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弁護士会照会とは?弁護士会照会を活用する際に知っておくべきこと

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
弁護士会照会とは?弁護士会照会を活用する際に知っておくべきこと

弁護士会照会(べんごしかいしょうかい)とは、弁護士法23条に定められた法律上の制度で、弁護士が担当する事件に関する証拠や資料を円滑に集めて事実を調査することを目的としています。照会は弁護士個人が行うのではなく、担当は弁護士会です。

弁護士会照会の受付件数は、2013年で約14万件、2017年には約21万件と増加しており、弁護士が担当する事件の解決に向けた情報収集手段のひとつとして活用されています。

【参考】

日本弁護士連合会|弁護士会から照会を受けた皆さまへ
 
この書類は弁護士会照会制度を活用した、情報の回答報告を求めるものです。普段の生活ではあまり触れる機会のない弁護士会照会制度ですが、弁護士法に定められたれっきとした法律であり、照会を受けた個人や団体は適切に回答報告しなければなりません。
 
今回の記事では、弁護士会照会制度についての基礎知識をご紹介していきます。

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弁護士会照会制度を利用してどこまで分かるのか

まずは弁護士会照会制度を利用することで何がわかるのかをご紹介していきます。
 

電話番号の利用者の住所や銀行口座等

相手方について電話番号しか分からない場合、電話会社に対して照会申出することで電話番号(固定電話・携帯電話問わず)から、契約者又は購入者の氏名・住所・契約年月日・電話料金が銀行引落の場合に銀行口座を照会することができます。

ただし、通信会社によって回答可能な範囲は異なり照会しても思うような回答が得られないことがあります。また、特に秘匿性の高い情報(銀行口座等)は,照会の具体的必要性まで記載が求められるので注意しましょう。

携帯電話の番号(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク等)

相手方の携帯メールアドレスが分かっている場合は、そこから携帯電話の番号等を照会することができます。ただ、通信会社によって対応が異なることは上記のとおりです。

銀行預金・貯金の有無とその履歴

遺産分割事件において,被相続人の遺産が判然とせず第三者による流用の可能性が少なからず認められる場合、調べたい銀行や郵便局口座の「平成○○年○○月○○日から平成○○年○○月○○日までの取引の履歴」を照会することができます。

ただし、照会に対してどの範囲で回答がなされるかはケース・バイ・ケースであり、相続人以外の第三者からの照会の場合は回答を拒否されることもあります。
 

生命保険契約の有無・内容(生命保険協会)

被相続人の生命保険契約の有無や内容(生命保険契約の契約日、保険の種類・番号保険期間、金額、被保険者、保険金受取人等)を照会することができます。こちらも回答の有無や範囲は上記と同様ケース・バイ・ケースです。
 

日本にいる外国人の住所等(東京入国管理局)

相手方が外国人である場合、その国籍及び本籍、氏名、生年月日、外国人登録番号、居住地等を照会することができます。こちらも回答の有無や範囲はケース・バイ・ケースです。
 

出入国記録(法務省入国管理局)

相手方の証言の信用性を争う手段として、当時日本に居なかったということを立証したい場合は、「平成○○年○○月○○日から平成○○年○○月○○日までの出入国年月日、乗降機地、利用航空便名」を照会することができます。

こちらも回答の有無や範囲はケース・バイ・ケースです。
 

飲食店の営業主体(保健所)

相手方が飲食店を営んでいる場合、その店舗の営業者氏名、代表者名、営業の種類、屋号、許可番号、許可年月日等を照会することができます。

傷病名・症状等(病院)

交通事故における損害賠償額を算定したい場合、傷病名、傷害部位、入院・通院期間、後遺症の症状固定時期等を照会することができます。ただ、患者本人の同意がない場合は回答を拒否されることがほとんどでしょう。 

実況見分調書(検察庁)

交通事故の過失割合を判断したい場合、警察の実況見分調書の閲覧・謄写をするよう照会することもできます。
 

服役場所の特定(法務省矯正局成人矯正課)

相手方や関係者が刑務所に収容されている場合、刑務所名と収容年月日を照会することができます。なお「弁護士会照会制度(改訂版)」には、釈放予定日までは回答されないと記載があります。
 


 

弁護士会照会制度の照会手続きと概要

すべての弁護士は自らが所属する事務所の住所地にある弁護士会に所属しており、弁護士会照会の必要があれば所属先の弁護士会宛に照会申出書を提出します。照会申出書の記載事項は質問事項申請理由の2点です。
 

弁護士会照会の照会手続きには審査がある

弁護士会照会の申請があれば角地の弁護士会が照会申出書と定められている様式が合致しているのか、また弁護士会照会を実施する必要がある事情であるのか、また弁護士会照会を行う相当性があるのかについて厳格な審査が行われます。

審査を通過した照会申出のみが、弁護士会長名で指定された官公庁・企業・事務所に対して照会が行われ、その後照会を受けた団体から報告があれば弁護士会を通じて申請者である弁護士に報告事項が明かされるのです。このように、照会に至るまでには適性で厳正な審査がされています。
 

個人情報保護法との関係性

照会を受けた官公庁・企業・事務所が本人に無断で弁護士会へ情報を提供することは個人情報保護法の違法行為だと感じる人もいます。

しかし、個人情報保護法は例外的に本人の同意無しで第三者に情報提供が可能となる例外的な状況として、法令に基づく場合と定められているもののなかに、弁護士会照会制度にあたる弁護士法23条が含まれています。

そのため、弁護士会照会制度に関する報告には個人情報保護法を理由とする開示拒否は認められないはずですが、照会先が個人情報であることやプライバシー情報であることを理由に回答を拒否することは往々にしてあります。

