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​産後は離婚の危機がUPする?出産後に離婚してしまう原因と回避する方法

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
​産後は離婚の危機がUPする?出産後に離婚してしまう原因と回避する方法

産後、急に夫婦仲が悪くなってしまう夫婦は少なくありません。もしもその状態を放っておくと最悪の場合離婚に発展してしまうこともあるかもしれません。

「子供が生まれてから夫婦仲が悪くなるなんて、おかしいのかしら?」と、自分の家庭だけ普通とは違うのではと不安に感じている方もいらっしゃるかと思いますが、ある調査によると、産後に夫婦の危機が訪れたと感じた人の割合が約43%にも及ぶことが明らかになりました。

(引用:夫婦の危機が産後に訪れた割合は?【夫婦関係調査レポート】

産後、急に夫婦仲が悪くなり、夫婦の愛情が冷え切ってしまう現象について産後クライシス(※)と呼ぶこともあるようです(あくまで俗語であって、学術的な用語ではありません)。

※産後クライシス…子供が生まれても父親の意識が芽生えない夫、育児を手伝おうとしない夫に対して妻側のイライラがたまり、ホルモンバランスの乱れも相まって妻から夫への愛情が急激に冷え切ってしまう現象全般を指すようです。

2012年にNHKの番組内で提唱されて以来、幅広く認識されるようになっているので聞いたことがある方も多いかもしれませんね。

出産前のように夫への愛情を感じられなくなってしまった…という方は、もしかしたら産後クライシスに陥っているのかもしれません。

この記事では、産後に夫との離婚を考えてしまう理由、産後に離婚して後悔すること、離婚を回避する方法、離婚したい方が離婚前に知っておくべきことなどについてくわしく解説します。

初めての出産を終えて不安になっている方も多くいらっしゃると思いますので、ぜひこの記事を参考にご覧ください。

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産後クライシスに陥ってしまう原因として考えられるもの

主にどのようなことが産後離婚の原因になっているのでしょうか。そもそも産後クライシスという学術的な考えがあるわけではありませんので、明確な原因などはありません。

ただ、一般的に見て、以下のような原因があることはある程度予想できます。ご自身の夫婦間に以下のような問題点がないか、チェックしてみてください。1つでも当てはまるものがある場合、取り返しのつかない事態に発展してしまう前に早めに対処をしておいたほうが良いかもしれません。

夫が父としての自覚を持ってないように感じるから

産後、妻から夫への愛情が薄れる原因として、子供が生まれても夫が一向に変わらないと感じることが挙げられるかもしれません。

母親である妻は、10か月もの間お腹に子供を宿しているためか、徐々に母親としての意識が芽生えてくることが多いです。

一方、父親である夫は、子供が生まれる前も生まれた後も、実質自分の身には何も起きず、父としての自覚を持てない方が少なからずいます。その結果、妻のイライラを生んでしまうのでしょう。

夫が家事や育児に協力してくれないから

1つ目の原因に共通するところがありますが、夫について父親としての自覚が無いと感じる行動(例えば家事や育児に協力してくれないなど)が、妻の不満の原因となることも考えられます。

子供が生まれてすぐの育児が大変であることは当然です。赤子は四六時中面倒を見ていなければならないので、育児をする場合は自然と子供につきっきりの生活になります。

そのため、一方配偶者のみが育児を担当していると、睡眠不足が続き、体力的にも精神的にもまいってしまうこともあるでしょう。

そんなときに、帰ってきた夫から「飯、まだ?」「お風呂できてる?」などと無神経に言われてると、夫に対して強い不満を持ってしまうことはやむを得ないことかもしれません。

妻の精神状態が安定しないから

女性は、子供をお腹で育てるためのホルモン、子供を出産するホルモン、そして母乳を出すためのホルモンなど、妊娠・出産・育児の過程で目まぐるしく体内の女性ホルモンのバランスが変化するといわれており、その過程でホルモンバランスが乱れることが多くあるようです。

結果として、精神状態が不安定になってしまい、夫としては育児や家事に協力しているにも関わらず、ヒステリックになってしまう妻と関係がうまくいかなくなるというケースもあると言われています。

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産後に離婚すると後悔する4つのこと

夫婦仲が悪くなったからと言って、勢いで離婚するのは軽率というほかありません。ここでは離婚後のよくある後悔について解説します。

育児中の復職が厳しく生活が困窮する

たくましく「私が稼いでこの子を育てていくから大丈夫よ!」と考えていても、実際は育児中の復職は厳しいものです。

どうしても子供が小さいときは、子供のことで仕事を早く切り上げたり休んだりしなければいけないこともありますので、雇う側も身構えてしまいます。

よほどシングルマザーに理解のある職場でなければ復職するのは並大抵のことではないと理解しておいたほうが良いでしょう。

復職に困るとなると、当然生活費や養育費の工面に苦労することになります。貯金を切り崩すことで生活が成り立つのであればまだ良いですが、その貯金すら十分でないという場合は生活保護を検討せざるを得ないなど、不本意な状況に陥ってしまう可能性も否定できません。

