子どもの扶養義務は何歳まで続く?年齢の目安や実際の決め方などについて解説
- 「子どもはいつまで扶養する必要がある?」
- 「成人した子どもの養育費も支払うべき?」
離婚した配偶者との子どもの養育費を支払っている方の中には、扶養義務がいつまで続くのか疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
扶養義務は、法律で明確に年齢が定められているわけではなく、原則として子どもが経済的に自立できない「未成熟子」である限り続くとされています。
例えば、18歳でも就職していれば経済的に自立できていると判断できますが、20歳を過ぎていても大学在学中であれば未成熟子と判断され、大学卒業まで扶養義務が続く場合があるのです。
そのため、「扶養義務はいつまで続くのか」という点を知るためには、一般的な考え方や実務上の判断基準を理解しておくことが大切です。
本記事では、子どもの扶養義務が続く年齢の目安や実際の決め方について解説します。
最後まで読むことで、自分や子どもの状況に合った扶養義務の終期が判断でき、適切な対応ができるようになるでしょう。
扶養義務は何歳まで?法律で明確に年齢が決まっているわけではない
子どもを何歳まで扶養しなければならないかについて悩む方は多いですが、実は法律で明確に年齢が定められているわけではありません。
法律上は、子どもが「未成熟子」である限り、原則として親の扶養義務が続くとされているからです。
未成熟子とは、まだ自分で生活できるだけの経済力や能力がない子どものことです。
例えば、まだ学生で自力で収入がない場合や、障がいや病気などで自立が難しいケースであれば、成人していても未成熟子として扱われ、扶養義務が続く可能性があります。
ただし、「何歳まで扶養義務があるか」については、離婚時にどのような取り決めをしたかによっても変わる点に注意が必要です。
「養育費は〇歳になるまで支払う」という取り決めをしている場合は、子どもが取り決めた年齢になった時点で支払いが不要になる可能性もあるので、合意内容を確認しましょう。
扶養義務は何歳まで?実際に用いられることが多い年齢はどれか?
扶養義務がなくなるタイミングは、年齢によって一律で決まっているわけではありません。
しかし、実務上は養育費の支払いが終了するタイミングとして、以下3つの年齢が用いられるのが一般的です。
- 20歳|実務上使われることが多い
- 18歳|子どもが高校卒業後に働く場合に使われることが多い
- 22歳|子どもが大学卒業後に働く場合に使われることが多い
それぞれのタイミングについて、以下で詳しく見ていきましょう。
1.20歳|実務上使われることが多い
20歳は、長年成年年齢とされてきたこともあり、多くの場合で扶養義務の区切りとされます。
法改正によって成人年齢が18歳に引き下げられてからも、家庭裁判所や実務の現場では20歳になる月までを養育費の支払い終了のタイミングとしているのが一般的です。
ただし、判断の基準はあくまでも子どもが経済的に自立できているかどうかです。
高校卒業のタイミングで養育費を終了したり、大学卒業まで継続したりと、子どもの進路によっていつまで養育費の支払いが続くかは異なることを覚えておきましょう。
2.18歳|子どもが高校卒業後に働く場合に使われることが多い
子どもが高校卒業後に働く場合、扶養義務の終期を高校卒業までとするケースが多く見られます。
これは、これまで20歳とされていた成年年齢が、18歳に引き下げられたことも影響しているでしょう。
特に、子どもが高校卒業後に進学せず就職したときは、経済的な自立が見込めるため、高校卒業のタイミングで親の扶養義務が終わると判断されやすいです。
なお、高校卒業後に子どもがニートになったケースなど、働こうと思えば働けるにもかかわらず、働かないために無収入または十分な収入を得られない場合は、経済的に自立していなくても親の扶養義務は終了すると考えられます。
3.22歳|子どもが大学卒業後に働く場合に使われることが多い
子どもが大学卒業後に働く場合、4年制大学を卒業する22歳まで養育費を支払うケースも見られます。
成年年齢である18歳や、多くのケースで扶養義務の区切りとされる20歳を過ぎても、大学在学中は経済的に自立するのは難しいと考えられるためです。
さらに医学部や薬学部など、修業年限が6年の学部に通っているケースであれば、学部卒業までの24歳まで継続することもあります。
ただし、子どもが浪人や留年をしたときは、どのような取り決めをしたかによって判断が分かれる点に注意が必要です。
例えば、養育費の終期を「22歳の3月まで」としていた場合は、浪人や留年によって大学を卒業していなくてもその期限が到来すれば支払い義務はなくなります。
一方で、「大学卒業まで」としていたなら、浪人や留年をした分も支払い期間が延長される可能性があります。
なお、大学院に進む場合は、親として負担すべき扶養義務の範囲とは通常みなされないため、大学院卒業まで支払う旨の取り決めがない限り、大学院の卒業までは認められないのが一般的です。
【ケース別】実際に何歳まで扶養義務を負う必要があるかの判断基準
何歳まで扶養義務を負う必要があるかは、養育費に関する取り決めの有無や期限をどのように決めていたかによって異なります。
ここでは、実際に何歳まで扶養義務を負う必要があるかの判断基準を、以下のケース別に解説します。
- 明確に期限を定めていた場合
- 「成年に達するまで」と決めていた場合
- 養育費について取り決めをしていない場合
それぞれのケースについて、順番に見ていきましょう。
1.明確に期限を定めていた場合
養育費に関する取り決めがあり、明確に期限を定めていた場合は、原則としてその期限まで扶養義務を負います。
