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離婚に向けて別居している場合でも婚姻費用の支払い義務は免れません。
ただし、別居や離婚の理由が配偶者にある場合や、離職・病気などの理由で減収した場合は婚姻費用の減額が認められる可能性があります。婚姻費用が減額される例や条件、支払えない場合の対処法を解説します。
婚姻費用は、民法第760条を根拠に請求が認められているものです。
夫婦は、夫婦や未成熟な子どもの生活費など、婚姻生活を維持するために必要な一切の費用について分担する義務を負います。
たとえ離婚を前提に別居していたとしても、離婚が成立していない以上は支払いの義務を免れません。
法律の定めに反して婚姻費用を支払わない場合は、配偶者がアクションを起こすことで強制的に支払いを命じられるおそれがあります。
婚姻費用の金額や支払い方法は、まず夫婦間での協議によって決めるのが原則です。
協議によってお互いが「月々◯万円」と合意すれば、その取り決めに従って婚姻費用を支払うことになるでしょう。
協議による取り決めがないまま別居状態となり、改めて協議の場をもつこともできなければ、配偶者からの申立てによる婚姻費用分担請求調停が開かれる可能性があります。
調停では、裁判所の調停委員が夫婦の資産や収入・支出などの一切の事情について夫・妻の双方から事情を聴き、資料を照らしながら解決案を提示して、最終的には当事者(夫婦)間の合意により、婚姻費用を決めます。
婚姻費用分担請求調停によって取り決めた婚姻費用の支払いを履行しない場合は、裁判所からの履行勧告・履行命令によって支払いを促されます。
履行勧告・履行命令には強制力がないので、いきなり財産を差し押さえられるわけではありません。
ただし、履行命令が下されたのに正当な理由なく従わなかった場合は、10万円以下の過料が科せられてしまいます。
過料は行政罰のひとつであり、支払った過料が婚姻費用にあてられるわけではありません。
無駄な支出が増えてしまうので、履行命令には従うほかないでしょう。
婚姻費用分担請求調停で決まった婚姻費用について不払いの状態を続けていると、配偶者からの請求によって強制執行を受け、給料や預貯金などの財産が差し押さえられてしまうおそれがあります。
なお、夫婦間による協議の段階で婚姻費用に関する公正証書が作成されていた場合は、調停を経ることなく強制執行が可能となるため注意が必要です。
法律の定めによれば、別居中の婚姻費用は収入の多いほうが収入の少ない一方に対して支払うのが原則です。
ただし、別居に至った経緯によっては、婚姻費用を大幅に減額できる可能性があります。
夫婦には同居しながらお互いに扶助しあって生活する義務があり、勝手に出ていった配偶者は同居義務違反にあたるため、婚姻費用の減額や免除が期待できます。
また、離婚の原因を作った配偶者は『有責配偶者』となり、婚姻費用の請求は権利濫用又は信義則違反とされる可能性があるため、大幅な減額が認められる可能性が高いでしょう。
婚姻費用の支払いは法律によって定められた義務であり、原則として「支払わなくてもよい」と免除されることはありません。
二世帯分の生活費を支払う余裕がなければ現実的に婚姻費用を捻出するのも困難ですが、婚姻費用を支払わないまま放置していれば配偶者からの請求によって法的手段による強制執行を受けてしまいます。
婚姻費用を支払えないときは、どのように対応すればよいのでしょうか?
別居しているとはいえ、相手は収入・支出の状況を熟知している配偶者です。
請求を受けたとおりの婚姻費用を支払うのが困難であることは、配偶者も承知済みでしょう。
婚姻費用の支払いが難しければ、配偶者との協議の場を設けて婚姻費用の減額を交渉するのが第一です。
任意の交渉に限らず、婚姻費用分担請求調停や審判によって取り決められた場合でも、配偶者の合意さえあれば減額が認められます。
婚姻費用の減額に合意が得られれば、必ず新たな取り決めを公正証書に残しましょう。
口約束だけでは、配偶者が減額に合意したという証拠が残りません。
協議によっても配偶者が減額に応じない場合は、婚姻費用減額請求調停を申し立てましょう。
収入の状況や最初に婚姻費用を取り決めたときに予測できなかったような事情の変更があった場合は、裁判所のもとで減額が認められる可能性があります。
ただし、単に「婚姻費用が高い」「こちらにも余裕がない」と主張するだけでは裁判所が減額を認めてくれる期待は薄いでしょう。
なぜ減額が認められるべきなのかを客観的に示す必要があるので、収入・支出の状況を改めて精査しなくてはなりません。
婚姻費用の支払いは法的な義務です。
しかし、離婚を進めていく過程において事情が変われば、婚姻費用の支払いが難しくなることもあるでしょう。
婚姻費用が支払えなくなる代表的な理由とそれぞれの対処法を確認します。
離婚を進めていくうちに、会社の経営不振でリストラされたなど、やむを得ない事情で離職することもあるでしょう。
