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公開日:2016.2.3  更新日:2023.5.29

婚姻費用分担請求で家賃の支払いなどお金の不安を解決する方法

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
婚姻費用分担請求で家賃の支払いなどお金の不安を解決する方法
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婚姻費用分担請求(こんいんひようぶんたんせいきゅう)とは、別居中の妻(夫)の生活を維持するために必要な費用(養育費用を含みます。)の請求のことを言います。

婚姻費用に含まれるもの
  • 居住費
  • 生活費(食費・光熱費など)
  • 子供の学費

婚姻費用分担請求はあくまでも婚姻関係が継続している場合でしか請求できません。逆を言えば、別居はしていても離婚していない場合、夫(妻)が生活費や居住費などをいれてくれないときは、費用を請求する権利があるということです。

【根拠】

(同居、協力及び扶助の義務)

第七百五十二条  夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

第七百五十八条3  共有財産については、前項の請求とともに、その分割を請求することができる。

引用:民法

司法統計年報平成27年版によれば、婚姻費用分担請求で家事審判や調停を起こしている方は昔と比べ圧倒的に増えていることが分かります。

仕事をしている場合、お金の心配はあまりないかもしれませんが、家事や育児を担当し仕事をしていない場合、夫(妻)から金銭を受け取らなければ、生活するのは現実的に難しいでしょう。そこで今回は、婚姻費用分担請求に必要な知識として、請求できる金額の目安や具体的な手順などをご紹介します。

もらえなかった分の生活費も請求できる?

別居中の生活費を確実に請求したいのであれば、準備をした上で調停を行うことをおすすめします。まずは、弁護士へご相談ください!

この記事に記載の情報は2023年05月29日時点のものです

婚姻費用として請求できる項目と金額の目安

婚姻費用は具体的に月にいくらくらい受け取れるのでしょうか。婚姻費用は生活費などの必要経費が該当するため、毎月決まった金額が支払われます。

婚姻費用の金額はまず夫婦で話し合い、そこで金額が決まらなければ裁判所へ調停を申し立てて、金額の落とし所を探ります。

請求できる金額の目安|婚姻費用算定表を参考にする

婚姻費用の金額は、実務的には夫婦の収入・子供の人数と年齢などを考慮して決めています。請求でき婚姻費用の目安は下図にまとめました。妻の年収は100万円を想定し、子供の年齢や数、夫の年収でどのくらい変わるのか参考にしてみてください。


【請求できる婚姻費用の目安:妻の年収が100万円の場合】

子供の年齢

子供の数

夫の年収400万円

夫の年収500万円

夫の年収600万円

0~14歳

1人

4~6万円

4~6万円

6~8万円

2人

4~6万円

6~8万円

8~10万円

15~19歳

1人

4~6万円

6~8万円

6~8万円

2人

6~8万円

8~10万円

10~12万円

【POINT】

  • 夫や妻の年収には児童扶養手当などのお金は含めなくて良い
  • 給与所得者は源泉徴収票の「支払金額」、自営業者は確定申告書の「課税される所得金額」に記載された金額が年収になる

子供一人当たり3~5万円の婚姻費用および養育費の支払いが見込めることが分かります。また、夫の収入が多く、妻の年収が低いほど請求できる婚姻費用の金額は高くなると想定できます。

上記の条件に該当しない方は、裁判所のホームページに標準的な生活状況を元に作成された「婚姻費用算定表」がありますので、こちらの数値を参考にしてみるといいでしょう。


引用:裁判所

調停で審判が下される際にもこの算定表を利用されることが多いようです。

実は夫婦で合意がとれれば婚姻費用の支払い金額はいくらでも良い

婚姻費用は夫婦で同意できれば、金額は自由に決められます。それまでの生活費を元に、別居するにあたり余分にかかる費用などを調べてから、夫婦間で話し合ってみましょう。

万が一、夫婦での合意が得られない場合は調停の申立てが必要となります。

婚姻費用として請求できる項目

婚姻費用として請求できる項目について確認しておきましょう。

婚姻費用として請求できるもの
  • 居住費(家賃や住宅ローンなど)
  • 生活費(食費・光熱費など)
  • 子供の学費
  • 子供の生活費

婚姻費用を受け取れる期間

現在、裁判所の解釈では、婚姻費用が受け取れるのは請求手続きをした時点から認められるとされています。そのため、請求前の婚姻費用を遡及的に請求することは基本的にできません。


もし別居した後に生活費を支払ってもらえない状況が発生すれば、すぐに婚姻費用分担請求を行うといいでしょう。
ちなみに、婚姻費用分担がの受取りが終わるタイミングは、
離婚が成立するか同居を再開するまでとされています。そのため、離婚後は相手から婚姻費用は受け取れなくなるので、それまでに自分自身の収入源を確保しておくことをおすすめします。

婚姻費用分担請求の方法

必要な書類

婚姻費用分担請求で調停を申し立てる場合に必要な書類は以下の4点です。

  1. 婚姻費用の分担請求調停の申立書
  2. 夫婦それぞれの戸籍謄本
  3. 申立人の収入に関する資料(源泉徴収票、確定申告書、給与明細等)
  4. 相手方の収入に関する書類(入手が可能であれば)