例えば、「2026年3月まで」と定めていたなら、2026年3月まで養育費を支払う必要があります。
ただし、子どもや親の状況が大きく変わったときは、養育費の金額や支払い期間の見直しが可能です。
例えば、失業や収入減少、再婚によって扶養家族が増え、これまで通り養育費を支払い続けるのが難しいといった事情があるなら、相手方に事情を伝えて話し合いましょう。
合意が難しければ家庭裁判所に調停を申し立て、それでも合意できないときは審判で家庭裁判所の判断を仰ぎます。
ただし、申立てが認められるかどうかは、双方の収入や支出の変化、新たな扶養義務の有無などをもとに判断されるため、必ずしも認められるとは限りません。
2.「成年に達するまで」と決めていた場合
養育費の終わりを「成年に達するまで」と決めていた場合、養育費の取り決めをした時点の成年年齢が養育費の支払い終了のタイミングとして採用されます。
- 2022年4月1日以降に取り決めた場合:18歳で支払いが終了
- 2022年3月31日以前に取り決めた場合:20歳で支払いが終了
成年年齢が18歳に引き下げられたことが法改正前の取り決めに影響することはない点に注意しましょう。
なお、成年年齢が18歳に引き下げられてから「成年に達するまで」を終期として取り決めをしていた場合は、子どもの18歳になったときに親の扶養義務は終了し、養育費を支払う必要がなくなります。
3.養育費について取り決めをしていない場合
養育費について特に取り決めをしていない場合、当事者双方が納得できれば合意したタイミングで自由に養育費の支払いを終了して構いません。
決め方に特別なルールや制限はないため、家族ごとの事情や希望に合わせた柔軟な取り決めが可能です。
ただし、話し合いでまとまらず、家庭裁判所に調停を申し立てても合意できなかったときは、最終的には審判によって裁判官が終期を決定します。
その際は、子どもの進学・就労状況や経済的に自立可能かどうかなどを総合的に見て合理的に判断されます。
子どもの扶養義務を何歳までにすればいいのか迷ったときのポイント
扶養義務の終期を決める際、どのタイミングを区切りにするかで迷う方も多いでしょう。
何歳までにすればいいのか迷ったときは、以下の3つのポイントを押さえておくとよいでしょう。
- 子どもの進路希望を踏まえて決める
- 終期に関する例外の条項を設けておく
- 養育費問題が得意な弁護士に相談する
ポイントは、子どもの年齢だけで決めてしまうのではなく、子どもの進路や現在の経済状況などを踏まえて検討することです。
また、養育費の支払い期間や条件について合意できたら、その内容はできる限り書面に残しておきましょう。
合意書や協議書として残すことで、あとあとの「言った・言わない」のトラブルや認識の違いを防げます。
ここからは、それぞれのポイントについて解説します。
1.子どもの進路希望を踏まえて決める
いつまで扶養義務を負うべきかは子どもの進路によって異なるため、子どもの進路希望を踏まえて取り決めをするのがおすすめです。
例えば、大学や専門学校への進学がすでに予定されていれば、卒業時点を終期とする合理的な選択が可能です。
親だけで決めるのではなく、子どもがある程度の年齢になっているのであれば、子どもの意思も確認し尊重した内容にするとトラブルが回避しやすくなります。
2.終期に関する例外の条項を設けておく
扶養義務の終期を明確にしつつ、例外の条項を設けておくのも有効です。
例えば、子どもの進路が離婚時点で未定なら、「養育費の終期は子どもが22歳(大学卒業年の3月末)とし、高校卒業後に就職した場合は高校卒業年の3月末までとする」というように定めておくと、進路の変化に対応できます。
また、子どもが疾病や障がいなどにより経済的な自立が難しくなったときや、親が失業、大幅に収入減少に直面した場合など、特別な事情が生じた際に終期や金額について再協議できる条項も盛り込んでおくと、より柔軟な対応が可能です。
3.養育費問題が得意な弁護士に相談する
子どもの扶養義務や養育費のことで迷った場合は、養育費問題を得意としている弁護士への相談が有効です。
弁護士に相談することで、再婚や失業といった養育費を支払う側の事情を考慮しながら、最新の法改正や過去の裁判例をもとに的確なアドバイスをしてもらえます。
ケースによっては、これ以上養育費を支払わなくてよくなることもあります。
相手と直接やりとりするのが難しいケースでも、弁護士が代理人として交渉を進めてくれるため、相手とのトラブルを回避しやすく精神的な負担も軽減できるでしょう。
また、弁護士は、調停や審判といった家庭裁判所での手続きや書類作成も代理でおこなえます。
問題を長引かせないためには、できる限り早期に相談することをおすすめします。
さいごに|扶養義務を負うかは年齢ではなく未成熟子かどうかで決まる!
子どもの扶養義務が何歳まで続くかの目安や、実際の決め方について解説しました。
養育費は、子どもが20歳になるまで支払うケースが多く、中には18歳や22歳など状況によって前後しますが、扶養義務は子どもの年齢ではなく未成熟子かどうかで決まります。
ただし、明確に期限を定めていた場合はその期限まで支払う必要があるため、取り決めの内容によって異なる点にも注意しましょう。
養育費の支払い条件や金額を変更したいときは相手と話し合い、合意を得られなければ家庭裁判所に認められなければなりません。
扶養義務や養育費で困ったときはひとりで悩まず、養育費問題を得意としている弁護士に相談し、早めに行動しておくと安心です。
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