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性の不一致で悩んでいる夫婦の中には、離婚を考えている方もいるのではないでしょうか。
でも、そもそも性の不一致で離婚ができるのか、離婚して後悔しないかなど、なかなか答えが出ずに辛い思いをされている方もいるかもしれません。
結論からお伝えすると、性の不一致を理由に離婚することは可能です。
しかし、状況によっては離婚が難しい場合もあります。
本記事では夫婦の性の不一致について、離婚が可能なケースと難しいケース、慰謝料の請求可否などについて解説します。
離婚したくないと考えている方に向けて、性の不一致の対処法などもご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
「性の不一致」という言葉を聞いたことはあるけれど、具体的にどのような状況のことを指すのかわからないという方もいるはずです。
ここからは、そもそも「性の不一致」とは何なのか、具体例などを紹介します。
性の不一致に関して、法律で定められた明確な定義はありません。
一般的に、何らかの理由で夫婦間の性生活全般がうまくいかないことを「性の不一致」といいます。
明確な定義がないため、ご自身の悩みが性の不一致かどうか、わからないという方もいるかもしれません。
しかし、性生活に多少なりとも不満がある場合は、性の不一致といえるでしょう。
性の不一致の具体例には、以下のようなものがあります。
セックスレスとは、健康状態に問題がないにもかかわらず、夫婦のどちらか一方が性交渉を拒む状態のことであり、性の不一致の代表例です。
仕事が多忙で性交渉に応じる体力がない、妊娠や出産で性交渉の頻度が減ったなど、さまざまな理由でセックスレスになる可能性があります。
とはいえ、一方が性交渉を望んでいるのにもかかわらず拒否されるということは、ショックが大きいものです。
セックスレスが続いてしまうと夫婦の溝が深まり、離婚に至ってしまうかもしれません。
性的嗜好の相違とは、性的な欲求を満たす方法が夫婦間で異なることです。
たとえば、夫がSMプレイなどのアブノーマルな嗜好を持っているのに対し、妻は通常の性交渉を好むなど、性的な価値観が合わないことを指します。
どちらかが我慢して相手に合わせていても、不満が募ってしまうことでストレスが溜まり、ケースによっては離婚に至る可能性があります。
性交不能とは、本人の意思とは関係なく、性交渉ができない状態のことです。
具体的には、ストレスを原因としたED(勃起不全)や機能障害などが考えられます。
しかし、加齢による体力低下や病気などで、男女ともに性交渉ができなくなることもあり、この場合は、性交不能には該当しません。
性の不一致を理由に離婚する夫婦は、少なくありません。
令和4年度の司法統計によると、婚姻関係事件の申し立て理由上位5つは以下のとおりです。
1位 性格が合わない 2位 異性関係 3位 浪費する 4位 性的不調和 5位 暴力を振るう |
1位 性格が合わない 2位 暴力を振るう 3位 異性関係 4位 浪費する 5位 性的不調和 |
この結果からも、一定数の男女が性的な不満を理由に離婚したいと考えていることがわかります。
性の不一致は、決して珍しい離婚理由ではないといえるでしょう。
結論からお伝えすると、夫婦間の性の不一致を理由に離婚することは可能です。
しかし、お互いが納得していなければ離婚は難しいでしょう。
ここからは、夫婦の性の不一致を理由に離婚する方法などについて解説します。
話し合いや調停で双方が離婚することに合意をすれば、性の不一致を理由に離婚することが可能です。
性の不一致で離婚を考えているのであれば、まずは話し合いによる協議離婚から始めましょう。
協議離婚とは、夫婦で話し合って離婚を進める手続きのことです。
お互いが納得すれば、理由を問わず離婚することができます。
裁判所を通さずに離婚条件を決めていくので、短期間で離婚できる場合もあります。
話し合いがまとまらなければ、次は調停離婚へと進むことになります。
調停離婚とは、家庭裁判所でおこなわれる離婚に向けた話し合いの手続きです。
