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母子家庭の親子が生活保護を受けるための5つの条件まとめ

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
母子家庭の親子が生活保護を受けるための5つの条件まとめ

母子家庭で十分な収入が得られておらず、将来が不安であったり、今現在の生活が苦しかったりする方も多いでしょう。厚生労働省の発表によると、大人が二人以上いる世帯の相対貧困率が12.9%である一方で母子家庭の相対貧困率は50.8%と極めて高く、多くの母子家庭が生活に困窮していることが伺えます。

母子家庭の貧困率

引用:厚生労働省政策統括官(統計・情報政策担当)

母子家庭で経済的困難が生じている場合、生活保護を受ける選択肢も検討してみるとよいでしょう。しかし、現状で生活保護を受けられるのかわからない方や、どのように手続きすればよいかわからない方もいるかもしれません。

生活保護を受けるための条件として「資産と総収入が最低生活費を下回っていること」「資産を保有していないこと」「就労することができないこと」「他の制度を受けても生活が困難であること」「扶養者からの援助を受けられないこと」の5つがあげられます。また、母親が未成年の場合には生活保護を受けられないとの通説もありますが、条件を満たしていれば母親が未成年の母子家庭でも受給が可能です。

この記事では、「どうしたら生活保護が受けられるの?」「申請を断られたけどどうすればいいの?」という疑問に回答します。

生活保護を受けた場合にもらえる費用の相場もまとめましたので、併せて参考にしてください。

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この記事に記載の情報は2023年11月15日時点のものです

生活保護とは

生活保護とは日本国憲法第25条第1項に定められた規定を保証するための制度です。

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

② 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

引用:日本国憲法

働けない状況であったり、生活できるだけの収入が得られなかったり等の理由で生活に困っている国民に対し、健康で文化的な最低限度の生活の保証と自立支援を目的として支給されます。生活保護は受給条件を満たせば、年齢、性別、国籍を問わず受給できます。婚姻歴も問われないため、母子家庭であっても受給条件を満たせば受けることができます。

コロナ禍で生活に困窮する人が増加した現在、厚生労働省は生活保護は全ての人に開かれている制度であると呼びかけを始めました(参考:生活保護を申請したい方へ)。条件を満たすのであれば、母子家庭だから…と遠慮することなく制度を活用しましょう。

なお、厚生労働省から令和3年3月に発表されたデータによると、生活保護を受給している母子家庭は75,724となっており、前月の75,675から増加しているようです(参考:被保護者調査(令和2年 12 月分概数)|厚生労働省)。

生活保護の受給者は年々増加しており、自治体の財政を圧迫しているとの見方もあります。そのため、自治体によっては審査を厳しくしている所もあるでしょう。

全ての人に開かれている生活保護ですが、門前払いを受けたという意見も散見されます。

生活保護を門前払いされたシングルマザーの意見

引用:Twitter

受給を認めてもらうためにも、生活保護の申請をする際には事前に準備をしておくことが重要となるでしょう。

生活保護を受けるための5つの条件

ここでは、生活保護を受けるための5つの条件を紹介します。

1:資産と総収入が最低生活費を下回っていること

生活保護を受けるには、世帯の資産と総収入が、各市町村が定める『最低生活費』を下回っていなければいけません。『最低生活費』とは、生活保護申請で扶助される以下8つに関わる費用の合計です。

最低生活費とはどんなもの?

1:生活扶助

衣食などの基本的な生活費

2:教育扶助

給食費を含む義務教育(小・中)の費用

3:住宅扶助

家賃など家の費用(ローンは含まれない)

4:介護扶助

介護保険料や介護にかかる医療費

5:医療扶助

病院にかかる費用

6:生業扶助

就職をするための費用

7:出産扶助

出産にかかる費用

8:葬祭扶助

葬祭のための費用(火葬費・埋葬費など)

6~8の生業扶助・出産扶助・葬祭扶助は、臨時的な費用なので、基本的にはそれ以外の5つの費用の合計が、最低生活費として考えられ、扶助を受けられます。最低生活費は各都道府県で異なる他、世帯の人数や年齢で変わってきます。

下回っているかどうか調べたい場合は、世帯の資産・総収入の合計を計算し、最寄りの福祉事務所にご相談ください。

【関連リンク】福祉事務所|厚生労働省

2:資産がないこと

資産とは、預金などの現金以外にも不動産・車・有価証券などお金や収入になるものすべてが対象になります。このような資産を持ったままでは生活保護を受けることができません。

