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婚約破棄(解消)とは|正当な理由・慰謝料請求できるケースを解説

婚約破棄(解消)とは|正当な理由・慰謝料請求できるケースを解説

婚約破棄(こんやくはき)とは、婚約後に一方的な事情で婚約を解消してしまうことです。

法的には、婚約という契約を正当な理由なく履行しないときに、不当な婚約破棄となります。

一方的に契約を破棄されたら、相手に対して慰謝料請求することも可能です。

この記事では、どのようなケースが婚約破棄に該当するのか、婚約破棄されたとき慰謝料の請求の仕方を解説します。

婚約破棄されたという方はもちろん、これから婚約を解消したいという方も参考にしてください。

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目次

婚約破棄とは?

ここでは、「婚約破棄」の法律的な定義について説明します。

婚約が成立したと認められる5つの条件

婚約が成立したと認められる5つの条件

婚約破棄と法的に認められるためには、まず婚約状態であったことを示す必要があります。

婚約は本人同士の口約束でも成立し、正式な契約書はありません。

裁判所が婚約の成立を判断する際には、以下の5つのような要素を総合的に考慮します。

明確な結婚の意思表示があったか:

お互いが結婚する意思をはっきりと示し合った事実(プロポーズの言葉や、それに対する承諾など)

将来の婚姻に向けた具体的な準備行為があったか:

結婚式場の予約、新居の契約、家具の購入など、結婚に向けた具体的な行動の有無

社会的な認知があったか:

両親や親族、友人、職場などへの紹介や両家顔合わせ、結納など

継続的な交際の実態があったか:

婚約者としてふさわしい継続的な交際があったかどうか(同棲の開始など)

客観的な証拠が存在するか:

婚約指輪や結婚指輪の購入・交換、結納金の授受、婚約の事実を裏付ける手紙やメール、SNSでのやり取りなど

これらの要素が複数そろっているほど、婚約が確かであったと認められます。

婚約破棄と婚約解消の違い

「婚約破棄」とは、相手の合意なく、一方的な意思表示によって婚約をなかったことにすることです。

この場合、破棄した側に「正当な理由」がなければ、相手方に対して不法行為に基づく損害賠償責任(慰謝料など)を負う可能性があります。

一方、婚約破棄と似たものに「婚約解消」というものがあります。こちらはお互いが話し合い、合意の上で婚約をやめる場合を指します。

この場合は、双方が納得しているので、原則として一方から他方へ慰謝料などの法的責任を追及することは通常ありません。

両者の大きな違いは「双方が合意しているかどうか」です。

一方が納得していない「婚約破棄」の場合、相手に慰謝料請求が認められる可能性があります。

婚約破棄の慰謝料がもらえる場合・もらえない場合

婚約破棄の慰謝料がもらえる場合・もらえない場合

婚約を一方的に破棄されたからといって、必ず慰謝料がもらえるわけではありません。

慰謝料請求の肯否は、婚約破棄に至った原因や状況、そして破棄した側に法的な責任があるかどうかによって大きく左右されます。

慰謝料がもらえる場合|相手に落ち度がある婚約破棄

婚約破棄の原因が明らかに相手方にある場合、あなたは精神的な苦痛を受けたとして慰謝料を請求した場合、請求が認められる可能性が高いです。

これは、相手の不当な行為によって「婚約」が壊れ、精神的損害を被ったと評価できれば、その精神的損害に対する賠償として認められるものです。

具体的には、以下のようなケースが挙げられます。

  • 相手の浮気・不貞行為:婚約期間中に相手が別の人と肉体関係を持った場合
  • DV(ドメスティック・バイオレンス)やモラハラ:相手から身体的または精神的な暴力を受けた場合
  • 理由のない一方的な婚約破棄:「他に好きな人ができた」「やっぱり結婚したくなくなった」など、身勝手な理由で一方的に破棄された場合
  • 重大な嘘や隠し事の発覚:多額の借金を隠していた、経歴を偽っていた、実は既婚者だった、重大な犯罪歴を隠していたなど、信頼関係を根本から覆すような嘘が発覚した場合
  • 深刻なギャンブル依存やアルコール依存:結婚生活を脅かすほどの依存症が発覚した場合

