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離婚は夫婦お互いの同意によって成立するものです。しかし、離婚に向けて話し合いをしている最中であっても配偶者が勝手に役所へ離婚届を提出し、離婚が成立してしまうケースがあります。
この場合、「離婚届不受理申出書」の手続きをすれば、離婚届けの受理を阻止できることをご存知でしょうか。そもそも、離婚届を勝手に作成して提出することは犯罪であり、3ヶ月以上5年以下の懲役になることもあり得ます。
【根拠】
(私文書偽造等)
第百五十九条 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する
引用:刑法
トラブルへの発展を防ぐためにも、離婚成立を阻止したいのであれば、「離婚届不受理申出書」の手続きをするのが最もおすすめです。そこで今回、勝手に提出された離婚届を無効にするための手続き、「離婚届不受理申出書」についてまとめました。
まず始めに、離婚届けを勝手に提出された場合のリスクについて確認していきましょう。
仮にあなたが不受理届書の存在を知らなかった、またはあなたが不受理届書を提出より先に相手が勝手に離婚届を提出してしまい、離婚を望まないにもかかわらず離婚届を勝手に提出された場合でも、離婚届が役所で受理されると形式的には離婚が成立してしまいます。
形式的に離婚が成立するとは、あなたの戸籍に離婚の事実が記載されてしまうことを意味します。この記載されてしまった事実の訂正や抹消にはかなりの手間と時間がかかってしまうことを知っておきましょう。
一度成立してしまった離婚を取り消すためには、家庭裁判所に協議離婚無効確認調停を申し立てる必要があります。離婚が無効であることを確認するためには、あなたに離婚意思がなかったことを証明する必要があります。
この場合、調停で相手方においてあなたに離婚意思がないことに同意すれば手続はスムーズですが、逆に「相手は離婚に同意していた」と主張した場合、家庭裁判所に対して離婚が無効であると確認を求める訴訟を提起しなければなりません。
判決の結果、離婚の無効が確定すると1ヶ月以内に役所の戸籍係へ戸籍の記載内容訂正を審判または判決で証明された謄本を証拠とし申請が可能となり、あなたの戸籍から離婚の記載が抹消されます。
配偶者が勝手に離婚届を提出したときに受理されないようにする方法、それは「離婚届不受理申出」の手続きを行うことです。そこで、以下に「離婚届不受理申出」の手続き方法と概要についてまとめました。
離婚届不受理申出書(りこんとどけふじゅりもうしでしょ)とは、簡単に言うと役所に対してあなたの配偶者が提出する離婚届を受け付けないでほしいと申し出るものです。こうしておけば配偶者があなたの意志を無視して勝手に役所へ離婚届を提出しようとしても、不受理申出書が事前に提出してあれば離婚届が受理されません。
離婚届は書式さえ整っており、夫婦どちらか一方が直接役所に提出すればすんなりと受理されてしまいます。戸籍謄本や証人計4人の署名・捺印が必要で基本的には二人で提出する婚姻届と違って、離婚届の手続きは簡単に済んでしまいます。
離婚届に押す印鑑は三文判でも問題がなく、印鑑証明も不要です。夫婦揃って役所に顔を出す必要もなく、記された筆跡が本人のものかどうかの調査も行われません。そのため、以下のような状況なのに勝手に離婚届が提出されあなたが不利益を被ることが予想できます。
このような状況であれば、あなたの知らない間にいつ役所に離婚届を提出されてしまうのか信用できずに心配です。このような事態を防ぐために、離婚届不受理申出書が存在しているのです。
相手に離婚届を勝手に出してしまいそうな疑いがある場合はもちろんのこと、そのような兆候がない場合も念の為に離婚届不受理申出書を提出しておくといいでしょう。
離婚届不受理申出書は、市区町村役場の戸籍係に常設されているものを入手するか、市区町村によっては役所のホームページ上でダウンロードが可能です。
※このページにある記載例はあくまで一例です。申出書の様式は地域によって若干違いがありますのでご注意ください。
引用元:札幌市役所|離婚届不受理申出書
書き方
離婚届不受理申出書の書き方見本を下図にまとめました。申出人となるあなたと配偶者の名前や住所、本籍を記載し印鑑を押せば完了となります。
離婚届不受理申出書の提出先は、基本的に届出人の本籍がある市区町村役所となっています。しかし、住居地など本籍地以外の市区町村役場に提出も可能です。
【家庭裁判所一覧】
・記入内容に誤りのない離婚届不受理申出書
・印鑑
・本人が確認できるもの(運転免許証・パスポート等)
離婚届不受理申出書を提出の際は、相手が離婚届を提出するタイミングに注意しましょう。離婚届の不受理の申出は、どこの市区町村役所に申し出をしても、夫婦の本籍のある市区町村役所に送付されることになっています。
そのため、もしあなたが本籍地でない居住地の近くの役所に提出をした場合、その役所から本籍地の役所へ送付の手続きをして実際に本籍地へ到着して受理される間に、配偶者が本籍地の役所へ直接離婚届を提出してしまうと離婚が成立してしまう可能性があります。
