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慰謝料は自己破産でどうなる?請求できるケースと対応方法を解説

杉本 真樹
監修記事
慰謝料は自己破産でどうなる?請求できるケースと対応方法を解説
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離婚や不倫などで、相手に与えた精神的な苦痛に対して支払うお金を慰謝料といいます。

もし、慰謝料を支払う側が、借金の返済が難しくなり自己破産という法的な手続きをしたら、慰謝料はどうなるのでしょうか。

また、慰謝料を受け取る側は、相手が自己破産したら、もう慰謝料を受け取れないのでしょうか。

本記事では、自己破産と慰謝料の関係について、わかりやすく解説していきます。

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自己破産をすると離婚時の慰謝料はどうなる?

自己破産は、裁判所に認めてもらうことで、借金の支払いを原則として免除してもらう手続きです。

では、離婚の際に発生した慰謝料の支払いは、自己破産によってどうなるのでしょうか。

以下で詳しく解説します。

原則として慰謝料の請求ができなくなる可能性が高い

結論から言うと、慰謝料も自己破産による免責の対象になるのが原則です。

つまり、慰謝料を支払う義務がある人が自己破産をして免責が認められると、基本的には慰謝料を支払わなくてもよくなります。

これは、自己破産が借金で苦しむ人を救済し、経済的に立ち直るチャンスを与えるための制度だからです。

もし慰謝料が免責の対象外だと、自己破産しても借金の負担が残り、再出発が難しくなってしまう可能性があります。

特別なケースを除いては、自己破産によって慰謝料の支払いを請求できなくなる可能性が高い、ということを理解しておきましょう。

自己破産をしても慰謝料を請求できる可能性があるケース

例外的に、自己破産をしても慰謝料の支払い義務がなくならないケースがあります。

このような、免責されない借金のことを「非免責債権(ひめんせきさいけん)」と呼びます。

慰謝料が非免責債権にあたる場合は、相手が自己破産しても支払いを請求し続けることができます。

慰謝料が非免責債権にあたるケースとしては、具体的に以下の3つが考えられます。

1.悪意で不法行為を加えられていた|生活費を渡さなかった場合など

支払う側が悪意をもって、あなたに精神的な苦痛などを与える不法行為をしていた場合、その慰謝料は免責されません。

ここでの「悪意」とは、単に間違いや不注意ではなく、「相手をわざと困らせてやろう」「傷つけてやろう」という強い害意があることを指します。

具体的なケースとしては、以下のとおりです。

  • わざと生活費をまったく渡さず、経済的に追い詰めるような行為
  • 不倫がバレた後も反省せず、むしろ相手を馬鹿にするような言動を繰り返す行為
  • 相手の人格を否定するようなひどい言葉を長期間浴びせ続けるモラルハラスメント行為

ただし、この悪意があったことを証明するのは、請求する側にとって簡単ではありません。

メールや録音、第三者の証言など、客観的な証拠が必要になることが多いです。

2.故意、または重過失で危害を加えられていた|DVがあった場合など

支払う側がわざとまたはひどい不注意によって、あなたの生命や身体に危害を加える不法行為をしていた場合、その慰謝料も免責されません。

具体的には、以下のような場合です。

  • 殴る、蹴るなどの身体的な暴力(DV)があった場合
  • 「殺すぞ」など、生命や身体に危害を加えるような脅迫行為があった場合
  • 支払う側の故意や重大な不注意で、あなたがけがをした場合

このケースは、悪意よりも少し範囲が広く、故意だけでなく重大な過失も含まれます。

DVなどの身体的な危害に関する慰謝料を請求している場合は、自己破産をしても泣き寝入りするリスクは少ないでしょう。

3.債権者一覧表に記載がなかった

自己破産の手続きにおいて、破産者はお金を貸している人や請求権を持つ人のリストである「債権者一覧表」を裁判所に提出する必要があります。

もし、慰謝料を支払う義務がある人が、あなたのことを債権者だと知っていたにもかかわらず、わざとこの一覧表にあなたの名前や慰謝料のことを記載しなかった場合、その慰謝料は原則として免責されません。

