精神疾患やうつ病で離婚できる?離婚率や離婚したいときのポイントを解説
精神疾患やうつ病などの心の不調をきっかけに、離婚を考える夫婦は決して少なくありません。
精神疾患を理由に離婚することは不可能ではないものの、病状や生活状況によって判断は大きく異なり、裁判で認められるには高いハードルがあるのが現実です。
準備不足のまま手続きを進めると、条件面で不利になったり、慰謝料・財産分与・親権などでトラブルが生じる可能性もあります。
本記事では、精神疾患と離婚率の実情、精神疾患を理由に離婚できる条件や注意点を解説。
今後の法改正の動きにも触れるので、参考にしてください。
精神疾患(うつ病)による離婚率は高い?
精神疾患のみを理由とした公式な離婚率データは存在しません。
しかし裁判所が公表している司法統計年報によると、離婚の動機を「病気」としている人は全体の約1%と最も少ない数字です。
病気にはさまざまなものがあるため、うつ病などの精神疾患を直接的な原因として離婚する夫婦はごく少数派であることがわかります。
ただ、離婚原因の上位を占める「性格が合わない」「暴力を振るう」といった項目の背景に、精神疾患が間接的に影響しているケースも考えられます。
病状によるコミュニケーションの困難さや感情のコントロールが難しい状況が、夫婦間の溝を深める要因となっていることは否定できません。
精神疾患を理由に離婚はできる?
夫婦の話し合いで合意できれば理由は問われないため、精神疾患を理由に離婚することは可能です。
ただし相手の合意が得られない場合は、最終的に裁判で離婚を認めてもらう必要があります。
裁判離婚が認められるためには、法律で定められた5つの離婚原因(法定離婚事由)のいずれかを証明しなくてはいけません。
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
引用元:民法第770条
精神疾患との関連では、「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」という要件と、「婚姻を継続し難い重大な事由」が問題となります。
「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」なら離婚できる
現行法では、配偶者が強度の精神病にかかり、かつ回復の見込みがない場合、離婚が認められる可能性があります。
回復の見込みのない強度の精神病と認められやすいもの、反対に認められにくいものの例は次のとおりです。
|
認められやすい病名 |
統合失調症 早発性痴呆 麻痺性痴呆 偏執病 躁鬱病 初老期精神病 認知症 アルツハイマー病 重度の身体障がい者 |
|
認められにくい病名 |
うつ病 アルコール中毒 薬物中毒 劇物中毒 ヒステリー ノイローゼ 精神衰弱 |
ただし、上記の「認められやすい病気」であれば必ず離婚できるわけではありません。
強度の精神病に該当するかどうかは、病名だけでなく、次の3つの要素を総合的に考慮して裁判所が判断します。
- 病状の程度(婚姻関係の維持が著しく困難であるか)
- 回復の見込み(医師の診断に基づく)
- 離婚後の療養・生活についての具体的な見通しがあるか(配慮が取られているか)
なお、現行の法律において「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」ことを理由にした離婚はかなり難しく、判例自体もかなり少ないのが実情です。
婚姻を継続しがたい重大な理由であれば離婚できる【2026年4月法改正】
精神疾患を直接の理由とするのが難しい場合でも、法定離婚事由の第5項「婚姻を継続しがたい重大な理由」に該当すれば、離婚できる可能性があります。
例えば長期間の別居が続いている場合や、夫婦としての相互扶助が成り立たない状況の場合です。
なお民法改正により、2026年4月からは離婚事由のひとつである「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」は削除されます。
改正後、精神疾患に関する問題は引き続き、「婚姻を継続し難い重大な事由」の一要素として判断されることになります。
特にこれまで「強度の精神病」の判断で考慮されてきた、回復の見込みや離婚後の生活への配慮といった点は、今後も離婚の可否を判断するうえで重要な要素となる見通しです。
配偶者が精神疾患(うつ病)で離婚したいときのポイント
配偶者が精神疾患を患い離婚を考える際は、相手の意思を慎重に見極め、自身の権利を正しく理解することが重要です。
「自分が健康で、精神疾患の配偶者と離婚したい」と考えている方向けのポイントを解説します。
離婚したいと言われても慎重に考える
相手の「離婚したい」という意思が、病気の影響による一時的なものか、本心なのかを慎重に見極める必要があります。
すぐに同意せず、冷静な対話を試みましょう。