このような恐れがあるため、離婚届不受理申出書はできるだけ早く、本籍地に対して直接提出するといいでしょう。
以前は、不受理届書の有効期限は最長6ヶ月でした。しかし、法改正によりその期間が廃止されたことによって、無期限で不受理期間が続くこととなりました。つまり提出した不受理届書を取り下げるまでは無期限で有効ということです。
不受理届書を提出してから、夫婦間の話し合いにより両者が離婚に同意した場合、不受理届書を提出した本人が離婚届を提出するのであれば、不受理届書は取り下げたとみなされてその離婚届は受理されます。
夫婦間の話し合いで、離婚届不受理申請書の取り下げを行うことになった場合は、申請書の提出を行った役所に行き、「取り下げ用の申請用紙」に必要事項を記載して窓口に提出てください。
【離婚届不受理申出の取り下げに必要なもの】
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万が一、離婚届不受理申出の手続きを行う前に、離婚届が受理されてしまったら対処法は何もないのでしょうか。実は、「離婚無効調停」または「離婚無効訴訟」を起こすことで戸籍上の離婚を婚姻中に訂正できます。
離婚無効調停(りこんむこうちょうてい)とは、調停員が間に入り、客観的に見て離婚の無効が正しい判断か審判してくれるものです。家庭裁判所に申立手続きを行うことでできます。ただし、最終的には相手方の同意がなければ離婚無効が成立することはありません。
離婚が無効と認められると、戸籍の離婚が訂正され婚姻関係は復活となります。
離婚無効訴訟(りこんむこうそしょう)とは、調停で配偶者の合意が得られなかった場合、裁判へと発展します。裁判官の判断により離婚無効となれば、相手の合意が得られなくても戸籍を訂正することができます。
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離婚届を配偶者の了承を得ることなく提出することは犯罪となります(刑法第159条)。もしあなたが早く離婚したいと思っていても、お互いに話し合って離婚について十分な議論を経て相手の了承を得てから離婚届を提出するようにしましょう。
また、離婚について合意する内容の離婚協議書があれば、離婚届の提出について後々難癖を付けられても、これを根拠に戦うことができます。しかし、協議書作成日時と届出日時に大きな乖離があると、離婚意思を撤回した旨主張されてしまいますので、届出は速やかに行いましょう。
離婚届は夫婦の署名が必要となりますが、勝手に偽造して提出した場合、有印私文書偽造罪(ゆういんぶんしょぎぞうざい)に問われ、3ヶ月以上5年以下の懲役となります。
(私文書偽造等)
第百五十九条 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する
引用:刑法
偽造私文書行使罪(ぎぞうしぶんしょこうしざい)とは、偽造した離婚届けを役所に提出することで問われる罪です。この場合も、3ヶ月以上5年以下の懲役となります。
(偽造私文書等行使)
第百六十一条 前二条の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。
引用:民法
電磁的公正証書原本不実記録罪(でんじてきこうせいしょうしょげんぽんふじつきろくざい)とは、役所で保管されている電磁的な戸籍簿の情報に嘘の記載をさせることで問われる罪です。この場合、5年以下の懲役か50万円以下の罰金となります。
(公正証書原本不実記載等)
第百五十七条 公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する
引用:民法
公正証書原本不実記載罪(こうせいしょうしょげんぽんふじつきさいざい)とは、電磁的公正証書原本不実記録罪とおなじく、役所で保管されている戸籍簿の情報に嘘の記載をさせることで問われる罪です。
不実記録電磁的公正証書原本供用罪(ふじつきろくでんじてきこうせいしょうしょげんぽんきょうようざい)とは、役所の戸籍簿に嘘の情報が記載され、その内容が行使または供用されることで問われる罪です。この場合、5年以下の懲役か50万円の罰金となります。
いかがでしたでしょうか?
離婚を急いでいる時や、養育費や財産分与などの交渉がめんどうになり離婚さえできればと、勝手に離婚届を提出例は多いです。離婚成立後にも養育費や財産分与の交渉は可能ですが、相手の目的であった離婚が果たされたあとでは、非協力的になりその支払いから逃げてしまおうと考えていることがほとんどでしょう。
また一度受理された離婚届を覆すことは多大な苦労を要してしまいます。あとで後悔しないためにも離婚の話し合いをはじめるまえには、離婚不受理届書を提出してみてはどうでしょうか。不安な方は、初回であれば無料相談を行っている事務所もありますから弁護士に相談してみることをおすすめします。
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