慰謝料の金額や支払い期限を明確に記載しましょう。
相手との話し合い、内容証明郵便の送付については、弁護士へ相談・依頼をして進めるのが良いでしょう。
それでも解決しないときには、家庭裁判所に調停を申し立てます。
調停では調停委員を介して話し合いがおこなわれます。
調停が成立したら調停調書が作成され、慰謝料の支払いが確定します。
調停でも成立しないときには、訴訟を提起します。
訴訟では提出した証拠をもとに裁判所が慰謝料の支払いについて判決を下します。
確実な慰謝料請求に必要な証拠は?
どのような悪意の遺棄になるかによって多少の違いはありますが、例えば以下のような証拠が挙げられます。
金銭絡みの悪意の遺棄であれば、通帳など資料をもとに証明していくことになります。
配偶者が実家に帰り、自宅に戻ってこない場合や、生活費だけは送ってきても愛人宅に入り浸っている、家出を繰り返すといったケースについては、弁護士に相談しながら準備をされるのが良いと思います。
離婚をしなくても、まずは生活費だけでも支払ってもらいたい…という方は関連記事もあわせてご覧ください。
また悪意の遺棄でお困りなら、まず法テラスの無料相談を利用して、弁護士に相談してみる方法もあります。
慰謝料請求には時効がある
悪意の遺棄を理由とした慰謝料請求には、時効があります。
その時効とは、悪意の遺棄に該当する行為から3年です。
この期間を過ぎてしまうと、慰謝料の請求が認められなくなることがあります。
3年が経過する前に、内容証明郵便の送付や調停の申立てをおこない、時効の成立を阻止することが大切です。
悪意の遺棄に関するまとめ
悪意の遺棄は、離婚原因ともなり、慰謝料の請求原因ともなります。
悪意の遺棄を法的に有効なかたちで主張していくためには、弁護士のサポートを得ることがおすすめです。
弁護士に相談しながら、最善の解決を目指しましょう。