共同養育のデメリットとは?子ども、親権者、非親権者に分けて不利益を詳しく解説
- 「共同養育にはどんなデメリットがあるのか」
- 「双方にどのような影響があるのか」
離婚後も父母で協力して子育てをしたいと考える一方で、このような疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
共同養育とは、両親が親権をもつ「共同親権」のことではなく、離婚後も両親が協力して子育てをすることです。
「離婚後も両親に育ててもらえる」という点で一見すると良いことのように見えますが、共同養育には子どもはもちろん、親にもデメリットが生じるため注意が必要です。
本記事では、共同養育のデメリットを子ども、親権者、非親権者の立場別に解説します。
最後まで読むことで、共同養育を選択すべきかどうかのポイントがわかるようになるでしょう。
【子ども側】共同養育を選択する3つのデメリット
共同養育には、離婚後も両親からの愛情を受けられる点やより多くの体験をさせられるといったメリットもありますが、子どもにとって良いことばかりではありません。
共同養育を選択する場合、子どもにとって以下のようなデメリットがあります。
- 子どもが精神的ストレスを抱えてしまう
- 二重生活が子どもの負担になってしまう
- 離婚原因によっては子どもに危害が及んでしまう
それぞれのデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
1.子どもが精神的ストレスを抱えてしまう
共同養育の最大のデメリットは、子どもが精神的ストレスを感じる可能性があることです。
子どもは、両親の様子をよく見ています。
両親の関係が離婚後も良好ならストレスになりにくいですが、雰囲気がギスギスしていたり不仲であることが伝わったりすると、子どもに余計な気を遣わせてしまうでしょう。
また、子どもの進路や習い事、生活習慣などで意見が割れた際、子どもが板挟みになることもあります。
「自分のせいで両親が対立している」となれば、子どもの自己肯定感が育ちにくくなるおそれもあるでしょう。
子どもの前で言い争ったり雰囲気が悪くなったりする可能性が高いなら、無理にふたりで子育てをしないほうがいいかもしれません。
2.二重生活が子どもの負担になってしまう
共同養育を選択する場合、子どもは両親の家を頻繁に行き来することになります。
その二重生活が、子どもの負担になってしまうおそれもあるのです。
例えば、平日は親権者とともに過ごし、週末は非親権者のもとで過ごす場合、週末のたびに移動が発生し、なかなか落ち着いて生活できません。
特に非親権者の住まいが遠方だと移動に時間がかかるため、子どもが億劫に感じる可能性があります。
中には、親に気を遣って「行きたくない」と口に出せず、気持ちを飲み込んでしまう子もいるでしょう。
そのため、共同養育を選択する際は、本当に子どもにとって良い選択かどうかを十分検討しなければなりません。
共同養育を選択するなら、子どもの意見を聞きながら子どもに極力負担がかからないよう工夫することが重要です。
3.離婚原因によっては子どもに危害が及んでしまう
離婚原因によっては、共同養育を選択したことで子どもに危害が及ぶおそれがあります。
特に、DVやモラハラが原因で離婚した場合などは要注意です。
婚姻期間中は親権者だけに矛先が向いていたケースでも、非親権者と子どもが過ごす中で子どもがDVやモラハラの被害に遭うリスクがあります。
また、もともと子どもが非親権者を怖がっていたり会いたがらなかったりするなら、共同養育が子どもにとってプラスになるとはいえません。
なお、DVや虐待が認められた場合は原則として単独親権となり、共同親権は法律上推奨されていません。
一方、共同養育については、法律上明確に定められているわけではありませんが、DVやモラハラの加害者が子育てに参加すること自体リスクがあると考えられます。
子どもや被害者の安全を最優先し、相手が共同養育を望んでいる場合は弁護士や以下の相談先への相談をおすすめします。
| 相談先 | 連絡先 |
|---|---|
| 配偶者暴力相談支援センター (DV相談ナビ) | #8008 |
