離婚検討時には様々な不安があります。
その中でも最も多いのが「離婚後の収入やお金の不安」です。
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相手方の承諾なしで財産分与を放棄させることはできません。
なぜなら、財産分与請求権は当事者に認められた固有の権利であるためです。
しかし、有責配偶者との間での財産分与は、心情的に納得できないのも当然でしょう。
そこで本記事では、以下5点についてわかりやすく解説します。
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まず、相手方である配偶者に対して財産分与の放棄を強制することはできません。
財産分与請求権は離婚当事者に認められた権利であり、「相手が不倫をしたから」「相手がDVをしたから」など、いかなる事情があったとしても、一方的に財産分与請求権を剥奪することはできません(民法第768条第1項)。
相手方に財産分与を放棄させるには、財産分与の放棄について「相手方の同意」が必要です。
「財産分与の放棄」について相手方から承諾を得るには、粘り強く話し合いをするしかありません。
ただし、財産分与を放棄する側には経済的な不利益しかないことを踏まえると、当事者間の交渉だけで相手側から「財産分与の放棄」についての承諾を引き出すのは容易ではありません。
たとえば、財産分与を放棄してもらう代わりに離婚に同意するなどといった、何かしらのメリットを相手方に与える、財産分与などの離婚条件についての話し合いを弁護士に代理してもらうなどの工夫が不可欠でしょう。
財産分与の放棄について夫婦間で合意に至った場合には、必ずほかの離婚条件とあわせて文書(離婚協議書)を作成してください。
そうすることで、放棄したはずの財産分与を後から請求されたとしても、合意した内容についての文書が証拠になるので、不当な金銭請求を拒絶できるでしょう。
財産分与を放棄する旨の合意を書面化するときには、公正証書にしておくと紛争予防に役立ちます。
公正証書とは、公証役場で公証人に作成してもらう公文書のことをいいます。
公務員である公証人が本人確認や意思確認をしたうえで作成するため、本人が自分の意思で約束したことを証明できます。
そのため、財産分与放棄などの離婚条件を公正証書にすることで、公正証書に記載された事実についての証明力が高まります。
また、公正証書には執行力もあります。
そのため、離婚にあたり相手方から慰謝料や養育費を受け取ることになった場合には、公正証書に「強制執行認諾文言」をつけておくことを強くおすすめします。
そうすることで、相手方が養育費などを不払いしたときには、裁判手続きなどを経ずに強制執行によって財産などを差し押さえることができます。
相手方に財産分与を放棄させなくても、もともと財産分与をする必要がないケースも少なからず存在します。
具体的なケースとして、以下3つが挙げられます。
財産分与請求権は、離婚が成立した日から2年を経過した時点で除斥期間にかかります(民法第768条第2項但書)。
したがって、離婚から2年以上が経過したタイミングで相手方から財産分与を求められたとしても、わざわざ「財産分与の放棄」についての合意を取り付ける必要はなく、除斥期間の徒過を主張すれば足ります。
そもそも、財産分与とは「結婚生活で夫婦が協力して築き上げた財産を、離婚の際に当事者それぞれの貢献度によって分配する制度」のことです。
したがって、結婚前に夫婦財産契約(プレナップ)を締結して、婚姻中の財産管理方法や離婚時の財産分与の方法などについて取り決めをしておけば、離婚後に「財産分与の放棄」をめぐるトラブルを防げるでしょう。
財産分与についての約束は、婚姻期間中・離婚前・離婚後のどのタイミングでしても有効です。
したがって、婚姻期間中に「離婚をしても財産分与はしない」と約束していたにもかかわらず、離婚後に相手方から財産分与を求められた場合には、「財産分与の放棄」について合意を得るまでもなく、相手方からの財産分与請求を拒絶できます。
ただし、財産分与しない旨を口約束でしていた場合には注意が必要です。
なぜなら、財産分与についての取り決めは口約束でも有効ですが、書面や音声などが存在しなければ客観的に証明することができないためです。
「言った、言わない」の水掛け論になってしまうと、結果として財産分与放棄についての約束を証明することはできません。
そのため、法律に則って財産分与請求をする相手方の主張が採用されかねません。
したがって、離婚後のトラブルを回避するなら、婚姻中に財産分与の放棄について約束をした場合でも、公正証書などの書面を作成しておくことをおすすめします。
「財産分与の放棄」は、相手方の承諾が不可欠です。
つまり、相手方が放棄について承諾をしない限り、どのような事情があっても財産分与に応じる必要があります。
