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養育費が支払われないときは、履行勧告の手続きを利用することを検討しましょう。
履行勧告とは、調停や審判などによって決められた養育費を支払わない相手に対し、家庭裁判所から支払いを勧告してもらう手続きです。
本記事では履行勧告手続きを利用する際の流れや注意すべきポイントについて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
合意した養育費が相手方から支払われない場合は、履行勧告制度を利用して相手に支払いを求めることができる可能性があります。
以下では履行勧告とはそもそも何かや、履行勧告を利用するメリットについて解説します。
履行勧告とは、調停や審判で決まった養育費の支払い義務等を守らない人に対して、家庭裁判所から電話や書面を用いて、債務の支払いをおこなうよう勧告する制度です。
履行勧告の手続きを利用できるのは、家庭裁判所の調停や審判などで決まった事項が守られなかった場合で、養育費を受け取る側が無料で申し立てることができます。
履行勧告の手続きを利用できるメリットとして、以下の2つがあげられます。
履行勧告は家庭裁判所から勧告がおこなわれる制度です。
そのため、履行勧告を受けた側は心理的に一定のプレッシャーを感じることになります。
このように心理的プレッシャーを与えることによって、相手方に支払いを促すことができます。
しかし、履行勧告はあくまで相手方に対し自発的に支払うように促すものであり、支払われなかった場合の法的強制力は一切ありません。
そのため、家庭裁判所が履行勧告をしたからといって必ずしも養育費が支払われるわけではないことを覚えておきましょう。
履行勧告の申し立ては複雑な手続きが不要で、比較的簡単・迅速におこなうことができます。
場合によっては電話で申し立てることができ、費用も一切かからないため、気軽に利用しやすい点がメリットといえるでしょう。
履行勧告手続きは基本的に以下の3つのステップですすめられます。
履行勧告の手続きを利用する際には、まず家庭裁判所に申出をおこなう必要があります。
申出をおこなう方法は口頭または書面の2つがあります。
状況を整理してしっかり伝えたい場合は、書面提出の手続きを選ぶとよいでしょう。
必ずしも必要なわけではありませんが、取り決めた内容や不払いの証拠を示すことができる以下のような書類を用意しておくと、裁判所からのヒアリングに対応しやすくなります。
履行勧告の申出があった場合、家庭裁判所は申出のあった履行に対して履行状況(実際に養育が未払いかどうか、未払いであればどのような理由かなど)の調査をおこないます。
履行状況の調査は、電話による聞き取りがメインでおこなわれるため、事前に対応のための準備をしておきましょう。
履行状況の調査の結果、履行勧告が必要と判断されれば、履行勧告が実施されます。
具体的な履行勧告の内容としては、家庭裁判所から養育費の支払いを怠っている相手に対して、養育費の支払いを促すような文章が送られます。
調停や審判での取り決めを守ってもらえない際に利用できる履行勧告ですが、手軽に利用できる半面、以下のような注意点も存在します。
履行勧告には法的な強制力はありません。
あくまで家庭裁判所がおこなえるのは勧告までであり、相手側は勧告を無視することもできてしまいます。
そのため、養育費を確実に獲得したいのであれば、履行勧告に従わない相手に対して、さらに履行命令や強制執行などの手続きを検討する必要があります。
履行勧告は、あくまでも家庭裁判所でおこなわれた調停や審判で決められたとおりに養育費等を支払わない人に対して、支払いを促す手続きです。
裁判所を通さずに取り決められた養育費の未払いについては、履行勧告手続きを利用することはできないため注意してください。
相手が病気や怪我で働けなくなっているなど、未払いの理由が正当とみなされる場合は履行勧告ができない可能性があるので注意してください。
家庭裁判所の調査官は、支払いを怠っている相手の状況も調査します。
家庭裁判所は、正当な理由なく養育費が支払われていないと判断した場合に履行勧告をおこなうのです。
履行勧告は、調停や審判をおこなった際の調書に記載のある住所地に対しておこなわれます。
そのため相手側が転居をしている場合、住所地の特定が必要となります。