これらのケースでは、相手の有責性が高いため、慰謝料請求が認められやすくなります。

なお、浮気が原因の場合、その浮気相手に対しても慰謝料を請求できる可能性があります。

証拠の集め方や請求の可否については、弁護士に相談すると良いでしょう。

慰謝料がもらえない場合|やむを得ない理由による婚約破棄

婚約を破棄されたとしても、その理由が社会通念上やむを得ないと判断される場合や、どちらか一方に責任があるとは言えない場合には、慰謝料請求が認められるのは難しくなります。

具体的には、以下のような状況が考えられます。

  • 性格の不一致や価値観の重大な相違:結婚に至る中で、どうしても埋められない性格の不一致や、人生観・価値観の根本的な違いが明らかになった場合
  • 婚約後に発覚した、治療困難な重大な病気や精神疾患:相手が予期せず重篤な病気を発症し、結婚生活を送ることが客観的に困難になった場合
  • 予期せぬ経済状況の著しい悪化:相手が失業したり、会社が倒産したりするなどして、結婚生活を維持するための経済的基盤が著しく失われた場合
  • 親族からの強い反対:単なる反対ではなく、結婚によって当事者や家族に著しい不利益が生じるような、客観的に見てやむを得ないと判断されるほどの強い反対があった場合
  • 宗教観や子どもに対する考え方の根本的な相違:結婚生活の根幹に関わる部分で、どうしても譲れない価値観の違いが婚約後に判明した場合

これらに当てはまると、法的には慰謝料の支払いを求めても、それが認められる可能性は低くなります。

婚約破棄の慰謝料の相場はどれくらい?

婚約破棄による慰謝料の金額は、法律で一律に定められているわけではありませんが、一般的には、50万円~300万円程度です。

これはあくまで目安であり、個別の事情によって金額は大きく変動します。

慰謝料額を決める6つの要素

婚約破棄の慰謝料額は、画一的な基準があるわけではなく、裁判所が様々な事情を総合的に考慮して決定します。

主に考慮される要素は以下の6つです。

  1. 交際期間の長さ:一般的に、交際期間が長いほど、婚約に対する期待や信頼が大きく、破棄による精神的苦痛も大きいと評価される傾向があります。
  2. 当事者の年齢:特に女性の場合、年齢が高くなるほど再婚の機会が減る可能性が考慮され、慰謝料が高額になることがあります。
  3. 婚約破棄の経緯と責任の程度:婚約破棄の原因を作った側の責任が重いほど(例:悪質な浮気、暴力など)、慰謝料は高額になります。一方、双方に責任がある場合は減額されることもあります。
  4. 精神的苦痛の大きさ:婚約破棄によって受けた精神的ショックの度合いです。うつ病を発症した、退職を余儀なくされたなどの事情があれば、慰謝料が増額される可能性があります。
  5. 社会的地位や収入(支払い能力):慰謝料を支払う側の経済力も考慮されることがあります。
  6. 結婚準備の進捗状況:結婚式場の予約、新居の準備、退職など、結婚に向けて具体的な準備が進んでいたほど、破棄による損害が大きいと判断されやすいです。

慰謝料以外に請求が認められる可能性がある費用

婚約破棄によって被った損害は、精神的な苦痛に対する慰謝料だけではありません。

婚約したことを前提として支出した具体的な費用についても、財産的損害として含まれる可能性があります。

具体的に請求して認められる可能性のある費用としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 結婚式場のキャンセル料:既に予約していた結婚式場や披露宴会場のキャンセルに伴って発生した費用です。
  • 新居の準備費用:新生活のために契約したアパートの敷金・礼金、既に購入した家具・家電の費用などです。
  • 結納金:結納を交わしていた場合、その返還を求めることができます。
  • 婚約指輪・結婚指輪の代金:婚約指輪や結婚指輪を購入していた場合、その代金相当額を請求できることがあります。ただし、指輪を返還する場合は代金の請求は難しくなります。
  • 仕事を辞めたことによる逸失利益:結婚を機に仕事を辞めた場合、婚約破棄によって得られなくなった収入(逸失利益)の一部を請求できるケースもあります。

