養育費の大学費用を拒否したい!拒否できる場合と3つの対策方法

文部科学省の「国公私立大学の授業料等の推移」によると大学費用(授業料)は、国立大学で年53万5,800円、私立大学で平均年95万9,205円かかるといいます。
このような高額な大学費用を請求された場合、できる限り支払いを拒否したいと考える義務者はでしょう。
そこで本記事では、大学費用の支払いを拒否したい方のために、以下の内容について解説します。
- 大学費用が養育費に含まれるかどうか
- 大学費用を拒否できる場合と拒否できない場合
- 大学費用を請求された場合に拒否するためのポイント など
本記事を参考に大学費用を拒否できるかどうか、拒否するにはどうしたら良いかなどを正しく理解しましょう。
大学費用を拒否したい人のための養育費の基礎知識
親は子どもに対して扶養義務を負うため、離婚したあとも養育費を支払う必要があります(民法第877条1項)。
しかし、子どものために必要な費用が、全て養育費に含まれるわけではありません。
まずは養育費の基本事項について確認しておきましょう。
通常、養育費は子どもが成人するまで支払う
養育費の支払い期間に関する明確なルールはないため、離婚時に両親が任意に決めることができます。
一般的には「子ども(未成熟子)が成人するまで」といった取り決めをすることが多くなっています。
なお、2022年4月1日より成人年齢が20歳から18歳に引き下げられましたが、民法改正前に「成人するまで」と取り決めをしていた場合は養育費を20歳まで支払う必要があります。
大学費用は養育費ではなく「特別費用」となる
養育費とは、生活費・教育費・医療費など子どもが経済的・社会的に自立するまでに必要な費用のことをいいます。
しかし、子どもに必要な費用であっても、以下のような費用は養育費に含まれないことになっています。
- 私立学校の学費
- 大学・専門学校の学費
- 塾代や習い事にかかる費用
- けがや病気による高額な医療費 など
このような子どものために必要になる一時的な費用は「特別費用」と呼ばれます。
養育費と異なり、このような特別費用については当然に支払う義務を負うわけではありません。
大学費用を拒否できるかは承諾の有無で異なる
特別費用である大学費用は、当然に支払う必要はありません。
しかし、事前に合意書などで承諾している場合は拒否できない可能性があります。
ここでは、大学費用を拒否するのが難しい場合と、拒否できる可能性がある場合についてそれぞれ確認しましょう。
承諾していた場合|拒否するのは難しい
大学進学や大学費用の支払いについて義務者が承諾していた場合、拒否するのは難しいでしょう。
承諾には、合意書や調停調書といった明示的なものだけではなく、以下のような黙示的なものも含まれます。
- 進学校への入学を認めている
- 大学の受験勉強を励ましている
- 大学受験のための塾や予備校の費用を支援している など
このようなケースでは「大学に進学することを承諾している」と判断される可能性が高く、大学費用を拒否するのが難しくなります。
承諾していなかった場合|拒否できる可能性がある
大学進学や大学費用の支払いについて承諾していなかった場合は、拒否できる可能性があります。
- 大学進学について承諾していない
- 私立高校に進学することも反対していた など
このようなケースであれば原則として大学費用の負担義務はないと考えられます。
ただし、大学卒業までの通常の養育費を支払う義務は負う可能性があるでしょう。
養育費の支払い義務者が大学費用を拒否するポイント
ここでは、義務者が養育費の支払いを拒否するためのポイントを解説します。
1.支払いに合意していない証拠を用意する
大学費用を拒否するには、従来から支払いに合意していない証拠を用意することが重要です。
そこで、以下のような証拠が残っていないかを確認しましょう。
- 合意書
- 録音データ
- SNSやメールでのやり取り など
口頭で「大学進学に反対していた」という場合、言った・言っていないなどの水掛け論になることも多いです。
メールやSNSなどでも構わないため、承諾していないことがわかる証拠をできる限り集めるようにしましょう。
2.大学進学を認めるやり取りをしない
黙示的に「大学進学を承諾していた」と判断されないようにすることも重要です。
たとえば、SNSやメールなどで「大学に行かせる」という文面を受け取り、とりあえず「わかった」と返事をしている場合は、大学進学を承諾していると判断される可能性があります。
また、大学や塾などの資料を受け取っており、そのまま黙認していた場合も、承諾していると判断される可能性が高いです。
このように大学進学や大学費用の支払いを認めるようなやり取りをしないように注意しましょう。
3.養育費トラブルが得意な弁護士に相談する
大学費用を拒否したい場合は、養育費トラブルが得意な弁護士に相談・依頼することもおすすめです。
弁護士に相談することで、大学費用を拒否できるかどうかの判断をしてもらえます。
また、元配偶者から養育費・特別費用を請求されたときのやり取りを任せることも可能です。
まずはベンナビ離婚で養育費トラブルが得意な弁護士を探して、相談してみることをおすすめします。
万が一、大学費用を負担する場合はいくらになる?
