離婚をするときに子供の親権や慰謝料、財産分与などで相手と揉めて、弁護士が必要となったときにかかる費用相場は、内容にもよりますが50~100万円ほどになります。
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夫婦は婚姻費用の分担が義務付けられているため、トラブルによって別居することになった場合、相手に不足分を請求できます。
しかし、相手が婚姻費用を支払わず、夫婦間で話し合っても解決しないときは、婚姻費用分担請求調停を検討しなければならないでしょう。
本記事では、婚姻費用分担請求調停の流れや必要書類、調停委員から聞かれることなどをわかりやすく解説します。
婚姻費用は夫婦の生活費を指しており、衣食住の費用や医療費などが含まれます。
夫婦には婚姻費用を分担する義務があるため、相手に請求しても支払いに応じないときは、婚姻費用分担請求調停を検討してください。
婚姻費用分担請求調停では調停委員が夫婦の間に入り、婚姻費用の問題について話し合いで解決を目指すため、相手と和解できる可能性があります。
家庭裁判所に婚姻費用調停を申し立てる場合は、まず婚姻費用と調停の基礎知識を理解しておきましょう。
婚姻費用の範囲は以下のようになっており、生活する上で欠かせない必要コストです。
夫婦が婚姻関係を解消しない限り、婚姻費用を双方で分担しなければなりません。
たとえば、夫婦間のトラブルで自分が別居することになり、十分な収入がないときは、家賃や光熱費などを相手に請求できます。
また、婚姻費用の支払い期間は請求日を起算点とし、離婚または別居期間が終了する日までとなっています。
請求していなかった期間については、原則として、遡っては受け取れないので注意してください。
相手と話し合っても離婚がまとまらない場合、婚姻費用分担請求調停と離婚調停を同時に申し立てられます。
離婚すると婚姻費用は受け取れませんが、2件同時の調停を申し立てると婚姻費用分担請求調停が優先されるため、相手と和解できれば生活費を確保できます。
すでに離婚前提で別居しており、相手から婚姻費用が支払われていないときは、婚姻費用分担請求調停と離婚調停を同時に申し立ててみましょう。
婚姻費用分担請求調停では以下の5項目を必ず聞かれるので、正確に回答してください。
調停委員の質問は申立人の請求が妥当かどうかを判定し、適正額を算定する目的があるため、資料を準備しておくとよいでしょう。
調停で婚姻費用を決める場合、「婚姻費用算定表」を目安にするため、夫婦の収入・支出や資産などを聞かれます。
婚姻費用は収入の多い配偶者から少ない配偶者へ支払われるので、以下の資料があると妥当性のある金額を算定できます。
収入 | 給与明細書や源泉徴収票、事業の売上高や利益・経費などがわかる計算書、確定申告書、家賃収入がわかる賃貸借契約書や預金通帳など |
支出 | 家賃や学費などの支払い状況がわかる賃貸借契約書や預金通帳、1ヵ月間の買物状況がわかるレシート、医療費を支払った際の領収書など |
資産 | 預金通帳や残高証明書、不動産の登記事項証明書、固定資産税の課税明細書、株式の取引残高報告書など |
事業者の場合、商取引きの契約書や発注書・請求書などの提示を求められるケースもあるので、給与所得者よりも提出資料が多くなるでしょう。
婚姻費用分担請求調停では結婚した理由やその後の生活状況を聞かれるので、正直に回答してください。
調停委員は夫婦の出会いや交際期間、結婚を決めた理由や結婚生活を聴取し、夫婦関係の破たん原因がどちらにあるのか判断します。
ほかの項目に比べて重要度はあまり高くないため、証拠や資料の提示を求められるケースはほぼないでしょう。
ただし、離婚調停を同時に申し立てたときは、どちらが夫婦関係の破たん原因をつくったのか、詳しく聞かれる場合があります。
婚姻費用には養育費や教育費が含まれるため、婚姻費用分担請求調停では子どもの有無や監護状況などを聞かれます。
子どもがいる場合、小学生・中学生・高校生・大学生のいずれなのか、私立・公立のどちらか、成人の場合は経済的な自立状況などを聞かれるでしょう。
また、子どもが未成年の場合は監護義務を果たしていたかどうか聞かれるので、日々の養育状況などを正直に答えてください。
調停委員は子どもが成人するまで、または経済的に自立するまでいくら養育費が必要か判断し、婚姻費用の分担額を算出します。
婚姻費用分担請求調停の申し立て理由は和解できるかどうかの判断要素になるため、調停委員から以下の質問を受ける場合もあります。
本来、婚姻費用の問題は夫婦間で解決しなければならないので、双方で十分に話し合ったかどうかなど、調停に至った理由を聞かれるでしょう。
ただし、相手の暴力・暴言でまともな話し合いができない場合、調停委員も事情を考慮してくれます。