可能であれば主治医に相談し、相手の意思が病状によるものかどうか専門家の意見を聞いてください。
精神疾患の種類によっては、一時的に判断能力が低下している場合もあります。
関係修復を望む場合は、安易に離婚届に署名・捺印せず、まずは別居して冷却期間を置くことも有効です。
相手の言動を記録しておくことが、のちの調停や裁判で有利な材料になる可能性もあります。
離婚慰謝料の請求は難しい
精神疾患になったこと自体は、相手に責任がある「有責事由」ではないため、慰謝料請求は原則として認められません。
慰謝料とは、不倫やDVなど相手の明確な有責行為に対する精神的苦痛への賠償金です。
病気は本人の意思で罹患したものではなく、慰謝料を請求する理由にはなりません。
ただし、病気とは別に暴力行為やモラハラなどがあれば、それを理由に慰謝料請求が可能です。
精神疾患は養育費の支払いに影響する
養育費の支払い義務は親の病気とは無関係に発生するため、たとえ相手が無職の状態であっても請求は可能です。
ただし金額は現在の収入状況に応じて決まるため、相手が病気によって思うように働けず年収が下がる場合は影響がでます。
例えば相手の年収が500万円の場合と、年収が200万円の場合の養育費は次のとおりです。
|
相手の年収が500万円:養育費4万円~6万円 相手の年収が200万円:養育費1万円~2万円 ※自分の年収が300万円、14歳以下の子どもが一人のケースで算出 参照元:裁判所 養育費算定表 |
将来、相手の病状が回復し収入が増えれば、養育費の増額請求もできるため、状況の変化に応じて適切な対応を検討しましょう。
自分が精神疾患(うつ病)で離婚したいときのポイント
自身が精神疾患を患い離婚を考える際は、慰謝料請求の可能性や関係修復の方法など、自身の状況に合わせた対応を知ることが大切です。
自身が精神疾患で、離婚したい方向けのポイントを解説します。
配偶者が原因で精神疾患になったら慰謝料請求できる
配偶者からのDVやモラハラが原因で精神疾患(うつ病など)を発症した場合は、その因果関係を証明できれば慰謝料請求が可能です。
慰謝料請求の根拠となる不法行為にはDVやモラハラが該当します。
これらが原因でうつ病などを発症した場合は、通常よりも高い慰謝料を請求できる可能性もあります。
因果関係を証明するためには、医師の診断書、言動の録音・記録、第三者への相談履歴など客観的な証拠が必要です。
証拠集めや交渉は精神的な負担が大きいため、弁護士へ依頼するとよいでしょう。
関係修復をのぞむ場合はまず話し合う
離婚を回避し関係修復を望むのであれば、まずは自身の状態と気持ちを正直に伝え、相手の理解を求めることが第一歩です。
病状や治療方針について、主治医の意見も交えながら冷静に伝えましょう。
夫婦だけでの話し合いが難しい場合は、夫婦カウンセリングなど第三者の専門家を交えることも有効といえます。
相手に治療への協力を求めるなど、具体的な改善策を一緒に考える姿勢を示すことが大切です。
お互いの理解を深めることで、関係修復への道が開ける可能性があります。
精神疾患で離婚する場合、子どもの親権はどうなる?
精神疾患があることだけを理由に、親権獲得で不利になることはありません。
ただし、相手が精神疾患を理由に「親権者として不適格だ」と主張してくるケースがあります。
親権者の決定で最も重視されるのは、子の福祉です。
裁判所は次の要素を考慮して、総合的に判断します。
- 監護能力
- 子どもへの愛情
- 経済力
- これまでの監護実績
- 子どもの年齢や意思 など
精神疾患がある親が親権を獲得するためには、病状が安定していること、周囲のサポート体制が整っていることなどを示すことが重要です。
不安がある場合や争いが見込まれる場合は、早めに弁護士へ相談し、医師の診断書などの証拠集めたり具体的な方針を立てましょう。
精神疾患が関わる離婚手続の進め方3ステップ
離婚手続は協議・調停・裁判の3段階で進みます。
精神疾患の配偶者との話し合いは困難な場合も多く、各段階で専門家のサポートが有効です。
ステップ1:協議離婚|夫婦間の話し合いで合意を目指す
夫婦双方の合意があれば、離婚届を提出するだけで成立します。
理由は問われないため、精神疾患が原因でも問題ありません。
協議離婚のメリットは、費用や時間がかからないことです。
一方で、当事者同士の話し合いは感情的になりやすく、合意内容が守られないリスクもあります。
相手の判断能力が不十分だと合意が無効になる可能性もあるため、可能であれば主治医の同席や意見書をもらうことが望ましいでしょう。
また、慰謝料、財産分与、養育費などの取り決めは、のちのトラブルを防ぐため公正証書にしておくことを強くおすすめします。
ステップ2:離婚調停|家庭裁判所で合意を目指す
協議で話がまとまらない場合、家庭裁判所に調停を申し立てます。
調停委員を介して話し合う手続きです。