大学費用の支払いを拒否できなかった場合でも、義務者は大学費用の全額を負担するわけではありません。
個々のケースによって異なりますが、通常は奨学金やアルバイト代などを考慮しても不足している大学費用の一部を負担することになります。
実際、2015年(平成27年)4月22日に大阪高等裁判所は「不足した大学費用の3分の1を義務者が負担すべき」という決定を出し、年間11万652円(月額約9,000円)の養育費の増額を命じたケースもあります。
X(母)がY(父)に対し,XY間の子Aらの養育費の支払いを求めた事案において,本決定は,XとYが婚姻中に,Aの進学する高校を検討した際,国立大学の進学を視野に入れた進学先を選択したこと,その際,国立大学の進学を視野に入れて高等学校を選択する旨の話はYも聞いていたことから,Yは,超過教育関係費用のうち,Aが国立大学に進学した場合の学費標準額と通学費に相当する金額の一部を負担するのが相当であるとしたが,X及びYの収入や生活状況などからすると,仮にXとYが離婚しなかったとしても双方の収入でAの学費等の全額を賄うのは困難であり,A自身においても,奨学金を受けあるいはアルバイトをするなどして学費等の一部を負担せざるを得なかったであろうことが推認されることから,Yの負担すべき割合を3分の1とし,これに従って超過教育関係費のうちYの負担すべき金額を算出し,標準的算定表により算定される養育費額に加算してYに対し支払いを命じた。
なお、大学費用の負担額の計算は難しいため、弁護士に相談して適正な金額を算出してもらうほうが良いでしょう。
大学費用を拒否したい方が知っておくべき注意点
最後に、大学費用の支払いを拒否したい方が知っておくべき注意点を説明します。
必ずしも大学費用の支払いを拒否できるわけではない
大学費用を承諾していない場合でも、合理的な理由があるケースでは養育費の支払いが必要になります。
義務者が大学費用を負担する合理的な理由があると判断されやすいケースには以下のようなものがあります。
- 両親が大学や大学院を卒業しているケース
- 義務者が高収入で経済的余裕があるケース
- 離婚が成立した段階ですでに大学進学をしていたケース
特に義務者の収入、学歴、地位などから、大学費用の負担が不合理でない場合には注意したほうが良いでしょう。
調停や審判に発展してしまい長期化する可能性がある
大学費用を負担するかどうかの話し合いは難航する可能性が高いです。
当事者間での話し合いがまとまらなければ、調停や審判に移行することになります。
調停・審判の期間は事案によって異なりますが、長引いた場合は半年~1年程度かかることもあるでしょう。
さいごに|大学費用の支払いを拒否したい場合は弁護士に相談を!