これらの費用を請求する際には、支払ったことを証明する領収書や契約書などの証拠が重要になります。

実際の判例からみる婚約破棄の損害賠償額

実際の判例からみる婚約破棄の損害賠償額

婚約破棄に関する過去の判例から、実際に認められている損害賠償額を知ることができます。

東京地方裁判所 平成19年4月27日判決:

婚約期間中、女性に妊娠および流産という苦痛を負わせたあげく、男性が別の女性と交際し婚約破棄した事案。

出会ってから婚約破棄までの期間が5ヵ月と短かったこと、女性側の経済的損失が認められないことが減額対象となり、裁判所は慰謝料100万円の支払いを命じました。

引用元:弁護士法人フラクタル法律事務所

東京地方裁判所 平成28年3月25日判決:
結婚式と披露宴を開催し、一旦同居を開始したものの、心変わりを理由に婚約を破棄した事案。結婚式を中止する意思がなかったこと、婚約破棄によって原告が体調を崩していることを考慮して、裁判所は慰謝料200万円の支払いを命じました。

引用元:川上・吉江法律事務所

東京地方裁判所 平成29年12月4日判決:
同居期間3年を経て婚約したものの、正当な理由なく男性側が婚約を破棄した事案。原告は交際期間中に2度の人工中絶という苦痛を味わったことも考慮され、裁判所は慰謝料200万円の支払いを命じました。
引用元:川上・吉江法律事務所

東京地方裁判所 平成28年10月20日判決:
原告が被告の婚約破棄後、自殺を図った事案。被告が婚約破棄により引き起こされたことを予見することは困難だったこと、また2人の関係が不貞から発展したものであったことも考慮し、裁判所は慰謝料30万円の支払いを命じました。
引用元:川上・吉江法律事務所

これらの判例からもわかるように、慰謝料額は個別の事情によって大きく変動します。

ご自身のケースでどの程度の請求が妥当かを知りたい場合は、弁護士に相談して具体的なアドバイスを受けることをおすすめします。

婚約破棄で慰謝料請求するために必要な証拠

婚約破棄で慰謝料を請求して、それが認められるには、「確かに婚約していた事実」と「相手の責任で婚約が破棄された事実」を客観的な証拠に基づいて、請求する側が証明する必要があります。

婚約の成立を証明する主な証拠
  • 婚約指輪や結婚指輪(領収書、写真など)
  • 結納金の授受を示すもの(領収書、振込記録など)
  • 結婚式場や新婚旅行の予約確認書、申込書
  • 両家顔合わせや親族への挨拶に関する記録(写真、メールなど)
  • 「結婚しよう」といった具体的なやり取り(メール、LINE、録音など)
  • 同棲の事実を示すもの(賃貸借契約書など)
相手の責任(有責性)を証明する主な証拠
  • 浮気・不貞行為の証拠(写真、メール、探偵の報告書など)
  • DV・モラハラの証拠(診断書、写真、録音、日記など)
  • 一方的な婚約破棄を告げられた際の記録(録音、メールなど)
  • 相手の嘘や重大な隠し事の証拠

これらの証拠をできる限り集めると、裁判で有利になる可能性が高まります。

婚約破棄で慰謝料請求する方法・流れ

婚約破棄で慰謝料請求する方法・流れ

婚約破棄による慰謝料請求は、将来の訴訟も見据え、計画的にプロセスを進めることが重要です。

無計画に請求を始めると、重要な証拠を失ったり、相手に言い逃れの隙を与えたりする可能性があります。

慰謝料請求は、一般的に以下の流れで進めます。

  1. 証拠の確保
  2. 当事者間で話し合い
  3. 内容証明郵便による請求と交渉
  4. 合意書・公正証書の作成
  5. 地方裁判所での訴訟提起

ここでは、慰謝料請求の各ステップについて具体的に解説します。

ステップ1:証拠の確保

相手に慰謝料を請求する前に、水面下で証拠を確保しましょう。証拠が不十分なまま請求を切り出すと、相手に証拠を隠滅されたり、破棄の理由を捏造されたりするリスクがあります。