しかし、実際の離婚問題では「相手が不倫をしたのに財産分与を求めてくるのはおかしい」「婚姻期間中に貯金をしたのは自分なのに、財産分与が認められるのは納得できない」などのケースは少なくありません。
このようなケースでは、「相手が悪いのに財産分与にも応じなければいけない」という理不尽な事態に追い込まれかねないでしょう。
ただし、どのような事情があったとしても、以下5点には注意する必要があります。
「財産分与をしたくないから財産を隠してしまおう」というのは、正しい考え方ではありません。
なぜなら、へそくりなどの隠し財産の存在があとから発覚すると、財産分与の金額が増えるだけではなく、遅延損害金も加算されるおそれがあるためです。
「相手にバレないように財産を築いていたから、財産分与の金額を引き下げることができるだろう」というのは甘い考えです。
なぜなら、相手方が「調査嘱託制度」を利用すると、裁判所を通じて金融機関などに財産状況を照会でき、隠れて作った預貯金口座などに貯めたへそくりなどが発覚してしまうからです。
また、裁判所を利用しなくても「弁護士会照会制度」によって財産開示はおこなわれてしまいます。
「財産分与に納得できないから離婚をしたくない」という理由で、離婚を拒絶すること自体は可能です。
たとえば、離婚を拒絶している間に「どうしても離婚を希望するなら、財産分与の放棄に納得してほしい(財産分与の金額を引き下げてほしい)」などの条件交渉をするのも効果的でしょう。
ただし、離婚を拒否し続けると、相手方がしびれを切らして調停・裁判手続きに踏み出し、離婚トラブルが泥沼化する危険性が生じる点には注意をしなければいけません。
離婚時期を先延ばしにするほど、人生をリスタートするタイミングも遅れてしまいます。
相手方の財産分与請求に根拠がある場合、かつ財産分与の支払い期限が設けられているにもかかわらず、相手方からの財産分与請求を拒否し続けると、延滞日数に応じて遅延損害金が発生します。
遅延損害金年利率について事前に定めている場合には、契約内容に応じて算出される遅延損害金が加算されます。
また、遅延損害金年利率について当事者間で合意がなかったとしても、法定利率3%を根拠に遅延損害金の支払い義務が生じます。
相手方からの財産分与請求に根拠がある場合、かつ支払い拒絶によって履行遅滞に陥っているときには、相手方から法的措置を起こされかねません。
特に、財産分与の支払いについて公正証書を作成している場合には、相手方からの財産分与請求に対して有効な反論をするのは不可能に近いでしょう。
最終的には強制執行によって預貯金や財産、給料などが差し押さえられるリスクもあります。
できるだけ早いタイミングで弁護士に相談のうえ、財産分与を含む離婚条件について弁護士に交渉を代理でおこなってもらいましょう。
財産分与を放棄させることに集中する前に、まずは財産分与についての知識を整理しておきましょう。
財産分与は、その性格や目的によって、以下3つに分類できます。
清算的財産分与とは、「夫婦が共同で築いた財産を夫婦で分ける」という財産分与の性格に注目したものです。
婚姻期間中に形成された財産は夫婦2人のものなので、離婚によってそれぞれに分配されます。
ただし、結婚前・離婚後に取得した財産は清算的財産分与の対象にはなりません。
扶養的財産分与とは、「離婚によって経済的に苦しくなる一方当事者をサポートする」という趣旨に基づく財産分与のことです。
たとえば、専業主婦・専業主夫をしていた当事者の離婚後の生活を支援するため、シングルマザー・シングルファザーの家計を支えるために支払われることが一般的です。
扶養的財産分与の金額を決定する際には、双方の経済事情などが総合的に考慮されます。
慰謝料的財産分与とは、有責配偶者(不倫・DVなど)から支払われる慰謝料的な意味合いの財産分与のことです。
特に協議段階では、慰謝料請求を別途おこなう手間を嫌って、財産分与の枠内で慰謝料の代わりに賠償がおこなわれるケースも少なくありません。
財産分与の対象になる財産は、「婚姻期間中に取得した」以下の財産です。
プラスの財産だけではなく、マイナスの財産も分け合う点には注意しましょう。
【財産分与の対象になる財産の具体例】
これに対して、以下の財産は財産分与の対象には含まれません。
ただし、当事者双方が納得したうえでこれらの財産を分け合うことは可能です。
【財産分与の対象とならない財産の具体例】
財産分与では夫婦間で公平かつ納得感のあるように財産を分け合う必要があるため、できるだけ現金化して分割するのが理想です。
たとえば、現金や預貯金なら簡単に割り算ができますし、不動産・自動車などそのままの状態では分割になじまない財産は、売却して現金化することによってスムーズな財産分与が可能となります。