大学費用を拒否できるかどうかは事案によって異なります。
大学進学や大学費用の支払いに合意をしていない場合でも、黙示的に承諾したと判断される場合や大学費用を負担するのが合理的だと判断される場合もあるので注意が必要になるでしょう。
大学費用を拒否したい場合は、まず養育費トラブルが得意な弁護士に相談するのが重要です。
ベンナビ離婚を使って養育費トラブルが得意な弁護士を探すことから始めてみましょう。


★離婚弁護士ランキング全国1位獲得★【日本で唯一「離婚」の名を冠した事務所】経営者/開業医/芸能人/スポーツ選手の配偶者等、富裕層の離婚に強み!慰謝料相場を大きく上回る数千万〜億超えの解決金回収実績!
事務所詳細を見る
【メール相談は24時間365日受付中】離婚問題でお悩みの方へ。離婚専門チームがあるベリーベストがあなたのお悩み解決のお手伝いをします。信頼性とプライバシーを守りながら、解決の一歩を踏み出しましょう。【初回相談60分0円】
事務所詳細を見る
【LINE無料相談がお勧め】◆早く離婚したい◆慰謝料を減額したい◆不倫の責任をとらせたい◆家族や会社に知られたくない◆早く解決して日常に戻りたい
事務所詳細を見る当サイトでは、有料登録弁護士を優先的に表示しています。また、以下の条件も加味して並び順を決定しています。
・検索時に指定された都道府県に所在するかや事件対応を行っている事務所かどうか
・当サイト経由の問合せ量の多寡

慰謝料に関する新着コラム
-
不倫で離婚に至る場合にすべきことはたくさんあります。この記事では、不倫で離婚に至る実態・離婚件数と離婚率の推移から、不倫で離婚する際に覚えておくこと、不倫で離婚...
-
婚約中に浮気をされた場合、慰謝料請求の対象になるのかと疑問を抱く方は多いかもしれません。本記事では、慰謝料を請求する方法や相場、さらには慰謝料請求は弁護士へ依頼...
-
本記事では、不倫と愛人の違いや、慰謝料を請求された場合の対応を解説します。不倫と愛人は、金銭的な援助があるかどうかに違いがあります。いずれの場合も、配偶者にバレ...
-
離婚する際には、お金に関する様々な取り決めが必要になります。そのため、何かトラブルが生じるのではないかと不安に感じている方も多いのではないでしょうか。本記事では...
-
浮気が原因で婚約破棄をした場合、元婚約者や浮気相手に対して、慰謝料をはじめとした損害賠償請求ができます。本記事では、婚約破棄後に請求できるお金の種類や慰謝料の相...
-
夫や妻の浮気などが原因で離婚する場合、相手に慰謝料請求できます。ただし慰謝料請求をおこなう場合、慰謝料請求の基本知識について把握しておく必要があります。本記事で...
-
本記事では、離婚しない場合における不倫慰謝料請求の可否や、慰謝料の相場、請求の手順、注意点などを解説します。 子どもがいるから離婚は避けたい、経済的な理由から...
-
50代での熟年離婚。慰謝料がどのくらい貰えるのか気になりますよね。長年の不満が解消されるくらいの金額が欲しいと考えている方も意のではないでしょうか。この記事では...
-
浮気の慰謝料とは、浮気をされた夫・妻の精神的な苦痛に対して支払うお金のことです。この記事では、浮気の慰謝料が高額・低額になりやすいケースや実際の判例を紹介します...
-
大学費用は国立大学で年53万円、私立大学で年95万円もかかります。本記事では高額な大学費用の支払いを拒否したい方のために、大学費用が養育費に含まれるかどうか、大...
慰謝料に関する人気コラム
-
ダブル不倫とは、一般的に既婚者同士が不倫することを指します。お互いに既婚者同士である為、割り切って不倫できるようですが、一体そういった心理で大きなリスクを犯して...
-
離婚慰謝料の相場は50万円~300万円といわれていますが、離婚原因の内容、婚姻期間、子どもの有無、年収などによって変わります。そこで本記事では離婚の慰謝料の基礎...
-
ダブル不倫(W不倫)の慰謝料相場と、不倫をされた方が不倫相手に慰謝料を請求する手順を紹介しています。ダブル不倫は被害者側と加害者側が複数いて、誰に請求するかが非...
