ガスライティングとは?具体例・被害時の対処法・配偶者と離婚する方法を解説
- 「夫に支配されている感覚が強くて毎日が辛い」
- 「幸せな結婚生活を送っているはずなのに、なぜか否定されている感覚が抜けない」
このような悩みを抱えている人は、配偶者からガスライティングの被害を受けている可能性があります。
ガスライティングとは、自分の記憶や認識などを疑うように仕向ける心理的虐待の一種です。
巧妙な手口でおこなわれることも多く、被害者自身はガスライティングの被害に遭っていることすら気付いていない場合もあります。
本記事では、ガスライティングの特徴や具体例、ガスライティングを理由に離婚を目指すときのポイント、弁護士に相談・依頼するメリットなどを解説します。
辛い現状から早く抜け出すためにも、ぜひ参考にしてください。
ガスライティングとは
ガスライティングとは、意図的に間違った情報を与えたり、継続的に嫌がらせをしたりすることによって相手方を心理的にコントロールし、相手方が自分の記憶や認識を疑うように仕向ける心理的虐待のことです。
ガスライティングに該当する行為は時間をかけておこなわれることが多く、気付かないうちに「私が悪い」「間違えているのは自分だ」などの思い込みを植え付けられて支配関係が生まれてしまいます。
ガスライティングは、会社の上司と部下、部活動の先輩と後輩、知人間、夫婦間、恋人間など、さまざまな関係性で生じます。
なお、ガスライティングに似たものとしては「モラハラ」などもあります。
モラハラ(モラルハラスメント)とは、身体的な暴力ではなく、無視・暴言・人格否定などの言葉や態度で相手方に精神的苦痛を与える嫌がらせ行為のことです。
ともに精神的ダメージを与える行為という点では共通していますが、ガスライティングはモラハラに比べて手口が巧妙なケースもあり、周囲や被害者自身も被害に気づきにくいという特徴があります。
ガスライティングの目的
多くの場合、ガスライティングは、相手の支配や破滅などを目的におこなわれます。
たとえば、夫婦や恋人などの関係性の場合は、ガスライティングによって「自分はダメな人間だ」などと思い込ませ、加害者なしでは生きていられないような依存状態に仕向けたりすることがあります。
また、会社や学校などの集団内の場合は、ガスライティングによって特定の人物に不利な環境を構築し、輪の中から排除したり孤立したりするように仕向けることもあります。
特に悪質なケースでは、ガスライティングによって徹底的に追い込んで犯罪行為に走らせたり、正常な判断が困難な状態に陥らせて被害者が自殺したりするような場合もあります。
ガスライティングの症状
ガスライティングでは加害行為や被害状況を自覚しにくく、知らず知らずのうちに危険な状況に陥っている場合もあり、なるべく早い段階で気付いて対処することが大切です。
たとえば、夫婦間でガスライティングのトラブルが生じた場合、被害者側には以下のような症状が生じる可能性が高いです。
- パートナーと意見が合わないときや物事がうまくいかなかったときに、いつも自分が間違えているのではないかと感じてしまう
- 慢性的に自分は何もできないと思っている
- いつも謝りたい衝動に駆られている
- 絶望感・焦燥感・解離感・感覚麻痺が頻繁に起こる
- 考え・意思・感情が誰かに支配されている気がする
- 自分は繊細すぎると思い込んでいる
- 何かがおかしいという感覚が日常的に生じている など
なお、以下の記事では、モラハラのセルフ診断チェックリストや加害者・被害者の特徴などを解説しているので、モラハラについても詳しく押さえておきたい方はご覧ください。
ガスライティングの4つの手口・具体例
ここでは、ガスライティングに該当する代表的な行為類型を4つ紹介します。
- 事実を捻じ曲げたり、事実を否定したりする
- 被害者にとっては重大な問題を矮小化する
- 被害者に対して小さな嫌がらせを繰り返す
- 最終的に被害者が自分に依存せざるを得ないように追い込む
それぞれの行為について、詳しく見ていきましょう。
1.事実を捻じ曲げる、事実を否定する
ガスライティングに該当する行為として、事実を捻じ曲げたり、事実を否定したりする行為が挙げられます。
たとえば、夫が妻に対して悪口を言ったというケースで考えてみましょう。
まず、悪口を言われた妻が夫に対して「なぜ悪口を言うのか」などと指摘をします。
しかし、夫側が「悪口なんて言っていない」「悪口と感じるお前がおかしい」などのように、悪口を言った事実を否定します。
すると、むしろ悪口を言われたと感じた妻側がおかしいという状況になり、妻側は「自分の認識や感情が間違えているのではないか」と疑心暗鬼になってしまいます。
このような行為が日常的に繰り返されると、妻は自分の意見や感覚を正しいものと認識できなくなり、夫に支配された状態に追い込まれてしまうおそれがあります。
2.被害者にとって重大な問題を小さく評価する
ガスライティングに該当する行為として、被害者にとって重大な問題を過小評価する行為が挙げられます。
たとえば、妻にとっては重大で深刻な問題や悩みがあったとします。
夫側に相談したところ、妻側の意見や感覚に寄り添ってくれず、「それくらい普通だ」「いちいち重大だと感じるほうがおかしい」などというネガティブな評価を下されます。
