離婚慰謝料の時効は3年|時効を中断し慰謝料を請求する方法
離婚したこと自体の精神的損害についての慰謝料は、離婚が成立してから3年が経つと慰謝料の請求ができなくなってしまいます。
今回は、離婚した後でも慰謝料を請求する為に知っておくべき時効の知識と、時効が迫っている場合の対策をご紹介していきます。
離婚慰謝料の時効はいつから始まるのか?
配偶者・不倫相手それぞれの時効について解説します。
配偶者に対する時効
離婚慰謝料の消滅時効の起算点は、離婚時とされております。
仮に不貞行為から3年が経過していても、離婚時から3年間は離婚慰謝料を請求できます。
不倫相手に対する時効
不倫を行ったことを原因として発生する慰謝料についての時効は以下の通りとなります。
そもそも、不倫行為を行った相手に対する不法行為責任(慰謝料請求)については、
- 不倫行為それ自体による精神的苦痛に対する慰謝料
- 不倫行為を原因とする離婚結果から生ずる精神的苦痛に対する慰謝料
の2つがあると考えられています。
①の不倫慰謝料の短期消滅時効については、夫婦の一方が他方配偶者と第三者との不倫行為を知った時から(損害及び加害者を知った時から)慰謝料請求権の消滅時効が進行します。
なお不倫行為のうち不貞行為を原因とした慰謝料の場合は、不貞行為が継続的なものであっても、夫婦の一方が他方配偶者と第三者との不貞行為を知った時から、それまでの間の慰謝料請求権の消滅時効が進行すると解されています(最一小判平成6年1月20日集民171号1頁、判タ854号98頁)。
つまり、最後に不貞行為を行った時期が令和2年5月であり不貞行為を知ったのが同年7月であれば、令和2年7月からそれまでの期間の慰謝料請求権の消滅時効が進行します(3年経過までに裁判上の請求等が必要になります)。
他方で、②離婚慰謝料の消滅時効の起算点は、離婚時であると解されています(最二小判昭和46年7月23日民集25巻5号805頁、判タ266号174頁)。
いずれにしても、時効期間を徒過してしまうことのないよう、早めの対応が必要です。
離婚慰謝料の時効を中断させる2つの方法
もし慰謝料請求の時効が迫っているようであれば、内容証明郵便で請求するか、裁判上の請求を行うことで、時効を停止させることができます。
内容証明郵便による催告
裁判所などの法的機関を通さずに、内容証明郵便などを送付して慰謝料を請求することで、時効の進行を一旦止めることができます。これを「催告」と言います。
催告をしてから6ヶ月以内に裁判所に訴訟の提起等を行い権利が確定すれば、その時点で消滅時効の算定期間はゼロとなり、時効を1から再スタートさせることができます。
なお民法改正により時効の中断は時効の更新となりました。
時効の更新(時効の中断)とは時効進行中に時効の基礎となる事実状態の継続が破られたことを理由に、それまで進行してきた時効期間をリセットして1から時効期間を再スタートさせるものです。
一方時効の停止は時効の完成猶予となりました。
時効の完成猶予(時効の停止)とは、ある事由が生じた場合に、その事由が終了するまで時効が完成しないということをいいます。
催告は時効の完成猶予事由となります。催告後6カ月間は時効が完成せず、催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告には、時効完成猶予の効力は認められません。
裁判上の請求
裁判上の請求や、支払督促、和解及び調停の申立て破産手続参加等は全て時効完成猶予事由とされています。その手続が継続している間は時効が完成しないとしながら、取下げ等により手続が途中で終了した場合、その終了の時から6ヶ月が経過するまでは時効が完成しません(民法147条1項)。
そして、これらの手続が途中で終了することなく、確定判決がなされる等して権利が確定したときは「更新」事由となります(民法147条2項)。
もし時効期間が迫っている場合には、まずは時効完成を防ぐという観点から上記の催告や、支払い督促、訴訟の提起などを行うことをおすすめします。
時効が過ぎても慰謝料の請求が絶対に出来ない訳ではない
万が一時効期間が過ぎてしまった場合でも、完全に慰謝料の請求ができなくなる訳ではありません。
確かに慰謝料の支払いを受けられる可能性は少なくなりますが、時効が完成していても、相手が慰謝料を支払う意思があるなら、支払いを受けることは可能です。
時効に気づかずに要求に応じれば時効はなくなる
もし相手が、時効が完成していることに気がつかず、こちらが要求した慰謝料請求に対して支払義務があることを認めたら、その時点で、時効は相手の「承認」により更新し(民法第152条第1項)、慰謝料の請求をすることが可能です。
離婚慰謝料は離婚しない限り時効は進行しない
前述のとおり、離婚自体の慰謝料は、離婚が成立した日から、消滅時効が進行します。つまり、離婚慰謝料は、離婚しない限り時効が進行しないことになります。
ただし、不貞行為の相手(不倫相手)に対し、不貞行為により受けた精神的損害について慰謝料請求する場合には、不貞を知ったときから3年で時効が完成してしまいますので、注意が必要です。
離婚後における慰謝料以外の時効期間
離婚後に請求することが多いものとしては、慰謝料以外には「財産分与」や「養育費」などもあります。
一番良いのは離婚前に全て決めてから離婚するのが一番なのですが、そうできなかった場合でも時効が来るまでなら請求は可能ですので、確認しておきましょう。
財産分与
離婚後に財産分与の請求をしようと思った場合、離婚の成立日(離婚届を出した日)から2年で時効になります。
(財産分与)
第七百六十八条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
養育費
例えば、当事者間の協議により、養育費について「毎月〇万円支払う」という取り決めをした場合、各月の養育費は5年で時効になります。
これに対し、離婚調停などの裁判所の手続きによって取り決めた場合には、時効期間は10年になります(民法第169条第1項)。
(判決で確定した権利の消滅時効)
第百六十九条 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。
2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。
まとめ
離婚慰謝料の時効に関して、もし時効が迫っている、あるいは時効が過ぎてしまっているのであれば、一度弁護士に無料相談をしてみると良いでしょう。
離婚後に慰謝料を請求しようと思っていても、例えば不貞の証拠がなく事実が証明できないなどで、認められる金額が低くなってしまうことが多々あります。本来であれば、慰謝料請求をするのであれば、証拠収集、証拠散逸防止の観点からも、早い段階で動き始めることが大切です。
時効が迫っている、あるいは時効が過ぎてしまっているのであれば、今の段階でどのような行動がとれるのか、早めに弁護士に相談してみましょう。
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