仕事、家事、育児を両立できない

運よく復職することができたとしても、仕事と家事、そして育児の3つを両立させることは本当に大変です。

すべてを完璧にこなせる人など、ほとんど存在しないのではないでしょうか。無理をすればするほど、体力的にもきつくなってしまい、最悪、体調を崩してしまって働くこともままならないということにもなりかねません。

離婚しなければ、仕事は夫に任せられていたのに…」と後悔する方も多いです。

孤独に苛まれる

離婚後は当然ひとり親になります。子育ての相談や愚痴を聞いてくれる一番身近な人がいなくなってしまいますので、強い孤独感に苛まれることもあるかもしれません。

離婚した当初は解放感で満ち足りているという場合もあるのかもしれませんが、そのような解放感は一時的なものである場合も多いと思われます。時が経つにつれて寂しく感じたり、むなしくなったりするかもしれません。

子供から父親を奪ったことによる罪悪感がある

「いがみ合っている親の元で育つよりは…」と子供のことを考えたうえで離婚をした場合でも、やはり親の都合で離婚したことにより子供から父親を奪ってしまったような罪悪感に苛まれる可能性もあります。

子供から、父親について聞かれたときに、あなた自身がとても辛い思いをすることになるかもしれません。

産後クライシスを回避する方法

あなたが産後も良好な夫婦関係を維持したい、起きてしまった産後クライシスから脱却したいと考えているのであれば、ぜひこれからご紹介する方法を検討してみてください。

育児や家事の分担を決める

育児や家事の分担を決めてお互いに助け合える仕組みを作ることは検討に値します。

女性からすると「そのくらい、言わなくても気を遣って手伝ってよ」と思ってしまうかもしれませんが、口に出して言わなければ伝わらないのが普通です。

そのため、内心で思っていることは口に出して伝えましょう。例えば、「おむつ変えと授乳は私がやるから、お風呂に入れることと育児用品の買い出しはあなたがやってね」というように明確に指示を出してあげたほうが夫も協力しやすいです。

あなたにしかできないことはあなたが担当し、それ以外で手伝えそうなことはあなたから明確に指示して協力してもらいましょう。

冷静に話し合う場を設ける

夫に対して無神経に愚痴をこぼし続ければ、夫婦の仲はだんだんと険悪なムードになってしまうことは十分あり得ます。

夫からすれば、家族のために頑張って働いて疲れて帰ってきているのに、妻に毎日イライラを一方的にぶつけられたらさすがに嫌気がさしてしまうということは理解できないことではないはずです。

しかし、夫婦関係をいたずらに悪化させることは、いずれの配偶者にとっても本意ではないはずです。このような不本意な事態を回避するためには、冷静な状態で意見交換を頻繁に行うことです。

この話し合いの場では言いたいことを好きなだけ言い合ってもいいけれど、その後はすべて水に流す』などとルールを決めておくと、翌日からの険悪ムードを防げるかもしれません。

お互いに完璧を求めない

理想はあるかもしれませんが、お互いに完璧を求めることはやめましょう。夫も妻も、完璧な人間ではありません。まして、父親として、母親としては当然、初心者ですよね。

60点の及第点だったら、よしとする!」くらいに緩く考えておけば、夫もプレッシャーを感じることなく手伝いをしやすくなります。同じく妻も育児・家事が100点満点ということはまずありませんので、夫側も寛容な気持ちを持って接する必要があるでしょう。

段々と数をこなすうちになれてきて、理想の形ができあがっていくので焦らず少しずつ進んでいきましょう。

精神的、肉体的に健康でいる

人間ですので、精神的にも、肉体的にも疲れてくれば、どうしても相手の些細な言動・行動にイライラを感じてしまうこともあるでしょう。意味もなく当たってしまうこともあるかもしれません。

個々人の生活スタイルの問題もありますので一概にはいえませんが、積極的に睡眠時間を確保することで体調を整えることも検討するべきです

夫婦で協力して一人だけの時間を作らせてもらい、リラックスできる時間を設けるようにすれば、心身ともに健康でいられて夫婦の関係も良くなっていくかもしれません。

少しのことでも感謝する

相手に期待をし過ぎないようにしてみましょう。過剰な期待は相手にとってはプレッシャーとなりますし、これが実現できなかったことについての落胆も大きくなってしまいます。過剰な期待がなければ、何かをしてもらえると素直に感謝できるようになるかもしれません。

ほんの少しのことでも「ありがとう」「助かったよ」と言ってあげれば、相手も報われた気持ちとなり「もっと何かしてあげたいな」と思ってくれるかもしれません。

お互いがお互いにきちんと感謝の気持ちを伝えていれば、関係が悪化していくことは防げるかもしれません。

「今日も働いてきてくれてありがとう」「今日もおいしいご飯を作ってくれてありがとう」など、1日1回は、相手に「ありがとう」と伝える習慣をつけることも検討に値します。