なお、土地建物や自動車の場合、離婚後もどちらかが継続して使用したいということもあるでしょう。
このようなケースでは、売却市場における査定額を調べたうえで、財産を継続所有する側が相手方に対して半分の現金を支払うことによって財産分与が達成されます。
もちろん、夫婦間の協議によって「預貯金を全額渡す代わりに自宅はもらう」などの柔軟な約束をすることは可能です。
財産分与を少しでも有利な条件にするには、以下4つのポイントを押さえることをおすすめします。
財産分与を少しでも有利な条件にするなら、相手方が保有する財産を正確に把握しなければいけません。
相手方に隠し財産があるのにもかかわらず、これに気づかないまま交渉を進めてしまうと、自分側の財産からの持ち出しが多くなってしまいます。
離婚時には財産開示を求め、開示を拒絶されたときには「調査嘱託制度」「弁護士会照会制度」を活用することをおすすめします。
財産分与の内容を有利にするなら、特有財産を主張するのも効果的な方法です。
特有財産とは、夫婦の一方だけに帰属する財産のことです。
財産分与は夫婦の共有財産を対象とする制度なので、特有財産に該当するものは財産分与の対象から外されます。
ただし、保有している財産が共有財産・特有財産のどちらに該当するかは簡単に見分けはつきません。
財産の取得時期や契約書などのさまざまな証拠が必要になるので、かならず弁護士までご確認ください。
財産分与の割合は原則「1:1」ですが、当事者の合意がある場合や、共有財産への貢献度に違いがあるときには財産分与割合を変更できます。
たとえば、一方当事者が医者・弁護士・会社経営者など特殊な才能・能力によって共有財産を築いたケース、一方当事者の浪費が激しかったケース、特定財産を元手に財産を築いたケースでは、原則的な割合から修正が加えられる可能性が高いと考えられます。
財産分与などの離婚条件を少しでも有利な内容にしたいなら、弁護士に依頼することを強くおすすめします。
弁護士への相談・依頼することによって、以下4点のメリットを得られます。
離婚では、財産分与だけではなく、親権や慰謝料、養育費などのさまざまな問題を同時並行で処理しなければいけません。
離婚問題に強い弁護士に一任することで、できる限り円満かつ迅速な離婚成立を目指しましょう。
さいごに、財産分与についてよく寄せられる質問をQ&A形式で紹介します。
不倫をした配偶者に対しては、「不法行為に基づく損害賠償請求(慰謝料請求)」をすることが可能です。
ただし、不法行為責任は財産分与とはまったく別の制度でしかない点に注意が必要です。
不倫の有責性は不法行為責任のなかで問われるものであり、財産分与には一切影響しません。
ただし、当事者間で合意をしたときは異なります。
したがって、不倫をした配偶者との間でも財産分与をする必要があります。
「不倫をしたあなたが悪いから財産分与には応じない」という理由で支払いを拒絶しても、遅延損害金が加算されて損をするだけでしょう。
財産分与は、婚姻期間中に夫婦で形成した財産を双方で分配するものです。
そして、別居期間中は形式上は婚姻関係にあるものの、実質的には夫婦間で協力関係があるとはいえません。
したがって、別居期間中に得た収入や財産は財産分与の対象にはならないと考えられます。
財産分与は、夫婦それぞれ2分の1ずつ分配されるのが原則です。
ただし、夫婦間の収入格差が著しく大きい場合には、共有財産への貢献度にも差があると考えられます。
このようなケースの場合は、財産分与割合が修正される可能性があります。
婚姻期間中、夫婦共働きで別会計だったとしても、財産分与は夫婦それぞれ2分の1ずつ分配されるのが原則です。
なぜなら、婚姻期間中は経済面だけではなく、家事・育児などの金銭化できないさまざまな事情も協力し合っているのが実情であるためです。
ただし、別会計で収入格差があるケースや、財産の配分について当事者間で特別な合意をしたケースでは、別の財産分与割合が定められることもあります。
離婚時にどのような事情があったとしても、原則として財産分与は「1:1」です。
「相手が悪いのだから財産分与を放棄してほしい」とどれだけ希望したとしても、財産分与放棄について相手方の承諾を得られない以上、半分ずつ分け合うしかありません。
ただし、離婚時には財産分与以外にも慰謝料や親権、養育費などのさまざまな問題が争点になる点に注意が必要です。
ほかの条件を上手に組み合わせて交渉することによって、財産分与の金額を有利にすることが可能となります。
そのためには、離婚問題が発生したなるべく早い段階で弁護士に相談をしておくことを強くおすすめします。
必ずしも弁護士に依頼する必要はないため、現状整理と今後の争点を明確にするという点からも、まずは気軽に問い合わせてみましょう。
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