すると、妻は「自分が繊細すぎて感覚がおかしい」と思い込んでしまい、自信を喪失してしまうでしょう。
妻側の認識が間違っているという感覚を植え付けられ続けると、妻は自分の感覚や認識に自信をもつことができず、夫側に依存するようになってしまうおそれがあります。
3.被害者に対する小さな嫌がらせを繰り返す
被害者に対して、小さな嫌がらせを繰り返す行為もガスライティングの一種です。
たとえば「物を隠す」や「置き場所を変える」などの被害者しか気付かないような嫌がらせを日常的に繰り返すと、小さなストレスや違和感の蓄積によって被害者側は慢性的な不安感に襲われます。
嫌がらせのひとつずつが些細な事象なので、被害者側は誰にも相談できず、孤立化が進んでしまうおそれがあります。
4.最終的に被害者を自分に依存させようとする
ガスライティングの代表的行為として、最終的に被害者が自分に依存するように仕向ける行為も挙げられます。
たとえば、夫が暴言を発したり威圧的な言動をとったりするなどして、まずは妻側の精神状態を不安定にさせます。
妻の精神状態が不安定になったところで、夫が「俺はお前がいないとやっていけない」「俺にはお前しかいない」などの優しい言葉をかけたりすることで、妻側は「この人と一緒にいないとダメだ」と思い込み、精神的な依存度が高まるおそれがあります。
ガスライティングの被害に遭った場合の3つの対策
もし自分のパートナーからガスライティングをされている場合は、どのように対処すればよいのでしょうか。
ここからは、配偶者からガスライティングの被害に遭っている場合の対処法を3つ紹介します。
- 別居などをして加害者と距離を取る
- 専門家や相談機関に助けを求める
- 離婚を切り出す
それぞれの対処法について、詳しく見ていきましょう。
1.別居などをして加害者と距離を取る
ガスライティングをされている自覚があるなら、まずは別居をするなどして相手方と距離を取るのがおすすめです。
たとえば、別居すれば、同居しているときほどの直接的なコミュニケーションを取らずに済みます。
同居していた期間中の自分の様子も俯瞰・客観視できるようになれば、自分がどの程度深刻なガスライティング被害に遭っていたのか、自分が本当に望む結婚生活を過ごせていたのかなどについて冷静に判断できるでしょう。
また、別居期間を設けることで、夫婦それぞれが自分達の関係性を見直すきっかけにもなったりして、夫婦関係の再構築を目指せる可能性もあります。
もしいきなり別居することが難しい場合は、寝室や食事を別にしたり、自宅で一緒にいる時間を減らしたりするだけでも有効です。
2.専門家や相談機関に助けを求める
ガスライティングの被害に遭っている場合、被害者本人だけでは正常な判断や対応が難しいおそれがあります。
「もしかしたら自分がガスライティングの被害者かもしれない」「自覚はないけど、夫から日常的に嫌がらせやモラハラを受けているのかもしれない」などと少しでも不安を抱えているのなら、弁護士や医師などに一度相談してみましょう。
ガスライティング被害について相談できる主な窓口としては、以下が挙げられます。
- 弁護士:ガスライティングに対する法的措置や離婚手続きについて相談できる
- 医師:ガスライティングによる精神疾患に対する診断・治療が受けられる
- DV相談ナビ:内閣府が設置するDV相談窓口で、#8008に電話すれば各地域の都道府県配偶者暴力相談支援センターに繋がる
- 配偶者暴力相談支援センター:各都道府県が設置するDV被害者などの保護施設で、電話相談・カウンセリング・一時保護・情報提供などのサービスが受けられる
- 女性相談支援センター(婦人相談所):各都道府県が設置する女性のための相談窓口で、電話相談・面談相談・巡回相談などが受けられる
なお、知人や友人にガスライティングについて相談するのも間違いではありませんが、相談相手は慎重に選んでください。
たとえば、配偶者との共通の知人に相談した場合、知人が勝手に配偶者に話を漏らしたりしてガスライティング行為が悪質化するおそれがあります。
3.配偶者に対して離婚を切り出す
ガスライティングが原因で婚姻生活を継続するのが難しい状況なら、離婚するのも選択肢のひとつです。
離婚をするには、まずは当事者間で話し合いをおこない、協議離婚で離婚成立を目指すのが一般的です。
当事者間で離婚について合意形成に至った場合には、協議離婚が成立します。
一方、話し合いがまとまらなかったり、話し合いをする余地さえない場合には、家庭裁判所の調停手続きを利用して、調停離婚の成立を目指します。
もし調停手続きを経ても離婚が成立しない場合は、最終的には裁判にて解決を目指すことになります。
いずれにせよ、ガスライティングが原因で離婚成立を目指すには、入念な事前準備や冷静な対応が必要不可欠であり、可能な限り弁護士に相談・依頼することを強くおすすめします。
ガスライティングを理由に離婚したい場合の3つの対処法
ここでは、ガスライティングを理由に離婚を目指す場合に押さえておくべきポイントを3つ紹介します。
- できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼する
- ガスライティングの証拠を集める
- 離婚の意思を強く持つようにする