これは弁護士会照会制度の限界でしょう。

弁護士会照会制度を利用した際の費用

弁護士会照会にかかる手数料は、依頼する弁護士の所属する弁護士会によって異なってきますが、大体1件1万円程度までです。

また、弁護士会照会を利用するには弁護士へご依頼いただく必要がありますので、事件処理についての弁護士費用は別途かかると思ってください。弁護士費用に関する内容は「離婚問題を得意とする弁護士の費用と良い弁護士の選び方」をご覧ください。
 

国選事件及び法律扶助事件に関しては照会手続手数料が免除される

2011年4月より、国選事件及び法律扶助事件に関する照会手続申出手数料7350円(税込)が免除されています。その際は、通常の申出書類と併せて所定の手数料免除申請書,疎明資料及び760円分の郵券(簡易書留往復分)の提出をする必要があります。
 

弁護士会照会を受けた企業・団体が知っておくべきこと

弁護士紹介は回答する義務がある

弁護士会照会制度は弁護士法に定められている法律による制度であるため、原則として回答報告する義務があります。

しかし、例外的として照会の必要性や相当性が十分でないケースであれば回答報告の必要がないとされているため、照会内容に応じて判断するといいでしょう。
 

弁護士会照会の回答方法

弁護士会照会として送付されてきたもののなかに、回答用紙(回答書)が同封されていれば、その用紙に記入して回答報告しましょう。また別途自分自身でワードなどを使い回答報告書類を作成することも可能です。

その場合には、書類内に弁護士会照会に対する回答であること、宛名、回答者の氏名、日付なども明記するようにしましょう。また、預金通帳の残高履歴など文面での回答報告が難しいケースであれば、預金通帳のコピーなどを添付して回答報告することができます。

その場合、照会事項とは関係ない内容を黒塗りなどで消して送付しても問題ありません。
 

照会があった内容に疑問がある場合

弁護士会から送られてきた弁護士会照会の依頼内容に疑問がある場合は、送付元の弁護士会もしくは依頼主である弁護士に連絡しましょう。

問い合わせ内容が弁護士会では対応できないような詳細な情報であれば、弁護士会から照会を申請した弁護士の連絡先が提供され、その弁護士に直接問い合わせなければならない場合もあります。
 

回答した情報の管理方法

弁護士会照会に対して回答報告した内容は、申請を行った弁護士が担当している事件処理のためだけに活用され、その事件処理の範囲以外で回答報告された情報を使用することが許されていません。

もし、事件処理の範囲外で回答報告された情報が利用された場合には、弁護士の懲戒事由になり得ます。

そもそも弁護士は法律によって秘密保持の義務が定められており、高いレベルの守秘義務が課せられており、事件処理のために手に入れた情報を適切に管理する義務も合わせて定められています。

そのため回答報告されたプライバシーに関する情報がみだらに流出・流用されるようなことはありません。

回答したことによって損害賠償請求される可能性は低い

弁護士会では、「弁護士会照会制度の照会手続きと概要」でご紹介したように弁護士会照会をするに値する相当性と必要性を厳格に審査しており、基本的には紹介によって回答報告した人や団体が、回答報告された情報によって不利益を被った人からの損害賠償請求が起こらないように体制が整えられています。

しかし、弁護士法には、照会に回答報告した場合は損害賠償責任を負う必要がないという規定はありません。

過去に起こったいわゆる前科照会事件の原因は、照会申出書の理由が不十分であるにもかかわらず、他人に知られたくない前科情報を疑いもなく回答した自治体に対して損害賠償責任が認められた過去があります。

この事件の原因は、弁護士会照会の審査が不十分であったことであるため、現在はその照会審査の相当性と必要性を厳しく審査されているのです。

一般的には弁護士会照会の相当性と必要性が認められる場合であれば、回答報告した者は不法行為の責任を負う必要はなく損害賠償請求を受ける必要がないとされていますが、必要性・相当性の明確な判断基準がないため、判断に困る場合はあり得ます。

弁護士会照会制度の活用事例

最近、この弁護士会照会制度が話題に上がったことがあります。それは、2つの弁護士会照会制度を利用した出来事に対して、一方の出来事に対してある裁判所は弁護士会照会に応じるべきだと判決を出しましたが、もう一方の出来事に対してある裁判所は弁護士会照会に応じるべきでなかったと判決を出したからです。

具体的には、名古屋高裁の下した日本郵便が転居先住所に関する弁護士会照会の回答を拒否したことが違法であるため損害賠償を命じた出来事と、大阪高裁の下した税獅子が弁護士会照会に応じて納税義務者の確定申告などのコピーを提供したことが不法行為であったとして、税理士に損害賠償を命じたことがありました。
 

転居先の回答拒否は違法、日本郵便が敗訴 名古屋高裁判決
参考:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG26H6F_W5A220C1CR8000/


前者では弁護士会照会を拒否したことを違法であるとし、後者では弁護士会照会に応じたことを違法だと判断したのです。

ここまでご紹介してきた通り、弁護士会照会制度は、事件を適性に解決するために情報提供を求める公益目的の制度です。

そのため、精度の悪用はあってはならないという前提はあるものの、後者の例でいうと応えるべき義務がある弁護士会照会に応えたことに、損害賠償を命じられてはたまったものではありません。

このように、基本的には回答報告した者は不法行為の責任を負う必要はないとされていますが、今回のような判決が出るとどこまで信用していいのか不安になってもしょうがないでしょう。
 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

なかなか当事者になる機会がない弁護士会照会ですが、いざという時に今回の記事でご紹介したような内容を知っておけば、焦ってしまうことはないでしょう。
 

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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編集部

本記事はベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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