婚姻費用は基本的に「婚姻費用算定表」を目安にしますが、希望する金額や支払方法、支払期間などの条件も聞かれます。
自分が家を出て別居している場合、家賃の引落し日の前日までに婚姻費用がほしいなど、希望条件があればすべて調停委員に伝えてください。
重い病気にかかって高額な治療費を支払っている場合や、または子どもが私立校に通うので学費が高くなるときは、増額が必要である旨を主張しておきましょう。
婚姻費用調停を申し立てる場合、手続きの流れと必要書類は以下のようになります。
1回の話し合いで終結するケースは少ないので、申し立てから調停成立までの期間は3~4ヵ月程度が目安になるでしょう。
婚姻費用分担請求調停を申し立てるときは、以下の書類を準備してください。
申立書の書式は家庭裁判所の窓口、または裁判所のホームページで入手してください。
必要書類がすべて揃ったら、相手の住所地を管轄する家庭裁判所に提出しますが、双方の合意があれば、別の家庭裁判所に提出しても構いません。
家庭裁判所に必要書類を提出し、婚姻費用分担請求調停を申し立てると、郵便で調停期日の呼出状が届きます。
調停委員を交えた話し合いを調停期日といい、1回目の調停期日は申し立てから概ね1ヵ月後になるでしょう。
調停期日に家庭裁判所へ出向くと、夫婦が別々の調停室に入り、調停委員が往復しながら30分程度の事情聴取をおこないます。
なお、1回の調停で結論が出るケースは少ないので、一般的には月1回のペースで2回目以降の調停期日が設定されます。
調停期日は平日しか開かれないため、仕事をしている方は、休暇を取りやすいように調整しておきましょう。
2回目以降の調停期日は概ね1ヵ月後になるので、新たな資料などがあるときは、必ず調停委員に提出してください。
双方の主張や資料などがすべて出尽くした場合、調停委員が現実的な和解案を判断します。
調停委員の和解案に双方が合意すると、婚姻費用調停の成立となり、調停調書が交付されます。
調停に合意した相手が婚姻費用を支払わなかった場合、調停調書があると強制執行を申し立てられるので、相手の財産を差し押さえて婚姻費用を回収できます。
婚姻費用分担請求調停は双方の合意によって成立するため、相手が納得しないときは調停不成立となり、自動的に審判へ移行します。
審判期日は調停の不成立日から2週間~1ヵ月以内になっており、双方が家庭裁判所に出頭して審問を受け、最終的に裁判官が審判を下します。
相手に婚姻費用の支払いを命じる審判だった場合、審判書も強制執行を申し立てる際の債務名義になるので、失くさないように注意しましょう。
裁判官の審判に不服がある場合、審判書の受取日から14日以内であれば、即時抗告の申し立てが可能です。
審判を下した家庭裁判所に即時抗告すると、高等裁判所が婚姻費用を再審理するので、審判が変更される可能性もあります。
ただし、相手が即時抗告を申し立てた場合、自分にとって有利だった審判が逆転する恐れもあるでしょう。
婚姻費用調停にかかる費用は2,500円程度ですが、家庭裁判所によって若干異なります。
また、弁護士に婚姻費用調停をサポートしてもらうと、法律相談料や着手金などが発生するので、各費用の内訳は以下を参考にしてください。
婚姻費用調停を申し立てる場合、申立手数料を収入印紙で支払い、連絡用の郵便切手も必要です。
郵便切手の種類は以下のようになっていますが、家庭裁判所によって異なる場合があるので、事前に確認しておきましょう。
すべて合計すると、婚姻費用調停の申し立て費用は2,500円程度です。
また、婚姻費用調停には1通450円の戸籍謄本や、1通600円程度の登記事項証明書を提出する場合があります。
婚姻費用分担請求調停を弁護士に依頼すると、以下の費用がかかります。
弁護士費用の内訳 | 税込の一般的な相場 | 支払時期 |
---|---|---|
法律相談料 | 30分5,000円、1時間1万円程度 | 相談時 |
着手金 | 20万〜40万円程度 | 委任契約の締結時 |
報酬金 | 30万〜40万円程度+経済的利益の10~16% | 調停の終了時 |
日当 | 1回1万円~5万円程度(場所による) | 発生の都度または調停の終了時 |
交通費などの実費 | 数千円程度(場所による) |
初回の法律相談料は無料になるケースが多いので、1人で調停に対応できるかどうか不安な方は、まず無料相談を活用してみましょう。
着手金は委任契約時に支払いますが、弁護士によっては報酬金を若干高めに設定し、着手金を無料にしている場合もあります。
弁護士費用には統一基準がないので、「高いな」と感じたときは複数の法律事務所で相見積もりを取ってください。
調停委員の心象を悪くすると、婚姻費用分担請求調停は不利な結果になる可能性があります。
婚姻費用分担請求調停を有利な展開にしたいときは、以下のコツを押さえておきましょう。
婚姻費用分担請求調停を申し立てるときは調停委員の質問を予測し、回答を準備する必要があります。
