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養育費は一括請求できる?交渉の流れやメリット・デメリットを解説

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養育費を一括で受け取りたいと考える理由は、人によってさまざまです。

父母双方が合意すれば、養育費を一括払いが可能です。

ただし、受取総額が減少したり、追加請求が認められにくくなったりするなど、注意点も複数あります。

本記事では、一括請求の可否・交渉の進め方・相場を求める計算方法・贈与税対策まで、順を追って解説します。

養育費を一括で受け取る場合に贈与税がかからない方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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目次

養育費を一括請求することは可能

父母双方が合意すれば、養育費の一括請求・一括払いは可能です。

養育費は、子どもの日々の生活に必要な費用という性質上、月払いが原則とされています。

ただし、法律上、一括払いを明確に禁止する規定はありません

養育費を支払う側(義務者)と受け取る側(権利者)の双方が納得して合意すれば、一括払いが可能です。

一方、家庭裁判所は、原則として一括払いを認めない立場をとっています。

将来の収入変動や生活状況の変化には、月払いのほうが柔軟に対応しやすいためです。

審判や裁判では、特段の事情がない限り、毎月一定額を支払う形で取り決められます。

一括払いを希望する場合は、当事者間の協議で合意を得るのが現実的です。

養育費を一括払いで受け取るメリット

養育費を一括払いで受け取ると、不払い・滞納のリスクを防げます

離婚後の経済的な見通しも立てやすくなるでしょう。

相手が再婚・減収しても養育費の額が変わらず、毎月の催促や入金確認といった手間からも解放されます。

不払い・滞納リスクを防げる

将来の未払い・滞納リスクを根本から防げるのが、一括払いのメリットのひとつです。

養育費の支払いは、子どもの年齢によっては長期間続くため、月払いでは途中で支払いが滞るケースが少なくありません。

厚生労働省の令和3年度全国ひとり親世帯等調査によれば、養育費を継続的に受け取っている母子世帯は全体の28.1%にとどまっています。

月払いの場合、毎月の入金チェック・支払いが滞った場合の催促などに手間がかかります。

失業や病気など、支払う側に予期せぬ事情が生じると、意思があっても支払えなくなることもあるでしょう。

一括払いであれば、毎月の入金を心配する必要がなく、未払いへの対処として督促や強制執行の手続きを踏む負担も生じません。

離婚後の経済的な見通しを立てやすくなる

まとまった資金を一度に受け取ると、離婚後の経済的な見通しを立てやすくなります

月払いの場合、取り決めどおりに振り込まれるかどうかは相手次第で、支払いが滞るリスクがつきまといます。

一括払いなら、一定期間の養育費をあらかじめ受け取れるため、教育費や医療費など将来の支出を見越した資金計画が立てやすくなるでしょう。

たとえば、子どもの進学を見据えて学資保険や貯蓄に充てておく、といった使い方もできます。

先の見通しが立つと、親自身も精神的なゆとりを持って子育てに集中できるでしょう。

再婚・減収などの相手の事情変化に左右されない

一括払いで受け取れば、相手の再婚・減収を理由に養育費を減らされる心配がありません

月払いの場合、相手が再婚して扶養家族が増えたり、転職・失業で収入が減ったりすると、養育費の減額を求められることがあります。

一括払いでは、支払い後に相手が再婚しても、差額を返還しなければならない事態は通常生じません。

一括払いの合意は、将来起こり得る事情の変動を織り込んだものと判断されやすいためです。

催促のストレスから解放される

一括払いにすると、毎月の入金確認や遅延時の催促といった負担からも解放されます。

月払いの場合、期日を過ぎても振り込みがなければ、相手に連絡を取らなければなりません。

相手の名前を目にしたり、声を聞いたりするだけで気持ちが乱れる方にとって、催促のたびに連絡を取り合う状況は大きなストレスです。

一括で受け取れば、離婚後、養育費を理由に相手と関わる必要がなくなります。

子育てと新生活に集中できる環境を整えやすくなるでしょう。