| 内閣府DV相談プラス | 0120-279-889 (電話は24時間対応) |
そのほか、各都道府県の女性相談支援センターや市区町村の福祉課、法テラスなども利用できます。
配偶者暴力相談支援センターへは、直接施設に連絡することも可能です。
その場合は、以下の施設一覧から最寄りのセンターを探してください。
【親権者側】共同養育を選択する4つのデメリット
共同養育には、子育てについてひとりで悩まずに済む、養育費の未払いを防げるといった親権者側のメリットがある一方で、下記のような問題も起こりやすくなります。
- 教育方針でもめることがある
- 引っ越しが制限されてしまう
- 子どもと接する時間が少なくなる
- 一般的な面会交流よりも負担が大きくなる
それぞれのデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
1.教育方針でもめることがある
共同養育を選択すると、親権者だけが養育しているケースよりも教育方針でもめやすくなります。
親権者だけが養育している場合、親権者がひとりで子どもの教育方針を決めるのが一般的です。
しかし、共同養育の場合は非親権者も積極的に子育てに関わるため、教育方針をめぐって対立することも多いでしょう。
また、教育方針でもめたことでより溝が深まる可能性もあり、子どもが板挟みになってしまうケースも少なくありません。
意見が合わないときは、行政が運営する教育相談センターや子ども家庭相談センターといった相談窓口への相談も検討してみてください。
行政の相談窓口に相談すると、教育・子育て経験豊富なカウンセラーや心理士が中立的な立場で対応してくれます。
なお、最寄りの教育相談センターは、以下の一覧から探せます。
2.引っ越しが制限されてしまう
共同養育を選択することで、引っ越しが制限される点にも注意しましょう。
単独での養育でも引っ越しや転校といった悩みはありますが、共同養育では非親権者が子どもと定期的に会いやすい環境を維持する必要があるためです。
父母それぞれの家が近くにない場合、共同養育が難しいのは言うまでもありません。
そのため、引っ越しを検討する際もできるだけ非親権者の住まいから離れないようにする必要があります。
やむを得ず離れて暮らすのであれば、夏休みや冬休みといった長期休みに非親権者と過ごしたり、オンラインでの交流も組み合わせたりといった工夫が必要です。
3.子どもと接する時間が少なくなる
共同養育を選択すると、単独で養育する場合よりも子どもと接する時間が少なくなる傾向にあります。
共同養育には法律で決まったルールはなく、面会交流の頻度や日数、子どもがどちらの家でどの程度過ごすかは家庭ごとに異なります。
例えば、平日は親権者、週末は非親権者と過ごす場合や、普段は親権者と過ごして長期休暇だけ非親権者の家に滞在したりなどさまざまです。
ただ、親同士が時間を分け合う形になるため、単独養育のように毎日顔を合わせられません。
そのため、親子関係が希薄にならないよう、日々の関わりやイベントなど、これまで以上に子どもと向き合う時間を大切にする必要があるでしょう。
4.一般的な面会交流よりも負担が大きくなる
一般的な面会交流よりも、共同養育の場合は親権者の負担が大きくなる点もデメリットとして挙げられます。
例えば、子どもの送り迎えやスケジュール調整、非親権者への連絡などが積み重なり、肉体的にも精神的にも疲労を感じる可能性があります。
また、非親権者のDVやモラハラが原因で離婚に至った場合、これからも関わっていかなければならないのは大きなストレスになるでしょう。
通常の離婚であれば、相手に連絡先や住所を教えないようにできますが、共同養育の場合はそういうわけにはいきません。
ただし、「3.離婚原因によっては子どもに危害が及んでしまう」でも解説したように、相手のDVやモラハラで離婚したケースは、子どもに被害が及ぶ可能性があります。
そのため、共同養育を選択するかどうかについては慎重に検討しなければなりません。
それでも共同養育を選択するのであれば、面会交流の第三者機関に入ってもらったり家族や親族に協力してもらったりといった方法をとるのもひとつの手段です。
【非親権者側】共同養育を選択する4つのデメリット
