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特有財産(とくゆうざいさん)とは、夫婦の一方が結婚前から持っている財産や自己の名義で得た財産、または相続や贈与などで得た財産のことをいいます。
特有財産は原則として、財産分与の対象になりません。ただし「これが特有財産です」といった形で法律で定められていることはなく、本当に特有財産なのか?と争われるケースは後を絶ちません。
婚姻関係となると、相手の物であるか自分の物であるか曖昧になるケースも多いでしょう。そのため離婚時の財産分与でどちらの物であるのか、共有の物であるのか、揉めることは少なくありません。
そういった紛争に対応するためにも、予め財産分与に関係する知識を把握しておくことが対策になるでしょう。
この記事では特有財産についてわかりやすく解説します。(※この記事は2020年10月の情報をもとに作成されました。)
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離婚の財産分与において、夫婦で所持している財産でも財産分与の対象とならない財産を特有財産といいます。民法によると、特有財産は以下のように定められています。
(夫婦間における財産の帰属)
第七百六十二条 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。
引用:民法
離婚の財産分与は、婚姻期間中に夫婦が共同で形成した財産の清算といえるでしょう。したがって、相続や贈与などが原因となった財産など、夫婦の協力とは関係がない財産は原則として財産分与の対象になりません。
特有財産には以下の項目が該当します。
結婚前から所持していた財産や夫婦の一方が相続・贈与によって自己名義で取得した財産は特有財産にあてはまるでしょう。
なお、別居した場合には夫婦は独立して生活していると考えられるため、別居後の財産については特有財産となる可能性が高いでしょう。
特有財産でも財産分与の対象となる場合がある |
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原則として、特有財産にあてはまる項目は財産分与の対象から除外されます。ただし、個人の特有財産であっても、その財産の維持や増加に婚姻後の夫婦の協力が貢献した場合には、その貢献度などを考慮して財産分与の対象となる可能性があります。 例えば、一方が婚姻関係前から所有していた不動産の価値が婚姻中に上昇した場合には、その上昇した価値分が財産分与の対象となる可能性があるでしょう。 夫婦の協力または配偶者の貢献がなければ財産の価値を維持できなかったと推定される場合にも、貢献に応じた分が財産分与の対象となる可能性があります。 |
婚姻中に共有財産(夫婦で協力して形成した財産)で購入した不動産は、原則として特有財産に該当せず財産分与の対象になります。
しかし判例では、「夫の不貞行為に対して妻の不満を抑える目的で夫が妻に贈与した不動産であるから妻の特有財産にあたる」として、財産分与の対象にならないとの決定が下されています。
裁判年月日 | 平成23年 2月14日 |
裁判所名 | 大阪高裁 |
裁判区分 | 決定 |
事件番号 | 平22(ラ)1041号 |
事件名 | 産分与審判に対する抗告事件 |
裁判結果 | 取消、却下 |
上訴等 | 確定 |
文献番号 | 2011WLJPCA02146002 |
以下の項目は特有財産に該当しません。
婚姻中に夫婦で協力して築いた財産は財産分与の対象となる可能性があります。これらの財産を共有財産といいます。
財産の名義が一方のものになっていたとしても、婚姻中に協力して購入した物であれば共有財産と認められるでしょう。
特有財産に該当するか共有財産に該当するか、曖昧な財産もあるかもしれません。当事者で判断することが難しい場合には弁護士に相談してみるとよいでしょう。
なお、夫婦双方の同意があれば共有財産の分配は自由です。ただし、円満離婚であっても財産分与で揉めるケースは少なくありません。財産分与の対象であるか否かについて大きな紛争になることもありますので、やはり、弁護士に相談することをおすすめします。
「配偶者が取得した慰謝料については精神的苦痛を慰謝するためのものであるから被害者の特有財産である」としつつ、「逸失利益(損害賠償の対象となる事件がなければ得られたと推定される利益のこと)については将来の労働に対する対価であり配偶者の貢献を認め、財産分与の対象である」とした判例。
裁判年月日 | 平成17年 6月 9日 |
裁判所名 | 大阪高裁 |
裁判区分 | 決定 |
事件番号 | 平17(ラ)252号 |
事件名 | 財産分与審判に対する即時抗告事件 |
裁判結果 | 変更 |
上訴等 | 確定 |
文献番号 | 2005WLJPCA06090004 |
特有財産かどうか明らかでない場合には、共有財産(財産分与の対象)と推定されます。したがって、特有財産であると主張する側には特有財産であることの主張立証責任が生じると考えられています。
(夫婦間における財産の帰属)
第七百六十二条 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。
引用:民法
特有財産であるか否かが問題となった場合には、婚姻時の通帳や取引履歴明細などの資料を収集して、夫婦の協力で形成された財産ではないことを立証する必要があるでしょう。
不動産の頭金に特有財産が含まれていると判断された場合、特有財産分は財産分与から除外される可能性があります。
なお、頭金に特有財産が含まれるかどうかは金銭の流れを丁寧に追い、その不動産に特有財産が含まれることを証明する必要があります。ご自身での立証が難しい場合には離婚に注力する弁護士に相談してみましょう。
親から土地を相続した場合は特有財産として認められる可能性が高いでしょう。例えば、婚姻関係を結んだ後に実家を相続した場合や両親から何らかの財産を相続する予定が明確である場合でも、それらは特有財産にあてはまるでしょう。
ただし、夫婦の協力でその土地を維持していた、または価値を増加させた場合には財産形成への貢献度に応じた分与割合が争われることもあります。
特有財産とは、婚姻中の夫婦の協力によらない財産のことをいいます。特有財産は財産分与の対象にならないため、離婚時に予め把握しておきたい項目といえるかもしれません。
特有財産であるか曖昧な財産は、「特有財産なんですよ」としっかり主張をし、立証をしない限り、共有財産として(分割の対象として)扱われてしまうこともあります。
特に不動産の頭金は、親御さん等が援助的にお金を出してくれ、なんとか契約書に記載されている不動産の購入日などからたぐりよせたりしていくケースがほとんどです。
特有財産の立証を検討している場合には専門知識を有する弁護士への相談をおすすめします。
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