養育費を一括払いで受け取るデメリット

養育費の一括払いには、受け取る側にとってのデメリットも複数あります

月払いと比べて受取総額が少なくなる可能性があるほか、一括払いで合意した後は追加請求が難しくなります。

児童扶養手当や贈与税への影響も見落とせない点です。

養育費の総額が下がる可能性がある

一括払いにすると、月払いに比べて、受け取れる養育費の総額が少なくなる可能性があります。

一括払いは相手にとって大きな負担です。

まとまった現金を一度に用意しなければならないうえ、月払いの総額と同額を求められれば、相手にとってはメリットがありません。

一括で払う代わりに減額してほしいと主張される可能性が高くなります。

また、実務では、将来受け取るべきお金を前払いしてもらう場合、将来にわたって発生するはずの利息分(中間利息)を差し引くのが基本です。

中間利息の計算の前提としている利率も高いため、月払いで受け取る場合の総額より目減りします。

追加請求が認められにくくなる

一括払いで受け取った後は、事情が変わっても追加請求が認められにくくなります

一括払いの合意は、将来の事情変更をある程度織り込んだものと解釈されるためです。

月払いの場合、以下のような事情があれば養育費の増額が認められることがあります。

  1. 子どもの進学による教育費の増加
  2. 急病・不慮の事故などによる医療費の増加
  3. 権利者の失業・大幅な減収

一括払い後に同じ事情が生じても、追加請求のハードルは通常より高くなります(受取当時に「予見できなかった」事情変化に限られてしまうため)。

また、受け取った養育費を無計画に使い切った場合の追加請求は、原則として認められません。

児童扶養手当が減額・停止される可能性がある

一括払いで養育費を受け取ると、翌年度の児童扶養手当が減額・停止される可能性があります。

児童扶養手当は前年の所得に基づいて支給額が決まるためです。

受け取った養育費の8割相当額が所得に算入されるため、一括払いでまとまった額を受け取った年は所得が大きく膨らみます。

ただし、影響は原則として翌年度1年間です。

翌々年度の審査では、養育費の一括払い分が所得に含まれないため、手当が再開される可能性があります。

税金(贈与税)が課税される可能性がある

養育費を一括で受け取ると、贈与税が課税される可能性があります。

養育費は、扶養義務の履行として支払われるものであり、原則として非課税です。

ただし、将来分をまとめて一括で受け取ると、通常必要と認められる範囲を超えると判断され、課税対象となる場合があります。

贈与税は、受け取った額が多いほど税率が高くなる仕組みです。

養育費の一括払いは金額が高額になりやすいため、万一贈与税が課されると、税額も相応に大きくなる可能性があります。

【シミュレーション】養育費一括払いの相場一覧表

養育費の一括払い額は、権利者および義務者の年収・子どもの人数や年齢(支払い期間)によって異なります。

以下の表は、権利者(受け取る側)の年収100万円・子ひとりの場合を想定して、試算しています。

義務者年収 子の年齢 支払い
期間
月額目安 月払い総額 一括払い目安
400万円 0〜14歳 5年 4〜6万円 240〜360万円 約220~330万円
10年 480〜720万円 約410~610万円
20年 960〜1,440万円 約710~1,070万円
15歳以上 5年 240〜360万円 約220~330万円
600万円 0〜14歳 5年 6~8万円 360〜480万円 約330~440万円
10年 720〜960万円 約610~820万円
20年 1,440〜1,920万円 約1,070~1,430万円
15歳以上 5年 360〜480万円 約330~440万円
800万円 0〜14歳 5年 8〜10万円 480〜600万円 約440~550万円
10年 960〜1,200万円 約820~1,020万円
20年 1,920〜2,400万円 約1,430~1,790万円
15歳以上 5年 10〜12万円 600〜720万円 約550~660万円
1,000万円 0〜14歳 5年 10〜12万円 600~720万円 約550~660万円
10年 1,200〜1,440万円 約1,020~1,230万円
20年 2,400〜2,880万円 約1,790~2,140万円
15歳以上 5年 12〜14万円 720〜840万円 約660~770万円