これらの書類を揃えたら、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所へ提出しましょう。

必要な費用

自身で婚姻費用分担請求を行う場合は、申し立てに以下の費用がかかります。さらに、もし弁護士を雇った場合は、その弁護料が必要となります。収入印紙は郵便局やコンビニで購入が可能であり、切手代は家庭裁判所から書類を郵送するために必要となる費用です。

  1. 収入印紙代:1,200
  2. 切手代: 800円(家庭裁判所によって異なる)

調停の流れ

調停を経験したことがなければ、どのような流れで調停が進んでいくのか不安を感じている人もいるでしょう。一般的に、調停は以下のような流れで進行されていくため参考にしてください。

①調停期日が通達される

婚姻費用分担請求を申し立てると、調停の期日が記載された呼出状が申立人と相手方の住所へ届きます。呼出状は申し立てから2週間で到着します。調停の期日は申立てから約1ヶ月後です。

②第一回目の調停が始まり、調停室で話し合いが行われる

家庭裁判所へ到着すると、まずは待合室で待機することになります。待合室は夫婦別になり、お互いに顔を合わす心配はありません。その後、時間が経てば調停室に呼び出されて調停がスタートします。

基本的には申立人が先に調停へ臨むことになるでしょう。調停室には、男女1名ずつの調停委員と、裁判官が待機しており、まずは調停の進行方向について説明があります。その後は、裁判官は同席せず、基本的には調停委員との間でやり取りをするようになります。

その後、30分ほど婚姻費用分担請求を申し立てた経緯などについて質問されるので、事実と自身の気持ちをきちんと伝えるようにしましょう。話し終えると、相手方と入れ替わり、相手も申立人と同様の話し合いを行います。

【注意すべきPOINT】

  • 調停の期日に、定められた家庭裁判所へ遅刻しないように向かいましょう。
  • 提出しなければいけない源泉徴収票や給与明細などの資料があれば、忘れないように持参する必要しましょう。

③お互いの言い分を聞かされるために再度調停室へ

夫婦それぞれが話し合うと、お互いがお互いの言い分を知るために、再度調停室へ呼びだされて30分ほど話し合います。特に別途検討すべき事項がなければ、基本的には婚姻費用算定表をベースとして婚姻費用について合意を形成していくことになります。

特に問題がなければ1回目の調停で終了する場合もありますが、論点が多ければ何度か調停を続けることになります。

調停が成立した場合

調停の結果、両者が金額に合意できれば、調停案が作成されて、調停終了後1~2週間で調停調書が自宅に郵送されていきます。調停調書は非常に重要な書類であるため管理に気をつけましょう。

調停調書があれば、もし相手が定められた婚姻費用が支払われない状況になっても、強制執行によって婚姻費用が保証されるからです。

調停が不成立になった場合

調停の結果、お互いが婚姻費用について納得できず調停が不成立になった場合は、自動的に審判に移行するケースがほとんどです。審判では、調停で話し合われた内容や資料を元に、裁判所が総合的に判断し妥当な金額が示されます。

もしこの金額に納得できなければ裁判を起こすことを視野に入れましょう。

婚姻費用の分担請求が認められないケース

別居中の生活を支えるお金である婚姻費用ですが、状況によっては認められないケースも出てきます。

それは、

婚姻費用分担の請求を行う人が、婚姻関係が破綻し別居に至った原因を作った場合

です。

仮に別居の原因を作った方が、婚姻費用請求を行っても権利の濫用として認められない可能性があります

【根拠】

(基本原則)

第一条  私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

 権利の濫用は、これを許さない。

引用:民法

ただし子供の養育費に関しては、親である夫婦両者が養育の義務を負っているため、別居や婚姻関係破綻の理由が問われずに認められます

離婚調停と同時に申立てるメリット

離婚調停と婚姻費用分担請求は同時に申し立てて、同時に調停を進めることが可能です。

離婚調停中でも安心して別居生活を送れる

離婚調停中は別居する夫婦がほとんどであるため、その間に必要な生活費を婚姻費用分担として受け取れるのであれば、仮に調停が長期化しても安心できます。

調停の回数と期間が短縮できる

別々の調停で行われるとなると、単純に調停に参加する機会が2倍となるので、同時に申し立てることによって時間や裁判所へ足を運ぶ労力を節約することが可能です。

離婚を希望していない相手でも離婚を真剣に考えるようになる

別居生活を続けても元に戻る可能性が低い上に、妻の生活費も負担しなくてはいけないという事実を気づかせることで、相手方が真剣に離婚を考えるようになります。

離婚調停との同時申立にはデメリットもある

申立が無駄になる可能性がある

離婚調停の限られた時間内で離婚が合意できないと思われたとき、離婚条件の調整が優先され,婚姻費用の分担請求調停の申立が無駄になることがあります。

離婚成立が遅れることがある

婚姻費用の調整に時間が取られ、本筋の離婚調整に割く時間が減ってしましい、離婚調停が長引く可能性があります。

まとめ

婚姻費用分担の請求は書類さえ揃えればすぐに申し立てることが可能です。そのため、もらえる婚姻費用を取りこぼさないためにも、婚姻費用が受け取れなくなったらすぐに申し立てることをおすすめします。

もし、手続きをしていく中で不安がある場合は、離婚問題や婚姻費用の請求に精通した弁護士に相談してみると良いでしょう。法的な観点から的確なアドバイスがもらえるため、お金の不安を確実になくしていくためにもおすすめです。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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編集部

本記事はベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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