可能な限り水面下で、冷静に証拠を集めることがポイントです。詳細は、上述の「婚約破棄で慰謝料請求するために必要な証拠」を参考に、有効な資料を確保してください。

ステップ2:当事者間で話し合い

証拠が揃ったら、まずは相手と直接話し合いを行うことを検討しましょう。話し合いによって解決できれば、スピーディーかつ費用を抑えた対応が可能です。

話し合いのメリット
  • 解決までの時間が短い:合意できればすぐに解決できる
  • 費用が抑えられる:弁護士費用や裁判費用がかからない
  • 精神的な負担が比較的軽い:法廷闘争のような精神的ストレスを避けられる
  • 柔軟な解決が可能:お互いが納得できる落としどころを見つけられる

話し合いの場では、慰謝料を請求する根拠を具体的に伝え、希望する金額や支払い方法を提示します。

可能であれば、第三者に立ち会ってもらったり、話し合いの内容を記録したりすることも有効です。

話し合いで慰謝料の金額や支払い方法について合意できた場合は、後のトラブルを防ぐためにも、ステップ4で紹介する「合意書」や「公正証書」の作成の検討がおすすめです。

相手が話し合いに応じない場合や、交渉が難航した場合は、ステップ3に進みましょう。

ステップ3:内容証明郵便による請求と交渉

ステップ2の開始時や、ステップ2の直接交渉で解決しない場合は、内容証明郵便を利用して正式に慰謝料を請求という方策もあります。

内容証明郵便とは、「いつ、誰が、誰に、どんな内容の文書を送ったか」を郵便局が公的に証明するサービスです。

口頭や通常のメールでの請求は、本気度が伝わらなかったり、言った言わないの水掛け論になったりする可能性があるため、避けた方が良いでしょう。

内容証明郵便の目的とメリット
  • 心理的プレッシャーを与えられる:本気度が伝わり、誠実な対応を促せる
  • 請求の証拠が残る:後の調停・訴訟で有利な資料になる
  • 時効の進行を一時停止できる:慰謝料請求権の時効を一時的に止められる
  • 弁護士名での送付が効果的:「裁判も辞さない」という強い姿勢を示せる

内容証明の送付後、相手が交渉に応じたら、慰謝料の金額や支払方法、結婚準備にかかった費用(式場キャンセル料など)の賠償について話し合いを進めます。話がまとまったら、ステップ4の「合意書」や「公正証書」の作成がおすすめです。

交渉がまとまらない場合や、相手が誠実に対応しない場合は、ステップ5の「訴訟提起」も視野に入れましょう。

ステップ4:合意書・公正証書の作成

ステップ2や3を経て、慰謝料の金額や支払方法について相手と合意ができたら、その内容を「合意書」として書面に残すと安心です。

口約束だけでは、後で「そんな約束はしていない」と言われるリスクがあります。

特に、慰謝料が分割払いになる場合は、合意書を「公正証書」にしておくことを強く推奨します。公正証書にしておけば、万が一支払いが滞った際に、裁判を起こすことなく、相手の給与や財産を差し押さえる強制執行の手続きが可能になるためです。