離婚調停申立書を家庭裁判所に提出し、調停委員を交えて離婚について話し合います。
裁判所を通しての手続きですが、基本的には話し合いをベースに進めていきます。
お互いが納得すれば調停成立となり、離婚することが可能です。
調停離婚でも話し合いがまとまらなければ、次は裁判による離婚手続きに進みます。
裁判で離婚する場合は、離婚を求める側は「法定離婚事由」を立証しなければなりません。
法定離婚事由とは、法が定めた離婚事由を言い、これがないと裁判所は離婚を認めません。
民法第770条は、法定離婚事由を5つ定めています。
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
引用元:民法|e-Gov法令検索
離婚したい理由が性の不一致の場合は、民法770条の1から4には該当しないので、性の不一致が5「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当することを証明しなければなりません。
以下のようなケースに該当するようであれば、法定離婚事由として認められる可能性が高いと考えられます。
性の不一致といっても、夫婦によって事情はさまざまであり、性の不一致が離婚事由として認められるか明確な基準はありません。
ご自身が性の不一致の問題のより著しく傷つき、これ以上婚姻関係を続けることができないということを、いかに裁判官に認めてもらえるかがポイントになります。
また、以下のような性の不一致であれば、離婚を認めてもらうのは難しいと考えられます。
性の不一致の原因が加齢によるものであれば、性交不能には該当しません。
もともと夫婦仲が悪いことを理由にセックスレスになったのであれば、「性の不一致」が離婚事由にはならないでしょう。
また、セックスレスの期間が短い場合も、裁判で離婚を認めてもらうのは困難だといえます。
結婚してから一度も性交渉がない、回数が極端に少ないといった場合であれば、離婚を認めてもらえるかもしれません。
性の不一致を立証するのは、非常に難しいといわれています。
裁判では、性の不一致を示す具体的な証拠が必要です。
前項でも説明したように、性の不一致には明確な基準がありません。
セックスレスが続いている、配偶者との性的嗜好が合わないなどを理由に、いかに精神的にダメージを受けているのかを証拠をもって証明する必要があり、難易度は高いといえるでしょう。
性の不一致を証明できる証拠には、以下のようなものがあります。
性の不一致を証明するには、これらの証拠を日々地道に集める必要があります。
これらのうち、日記には帰宅時間や食事、就寝時間などといった、夫婦の生活パターンを日々記録するようにしましょう。
あわせて、相手が性交渉に応じない状況や、相手に拒絶されたことに対する自身の気持ちも証拠として記すようにします。
手間も時間もかかりますが、精神的な苦痛を立証できれば裁判で離婚を認めてもらえる可能性があります。
では、夫婦の性の不一致を理由に、慰謝料請求はできるのでしょうか。
ここからは、性の不一致での離婚で慰謝料請求ができるのか、慰謝料の相場などについて解説します。
性の不一致に関わる相手の態度が悪質であれば、慰謝料を請求できるかもしれません。
そもそも不法行為による慰謝料は、故意または過失によって他人の権利や利益を侵害した場合に発生します(民法第709条)。
性の不一致がある場合に、必ず慰謝料を請求できるというわけではなく、あくまで民法709条の要件を満たした場合に限られますが、具体的には、以下のようなケースが挙げられます。
上記のように、性の不一致が一方の配偶者の悪質な行為に起因するものであれば、慰謝料請求できる可能性があります。
性の不一致を理由として請求できる慰謝料の相場は、10万円~100万円程度だといわれています。
幅がある理由は、性の不一致の問題がケースバイケースであり、問題の深刻度にも幅があるためです。
不貞行為や悪意の遺棄などによる慰謝料と比較すると、金額は低めです。
しかし、なるべく高額な慰謝料を請求したいと考える方もいるかもしれません。
では、どのようなケースであれば、慰謝料が高額になりやすいのでしょうか。
性の不一致による慰謝料が高額になりやすいケースには、以下のようなものがあります。