これは、自己破産の手続きを公平に進めるためです。

全ての債権者が手続きに参加する機会を与えられるべきなのに、意図的に隠すのは許されません。

ただし、破産した人がうっかり記載を忘れた場合や、あなたがほかの方法で破産手続きが始まったことを知り、手続きに参加できた場合などは、慰謝料の支払いが免責される可能性もあります。

重要なのは、あなたが不当に手続きから排除されなかったかどうかです。

自己破産で離婚に関する慰謝料以外のお金はどうなる?

離婚の際には、慰謝料以外にもお金の取り決めがされることがあります。

ここでは、養育費・婚姻費用・財産分与などが自己破産でどう扱われるか見ていきましょう。

養育費|自己破産前の滞納分も含めて支払い義務がある

子どものために支払われる養育費は、自己破産をしても免責されません。

これは、法律で定められた親の扶養義務に基づくもので、子どもの生活を守るために非常に重要だからです。

将来の支払い分だけでなく、自己破産の手続きが始まる前に滞納していた分も含めて、全額支払う義務が残ります。

支払いが滞れば、給料などを差し押さえる強制執行という手続きで回収することも可能です。

婚姻費用|離婚成立まで受け取れる

夫婦が別居している間など、離婚が成立するまでの生活費として分担するお金を婚姻費用といいます。

自己破産の手続きが始まる前に発生した未払いの婚姻費用は、原則として免責の対象です。

しかし、婚姻費用は離婚が成立するまで発生し続けるものなので、自己破産の手続きが始まったあとに発生する分の支払い義務は免責されません。

ただし、自己破産によって支払う側の経済状況が大きく変わった場合、婚姻費用の金額を減らすよう、話し合いや裁判所の手続きをおこなうことは可能です。

財産分与|自己破産前に受け取った分は、原則そのまま受け取れる

結婚している間に夫婦で協力して築いた財産を、離婚時に分け合うことを財産分与といいます。

もし、自己破産の手続きが始まる前に財産分与が完了していれば、受け取った財産は原則としてそのまま持ち続けることができます。

ただし、自己破産の直前に財産分与をおこなった場合は、注意が必要です。

自己破産の手続きでは、「破産管財人という弁護士が、破産する人の財産を管理します。

破産直前におこなわれた財産分与が、ほかの債権者にとって不公平だと判断された場合、破産管財人はその財産分与を取り消して、財産を取り戻す権限を持っています。

そのため、自己破産直前の財産分与の内容によっては、受け取った財産を返さなければならなくなる可能性があるのです。

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相手が自己破産をしても慰謝料を受け取る方法はある?

もし、あなたの慰謝料請求権が非免責債権に該当する場合や、何とかして慰謝料を受け取りたい場合、どのような方法があるのでしょうか?