離職によって収入が減った場合は、婚姻費用の減額が認められる可能性があります。
ただし、すすんで働くことでしっかりとした収入を得る能力があるにもかかわらず、あえて給料の少ない職場に転職したようなケースでは、減額が認められにくいでしょう。
婚姻費用は収入額に応じて決まるので、勤務先の業績不振などで給料が下がった場合は、交渉や調停によって減額が認められる可能性があります。
ただし、給料はさまざまな事情によって増減するものです。
多少の減収程度では減額は認められず、また、自営業者のように自分で収入を調整できる状況であれば意図的に減収させても減額は期待できないでしょう。
住宅ローンのほか、消費者金融などへの返済が多く婚姻費用の支払いが難しいというケースは少なくないでしょう。
基本的に、借金があることで婚姻費用が減額されることはありません。
そもそも、収入額に対してどれくらいの借金返済をしなくてはならないという点は、最初に婚姻費用を取り決めた際に考慮していたはずなので、改めて理由に取り上げても減額の理由とはならないでしょう。
また、借金返済が難しくなり自己破産などの債務整理をしても、婚姻費用は減額・免除されません。
婚姻費用は非免責債権といって、債務整理の対象にはならないのです。
ただし、債務整理をするほど借金が多く経済状況が悪化しているという事実は、減額請求の理由となる可能性があります。
長期の入院や継続治療が必要な病気・怪我を負ってしまった場合は、これまでのように働けなくなり、収入が減少してしまいます。
治療費の負担が重ければ、取り決めどおりに婚姻費用を支払うのも難しいでしょう。
病気や怪我による減収は、減額請求の理由として認められやすい事情のひとつだといえます。
別居生活が続くうちに、減額どころか配偶者から「いまの金額では足りない」と婚姻費用の増額を求められるおそれもあるでしょう。
夫婦間の合意があれば減額が認められるように、増額もやはり夫婦間の合意次第で認められます。
一方で、減額が容易に認められないのと同じで、増額も簡単には認められません。
ただし、配偶者側の収入が著しく減少した、配偶者が監護している未成年の子どもが病気や怪我を負って治療費の負担が増えたなどの事情があれば、増額が認められるおそれがあります。
婚姻費用の支払いは法的な義務であるため、多少の減収や生活苦を理由にしても未払いは認められません。
では、配偶者が婚姻費用を支払ってくれない場合は、どのような対応を取るべきなのでしょうか?
婚姻費用が支払われない初期の段階では、電話・LINEなどのチャットアプリを通じて「支払ってほしい」と催促するでしょう。
素早く催促する方法としては便利ですが、これらの方法では「支払いを請求した」という明確な証拠にはなりません。
配偶者が婚姻費用の支払いに応じない場合は、支払いを請求する旨の内容証明郵便を送付します。
いつ、誰から誰に、どのような内容の文書が送付されたのかを郵便局が証明するシステムなので、後に調停や審判でも証拠としても役立つでしょう。
内容証明郵便を送付しても支払いが得られない場合は、家庭裁判所に対して婚姻費用分担請求調停を申し立てます。
裁判所のサイトに申立書や記載例が掲載されており、申立てに必要な費用も収入印紙1,200円分で済むので、手続きは難しくありません。
ただし、調停に出席する手間があるほか、なぜ婚姻費用の請求が認められるべきなのかといった理由を法的な角度から主張する必要があるため、弁護士の同席や代理出席を依頼したほうがよい結果が期待できる可能性があります。
婚姻費用分担請求調停や審判によって婚姻費用の取り決めがなされたにもかかわらず支払いが受けられない場合は、強制執行による給料や預貯金などの財産の差し押さえが可能です。
支払いが遅れれば遅延損害金を加算したうえでの請求も可能なので、少しでも有利な条件で婚姻費用の支払いが受けられるように離婚トラブルの解決実績が高い弁護士への相談をおすすめします。
離婚に向けて別居している場合でも、夫婦には婚姻生活にかかる費用を分担する義務があり、収入の多い一方は収入の少ないほうに婚姻費用を支払わなくてはなりません。
法律で認められている義務なので、別居中の生活が苦しくても婚姻費用の支払いを免れることはできませんが、離職などの理由で減収した場合や相手が有責配偶者である場合は減額が認められる可能性があります。
婚姻費用の支払いが苦しいからといって未払いのまま放置していると、配偶者からの請求によって強制執行を受け、給料や預貯金などの財産が差し押さえられてしまうおそれもあり危険です。
減額に向けた交渉や調停といった手続きには、離婚問題の解決実績を豊富にもつ弁護士のサポートが欠かせません。
婚姻費用についてお困りであれば、まずは弁護士に相談してアドバイスを受けましょう。
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