共同養育を選択する際は、非親権者側にも以下のようなデメリットがあります。
- 教育方針でもめることがある
- 住む場所を制限されてしまう
- 子どもが生活で環境を整える必要がある
- 子どもに関する重要な決定はおこなえない
それぞれのデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
1.教育方針でもめることがある
教育方針でもめる可能性があることは、親権者だけでなく非親権者にとってもデメリットといえます。
共同養育である以上、非親権者も子どもの教育方針について口出しすること自体は可能です。
しかし、あくまでも決定権をもつのは親権者であるため、どうしても非親権者の意見が反映されにくい場面が多くなりがちです。
そのため、思い通りにいかず、親権者と対立してしまう可能性がある点に注意しましょう。
親権者と話し合うときは感情的にならないようにし、自分たちの意見だけではなく子どもの希望を尊重した妥協案を探る努力が必要です。
2.住む場所を制限されてしまう
親権者と同様に、非親権者も住む場所が制限される可能性があります。
法律上の規定はありませんが、実際には親権者の近くに住む必要があるためです。
例えば、遠方に転勤になったり県外の実家に引っ越したりなどしてしまうと、子どもが気軽に行き来できなくなります。
また、子どもの行事にも参加しにくいでしょう。
非親権者の家が遠方の場合、無理に行き来すると子どもの負担になるため、普段はオンラインで面会し、長期休暇に非親権者のもとを子どもが訪ねるなど、子どもの負担になりにくいよう配慮することが重要です。
3.子どもが生活で環境を整える必要がある
非親権者の家で子どもが快適に生活できるよう、環境を整える必要もあります。
普段子どもがいない家は、子どもが生活しやすい環境になっていないことが多いです。
例えば、子ども専用の家具や学習スペース、遊び道具などを用意し、子どもが自分の家と同じように過ごせる環境づくりを心がけましょう。
備えが不十分なまま共同養育を開始すると、子どもは居心地の悪さやストレスを感じ、「やっぱり自分の家で過ごしたい」と思ってしまいます。
できるだけ家と同じような環境で過ごせるようにしておく必要があるでしょう。
4.子どもに関する重要な決定はおこなえない
共同養育という形をとっていても、非親権者は子どもに関する重要な決定はおこなえません。
なぜなら、親権者ではないためです。
子どもにとって、戸籍上の親であることには変わりありませんが、非親権者には以下の権利がないことを覚えておきましょう。
| 身上監護権 | 子どもの日常生活を見守ったり、しつけや進学、医療といった身の回りの世話・教育をする権利 |
|---|---|
| 財産管理権 | 子ども名義のお金や財産を管理したり、必要に応じて使ったりする権利 |
| 法定代理権 | 子どもが契約や入院手続き、銀行口座の開設などの法的な手続きをおこなう際に、それを代理人する権利 |
非親権者も、子どもの将来や日常生活に対して意見や要望を伝えられます。
しかし、最終的な判断は親権者に委ねられるため、自分の意見が通らなかったり、大事なことをあとから知ったりといったこともあるでしょう。
たとえ決定権がなくても子どもに寄り添い、普段の会話や面会交流の中で信頼関係を築くことが子どもの安心感につながります。
子どもにとっての最善を常に考え、できる範囲のことを模索していきましょう。
さいごに|共同養育を選択する際はそれぞれのデメリットもよく検討しよう
本記事では、共同養育のデメリットについて解説しました。
共同養育にはさまざまなメリットがありますが、良いことばかりではありません。
事前にデメリットを確認し、話し合いを重ねたうえで共同養育を選択するか検討する必要があります。
また、親の希望ではなく、あくまでも子どもにとってプラスになるかどうかを考えましょう。
親だけで選択できない場合や第三者の意見も聞きたいときは、教育相談センターや子ども家庭相談センターに相談し、専門家に意見を聞くことをおすすめします。
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