合意書・公正証書とも内容や手続きに不備があると後々無効や紛争の原因になることがあるため、できれば弁護士など専門家に内容を確認してもらうと良いでしょう。

ステップ5:地方裁判所での訴訟提起

交渉が決裂した場合や、相手が請求を無視し続ける場合は、最終手段として地方裁判所に「損害賠償請求訴訟」を提起します。

訴訟では、裁判官が提出された証拠に基づいて法的な判断を下し、慰謝料の支払い義務や金額を決定します。判決には法的な強制力があるため、紛争の終局的な解決が可能です。

ただし、訴訟は専門的な法律知識が不可欠であり、時間や費用、精神的な負担も大きくなります。

この段階では、弁護士への依頼がほぼ必須と言えるでしょう。

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慰謝料請求で弁護士への依頼を検討すべきタイミング

慰謝料請求を考え始めたら、できるだけ早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

早い段階で相談するほど、各ステップで有効な選択ができるため、有利な解決に繋がります。

弁護士に依頼する具体的なメリット
  • 有効な証拠についてアドバイスがもらえる:法的に有効な証拠を教えてもらい、計画的に収集できる
  • 相手にプレッシャーを与え、早期解決を促せる:弁護士が代理人となることで、相手が事態を重く受け止め、誠実な交渉に応じやすくなる
  • 精神的な負担が大幅に軽減される:相手との直接のやり取りや、煩雑な手続きをすべて任せることができる
  • 適正な金額で、有利な条件を引き出せる:法的な根拠に基づいた適切な請求ができる
  • 合意書作成で、確実な回収を目指せる:実効性のある合意書(公正証書など)を作成してもらえる

多くの法律事務所では初回相談を無料で行っています。一人で悩み続けるよりも、まずは専門家に相談して、対応方法を考えましょう。

婚約破棄で慰謝料請求された場合の対応方法

もしあなたが婚約相手から慰謝料を請求された場合、言われるがままに支払いに応じる必要はありません。相手方の主張が全て正しいとは限らず、不当に請求されている可能性もあります。

ここでは慰謝料を請求された時にとるべき対応方法について解説します。

請求内容の妥当性を検証する

相手から慰謝料を請求された場合、まず以下の3つのポイントについて客観的に検証してみましょう。

不当な部分があれば、反論が可能です。

そもそも婚約は法的に成立していたか?

単なる交際の延長線上での口約束や、結婚に向けた具体的な準備行為がなければ、法的な婚約とは認められない可能性があります。

相手が「婚約していた」と主張していても、その証拠が不十分であれば、婚約の不成立を主張できます。

婚約破棄の責任は本当に自分だけにあるのか?

婚約破棄に至った原因について、相手にも責任の一端がある場合や、双方に責任がある場合は、慰謝料が減額されたり、支払う必要がなくなったりすることもあります。また、破棄に「正当な理由」があれば、慰謝料の支払い義務は生じません。

請求されている慰謝料の金額は適正か?

慰謝料の金額は、婚約期間、年齢、破棄の経緯など様々な事情を考慮して算定されます。一般的な相場からかけ離れた高額な請求に対しては、その根拠の提示を求め、不当に高額であることを主張できます。

これらの点を踏まえ、相手が主張する事実関係に誤りがないか、法的な評価は正しいかなどを慎重に検討しましょう。

正当な理由がある場合の反論方法

婚約を破棄した側に「正当な理由」があると認められた場合、慰謝料の支払い義務は発生しません。

婚約破棄の正当な理由として認められる可能性があるのは、以下のようなケースです。

  • 相手の不貞行為や暴力(DV)、モラハラ:相手の有責行為によって信頼関係が破壊された場合。
  • 相手からの重大な侮辱や虐待:結婚生活を継続することが困難なほどの精神的苦痛を受けた場合。
  • 相手の重大な病気や精神疾患の発覚(回復の見込みがない場合):結婚生活の維持が客観的に困難な場合。
  • 相手による重大な嘘や隠し事の発覚:学歴詐称、多額の借金、犯罪歴など、信頼関係を根底から覆すような場合。
  • 性格の不一致や価値観の著しい相違:結婚生活を円満に送ることが著しく困難であると客観的に認められる場合。例えば、宗教観の根本的な違いや、子どもを持つことに対する考え方の決定的な不一致など。
  • 経済状況の著しい悪化:失業や倒産などにより、結婚生活を維持するための経済的基盤が予期せず失われた場合。

これらを主張するために、それを裏付ける客観的な証拠を準備しておきましょう。

婚約指輪・結納金の返還は必要?