慰謝料の金額は、行為の悪質性によっても変動します。
不貞行為がある、セックスレスに向き合おうとしないなどの行為は悪質だとみなされ、慰謝料が高額になりやすいといえるでしょう。
性の不一致で悩む夫婦の中には、「本当に離婚してもいいのか」と、答えが出せない方もいるでしょう。
お互いに愛情があるのに、性の不一致だけで離婚に踏み切るのは、時期尚早だと考えているかもしれません。
ここからは、夫婦の性の不一致で悩んだ場合の5つの対処法と注意点を解説します。
後悔のない選択をするためにも、ぜひ参考にしてみてください。
1つ目の対処法は、夫婦でよく話し合って問題の解消に努めることです。
なぜ性の不一致が起きているのか、解消はできないのか、まずは話し合いから始めましょう。
セックスレスの場合、疲れている、パートナーに魅力を感じないなど、配偶者が性交渉に応じてくれない理由があるはずです。
理由を知って改善すれば、解決の糸口が見つかるかもしれません。
性的嗜好が合わないのであれば、お互いが許せる範囲を歩み寄って決めることで改善できる可能性があります。
最初から離婚を考えるのではなく、まずはしっかり話し合いをしましょう。
2つ目の対処法は、夫婦カウンセリングを受けてみることです。
夫婦カウンセリングでは、夫婦問題の専門家が夫婦の悩みを聞き取り、改善方法を提案してくれます。
第三者の意見を聞くことで、新しい発見もあるかもしれません。
性の不一致は、友人や家族にも相談しづらい問題です。
利害関係のない専門知識を有したカウンセラーに話すことで心が軽くなり、前向きに行動できるかもしれません。
3つ目の対処法は、夫婦関係調整調停を利用することです。
夫婦関係調整調停とは、離婚を目的とする場合と夫婦関係の修復・継続を目指す場合の2つがあり、一般的に前者は離婚調停、後者は「円満調停」と呼ばれます。
どちらの方法にも、家庭裁判所の調停委員会が間に入り、問題解決に向けた話し合いがおこなわれます。
夫婦だけでの話し合いが難しい場合は、利用してみてもよいでしょう。
4つ目の対処法は、離婚を考えるなら弁護士へ相談することです。
性の不一致で苦しんでいて、これ以上婚姻関係を続けられないのであれば、離婚を検討しましょう。
慰謝料を獲得して離婚したい、なるべく有利な条件で離婚したいならとお考えであれば、弁護士への相談がおすすめです。
弁護士は、あなたの代わりに配偶者との交渉や裁判手続きをおこなってくれます。
とくに離婚問題に注力している弁護士であれば、法律の専門家としての知識と経験を活用して手続きを進めてくれるので、非常に心強いといえるでしょう。
たとえ夫婦のあいだに性の不一致があっても、不貞行為は避けましょう。
不貞行為をおこなった配偶者は、「有責配偶者」となります。
有責配偶者からの離婚請求は基本的にはできません。
むしろ相手から、慰謝料を請求されるリスクもあります。
婚姻関係がある以上、夫婦には貞操義務があります。
セックスレスが続いている、性的嗜好が合わないなどの理由で欲求が満たされないからといって、不貞行為はご自身が不利な立場になるでしょう。
ご自身にとって少しでも良い形で離婚を成立させたいなら、不貞行為は避けるべきです。
協議離婚や調停離婚などの話し合いによる手続きで双方が離婚に合意をすれば、性の不一致を理由として離婚することは可能です。
しかし裁判になると、性の不一致を立証できなければ、離婚を認めてもらうのは難しいでしょう。
さらに、性の不一致に関わる相手の態度が悪質であれば、慰謝料を請求できるかもしれません。
慰謝料の相場は10万円~100万円程度で、悪質性の高さによっても金額は変動します。
性の不一致で離婚したい、慰謝料を請求したい場合は、弁護士へ相談しましょう。
一般的に、性の不一致の立証は困難を極めます。
知識がない状態で交渉や裁判に望んでも、思うような結果が得られないかもしれません。
弁護士であれば、有利になる証拠の集め方や主張の方法を知っています。
ひとりで悩むのではなく、ぜひ早めに離婚問題の解決に注力している弁護士へ相談することをおすすめします。
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