たとえば、「わずかな婚姻費用しかもらえない」という主張であれば、いくら足りないのか質問されるので、実際に支払っている生活費を証明しなければなりません。
生活費を把握しないまま調停を申し立てた場合、調停委員は「本気で解決する気があるのか?」と考えてしまうでしょう。
子どもと一緒に別居しているときは、育児や監護状況の質問にも回答できるようにしてください。
婚姻費用分担請求調停は双方の事情聴取からスタートするので、主張したい内容を整理しておきましょう。
「子どもが留学を希望しているので渡航費用がほしい」「国家資格の受験費用をもらいたい」など、明確な主張があると調停委員も和解案を提示しやすくなります。
何を主張したいのか明確になっていない場合、調停の期間が長くなるので注意してください。
調停委員の心象を悪くすると調停が不利な結果になるため、質問には正直に答えましょう。
婚姻費用を多くもらいたいために収入を少なく申告するなど、虚偽の発言・申告があると、調停委員だけではなく相手の信用も失います。
場合によっては相手から離婚訴訟を起こされる可能性があるので、調停委員の質問には正直に回答してください。
婚姻費用分担請求調停を申し立てる場合、自分の主張を裏付ける証拠が必要です。
預金口座に婚姻費用が振り込まれており、途中から支払いが滞った場合は、預金通帳が証拠になります。
通帳を記帳しておらず、過去の入出金が合算されたときは、金融機関に預金口座の取引明細を請求しておきましょう。
ほとんどの金融機関は過去10年分の口座情報を保存しており、400~1,000円程度の手数料で取引明細を発行してもらえます。
婚姻費用分担請求調停の申し立てに不安があるときは、弁護士にサポートを依頼してください。
調停に至る経緯を弁護士に伝えると、論理的な主張を構成してくれるので、調停委員の心象もよくなるでしょう。
また、弁護士は調停期日の同席が認められており、質問に答えられないときはその場でアドバイスを受けられます。
弁護士のサポートがあると調停の流れがスムーズになるため、短期間の調停成立も期待できます。
婚姻費用は夫婦で分担しなければなりませんが、以下のようなケースは相手に請求できません。
生活費が不足しており、すぐにお金が必要な状況でも、婚姻費用をもらえない場合があるので注意してください。
民法752条では夫婦の同居義務や相互扶助を定めており、別居する場合は正当な理由が必要です。
自分勝手な都合で同居を拒み、婚姻費用のみ請求する行為には合理性がないため、婚姻費用分担請求調停の申し立ても受理されない可能性があります。
別居の理由が不倫相手と暮らすためであれば、相手から慰謝料請求される恐れがあるので注意が必要です。
婚姻費用は夫婦が同じ生活水準で暮らすために必要であり、相手に経済的余裕がないときは基本的に請求できません。
相手に婚姻費用を支払う意思があっても、生活保護を受けている場合や、健康上の理由で就労できず、無収入の場合は請求が認められないでしょう。
なお、相手が事業者の場合は所得を隠す恐れがあるため、生活実態と収入の申告額がかけ離れているときは、調停委員に矛盾している旨を伝えてください。
自分に十分な収入があり、相手の収入が低い場合は婚姻費用を請求できません。
たとえば、別居している自分の年収が1,000万円、相手の年収が300万円で子どもを養育している場合、婚姻費用の請求者は相手側になります。
また、自分が高収入を得ている場合でも、浪費癖やギャンブル依存でお金が足りない状況であれば、婚姻費用の請求が認められにくいでしょう。
夫婦が離婚に合意しており、離婚届の提出前に財産分与が完了している場合、基本的に婚姻費用は請求できません。
財産分与で取得した金銭は離婚後の生活費にできるため、婚姻費用分担請求調停を申し立てても受理されない可能性があります。
取得した財産の大部分が不動産だった場合は、賃貸や売却を検討する必要があるでしょう。
自分が不倫や浮気をしている場合、夫婦関係を破たんさせる「有責配偶者」になるため、原則として婚姻費用の請求は認められません。
家事や育児に協力しない「悪意の遺棄」や性交渉の拒否、モラハラなども有責行為に含まれます。
なお、子どもの養育費は親の有責性に関係ないため、自分に不貞行為があった場合でも相手に請求できます。
婚姻費用分担請求調停を家庭裁判所に申し立てると、相手と和解できる可能性があります。
ただし、感情論や根拠のない主張は通用しないため、相手の収入や資産を把握するなど、入念な事前準備が必要です。
調停委員に納得してもらえるだけの証拠を揃え、婚姻費用の請求に妥当性があることを立証してください。
婚姻費用分担請求調停に不安があるときは、弁護士にも相談するとよいでしょう。
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