住所地を特定する場合は、弁護士に依頼することで住民票を取得するやり方が一般的です。
履行勧告には法的な強制力がないため、正しくおこなわれた場合でも養育費を回収できないことがあります。
もし、履行勧告をおこなっても解決しなかった場合は、履行命令および強制執行の申し立てを検討してみましょう。
履行命令は、履行勧告をおこなったにもかかわらず履行がおこなわれない際に利用できる制度で、家庭裁判所から相手方に履行命令が出されます。
履行勧告と履行命令の大きな違いは、履行命令の場合は相手方が正当な理由なく履行命令に従わなかったときに10万円以下の過料の支払いが科せられる可能性があることです。
一方で、履行勧告同様に法的な強制力が伴わないことや、未払いの原因が経済的な事情である場合は、さらに養育費の回収に時間がかかってしまうことも注意点となります。
強制執行は、相手方の給与や預貯金などの財産を差し押さえ、養育費を強制的に回収する方法です。
なお、強制執行には直接強制と間接強制の2種類の方法があります。
直接強制は、養育費を支払わない相手方の財産を差し押さえ、換価・処分することで、強制的に養育費の支払いに充てる手続きです。
養育費支払いの強制執行を申し立てる場合、基本的には直接強制が選ばれます。
なお、強制執行を申し立てる際には以下の書類が必要となります。
間接強制は養育費の支払いに期限を設け、期限までに支払いがおこなわれなかった際に間接強制金の支払いを義務付けることで、精神的なプレッシャーを与える方法です。
支払われた間接強制金は、申立人が受け取ります。
しかし、期限が過ぎ、間接強制金が支払われない場合には、養育費の支払いについて改めて直接強制を申し立てる必要があります。
最後に養育費の履行勧告についてよくある質問と回答を紹介します。
履行勧告の申出には費用がかかりません。
そのため、比較的気軽に利用しやすい制度といえます。
未払いの養育費をどのくらいさかのぼって請求できるかは養育費に関する取り決めをどのようにおこなったかによって異なりますが、一般的に過去5年または10年までさかのぼることが可能です。
過去の養育費の請求が出来なくなる期限のことを消滅時効といいます。
消滅時効は養育費の取り決めの方法によって異なり、夫婦間での協議や公正証書を用いた取り決めの場合は5年間、調停、審判、判決など裁判所を介した場合は10年間です。
ただし、あくまで時効が援用された場合に請求できなくなる期間であるため、消滅時効を加味せず養育費の発生タイミングから未払い分を請求してしまっても問題はありません。
履行勧告は調停調書などに記載のある住所地に対して実行されるため、相手が転居をしていた場合はおこなえません。
このようなケースでは、履行勧告をおこなう前にまず相手の所在地を探す必要があります。
相手の住所は、住民票や住所の履歴が記載されている戸籍の附票を取り寄せることで確認が可能です。
ただし戸籍の附票を取得するには、請求事由の記載や本人との関係を証明しなくてはなりません。
これらの手続きが難しい場合は、弁護士に依頼して対応してもらう方法もあります。
履行勧告はあくまで調停や審判をおこなった事案に対してとることができる手段です。
養育費の支払いを口約束で決めていた場合は、調停を申し立てて相手に支払いを求めることができます。
ただし養育費の取り決めについて口約束しかなかった場合、過去の未払い分を請求するのは難しい点は注意しなくてはなりません。
一般的に養育費は、調停を申し立てたり書面で請求した日以降のみ支払いを求めることができます。
相手が任意で支払ってくれない限り、請求時より前の未払い分を支払ってもらうのは難しいと言わざるを得ないのです。
履行勧告は養育費の未払い問題に対して、比較的簡単におこなえる対抗手段のひとつといえます。
しかし、手続きが簡単な代わりに支払いに対する強制力はなく、家庭裁判所が履行勧告をおこなったからといって必ず養育費を回収できるわけではないことに注意してください。
履行命令や強制執行など、より効力の強い手続きの実行まで視野に入れるのであれば、弁護士への相談もおすすめです。
本記事や弁護士からのアドバイスをもとに、養育費の未払い問題を解決できるよう、適切な対応をおこなっていきましょう。
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