上記は、あくまで算定表をベースに中間利息を控除した計算結果です。

実際の金額は、当事者の合意内容により異なるため、参考に留めてください。

養育費一括払いの金額を求める計算方法

養育費の一括払い額は、算定表で月額を確認し、支払い終期までの月数を掛けて合計額を出します。

さらに中間利息を差し引いた金額が、一括払いの相場となります。

1.算定表で養育費の月額を確認する

まず、裁判所が公表している養育費算定表で、養育費の月額を確認しましょう。

平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について | 裁判所

引用元:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について | 裁判所

算定表は、子の人数・年齢によって表1〜9に分かれています。

たとえば、10歳の子どもがひとりいる場合は、表1を参照します。

表の縦軸が義務者(支払う側)の年収、横軸が権利者(受け取る側)の年収です。

両者が交差するマスの金額が、養育費の月額の目安です。

年収は、以下の書類を参照してください。

  • 給与所得者の場合:源泉徴収票の支払金額(控除前の金額)
  • 自営業者の場合:確定申告書の課税される所得金額

10歳の子どもがひとり・義務者の年収が500万円・権利者の年収が100万円の場合、養育費の月額は4~6万円程度が目安です。

2.月額に終期までの月数を乗じる

算定表で確認した月額に、終期までの残り月数を乗じて、養育費の総額を算出します。

養育費の支払い終期は、子どもが18歳になるまで、または大学卒業時までとするケースが多いです。

子どもの年齢によって、残り月数は変わります。

たとえば養育費の月額が6万円・子どもが10歳0ヵ月・支払い終期を20歳になった日の属する月までとする場合、計算は以下のとおりです。

養育費の支払い終期までの月数:12ヵ月×10年=120ヵ月
養育費の合計額:6万円 × 120ヵ月=720万円

3.養育費合計額から中間利息を控除する

実務では、月払いの合計額をそのまま一括請求せず、将来発生し得る利息分(中間利息)を控除した額を請求の根拠とするのが一般的です。

お金は時間とともに利息が生じるという考えから、将来発生し得る利息を差し引かなければ公平ではないとされているためです。

中間利息の控除には、ライプニッツ係数を用います。

ライプニッツ係数とは、交通事故の逸失利益を算定する際などに用いられる数値です。

将来受け取る予定の金額を、現在の価値に割り引くために使用されます。

期間(年) ライプニッツ係数 期間(年) ライプニッツ係数
1 0.9709 11 9.2526
2 1.9135 12 9.9540
3 2.8286 13 10.6350
4 3.7171 14 11.2961
5 4.5797 15 11.9379
6 5.4172 16 12.5611
7 6.2303 17 13.1661
8 7.0197 18 13.7535
9 7.7861 19 14.3238
10 8.5302 20 14.8775