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
1.弁護士に相談・依頼する
ガスライティングの被害を受けていて離婚を目指したい場合は、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼しましょう。
弁護士に相談すれば、ガスライティングの立証に必要な証拠の種類・収集方法や、具体的な離婚手続きの進め方などをアドバイスしてくれます。
さらに、協議離婚・調停離婚・裁判離婚などの離婚手続きの代行も依頼可能です。
弁護士に離婚手続きを依頼することで、離婚手続きにかかる負担を大幅に軽減できますし、自分で対応するよりもスムーズかつ有利な条件での離婚成立が望めます。
当サイト「ベンナビ離婚」なら、お住まいの地域から離婚問題が得意な弁護士を一括検索できますので、ガスライティングを理由に離婚を考えている方はぜひご利用ください。
2.ガスライティングの証拠を集める
ガスライティングを理由に離婚や慰謝料の支払いなどを求める場合、相手方に意向を伝える前に「ガスライティングの証拠を確保できるかどうか」がポイントになります。
何の証拠もない状態で感情的に切り出すと、簡単に言い逃れをされてしまう可能性があります。
特にガスライティングによって支配関係・隷属関係が完成している状況では、客観的証拠なしで切り出しても配偶者から反論されて屈するリスクが高いでしょう。
ガスライティングの立証に役立つ主な証拠としては、以下のものが挙げられます。
- ガスライティングに該当する発言や言動を記録した録音・録画データ
- 配偶者から受けた暴言ややり取りを克明に記載したメモ・日記
- ガスライティングが原因で患った精神疾患の診断書や通院履歴
行政・弁護士・警察・病院などへの相談履歴 など
3.離婚の意思を強く持つようにする
ガスライティング被害者が離婚を目指すときに重要なのが、離婚の意思を強くもつことです。
ガスライティング被害者は「離婚したいと考える自分が間違っている」という思考状態に陥りやすく、なかには離婚手続きを進めている途中で少しでもトラブルが生じただけで離婚を諦めてしまうこともあります。
しかし、離婚を諦めると、今までの苦しい結婚生活が続くだけです。
ガスライティングの被害はどんどん深刻化するおそれがありますし、将来的に離婚をしたいと思っても、今以上に厳しい状態で離婚手続きに向き合わなければならなくなる可能性があります。
現段階でパートナーの言動に違和感を抱いていたり、ガスライティング被害について思い当たる節があったりするなら、強い意思をもって離婚を目指しましょう。
もし自分1人では離婚成立まで頑張りとおせる自信がないなら、必要なタイミングで弁護士のアドバイスやサポートを受けましょう。
ガスライティングに関するよくある質問3選
ここでは、ガスライティングに関するよくある質問について解説します。
1.ガスライティングとはどういう意味?
ガスライティングとは、相手の記憶や現実の認識を意図的に狂わせて支配したりする心理的虐待のことです。
具体的には、意図的に間違った情報を与えたり、継続的に嫌がらせをしたりすることによって相手方を心理的にコントロールします。
ガスライティングがおこなわれる場面は多々あり、たとえば会社の上司と部下、部活動の先輩と後輩、知人間、夫婦間、恋人間などがあります。
2.ガスライティングからの回復方法は?
ガスライティングの被害に遭った場合は、なるべく速やかに加害者から離れて、専門家や相談機関に助けを求めましょう。
もし加害者が配偶者の場合は別居を選択し、いきなり別居するのが難しい場合は寝室や食事を別にするなどして、できるだけ一緒にいる時間を減らすことが大切です。
ガスライティングに関する相談窓口は多くあり、加害者との離婚や慰謝料請求を考えている場合は弁護士、精神的に辛い状況にある場合は医師などに相談しましょう。
3.ガスライティングとモラハラは何が違う?
ガスライティングとモラハラは似ている部分もあるものの、手法や性質などが異なります。
たとえば、モラハラの場合は、加害者が無視・暴言・人格否定などの言葉や態度で精神的に追い詰めて、被害者の人格や尊厳を傷つけるのが大きな特徴です。
一方、ガスライティングの場合は、加害者が意図的に間違った情報を与えたり継続的に嫌がらせをしたりして、被害者が自分の記憶や認識を疑うように仕向けるのが大きな特徴です。
いずれにしても許されない行為であることに変わりはないため、もし配偶者からガスライティングやモラハラを受けた際は、離婚や慰謝料の支払いなどを求めて動きましょう。
さいごに|ガスライティングの被害に遭ったら、ひとりで悩まず相談を!
夫婦間のガスライティングは長期的・継続的におこなわれることもあり、被害者本人が自力で追い込まれた現状から逃げ出すのは簡単ではありません。
もし配偶者からのガスライティングに思い当たることがあるなら、できるだけ早いタイミングで第三者に相談するのがおすすめです。
特に離婚や慰謝料請求などの対応を考えているなら、弁護士が心強い味方としてアドバイス・サポートしてくれます。
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