-
悪意の遺棄とは、生活費を渡さない、理由のない別居、健康なのに働かないといった行為のこと。この記事では、悪意の遺棄とは何なのか、悪意の遺棄となる11の行動、悪意の...
-
不倫で離婚に至る場合にすべきことはたくさんあります。この記事では、不倫で離婚に至る実態・離婚件数と離婚率の推移から、不倫で離婚する際に覚えておくこと、不倫で離婚...
-
不倫の時効は何年なのでしょうか。一般的に不倫の時効は3年と言われていますが、ケースによっては慰謝料を請求できる場合もあります。そこでこの記事では、不倫の時効はい...
-
婚約破棄による慰謝料の相場は50万円から200万円とされており、婚約の状況によってはさまざまな慰謝料を請求できる可能性が高いと言えます。この記事では、婚約破棄に...
-
彼氏が既婚者だと発覚した場合、状況によっては彼氏を訴え慰謝料請求できる可能性があります。また、彼氏が既婚者だと知らなかった場合、不倫の慰謝料を請求されても回避で...
-
セックスレスが原因で慰謝料を請求する際、相場はいくらになるのか、そもそも慰謝料は請求出来るのか、気になる方も多いと思います。慰謝料はセックスレスの期間が長いこと...
-
離婚の慰謝料は、一定の条件を満たしている場合、離婚後に請求することが可能です。また、請求できないケース、慰謝料の相場や慰謝料請求の方法について解説します。元パー...
慰謝料の関連コラム
-
たとえ自分に非があっても、離婚時に相場以上の慰謝を料請求されたら、減額を希望しますよね。この記事では、慰謝料を減額するポイントを事例つきでご紹介します。請求を無...
-
合意の性行為で妊娠した場合、慰謝料の請求は基本的には難しく、よくて中絶費用の半分が請求できるくらいでしょう。この記事では、慰謝料が認められた判例を紹介しながら、...
-
熟年離婚では、適切な慰謝料を獲得できるかで老後の経済的な負担が大きく変わります。この記事では、慰謝料が認められやすいケースや増減する12の要因、支払い能力がない...
-
「離婚の慰謝料が払えない、何とかならないか」とお悩みのあなた。実は相手との交渉で、減額や分割を認めてもらう方法があります。ここで解説する、離婚の慰謝料が払えない...
-
今回は、離婚した後でも慰謝料を請求する為に知っておくべき時効の知識と、時効が迫っている場合の対策をご紹介していきます。
-
パートナーまたは浮気相手が不貞行為を認めない場合でも、不貞行為の証拠を収集することによって慰謝料請求が認められる場合があります。
-
夫や妻の浮気などが原因で離婚する場合、相手に慰謝料請求できます。ただし慰謝料請求をおこなう場合、慰謝料請求の基本知識について把握しておく必要があります。本記事で...
-
結婚前であっても一定の要件を満たせば不倫相手やパートナーに慰謝料請求できる可能性があります。そのためにはどのような証拠が必要なのか、どうやって慰謝料請求の手続き...
-
彼氏が既婚者だと発覚した場合、状況によっては彼氏を訴え慰謝料請求できる可能性があります。また、彼氏が既婚者だと知らなかった場合、不倫の慰謝料を請求されても回避で...
-
「婚約者の浮気が発覚し、慰謝料を請求したい!」幸せなはずの婚約中に婚約者の浮気が発覚したらショックが大きいでしょう。婚約破棄をして慰謝料を請求したいと考える方も...
-
離婚の際に、慰謝料請求がおこなわれるケースもあります。慰謝料は無視した場合、さまざまな罰則を受ける可能性があるといえるでしょう。本記事では、慰謝料請求された方に...
-
過去の不倫について慰謝料を請求された場合の注意点を解説。慰謝料の時効についてわかりやすく簡単に説明していますので参考にしてください。

慰謝料コラム一覧へ戻る