婚約指輪・結納金の返還は必要?

婚約の際に贈られた婚約指輪や、交わされた結納金の返還は、「婚約破棄に至った責任がどちらにあるか」によって結論が変わってきます。

受け取った側に婚約破棄の原因がある場合:

このケースでは、贈った側は、結婚という目的・条件が達成されなくなったとして、婚約指輪や結納金の返還を求めることができます。

贈った側に婚約破棄の原因がある場合:

この場合、返還を求めることは難しくなるか、制限されることがあります。

双方に責任がある場合や、どちらにも責任がないやむを得ない事情の場合:

明確な基準がないため、当事者間で話し合い決定します。

なお、返還義務があるにもかかわらず、婚約指輪が既に処分されてしまって手元にない場合でも、指輪の価格に相当する金額の損害賠償を請求すれば認められる可能性があります。

慰謝料が請求できる時効は3年

婚約破棄による慰謝料請求権には、「時効」があることに注意が必要です。

この時効期間を過ぎてしまうと、原則として慰謝料を請求する権利そのものが消滅してしまいます。

婚約破棄を理由とする慰謝料請求は、法的には主に2つの考え方があり、どちらの法的根拠で請求するかによって時効期間が異なります。

法的根拠

時効期間

起算点(いつから数え始めるか)

不法行為(民法709条)

3年

婚約破棄の事実を知ってから

債務不履行(415条)

5年

婚約破棄の時から

不法行為に基づく場合は、相手の行為によって受けた精神的苦痛などに対する請求です。

一方、債務不履行に基づく場合は、婚約という契約を履行しなかったことに対する責任を追及しています。

どちらの法的根拠で請求するかは個別の事案によって判断が分かれるかもしれません。いずれにせよ、婚約破棄から3年以内に行動を起こせば時効にはならないでしょう。

また、以下のような行為で時効の進行を止められる可能性があります。

  • 内容証明郵便による請求(催告):これにより6ヶ月間、時効の完成が猶予されるが、その間に裁判上の請求等を行う必要あり
  • 訴訟の提起:裁判を起こして慰謝料を請求すると、その時点で時効の進行を一時的に止めることが可能

「慰謝料を請求したいけど法的根拠がわからない」「とりあえず時効を止めたい」という人は、具体的な対応策も含めて弁護士のアドバイスを受けましょう。

婚約破棄にお悩みなら早めに弁護士にご相談を

婚約破棄において、弁護士に相談するタイミングに「早すぎる」ということはありません。

弁護士は法律の専門家であり、あなたの状況を法的な観点から正確に分析し、最善の解決策を提案してくれます。

また、あなたの代理人として相手方との交渉や法的手続きを行ってくれるため、精神的な負担も大幅に軽減されます。

弁護士が介入することで、慰謝料額が増額したり、解決までの期間が短縮されたりするケースも少なくありません。

婚約破棄に強い弁護士の選び方

婚約破棄の問題を相談する弁護士を選ぶ際には、いくつかのポイントがあります。

離婚・男女問題に関する実績が豊富か:

類似の案件を多く手がけ、解決実績が豊富な弁護士を選びましょう。事務所のホームページなどで、取り扱い分野や解決事例を載せていることがあります。

親身になって話を聞いてくれるか、相性が合うか:

婚約破棄は精神的にも負担が大きい事案です。あなたの話をじっくりと聞き、気持ちに寄り添ってくれる弁護士でなければ、安心して任せることはできません。

料金体系が明確で、分かりやすい説明があるか:

弁護士費用として、どのような費用が、いつ、いくらかかるのかを最初に明確に説明してくれる弁護士を選びましょう。

初回は相談無料の事務所も増えているので、比較検討するのをおすすめします。

婚約に強い弁護士を探すなら「ベンナビ離婚」

婚約破棄の問題で弁護士を探すなら、離婚・男女問題に特化した弁護士検索サイト「ベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)」が便利です。