離婚調停は、当事者同士が顔を合わせず進むため、直接対話せずに済むメリットがあります。
ただし調停期日は平均して3回~6回程度、期間は半年から1年程度かかることが多く、日程を合わせなくてはいけない点がデメリットです。
なお、相手の病状が重く裁判所に出頭できない場合は、電話会議システムの利用なども検討できます。
ステップ3:離婚裁判|裁判官による判決を求める
調停が不成立となった場合、最終手段として離婚裁判を起こします。
法定離婚事由の有無を証拠に基づいて主張・立証する手続きです。
訴状を家庭裁判所に提出し、そのあとは口頭弁論や書面のやり取りを経て判決に至ります。
精神疾患を理由とする場合、医師の診断書やカルテ、日々の言動を記録した日記などが重要な証拠となります。
裁判は極めて専門的なため、弁護士への依頼が必須です。
精神疾患の離婚問題で弁護士に相談すべき理由
精神疾患が関わる離婚は、法的にも感情的にも複雑化しやすいため、早期に弁護士へ相談することが最善の解決につながります。
弁護士に相談すべき理由は次の3点です。
- 法的な見通しを立て、有利な条件で離婚しやすくなる
- 交渉を代行してくれる
- 離婚後の生活を見据えた支援やアドバイスが受けられる
精神疾患が関わるケースは通常の離婚より判断が複雑になるため、法的な主張や証拠集めを任せられることは大きな安心材料です。
また、相手との交渉を弁護士が代行することで、直接やり取りする必要がありません。
病状が不安定な相手の場合でも、冷静で客観的な話し合いが進められるでしょう。
さらに、精神疾患がある場合や支援を必要とする家族がいる場合には、将来を見据えたサポートが重要です。
弁護士は離婚後の生活設計についてもアドバイスができます。
離婚問題に強い弁護士を探すなら「ベンナビ離婚」
弁護士ポータルサイト「ベンナビ離婚」は地域や相談内容で弁護士を絞り込めるため、効率的な弁護士探しに有効です。
ベンナビ離婚は離婚問題を得意とする弁護士や法律事務所を探せるサイト。
精神疾患が絡む複雑な離婚や、親権・財産分与など難しい問題を含むケースにも対応できる相談先を見つけやすい点がメリットです。
また、初回相談が無料の事務所も多く掲載されており、気軽に問い合わせや比較検討ができます。
利用は完全無料なので、気軽に自分に合った弁護士を探してみてください。
精神疾患と離婚に関するよくある質問
ここでは、精神疾患と離婚に関する具体的な質問にQ&A形式で回答します。
うつ病や双極性障害など、病名によって対応は変わりますか?
法的な判断において、特定の病名が有利・不利になることはありません。
あくまで個別の病状の程度や回復可能性が重視されます。
裁判所は診断名ではなく、具体的な症状が婚姻生活にどのような影響を与えているかを重視します。
ただし、病気の特性(例:双極性障害の躁状態での浪費など)が「婚姻を継続し難い重大な事由」と関連付けられる可能性はあるでしょう。
いずれの疾患であっても、主治医の診断書や意見書が重要な資料となる点は共通しています。
相手が離婚のための話し合いに一切応じません。
どうすればよいですか?
相手が話し合いに応じない場合は、まず弁護士へ依頼し、交渉を代行してもらうことが有効です。
専門家が間に入ることで、感情的な対立を避け、冷静な対話のきっかけにつながる場合があります。
それでも協議が進まない場合は、家庭裁判所へ離婚調停を申し立てるのが一般的です。
相手の拒否を理由に、離婚自体が不可能になるわけではありません。
弁護士に相談のうえ、焦らずに法的な手続きを踏んで進めましょう。
離婚したことを後悔しないか不安です。
精神疾患が関わる離婚は、不安や迷いが強くなりやすく、「本当に離婚して良いのか」と悩むのは自然なことです。
後悔を避けるためには、感情に流されず、法的な権利や離婚後の生活について十分に情報を集め、納得して進めることが大切です。
特に精神疾患がある場合は、治療状況や支援体制なども含めた生活設計が重要です。
一人で抱え込まず、弁護士やカウンセラーなど信頼できる第三者に相談し、客観的な視点と安心を得ながら判断しましょう。
まとめ
精神疾患を理由とした離婚率は不明確で、病気そのものを直接の原因として離婚に至るケースは多くありません。
精神疾患があっても離婚は可能です。
夫婦間で合意できなくても、「婚姻を継続し難い重大な事由」もしくは「婚姻を継続しがたい重大な理由」があれば裁判で離婚が認められる可能性があります。
ただし精神疾患が関わる離婚は手続きが複雑になりやすく、感情面の負担も大きいでしょう。
早めに弁護士へ相談することで法的な整理や交渉の代行が可能になり、安心して適切な判断がしやすくなります。
弁護士のサポートを受け、最善の選択肢を検討しましょう。
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