相手が自己破産した場合でも慰謝料を受け取るための方法をいくつか見ていきましょう。

「債務名義」があれば、強制執行・財産の差し押さえができる可能性がある

慰謝料請求権が、非免責債権であると法的に認められている場合、相手の財産を差し押さえる強制執行ができる可能性があります。

ただし、強制執行をするためには、以下のような債務名義という公的な書類が必要です。

  • 裁判の判決書
  • 和解調書
  • 調停調書
  • 強制執行ができると書かれた公正証書

ただし、自己破産をした直後の相手は、持っている財産が少ないことが多いです。

そのため、強制執行をしても実際には回収できるお金がほとんどない、という可能性もあります。

慰謝料請求訴訟を申し立てる

債務名義がない場合や、慰謝料が免責されるべきかどうかが争いになっている場合は、裁判所に慰謝料請求訴訟を申し立てる選択肢もあります。

この裁判では、慰謝料の金額を確定させたり、あなたの慰謝料が非免責債権にあたることを主張したりすることが可能です。

ただし、裁判には時間も費用もかかります。

非免責債権であることを証明できる強い証拠がない場合は、費用倒れになるリスクも考えなければなりません。

慰謝料を支払ってもらうよう元配偶者に交渉する

慰謝料が法律上は免責されてしまったとしても、自己破産の手続きが終わったあとに、元配偶者と直接話し合って、任意での支払いを求めることは可能です。

話し合いに法的な強制力はありませんが、相手の道徳心や誠意に訴えかけることができます。

分割払いなど、相手ができる範囲での支払いに応じてくれる可能性もゼロではありません。

ただし、自己破産直後の相手は経済的に苦しい状況にあることが多いので、無理な要求はせず、慎重に交渉することが大切です。

ほかの債権者と同様に、破産手続きに参加して配当を受け取れる可能性はある

あなたの慰謝料が免責の対象となる場合でも、破産手続きに参加すれば、わずかながらお金を受け取れる可能性はあります。

自己破産の手続きでは、破産者の財産を現金化し、それを債権者に公平に分配する配当というプロセスがあります。

そのため、ほかの債権者と同じように、債権者として登録することで、配当を受け取ることができるのです。

ただし、慰謝料のような一般的な債権に対する配当率は、非常に低いか、まったくない場合がほとんどです。

これは、破産者の財産が少ないことや、税金など優先的に支払われるべきほかの債権があるためです。

そのため、配当に過度な期待はしないほうがよいでしょう。

自己破産と慰謝料請求についての注意点

慰謝料請求に相手が自己破産した場合、いくつか注意しなければならないことがあります。

自己破産によって、受取済の慰謝料を返金しなくてはならない場合もある

自己破産の手続きが始まる前に、すでに慰謝料を受け取っていたとしても安心はできません。

仮に慰謝料の支払いが、破産直前におこなわれ、ほかの債権者にとって不公平な偏頗弁済や、財産隠しのような詐害行為にあたると判断された場合、破産管財人はその支払いを否認し、あなたに受け取った慰謝料の返還を求めることができます。

相手が支払い不能な状態になってから支払われた場合や、ほかの借金がたくさんあるのに慰謝料だけが優先的に支払われたような場合は、注意が必要です。

自己破産前の行為については、慰謝料を請求できない可能性が高い

自己破産による免責は、原則として自己破産の手続きが始まる前の行為や出来事によって発生した借金に適用されます。

そのため、離婚の原因となった不倫や暴力などが、全て自己破産の手続き開始決定よりも前におこなわれていた場合、それに基づく慰謝料は、原則として免責の対象となり、請求できなくなる可能性が高いです。

逆に、自己破産の手続きが始まったあとに、新たにDVなどの不法行為があった場合は、それに対する慰謝料は、自己破産手続きでは免責されません。

いつの行為に対する慰謝料なのか、というタイミングが非常に重要になります。

さいごに|慰謝料請求で不安があれば弁護士へ相談を!

自己破産と慰謝料の問題は非常に複雑です。

原則として慰謝料は自己破産によって免責されてしまいますが、例外的に請求できるケースもあります。

慰謝料をちゃんと請求できるのかわからず不安な場合は、早めに弁護士へ相談し、対応を検討してもらうとよいでしょう。

弁護士は、あなたの個別の状況を詳しく聞き取り、法的にどうなるのか、どのような対策が取れるのかを的確にアドバイスしてくれます。

早い段階で弁護士に相談することが、あなたの権利を守り、問題を解決するための第一歩です。

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この記事の監修者
杉本法律事務所
杉本 真樹 (群馬弁護士会)
解決への道筋は一つではありませんので、いくつか選択肢をご提案し、それぞれのメリット・デメリットをしっかりとご説明した上で、一緒に最良の選択肢を考えるように心がけております。

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編集部

本記事はベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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