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元夫と一刻も早く離婚したかったあまり、子どもの養育費の取り決めをせずに離婚した方もいるでしょう。
令和3年度の厚生労働省の調査によると、離婚した夫婦で養育費の取り決めをしていると回答した割合は全体の46.7%と、半数以上の家庭は養育費の取り決めをせずに離婚していることがわかります。
しかし中には、離婚後の生活が想像以上に苦しく、元夫に対してこれまでの養育費を遡って請求したいと考えている方もいるかもしれません。
結論からお伝えすると、離婚時に取り決めをしていない養育費をあとから遡って請求するのは困難です。
しかし、方法次第では請求できる可能性もあります。
本記事では、取り決めをしなかった養育費を遡って請求する方法について解説します。
ご自身とお子さんの今後の生活を守るために、ぜひ参考にしてください。
離婚時に取り決めをしなかった養育費に関しては、遡って請求するのは難しいでしょう。
養育費の支払い基準時は原則「実際に請求したとき」です。
仮に、養育費を請求したにも関わらずこれまでに一切の支払いがないのであれば、請求時以降の支払いを求めることは可能です。
しかし、これまで元夫に対して養育費を請求したことがない場合、遡っての請求は困難だといえます。
家庭裁判所の実務でも、取り決めをしていなかった過去の養育費の請求が認められたケースは、ほとんどないようです。
お子さんがいるのであれば、養育費の取り決めをしてから離婚したほうが、今後の生活の不安を減らせるでしょう。
取り決めなしの養育費を遡って請求できない理由には、どのようなものがあるのでしょうか。
具体的な理由を2つ解説します。
取り決めなしの養育費を遡って請求できない理由1つ目は、過去に養育費なしでも生活を送れていた実績があるからです。
そもそも養育費とは、子どもの教育や生活に関わる費用のことを意味します。
子どもの教育費・生活費は毎月発生する費用ですし、本来であれば費用が発生した時点で父母の両名が分担して支払うものです。
過ぎてしまった期間の養育費を今支払ったとしても、過去の子どもの生活を支えることはできません。
そして、養育費なしでも生活ができていたのに過去分まで遡って請求されるのは、非監護親にとってみれば理不尽なことだともいえます。
養育費の支払いがないことで困窮した生活を送っていたとしても、生活を送れていたという事実には変わりありません。
そのため、取り決めていなかった養育費を遡って請求するのは難しいでしょう。
取り決めなしの養育費を遡って請求できない理由2つ目は、養育費が多額の場合は義務者の負担が大きくなるからです。
養育費を支払う側のことを「義務者」、支払いを受ける側のことを「権利者」といいます。
養育費を支払っていなかった期間が長期に及ぶ場合、請求額は高額になるでしょう。
離婚後数年経ったあと、突然多額の養育費を請求されては義務者の負担が大きくなります。
そもそも経済的に余裕が無ければ支払いは困難なうえ、現実的ではありません。
取り決めなしの養育費をあとから請求したいと考えているなら、早めに行動に移しましょう。
基本的に、取り決めなしの養育費を遡って請求することは困難です。
しかし場合によっては、遡って養育費を受け取れる可能性もあります。
ここからは、取り決めなしの養育費を遡って請求できる可能性がある3つのケースを紹介します。
養育費を遡って請求できる1つ目のケースは、交渉で義務者が支払うことを了承した場合です。
取り決めなしの養育費を請求することはできないとされていますが、これはあくまで家庭裁判所の実務の話です。
養育費は夫婦の合意で決められるものなので、交渉して義務者が支払いを了承すれば、養育費の支払ってもらうことができます。
支払いの合意を得られたら、合意内容を公正証書などの書面に残しておきましょう。
しかし、さまざまな事情で離婚に至った元夫に対し、離婚後に養育費を請求しても、支払いに応じてくれる可能性は低いかもしれません。
養育費は請求時点から支払いを求めることができるので、なるべく多くの養育費を獲得するためにも早めに交渉を始めましょう。
養育費を遡って請求できる2つ目のケースは、事情を考慮し養育費を支払う必要があると認められる場合です。
家庭裁判所では、父母の経済状況や子どもの人数、年齢などを総合的に見て養育費の支払いが妥当かを判断します。
権利者の現在の生活状況が著しく悪く、一方義務者に経済的余裕がある場合は、事情を考慮して過去の養育費の支払いが認められた裁判例もあります。
しかし基本的には、取り決めなしの養育費は請求できないというのが家庭裁判所の考えです。
支払いが認められるケースは、非常に稀だといえるでしょう。
養育費を遡って請求できる3つ目のケースは、父親の認知を求めているなど、養育費を請求できない事情があった場合です。
実の親であれば、子どもの扶養義務があります。
しかし、父親が子どもを実子だと認めていない場合は養育費を支払う法的根拠に乏しく、養育費の請求はできません。
そのため、養育費請求の前に、父親に対して子どもの認知を求めることになるでしょう。
裁判手続きを経て認知請求が認められたら、養育費の請求が可能です。
過去の判例によると、認知した時点からではなく、出生時にまで遡った養育費の請求が認められたケースもあります。
子どもの養育費をすぐに請求できなかったやむを得ない事情がある場合は、過去に遡っての請求が認められるかもしれません。
養育費の取り決めなしで離婚した場合は、早めに家庭裁判所へ養育費請求調停を申し立てましょう。
基本的に養育費は、請求した時点から支払いを求めることができます。
調停を申し立てる場合は、基本的に調停を申し立てた日の属する月が養育費の支払い開始時期となるのです。
取り決めをしておらず、当事者での話し合いも困難であれば、早めに調停を申し立てましょう。
養育費調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。
子どもひとりにつき1,200円の収入印紙、各家庭裁判所が定めた郵便切手、申立書や添付書類を裁判所へ提出しましょう。
なるべく多くの養育費を獲得したいのであれば、早めの行動がおすすめです。
調停手続きに不安がある方は、弁護士に相談しましょう。
離婚時に取り決めをしなかった養育費を遡って請求するのは、非常に困難です。
しかし、元夫との交渉で支払いの合意が得られた場合や、やむを得ない事情があった場合などは、遡った請求が認められるケースもあります。
とはいえ、かなり稀なケースだともいえるので、やはり離婚時には養育費の取り決めをしておいたほうが安心です。
元夫に養育費を請求したい、未払い養育費を回収したいなど、養育費に関する疑問や悩みは弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士に相談すれば、適切な養育費の額を算定して相手と交渉を進めてくれます。
もし交渉がまとまらなくても弁護士に依頼していれば、養育費請求調停にも対応してもらえます。
養育費は、お子さんの生活を守るためには欠かせないお金です。
大切な子どものためにも、早めに弁護士へ相談しておきましょう。
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