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養育費の請求権には、時効があります。
時効が成立した場合、権利者が受け取れる養育費は少なくなってしまいます。
そのため、時効が成立する前に催告や調停などの適切な手続きをおこなう必要があります。
本記事では、養育費を請求権に関する時効の種類や成立時期、時効の進行をストップさせる方法などを解説します。
子どもの未来のためにも正しい知識を得て、確実に養育費を受け取れるようになりましょう。
養育費に関係する消滅時効には、以下のようなものがあります。
区分 |
取り決め方法 |
時効が成立する時期 |
---|---|---|
養育費の請求権(支分権) |
協議 |
権利を行使することができると知ったときから5年 |
調停、審判、訴訟 |
権利確定時に弁済期が到来していない場合は5年 権利確定時に弁済期が到来している場合は10年 |
|
養育費そのものの権利(基本権) |
行使できる権利を10年間行使しないとき |
ここでは、養育費に関係する時効について確認しましょう。
夫婦の協議(話し合い)によって養育費を取り決めた場合、消滅時効は養育費の請求をできることを知った時から5年となります。
(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
たとえば、養育費の支払期限が2024年1月31日だった場合、2029年1月31日に時効が成立します。
消滅時効が成立した場合、その分(基本は1ヵ月分)の養育費は請求できなくなってしまいます。
調停、審判、訴訟などを経て決定した養育費の請求権は、「確定判決または確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利」となります。
このような権利の消滅時効は、権利確定時に弁済期が到来しているかどうかで消滅時効の時期が変わります。
(判決で確定した権利の消滅時効)
第百六十九条 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。
2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
たとえば、調停離婚・審判離婚・裁判離婚のときに養育費の取り決めをした場合は、まだ養育費の弁済期が到来していないため消滅時効は5年になります。
一方、滞納された養育費の支払いを求めて養育費請求調停・審判などを申し立てて、その権利が確定した場合、養育費の消滅時効は10年となります。
養育費は、毎月支払われる「定期金債権」という債権の一種になります。
このような定期金債権は、権利を行使できるときから10年間何も行動を起こさなかった場合、請求できる権利自体を失います。
(定期金債権の消滅時効)
第百六十八条 定期金の債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から十年間行使しないとき。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
たとえば、支払い期限が2024年1月31日の養育費を請求せずに放置した場合、2034年1月31日を迎えると養育費を請求する権利自体を失ってしまうのです。
2020年4月1日に民法の改正がありましたが、養育費請求権の時効に変更はありませんでした。
なお、改正前までは複雑に定められていた時効が、改正後は「権利があると知ったときから5年」「権利を行使することができるときから10年」というシンプルなものに統一されています。
引用元:法務省|消滅時効に関する見直し
養育費の取り決めをしていなかった場合、そもそも弁済期が設けられていないため消滅時効にはかかりません。
しかし、消滅時効がないからといって、必ずしも「離婚時から今日までの期間」の養育費を請求できるわけではないので注意しましょう。
一般的に養育費を受け取る権利(支払う義務)は、その養育費を請求した時点から発生すると考えられます。
過去にさかのぼって養育費が認められるケースもありますが、請求が認められないケースのほうが多いので早めに養育費を請求するのが望ましいでしょう。
養育費の消滅時効が近づいているときには「時効の完成猶予(時効の停止)」をおこなうとよいでしょう。
時効の完成猶予をおこなうことで、一定期間、消滅時効が進行するのを止めることができます。
ここでは、養育費の消滅時効が近づいているときにできる3つの対処法を紹介します。
催告とは、裁判外で元配偶者に対して養育費を請求するという意思表示のことを指します。
意思表示をしてから6ヵ月間は、時効の進行がストップされます(民法第150条)。
催告は口頭でもできますが、一般的には内容証明郵便を用いることが多いです。
内容証明郵便で書面を送れば、いつ、誰から誰に対して、どのような内容の書面を送ったのかを郵便局が証明してくれます。
また、配達証明をつければ相手に届いたことを証明することもできます。
養育費請求調停や訴訟などにも時効の進行をストップさせる効果があります。
裁判上の請求等の場合は、これらの手続きが終了するまで時効の進行がストップします(民法第147条1項)。
また、調停成立や確定判決に至った場合は、これまでの時効がリセットされるため、その時点から新しく時効がスタートします(民法第147条2項)。
公正証書、判決書、和解調書、調停調書などがある場合は強制執行(差し押さえ)を求めることも可能です。
差し押さえの申し立てをした場合、手続きが完了するまでの間時効の進行はストップされます(民法第148条)。
また、差し押さえの手続きが終了したら、その時点から新しく時効のカウントがスタートします。
養育費の消滅時効が完成するためには、以下のような要件を全て満たしている必要があります。
このうちポイントとなるのが、3つ目の時効の援用です。
時効の援用とは「時効が来たのでお金は支払わない」という意思表示のことで、この意思表示がなければ時効の効果は発生しないとされています(民法第145条)。
養育費の支払い義務者からこのような意思表示がない場合は、時効の期間が過ぎていたとしても養育費を請求することができるでしょう。
ここでは、未払い養育費を請求するための5つの方法を紹介します。
まずは普段やり取りをしているメールやLINEで請求することをおすすめします。
メールやLINEであれば、準備などの手間も少なく、すぐに試すことができます。
体調不良や単なる払い忘れなどの理由がわかれば、穏便に養育費の支払いを促すことができるでしょう。
メールやLINEなどを無視されているなどの事情がある場合は、内容証明郵便を利用することをおすすめします。
内容証明郵便には法的拘束力はありませんが、元配偶者に対して心理的なプレッシャーを与えることができます。
内容証明郵便を使って養育費を請求する際には、以下のサンプルを参考に文書を作ると良いでしょう。
履行勧告とは、家庭裁判所の調停や審判などで取り決めた内容を守らない人に対して、家庭裁判所が義務の履行を勧告する手続きのことです。
家庭裁判所に履行勧告の申し出をすれば、手続きを進めてもらえます。
しかし履行勧告は、あくまでも支払うように伝えるだけの手続きなので強制力はありません。
「裁判所から連絡が来た」という事実を相手が重く受け止めた場合、養育費の支払いに応じる可能性はあります。
以下のような債務名義がある場合は、すぐに強制執行をおこなうこともできます。
強制執行の手続きをおこなえば、義務者の給与や財産を差し押さえることが可能です。
差し押さえが認められた場合は、原則として養育費の終期まで差し押さえを続けることができます。
未払い養育費の請求手続きは、弁護士に依頼することもできます。
弁護士に依頼した場合、以下のようなメリットが期待できるでしょう。
弁護士に相談すれば、手元にある書類や未払いの状況などから、相談者に合った適切な方法を提案してくれます。
「迅速に請求したい」「相手と直接話したくない」といった場合は、弁護士に依頼して請求するとよいでしょう。
養育費の消滅時効には5年の場合と10年の場合がありますが、基本的には5年と理解しておきましょう。
また、時効の進行をストップさせたいなら、以下のような対応をとるのがおすすめです。
しかし、慣れていない場合は準備に時間がかかり、その間に時効が成立してしまう恐れもあるので注意が必要です。
そこで養育費の消滅時効が迫っているなら、養育費トラブルが得意な弁護士へ相談するとよいでしょう。
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