「ベンナビ離婚」では、全国各地の男女問題に精通した弁護士を、お住まいの地域や相談内容に応じて簡単に検索することができます。

「婚約破棄」を得意分野として掲げている弁護士事務所も多く掲載されており、事務所の強みや料金体系、解決事例などを比較検討することが可能です。

また、無料相談に対応している弁護士事務所も探せるため、まずは気軽に相談してみることから始められます。口コミや評判なども参考に、あなたに最適な弁護士を見つける手助けとなるでしょう。

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「婚約破棄」に関するよくある質問

婚約破棄に直面すると、様々な疑問や不安が湧いてくることでしょう。ここでは、婚約破棄に関してよく寄せられるご質問とその回答をまとめました。

Q1.婚約破棄にかかった費用はいくらですか?

A. 婚約破棄の慰謝料請求を弁護士に依頼する場合、相談料・着手金・事務手数料などがかかります。

さらに訴訟に進んだ場合は、追加の着手金や日当も必要です。事務所によっては「成功報酬制」を採用しており、解決時に得られた慰謝料や損害賠償金の一部を報酬として支払うことになります。

以下は、婚約破棄の慰謝料請求を弁護士に依頼した場合にかかる費用の一例です。

項目

金額の目安(税別)

備考

相談料

30分5,500円~11,000円

その場で依頼する必要なし。
初回の相談無料の事務所もある。

交渉の着手金

20万~30万円程度

 

事務手数料

1万円~3万円

事務所による。

成功報酬

 経済的利益の15%~20%

解決時に発生する。

訴訟手続きの着手金

10万円~30万円

 

日当

1万円~3万円/訴訟期日の回数

 

Q2.口約束で婚約した証拠は?

A. 口約束だけでも婚約は法的に成立しますが、それを証明するためには、周囲への公言や結婚に向けた具体的な行動など、客観的な事実が重要になります。

婚約は、特別な書面がなくても、お互いの合意があれば口約束でも成立します(要式行為ではありません)。しかし、後になって「そんな約束はしていない」と言われないためには、婚約の事実を客観的に示す証拠が重要です。

婚約の証拠となりうる例
  • 友人や家族に「結婚することになった」と報告したメールやLINEの履歴
  • SNSでの婚約発表
  • 両親へ挨拶に行った際の写真
  • 婚約指輪の交換
  • 結婚式場の見学や予約
  • 同棲の事実

Q3.口約束を録音しておけば効力がありますか?

A. 適法に取得された録音データは、婚約の合意や婚約破棄の経緯を証明する有力な証拠となり得ます。ただし、取得方法によっては証拠能力が制限される場合もあります。

相手との会話を録音したデータは、民事訴訟において有力な証拠となることがあります。特に、「結婚しよう」「はい、お願いします」といった婚約の明確な合意や、婚約破棄の理由、慰謝料に関する話し合いの内容などが記録されていれば、客観的な証拠として価値が高いです。

ただし、相手に無断で秘密録音した場合は証拠として採用されない可能性もあります。

まとめ

婚約破棄は、単なる恋愛関係の終わりではなく、法的な権利や義務が発生し得る重要な問題です。

正当な理由がない不当な婚約破棄は、50万円~300万円程度の慰謝料が発生する可能性があります。

しかし、婚約破棄は感情的になりやすく、当事者だけで解決しようとするのが難しいケースも少なくありません。

交渉や手続きに悩んだら、迷わず弁護士に相談してください。

専門家の力を借りることで、精神的な負担を軽減し、適正かつ迅速な解決へと道が開けるはずです。

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この記事の監修者
弁護士法人若井綜合法律事務所 新橋オフィス
澤田 剛司 (東京弁護士会)
圧倒的な数の「不貞慰謝料」、「男女トラブル」を中心に、「刑事事件」、「債権回収」、「詐欺・脅迫被害事件」等、様々な相談に対応。「どこよりも素早い対応で、どこよりも安心して任せられる」を心がけている。

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本記事はベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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