母子家庭の生活保護費から児童扶養手当は引かれる?知っておきたいポイントとは
生活保護を受けている母子家庭でも児童扶養手当は受け取れます。なぜなら生活保護と児童扶養手当はまったく別の自立支援プログラムだからです。
生活保護と児童扶養手当の特徴を把握することで母子家庭でも、より生活を安定させられる可能性があります。経済的にはもちろん、精神的にもより多く扶助してもらえると保護者としても安心でしょう。
この記事では、生活保護と児童扶養手当の基礎知識や、再婚した場合の受給額の変化について紹介します。スーパーで野菜の値札が気になったり、シャワーを我慢しているなど、現状の生活が困窮している方はぜひ最後までご覧ください。
母子家庭を対象にした住まいの手当、医療費、遺族年金などは「母子家庭(シングルマザー)が使える17の手当・支援制度|金額や条件も解説」でご覧ください。
生活保護と児童扶養手当の3つの違い

上記に3つの違いを箇条書きした通り生活保護と児童扶養手当は、生活を援助してくれる点では同じですが具体的にはまったくの別物です。
1:目的や法律の違い
生活保護と児童扶養手当では、そもそもの目的や法律が違います。
生活保護とは
生活保護は国民が持つ最低限の生活を営む権利を守り、生活の保障と就労による自立支援を目的としています。これらの決まりは生活保護法によって定められています。
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
② 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
児童扶養手当とは
児童扶養手当は、母子(父子)家庭の生活の安定と自立を援助し、児童福祉の増進を目的とした国の制度で児童扶養手当法によって定められています。
第一条 この法律は、父又は母と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するため、当該児童について児童扶養手当を支給し、もつて児童の福祉の増進を図ることを目的とする。
2:受給できる条件の違い
根本的な目的や法律が違いますので、受給できる条件も違ってきます。
生活保護の場合
生活保護を受けたい場合は以下4つの条件をすべて満たす必要があります。
- 資産がない
- 働くことができない
- 他の制度を受けても生活が苦しい
- 扶養者からの援助を受けられない
生活保護の場合、受給するための審査も生活扶助基準を基に細かく行われます。受給できる条件についてはこちら『母子家庭の生活保護は毎月いくら?受けるための4つの条件』をご覧ください。
児童扶養手当の場合
児童扶養手当はひとり親で子供が18歳未満であること、また所得が一定の金額を下回ることが条件になります。下の表は東京の所得制限(令和2年4月現在)です。
目安としてご覧ください。
| 扶養人数 | 受給資格者本人 | 扶養義務者・配偶者・ 孤児等の養育者 |
|
| 全部支給 | 一部支給 | ||
| 0人 | 49万円 | 192万円 | 236万円 |
| 1人 | 87万円 | 230万円 | 274万円 |
| 2人 | 125万円 | 268万円 | 312万円 |
| 3人 | 163万円 | 306万円 | 350万円 |
市区町村によって変わりますので、詳細は住居地の市区町村のHPや窓口で確認してから対応しましょう。
3:保障内容と金額の違い
生活保護の場合
生活保護は、生活費以外にも以下のような扶助を受けられます。
- 住宅扶助
- 教育扶助
- 生業扶助
- 医療扶助
- 介護扶助
これらの扶助を受け取ることで、衣食住を保障してもらいます。また、地域や家族の人数・年齢などで金額が大きく変わってきます。
生活保護で受け取れる金額についてはこちら『母子家庭の生活保護は毎月いくら?受けるための4つの条件』をご覧ください。
児童扶養手当の場合
児童扶養手当は、子供の人数と所得で以下のように変わってきます。
- 全額支給(所得制限額未満):月額43,160円
- 一部支給:所得に応じて月額43,150円から10,180円まで10円単位で変動
- 全部支給(所得制限額未満):10,190円
- 一部支給:10,180円から5,100円まで10円単位で変動(所得に応じて決定されます)
- 全部支給:6,110円
- 一部支給:6,100円から3,060円まで10円単位で変動(所得に応じて決定されます)
※児童扶養手当の額は、物価の変動等に応じて毎年額が改定されます(物価スライド制)。
生活保護と児童扶養手当を受ける際の注意点
生活保護と児童扶養手当を受けられることは冒頭で紹介しましたが、1つだけ注意点があります。それは、児童扶養手当が収入とみなされその分生活保護の受給金額から差し引かれる ということです。
そもそも生活保護で給付される保護費は、下の図のように最低生活費から収入を引き足りない分を支払うというものになっています。

なので、児童扶養手当を受給しながら生活保護を受ける場合、受給できる保護費は児童扶養手当を引いた金額になります。
例えば、本来なら25万円の保護費をもらえた場合、児童扶養手当が4万円だとすると実際に受給できる保護費は21万円になります。

児童扶養手当は児童扶養手当で受け取ることができますので、保護費から引かれていないように感じることもあります。
受け取りの際は保護費からどのくらい児童扶養手当が差し引かれているのか確認しましょう。
生活保護・児童扶養手当受け取り状況が変わってくる3つのケース

生活保護や児童扶養手当は所得の変動や、再婚など生活環境の変化により減額・打ち切りを行っています。ここでは生活保護や児童扶養手当の受け取り状況や金額が変わってくる3つのケースを紹介します。
1:働いて所得が上がったケース
働いて所得が上がった場合、生活保護が打ち切られる or 減額となることがあります。児童扶養手当は本来なら18歳までの受け取りが可能ですが、所得が上がった場合18歳未満であっても打ち切られます。
児童扶養手当がなくなっても、『児童手当』を受け取ることができるのでご安心ください。こちらは、所得制限を超えた場合でも受け取れます。詳細については各市区町村に相談してみてください。
2:再婚したケース
収入がある人と結婚した場合、生活保護・児童扶養手当が打ち切り・減額となることがあります。仮に相手配偶者等から金銭的支援を受けていることを隠して受給し続けていると不正受給として全額返金を要求されるかもしれません。
また、再婚相手も生活保護を受けている場合は、生活保護について見直しとなることもあります。
3:子供が18歳を超えたケース
子供が18歳を超えた場合、児童扶養手当を受け取ることはできなくなります。生活保護を受け続けることはできますが、子供が働いているような場合は、世帯収入があるため生活保護費の打ち切り・減額の理由になるでしょう。
まとめ
生活保護と児童扶養手当は補償内容やその目的が異なる別物です。そのため生活保護を受けている母子家庭でも、条件次第では児童扶養手当を受給できる可能性があります。
しかし児童扶養手当は収入の扱いなので、生活保護の受給金額から差し引かれるため注意しましょう。また、再就職や再婚などで年収が上がると受給できなくなるので、知らないうちに不正受給をしないように注意する必要があります。
児童扶養手当を受けることで合計の受給金額が大きく変わることはありませんが、児童扶養手当は万が一生活保護が減額された場合の保険になる可能性があります。
また、生活保護より審査が厳しくありませんし、一部でも支給してもらうことで精神的に余裕が出るでしょう。生活保護も児童扶養手当も条件を満たせば受給する権利がありますから、後ろめたさなどを感じる必要はありません。
あなたと家族のためにも受給できるうちに申請を検討してください。何か相談してみたいことがあればお近くの福祉事務所の窓口を利用しましょう。
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