すべてを売った上で、最低生活費に届かない場合は生活保護を受けられる可能性があります。

また、車も売る必要がありますが、売ると生活が成り立たない事情(障害を持っているため車がないとどこにも行けないなど)がある場合は、福祉事務所かケースワーカーに相談しましょう。

3:働くことができないこと

重度のうつ病やその他精神病など、働けないと診断されるような持病やけがをしていると判断される必要があります。その場合、医師の診断書や障害者手帳などを証拠として持っているとよいでしょう。

また、働くことができていても、最低生活費を満たしていない場合は受給できる可能性がありますので、給料明細など収入を証明できるものをそろえておきましょう。

【関連記事】母子家庭が仕事を探すための5つのポイントと資格の必要性

4:他の制度を受けても生活が難しいこと

各市区町村によって変わりますが、母子家庭にはさまざまな支援制度があります。

重度の精神病や障害を抱えている場合、障害年金を受け取れる可能性もあります。このような制度を活用しても生活が苦しい、最低生活費を満たしていないという場合、生活保護を受けられる可能性が高まります。

【関連記事】
母子家庭(シングルマザー)に役立つ17の手当て・支援制度を徹底解説
母子家庭の医療費免除はできる?助成制度の申請方法まとめ
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5:親族や前夫からの援助を受けられないこと

親族や前夫がどこにいるのかわからない、親族がもういないなど、援助を受けられないことが1つの条件です。援助を受けていても最低生活費を満たしていない場合は受けられる可能性があります。

また、両親が生活保護を受けている場合、同居を指示されるでしょう。生活保護は世帯単位で支給されますので、同居することで受けられるかもしれません。

母親が未成年の場合に生活保護を受ける条件

未成年のシングルマザーも条件を満たすことで生活保護を受けられます。受けるための条件は上項の5つと同じです。

  • 最低生活費を下回っている
  • 資産がない
  • 働けない
  • 他の制度を受けても生活が難しい
  • 親族や前夫からの援助を受けられない

特に、親族からの支援とその可否の程度については、審査対象として重要になるでしょう。

生活保護の受給金額の相場

生活保護で支給される金額は、最低生活費から年金や児童扶養手当などの収入を差し引いた差額です。

母子家庭が生活保護を受けるための知識

生活保護費は、居住地域・家族の人数・子供の年齢によって大きく金額が変わっていきます。ご自身で生活保護費を確認したい場合には以下の手順で目安として計算してみてください。

  1. 生活扶助基準の表から居住している地域の等級を調べる
  2. 基準額の欄から「生活扶助基準」×「逓減率」+「生活扶助基準(第二類)」に当てはめて計算する
  3. 算出されたものに母子家庭または妊婦の場合の加算額を上乗せする

詳しい計算方法についてはこちら『母子家庭(シングルマザー)が受けられる生活保護費の金額』を参考にしてみてください。また、障害を持っている場合や母子家庭の場合は、金額が加算されます。

【関連リンク】
生活保護制度における地域差等について|厚生労働省
生活保護制度の概要等について|厚生労働省

生活保護の申請方法

生活保護は居住地の管轄である福祉事務所で行います。支給条件を満たしているか、生活保護以外に受けられる制度はあるか、まずは相談してみましょう。

相談の際にはご自身の資産状況や働けない理由を提示できるよう、給与明細や通帳、医師の診断書などの資料を持参しましょう。それらの資料によって手続きが円滑に進むかもしれません。

また、申請後には生活保護の受給要件を満たしているか調査が行われます。通常は申請から2週間以内で受給の可否が決定されますが、調査に時間がかかる場合には調査期間として1ヶ月程度必要になる場合もありますので注意しておきましょう。

生活保護を断られるケース

条件をみたいしていない場合には生活保護を断られる可能性があります。以下は援助が難しいと判断されるケースです。

  • 資産と見なされる価値のあるものを所有している場合
  • 援助できる人がいる場合
  • 働けると判断された場合
  • 申請者が国家資格を有している場合
  • 親や兄弟などの扶養者が福祉事務所の調査に非協力的な場合
  • 親や兄弟などの扶養者と連絡が取れない場合

申請者が福祉事務所に協力的でない場合や不審な点が多い場合には、申請を断られるケースもあるかもしれません。福祉事務所に相談する際には誠実に全てを正直に話すようにしましょう。

