離婚届を勝手に出されるとどうなる?無効にする方法・離婚届不受理申出についても解説
離婚届を配偶者に勝手に出されてしまった場合、形式上は離婚が成立してしまいます。
役所は書類の不備がなければ受理するため、夫婦の意思確認までは行いません。
ただし、勝手に離婚届を提出する行為は有印私文書偽造罪をはじめとする複数の犯罪に該当します。当然、無断で提出された離婚は無効にできます。
離婚を無効にするには家庭裁判所での調停や訴訟が必要となり、戸籍の訂正まで含めると数ヶ月以上かかるケースも珍しくありません。手間と時間を考えると、事前に「離婚届不受理申出」を提出しておくのが最も確実な防衛策です。
本記事では、離婚届を勝手に出された場合に問われる罪、離婚を無効にする手続き、離婚届不受理申出の書き方と提出方法まで解説します。「配偶者が勝手に離婚届を出すかもしれない」と不安を感じている方は、参考にしてください。
勝手に離婚届を出すのは犯罪
離婚届を配偶者の了承を得ることなく提出することは犯罪です。もしあなたが早く離婚したいと思っていても、お互いに話し合って離婚について十分な議論を経て相手の了承を得てから離婚届を提出するようにしましょう。
また、離婚について合意する内容の離婚協議書があれば、離婚届の提出について後々難癖を付けられても、離婚協議書を根拠に戦うことができます。しかし、協議書作成日時と届出日時に大きな乖離があると、離婚意思を撤回した旨主張されてしまいますので、届出は速やかに行いましょう。
離婚届を勝手に作成・提出した場合に成立しうる犯罪は以下のとおりです。
| 成立する犯罪 | 問題になる行動 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 有印私文書偽造罪 (刑法159条) |
配偶者の署名を無断で行い、離婚届を偽造すること | 3月以上5年以下の懲役 |
| 偽造私文書行使罪 (刑法161条) |
偽造した離婚届を役所に提出すること | 3月以上5年以下の懲役 |
| 電磁的公正証書原本不実記録罪 (刑法157条1項) |
役所の職員に対し、戸籍の電磁的記録に虚偽の記載をさせること | 5年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
| 公正証書原本不実記載罪 (刑法157条1項) |
役所の職員に対し、戸籍簿の原本に虚偽の記載をさせること | 5年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
| 不実記録電磁的公正証書原本供用罪 (刑法158条・157条) |
虚偽が記載された戸籍の内容を行使・供用すること | 5年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
離婚届を勝手に提出された離婚は取消可能
結論、離婚届を勝手に提出された離婚は無効にすることが可能です。
ただし、一度役所に提出された離婚届は不備がなければ通常通り受理され、離婚が成立してしまいます。離婚を無効にするには、以下のような手続きが必要になる点に注意してください。
勝手に出された離婚届でも形式的な離婚は成立する
離婚届を夫婦のどちらか一方が勝手に提出した場合でも、離婚届に不備がなければ役所は離婚届を受け付けますので、形式上、離婚は成立してしまいます。
役所には夫婦の離婚の意思などを確認する権限はないため、書類に不備がなければ離婚届を受け付け、戸籍を変更するなどの手続きが進んでしまうためです。
形式的に離婚が成立するとは、あなたの戸籍に離婚の事実が記載されてしまうことを意味します。記載されてしまった事実の訂正や抹消にはかなりの手間と時間がかかってしまうことを知っておきましょう。
勝手に出された離婚届を無効にするには?