たとえば月額6万円・支払い終期までの期間が10年の場合、中間利息控除後の金額は以下のとおりです。

ライプニッツ係数(10年):8.5302
中間利息後の養育費の総額:6万円×12ヵ月×8.5302=614万1,744円

養育費の一括請求から合意までの一般的な流れ

養育費の一括払いを実現するには、相手の同意が必要です。

あらかじめ一括払いを希望する旨を伝えましょう。

合意を得られれば、合意内容を書面に残してください

1.一括請求の意思表示をする

養育費の一括払いを希望する場合は、相手方にその旨を明確に伝えましょう

一括払いを求めるには、相手方に理由を説明して話し合いの場を設ける必要があります。

交渉時に、相手方にとってのメリットを示すと前向きに検討してもらいやすくなります。

具体的には、増額請求を受けにくくなる点や、毎月の支払い手続きが不要になる点などを伝えると効果的です。

2.一括払いの合意を得る

相手から一括払いの合意を得ましょう。

審判・裁判で養育費を請求しても、よほどの事情がない限り、一括払いが認められるケースはほぼありません

合意が得られる場合は、金額についても話し合いで決めます。

提示する金額に根拠があると交渉が進めやすくなります。

養育費算定表をもとに月額の目安を確認したうえで、交渉に臨みましょう。

3.合意内容を書面にする

双方が合意に至った場合は、合意内容を書面に残してください

口頭での合意は、後日内容を証明できず、養育費の支払いをめぐって争いが生じるおそれがあります。

合意書や離婚協議書などの書面を作成し、以下の事項を明記しましょう。

  • 支払い総額
  • 支払い日
  • 支払い方法

金額の算定根拠(月額・対象期間など)も明記しておくとよいでしょう。

公正証書の作成は、必須ではありません。

一括払いの場合は、合意書の締結と同時に入金を受ける形をとれば、不払いのリスクを避けられます。

養育費一括払いの合意を得るためのポイント

一括払いの合意を得るためには、相手への配慮も必要です。

一定の減額に応じる、養育費以外の離婚条件で譲歩するなどの工夫が求められます。

一定の減額を受け入れる前提で交渉に臨む

一定の減額を受け入れる姿勢を示しましょう。

一括払いは、まとまった現金を用意しなければならず、相手にとって負担の大きい選択です。

一定額を減額するなど、メリットがなければ、簡単には合意を得られないでしょう。

減額の幅は当事者間の話し合いで自由に決められます。

わずかな減額でも合意に至るケースもあるでしょう。

ライプニッツ係数を用いた中間利息控除後の金額を提示すれば、相手の納得を得られやすくなります。

現金以外の財産での受け取りも視野に入れる

相手がまとまった現金を用意できない場合は、不動産などの現物資産で受け取る方法もあります。

養育費は、本来は金銭で支払われるべきものです。

ただし、当事者の合意があれば、金銭の給付の代わりに、財産を譲渡する形で解決を図るケースもあります。

たとえば、養育費相当額に代えて、自宅の所有権を譲渡する合意がなされることがあります。

相手が居住の継続を希望しない場合には、合意を得やすくなるでしょう。

自宅不動産を受け取れれば、離婚後の住居を確保できるというメリットもあります。

ただし、養育費の支払いに代えて不動産などを受け取る場合には、贈与税や譲渡所得税が課税される可能性が高いです。

養育費相当分を財産で取得する場合には、事前に税理士か税務に詳しい弁護士への相談をおすすめします。

養育費以外の離婚条件で譲歩する

養育費以外の離婚条件で譲歩するのも、一括払いの合意を引き出す有効な手段です。

一括払いを受け入れてもらうためには、相手の要望にも応じる姿勢を見せるのも大切です。

たとえば、財産分与について、相手が取得を希望する財産を優先して取得させるといった方法が考えられます。

なお、親権や面会交流は、養育費とは切り離して考えるべき問題です。

養育費の一括払いの交渉材料とするのは適切ではありません

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養育費の一括請求・一括払いに関するよくある質問

本章では、養育費の一括請求・一括払いにまつわる質問にQ&A形式で回答します。

Q.養育費一括払いで1000万円は高い?安い?

1,000万円が高いか安いかは、権利者・義務者の年収、子どもの人数・年齢(支払い期間)によって異なります

子どもがまだ幼く支払い期間が長くなる場合、一括払いの金額が1,000万円前後になるケースは珍しくありません。

一方、義務者の年収が低い場合や、子どもが15歳以上で支払い期間が短い場合は、1,000万円を大きく下回るケースもあります。

1,000万円という金額自体に高い・安いの基準はなく、個別の事情によって適正額は異なります。

Q.養育費の一括払いに代わる贈与税がかからない方法はある?

信託契約を利用する方法があります。

具体的には、支払う側が養育費を一括で信託銀行に預け入れ、子どもを受益者として均等割給付金の受給を前提とした契約を締結する方法です。

支払いを受ける子の年齢その他一切の事情を考慮して相当な範囲内のものである限り、贈与税の課税対象にはなりません。

ただし、毎年支払いを受ける信託の分配金のうち、収益からなる部分は所得税の対象となります。

Q. 2026年4月導入の法定養育費制度も一括請求できる?

将来分の一括請求はできません

法定養育費は、離婚の日から、次のいずれか早い日までの間、毎月末に支払うよう請求できる制度です。

  • 協議によって養育費の取り決めをした日
  • 養育費の審判が確定した日
  • 子どもが成年(満18歳)に達した日

法定養育費は、あくまで正式な取り決めが整うまでの暫定的・補充的な制度で、将来分をまとめて請求するケースは想定されていません。

ただし、未払い分については、離婚日に遡ってまとめて請求できます。

Q.認知なしの養育費一括払いの相場はいくら?

相手が子を認知していない場合、養育費の相場という概念はありません

法律上の父子関係が成立しない限り、そもそも養育費を請求する権利がないためです。

相手が合意すれば養育費を受け取れますが、低い金額しか応じない、あるいは支払い自体を拒否されるケースもよくあります。

他方、認知しないことを条件に一括払いに応じるケースもあります。

特に不貞関係にある相手との間に子が生まれた際、相手の配偶者に婚外子の存在が知られないよう、一括払いに応じる例も珍しくありません。

まとめ

養育費の一括払いは、父母双方の合意があれば可能です。

未払いリスクを根本から防ぎ、離婚後の経済的な見通しを立てやすくなるのが主なメリットです。

ただし、受け取り総額は月払いより少なくなる傾向があります。

また贈与税が課される可能性もあるため、受け取り方には工夫が必要です。

贈与税の課税を避けたい場合には、信託契約の活用などを検討しましょう。

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この記事の監修者
しらとり法律事務所
白鳥 剛臣 (仙台弁護士会)
しらとり法律事務所では、複雑な専門用語を使わず、ご依頼者に安心いただけるよう寄り添ってご対応することを心がけています。

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編集部

本記事はベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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