家事代行などの手を借りる

どうしても自分の力だけでは子育てや家事が難しいと感じたら、無理せず家事代行などの外部のサービスを利用してみるのはいかがでしょうか。

外で働いている母親は家に帰ってから家事や育児をすべてこなすのは無理という場合も当然あります。また、専業主婦でいても体調の関係で満足に家事育児ができないときもあるでしょう。

そのようなときは、夫婦で相談し、うまく家事代行サービスを活用していくことをおすすめします。

第三者に話を聞いてもらう

不満や愚痴を心にためておくことが一番精神的によくありません。不満がたまっていった結果、いつか爆発して勢いで離婚してしまうということも想定に難くありません。

親や親しい友人、ママ友などに、定期的に愚痴を聞いてもらうことも精神衛生上良いかもしれません。明確なアドバイスがもらえなくても、愚痴を聞いてもらうだけで気持ちが楽になるはずです。

特に、外で仕事をしていない専業主婦の場合、常に子供と二人っきりで話ができるのは夫だけなので、第三者と話をするだけでも気分転換になることも考えられます。

専門家に相談する

夫婦関係の悪化が進み、話し合いもままならないような場合は、専門家に相談することも考えましょう。

夫婦カウンセラーなどの専門家も利用できますし、わざわざそのような専門家に相談するのは抵抗があるようであれば、お子さんの検診の時などに産婦人科の先生に相談してもいいでしょう。

専門家からのアドバイスによって、効果的な解決方法が見つかるかもしれません。

参考:夫婦カウンセリングのメリットと料金相場|お悩み例・解決例まとめ

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産後クライシスが原因で離婚する場合に知っておくべきこと

もう改善不可能という段階になってしまっていたら、離婚をするのもありかもしれません。ここでは、産後クライシスを理由として離婚する場合、事前に知っておくべきことをご紹介します。

そもそも産後クライシスを理由に離婚できるのか

まず、そもそも産後クライシスを理由に離婚できるのかどうかという点ですが、相手が離婚に同意すれば離婚することは可能です。しかし、相手が離婚に反対している場合は、産後クライシスのみを理由に直ちに離婚が認められる可能性は低いと考えられます。

相手が離婚を拒否している場合に、裁判所の判決により離婚するためには法定の離婚事由に該当すること、当該事由が重大であって離婚が相当であることという2つのハードルを超える必要があります。

「産後クライシス」というような学術的な概念は存在しませんので、当然、これが直ちに法定離婚事由とはなりません。また、産後夫婦関係がうまくいかなった程度では、法定離婚事由があると認定される可能性は極めて低いです。

したがって、「産後クライシス」のみでは一方的な離婚請求は難しいということは留意して下さい。

慰謝料は請求できるのか

よく、離婚する際は慰謝料問題が一緒についてくると考えている方がいますが、慰謝料請求は必ずできるものではありません。

慰謝料は、相手に違法な権利侵害行為がありこれにより法的保護に値するような精神的な苦痛が生じた場合に支払われる賠償金のことです。したがって、離婚すれば当然支払われるようなものではありません。

そもそも、産後クライシスによる離婚は困難ですし、産後クライシスの原因がいずれか一方のみにあるということも考えにくいです。加えて、産後クライシス=違法な権利侵害という認定も考えにくいです。

そうすると、「産後クライシス」を理由に離婚する場合でも慰謝料請求は難しいと考えておいた方がいいでしょう。

もっとも、産後の夫婦関係において、一方当事者に明らかに違法な権利侵害があり、これが夫婦関係悪化の原因を作り、離婚を余儀なくされたというようなケースであれば、慰謝料請求はあり得るかもしれません。

決めておくべき事は何なのか

離婚の際に決めておくべき事はたくさんありますが、最低限、以下のことは決めておき、離婚協議書にまとめておくべきでしょう。

①親権をどちらにするのか

参考:専業主婦が離婚時に子供の親権者となる基準と取り方

②面会交流はどの頻度でどこで行うのか

参考:面会交流を一方的に拒否するリスク|面会交流の拒否を認めてもらう方法

④財産分与はどうするのか

参考:離婚の財産分与が相談できる法律相談窓口一覧と弁護士の解決事例

参考:離婚時の財産分与の分け方と多くの財産を獲得する方法

⑤離婚成立までの婚姻費用はどうするのか

参考:別居時の生活費を請求しよう|相場を確認した上で婚姻費用を請求する方法

まとめ

産後、急に夫婦の仲が悪化し、離婚の2文字が頭をよぎる方は一定程度はいるのかもしれません。「一緒にやっていけない」と思う相手とずっと一緒にいることはあなた自身にとっても不幸であることもあるかもしれません。

しかし、短絡的に離婚を選択するのが良いかと言われれば、そこは慎重に検討するべきです。一度冷静になってから、離婚した方がいいのか、やり直した方がいいのか、見極めたうえで今後の身の振り方を検討すべきです。

世間には、出産後に悪化した夫婦仲を改善し、離婚の危機を乗り越えている夫婦もたくさんいます。離婚したくない方は早めの対策が大切になりますので、ここでご紹介した離婚を回避する方法を実践していただければ幸いです。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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編集部

本記事はベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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