勝手に提出された離婚届によって形式的に成立した離婚を取り消すには、以下の2つの方法があります。
- 離婚無効確認調停を申し立てる
- 離婚無効確認訴訟を提起する
まずは調停をおこない、調停でも解決できない場合には訴訟へ移行します。
離婚無効確認調停を申し立てる
最初のステップは、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所か、当事者が合意で定めた家庭裁判所へ離婚無効確認調停の申し立てをおこなうことです。
調停では、2人の調停委員が夫婦の間に入り、離婚届を勝手に提出したかどうかの確認や話し合いをおこないます。
調停で夫婦の合意なく一方が勝手に提出したということに合意ができれば、家庭裁判所が調査をおこなった上で審判を下します。
「離婚が無効である」との審判が確定すると、市区町村役場で戸籍訂正の申請が可能になり、戸籍を婚姻状態へと戻せます。
なお、戸籍訂正の申請は審判確定から1ヵ月以内と決められているため注意しましょう。申請の際には、戸籍訂正の申請書のほかにも審判書謄本・確定証明書(家庭裁判所より取得できる)が必要です。
解決しない場合は離婚無効確認訴訟を提起する
調停によって合意ができない場合や、審判に対して不服申し立てをおこなうと、訴訟へと移行します。
離婚届の提出が無効であることを争う裁判ですので、審理の際には、離婚に同意していないことを示すメールやLINEなどの証拠の提出が必要です。離婚届への署名が本人のものではないことを示すために筆跡鑑定などもおこなわれます。
裁判所が無効の判決を出したら、市区町村役場へ戸籍訂正の申請書・判決書謄本・確定証明書を持参して、戸籍訂正の申請をおこなうことで戸籍を婚姻状態へと戻せます。
なお、離婚無効確認訴訟によって無効の判決が出てから1ヵ月以内に戸籍を訂正しなければならないため注意しましょう。
勝手に離婚届を出されているか確認する2つの方法
離婚届が勝手に出されているかどうかは、以下の2つの方法で簡単に確認できます。
- 離婚が受理されると受理通知が届く
- 戸籍を調べればすぐにわかる
「配偶者が離婚届を出したのではないか」と不安に感じている方は、まず2つの方法で離婚届が提出されていないかどうか確認しましょう。
離婚が受理されると受理通知が届く
相手が勝手に離婚届を提出し離婚が成立した場合、勝手に離婚届を提出された配偶者には役所から「受理通知」が届きます。
戸籍法27条の2第2項には、離婚届などの届出の際には当事者の本人確認が必要とされており、本人確認ができない当事者には受理通知を送付しなければならないと規定されています。
第二十七条の二 市町村長は、届出によつて効力を生ずべき認知、縁組、離縁、婚姻又は離婚の届出(以下この条において「縁組等の届出」という。)が市役所又は町村役場に出頭した者によつてされる場合には、当該出頭した者に対し、法務省令で定めるところにより、当該出頭した者が届出事件の本人であるかどうかの確認をするため、当該出頭した者を特定するために必要な氏名その他の法務省令で定める事項を示す運転免許証その他の資料の提供又はこれらの事項についての説明を求めるものとする。
② 市町村長は、縁組等の届出があつた場合において、届出事件の本人のうちに、前項の規定による措置によつては市役所又は町村役場に出頭して届け出たことを確認することができない者があるときは、当該縁組等の届出を受理した後遅滞なく、その者に対し、法務省令で定める方法により、当該縁組等の届出を受理したことを通知しなければならない。
引用元:戸籍法|e-Gov法令検索
離婚は夫婦それぞれが当事者です。
夫婦のどちらか一方が勝手に離婚届を提出した場合、もう1人の配偶者からの本人確認ができないため、役所は戸籍法に基づいて必ず受理通知を送付します。
配偶者が受理通知を廃棄するなどしなければ、受理通知によって離婚届を勝手に出されたことを確認できます。
なお受理通知は住民票上の住所に届きますが、転送不要の郵便物とされている点は注意してください。
引っ越しをしたものの住所異動をしていない状態であると、転送されず市町村役場へ返送されている可能性が高いです。
離婚届が提出された市町村役場に問い合わせるか、次に紹介する方法で確認する必要があります。
戸籍を調べればすぐにわかる
相手が勝手に離婚届を提出し、形式的な離婚が成立すれば、戸籍に離婚が反映されています。
「相手の行動がおかしい」「相手が別の人と結婚しようとしている」などの兆候があったら、自分の戸籍を取得することで、勝手に離婚届を提出されたかどうかを確認できます。
なお、離婚届を提出してから戸籍に反映されるまでの期間は、自治体により異なりますが一般的には数日~1週間前後です。
離婚届の受理を阻止するには|離婚届不受理申出の概要と申請手順
配偶者が勝手に離婚届を提出したときに受理されないようにする方法、それは「離婚届不受理申出」の手続きを行うことです。以下に「離婚届不受理申出」の手続き方法と概要についてまとめました。
離婚届の不受理申出とは?