生活保護を受けるメリットとデメリット

生活保護を受ける際に生じるメリットとデメリットを解説します。

メリット

生活保護を受けるメリットとして生活が安定することがあげられます。金銭面の不安がなくなることで、育児や家事に集中することができるでしょう。

また、病気を抱えている場合には自身の療養に時間を注ぐことができます。うつ病などの精神的なストレスが病気の原因と考えられるケースでは早期の改善が期待できるかもしれません。

デメリット

生活保護を受給していると貯金することができません。そのため、子供の進学費用や塾費用などを準備することが難しくなるでしょう。

住居や車、その他娯楽品にも制限がかかるため生活の中でストレスを感じる場面もあるかもしれません。

生活保護が認められるのは難しい

条件がそろっているからといって必ずしも生活保護が認められるとは限りません。ここでは、実際に門前払いされてしまったケースと対処法を紹介します。

実際に門前払いされてしまったケース

2012年札幌市姉妹孤立死事件

暖房のない札幌市内の凍える部屋で暮らしていた姉妹が、相次いで亡くなった。姉は3度も生活保護の窓口に出向いていたという。(引用:札幌の暖房のない部屋で姉妹が孤立死 姉は顎がはずれて…|週刊朝日)

この姉妹は2人とも40歳を過ぎていて、妹は障害を抱えていました。条件に確実に該当していると思っていても、窓口で何度も断られる可能性があります。

掲示板の記事

掲示板には、さまざまな言葉で申請を断られている人の投稿があがっています。

会社経営してる祖父の娘が生活保護を受けてるというのは世間的にどうなのかとか、そんな理由で門ばらいです。(引用:生活保護の申請をバカみたいな理由で断られました。|Yahoo!知恵袋)

「あなた働けるでしょ!」「あなた顔立ちは悪くないから、いざとなったら風俗に身を落とせばいくらでも稼げる。」「それくらいの覚悟がないと子供は育てられないよ。」とひどい言葉をかけられ、生活保護断られたばかりではなく、職業に関するアドバイスもありませんでした。(引用:生活保護申請を断られました。|Yahoo!知恵袋)

生活保護について。5月に役所に行きましたが、門前払いでした。コロナで生活が出来ない人が優先だと言われました。今は旦那が正社員です。固定給で月給20万になります。あと2年で定年を迎えます。時給になりますが、 だいたい月給が16万くらいになり、大型連休がある月などは、総支給月12万~13万くらいになります。私は統合失調症と糖尿病があり、働けません。定年になるとどうしても生活出来ないですが、生活保護の申請はもう出来ませんか?私の病院代が家計を圧迫してます。助けて下さい。

引用:(生活保護について。5月に役所に行きましたが、門前払いでした。コロナで生... - Yahoo!知恵袋

条件がそろっているのに門前払いされたら

そもそも審査もなしに窓口の人が申請を断る権利はありません。生活保護法では

すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を、無差別平等に受けることができる。(引用:生活保護法第2条)

と明記してあり、条件さえ満たしていれば誰だって受ける権利があるのです。

もし門前払いされてしまった場合、まず弁護士に相談しましょう。申請やケースワーカーとの交渉などの代理を依頼できます。

弁護士が間に入ることで、生活保護を受ける必要性や、条件を満たしていることを法にそって説明してくれるでしょう。まずは無料相談を行っている事務所に相談してみることをおすすめします。

また『法テラス』では、無料相談や弁護士費用の立替えを行っています。一般の事務所に相談しにくいという場合におすすめです。

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まとめ|財産分与と養育費は離婚後でも請求できます

生活保護の条件として「資産と総収入が最低生活費を下回っていること」「資産を保有していないこと」「就労することができないこと」「他の制度を受けても生活が困難であること」「扶養者からの援助を受けられないこと」の5つがあげられます。母子家庭でも条件に変わりはありません。

生活保護の申請を1度断られたとしても弁護士に相談することで、生活保護を受けられる可能性が高まります。まずは最寄りの弁護士事務所に相談してみましょう。

また、生活保護を受ける前に、元夫に養育費や財産分与を請求することも大切です。請求することで、生活保護を受けずに生活できる可能性もありますし、子供ももっと自由に生活できるかもしれません。

請求方法に迷った場合は、弁護士に相談してみてください。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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編集部

本記事はベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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