離婚届不受理申出書(りこんとどけふじゅりもうしでしょ)とは、簡単に言うと役所に対してあなたの配偶者が提出する離婚届を受け付けないでほしいと申し出るものです。こうしておけば配偶者があなたの意志を無視して勝手に役所へ離婚届を提出しようとしても、不受理申出書が事前に提出してあれば離婚届が受理されません。
離婚届の不受理申出の必要性
離婚届は書式さえ整っており、夫婦どちらか一方が直接役所に提出すればすんなりと受理されてしまいます。戸籍謄本や証人計4人の署名・捺印が必要で基本的には二人で提出する婚姻届と違って、離婚届の手続きは簡単に済んでしまいます。
離婚届に押す印鑑は三文判でも問題がなく、印鑑証明も不要です。夫婦揃って役所に顔を出す必要もなく、記された筆跡が本人のものかどうかの調査も行われません。以下のような状況では、勝手に離婚届が提出されあなたが不利益を被ることが予想できます。
- 離婚条件の話し合いが終わっていないのに相手が離婚届を勝手に書いた
- 離婚届に署名捺印したものの、冷静になったら離婚意思がなくなった
- 揉め事から配偶者が激昂しその勢いで離婚届を勝手に書いた
あなたの知らない間にいつ役所に離婚届を提出されてしまうのか、信用できずに心配な状況です。このような事態を防ぐために、離婚届不受理申出書が存在しています。
相手に離婚届を勝手に出してしまいそうな疑いがある場合はもちろんのこと、兆候がない場合も念のために離婚届不受理申出書を提出しておくといいでしょう。
離婚届不受理申出書の入手方法と書き方
離婚届不受理申出書は、市区町村役場の戸籍係に常設されているものを入手するか、市区町村によっては役所のホームページ上でダウンロードが可能です。
※このページにある記載例はあくまで一例です。申出書の様式は地域によって若干違いがありますのでご注意ください。
引用元:札幌市役所|離婚届不受理申出書
書き方
離婚届不受理申出書の書き方見本を下図にまとめました。申出人となるあなたと配偶者の名前や住所、本籍を記載し印鑑を押せば完了となります。

申出先
離婚届不受理申出書の提出先は、基本的に届出人の本籍がある市区町村役所となっています。しかし、住居地など本籍地以外の市区町村役場に提出も可能です。
【家庭裁判所一覧】
離婚届不受理申出を提出する時に必要な書類
- 記入内容に誤りのない離婚届不受理申出書
- 印鑑
- 本人が確認できるもの(運転免許証・パスポート等)
離婚届不受理申出書を提出の際は、相手が離婚届を提出するタイミングに注意しましょう。離婚届の不受理の申出は、どこの市区町村役所に申し出をしても、夫婦の本籍のある市区町村役所に送付されることになっています。
もしあなたが本籍地でない居住地の近くの役所に提出をした場合、本籍地の役所へ送付の手続きをして実際に本籍地へ到着して受理される間に、配偶者が本籍地の役所へ直接離婚届を提出してしまうと離婚が成立してしまう可能性があります。
離婚届不受理申出書はできるだけ早く、本籍地に対して直接提出するといいでしょう。
離婚届不受理申出の有効期限と取り下げについて
以前は、不受理届書の有効期限は最長6ヶ月でした。しかし、法改正によりその期間が廃止されたことによって、無期限で不受理期間が続くこととなりました。つまり提出した不受理届書を取り下げるまでは無期限で有効ということです。
不受理届書を提出してから、夫婦間の話し合いにより両者が離婚に同意した場合、不受理届書を提出した本人が離婚届を提出するのであれば、不受理届書は取り下げたとみなされてその離婚届は受理されます。
離婚届不受理申出書の取り下げ手続きの仕方
夫婦間の話し合いで、離婚届不受理申請書の取り下げを行うことになった場合は、申請書の提出を行った役所に行き、「取り下げ用の申請用紙」に必要事項を記載して窓口に提出してください。
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【離婚届不受理申出の取り下げに必要なもの】
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まとめ
離婚届を配偶者に勝手に出された場合でも、離婚を無効にする方法はあります。
ただし、一度受理されてしまうと戸籍に離婚が記載され、訂正するには家庭裁判所での「協議離婚無効確認調停」や訴訟が必要です。手続きには時間も労力もかかるため、事前の対策が重要になります。
最も有効な対策は「離婚届不受理申出」の提出です。不受理申出は取り下げるまで無期限で有効なので、少しでも不安があるなら早めに本籍地の役所へ提出しておきましょう。
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