「慰謝料」が得意な弁護士に相談して悩みを解決!
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妊娠や中絶をめぐる問題で精神的に深く傷つき、「相手に慰謝料を請求できないだろうか」と悩んでいる方は少なくありません。
また、逆に相手から慰謝料を請求されて、どう対応すべきか困っている方も多いです。
中絶に対する慰謝料の相場は100万円前後ですが、金額や請求が認められるかどうかは状況によって異なります。
たとえば、未成年同士の妊娠や不倫関係での中絶の場合、年齢や関係性だけでは慰謝料請求は難しく、相手に具体的な落ち度があったかどうかが重要になります。
この記事では、中絶や妊娠に関連する慰謝料の相場や請求できるケース、実際の判例、請求方法などをわかりやすく解説します。
また、未成年の場合の注意点や、相手から慰謝料を請求されたときの対応方法についても紹介しています。
妊娠や中絶に関して悩みを抱えているなら、ぜひ最後までご覧ください。
望まない妊娠や中絶による慰謝料をもらいたい方へ
中絶に対し男性側に攻撃的な態度をとられ精神的苦痛を負ったため、中絶費用や慰謝料を請求したいと悩んでいませんか?
結論からいうと、望まない妊娠や中絶の慰謝料に関する問題は弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットを得ることができます。
- あなたのケースで慰謝料を請求できるかがわかる
- どれくらいの慰謝料を請求できるかがわかる
- 慰謝料以外で請求できる費用がわかる
- 依頼すれば、相手に逃げられるリスクを避けられる
- 依頼すれば、男性との面倒なトラブルを避けられる
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妊娠し中絶した場合の慰謝料の相場は100万円前後
妊娠・中絶における慰謝料の相場は、個別の事情により50万円から300万円程度とされており、実際には100万円前後となるケースが多いです。
慰謝料の金額は、妊娠の経緯や中絶の決断までの流れ、男性の対応、女性が受けた心身の苦痛などを総合的に見て決まります。
特に、男性側が責任を逃れようとしたり、不誠実な態度を取った場合は、慰謝料が高くなる傾向にあります。
たとえば、中絶を強要されたり、話し合いに応じてもらえなかったケースでは、慰謝料の相場は50万〜150万円程度。
さらに、婚約中に妊娠を理由に一方的に婚約を破棄された場合は、200万〜300万円の高額な慰謝料請求が命じられたケースもあります。
中絶に対し慰謝料請求できる可能性がある5つのケース

中絶に対する慰謝料請求は、男性の行為が不法行為にあたる場合に認められます。
女性の人権や尊厳を傷つけたとして、慰謝料が認められるケースを5つ紹介します。
妊娠や中絶に対し男性が相手に配慮すべき義務を怠った場合
妊娠や中絶において、男性が女性に対して配慮すべき義務を怠った場合、その行為が不法行為とみなされ、慰謝料請求の対象となる可能性があります。
性行為は男女の共同行為であり、その結果生じる妊娠や中絶の負担も双方が分担すべきです。
それにも関わらず、男性が話し合いに応じなかったり、攻撃的な態度をとったりして女性に精神的な苦痛を与えた場合は、女性の権利や利益を侵害する行為とみなされる可能性があります。
具体的には、以下のような行動が配慮すべき義務を怠ったと見なされ、慰謝料を請求できる可能性が高いです。
- 「産むなら一人で産んでほしい」と告げて話し合いに応じない
- 妊娠を告げた後に連絡を絶つ
- 妊娠に関する話し合いで攻撃的な態度を取り続ける
強姦された場合
強姦や準強姦など、同意のない性行為によって妊娠し中絶を余儀なくされた場合は、加害者の男性に対して慰謝料を請求することができます。
強姦は、女性の人権や尊厳を深く傷つける、重大な違法行為です。
一般的に、強姦による慰謝料の相場は50万円から200万円ほどですが、妊娠・中絶といった事情が加わることで、さらに高額になることも多いです。
たとえば、強姦によって妊娠し、中絶手術によって大きな心身の負担を受けた場合には、200万円を超える慰謝料が認められたケースもあります。
強要や暴力による中絶の場合
女性が出産を望んでいたにもかかわらず、男性の暴力や脅迫によって中絶を強いられた場合は、違法行為とされ、慰謝料を請求できる可能性があります。
出産するかどうかを最終的に決めるのは女性であり、それを暴力や脅しで妨げることは重大な権利侵害です。
このような行為は民事上の慰謝料請求だけでなく、刑事事件として強要罪などに問われる可能性もあります。
具体的には、以下のような行為が該当します。
- 「中絶しないと殴る」と脅す
- 実際に暴力をふるって中絶させる
- 出産した場合は経済的に一切支援しないと脅す
- 暴言や精神的な圧力で中絶に追い込む
特に、DVが関係するような悪質なケースでは、慰謝料が50万円から300万円程度になることも多いです。
避妊していると嘘をつかれた場合
男性が「避妊している」と嘘をついて性行為を行い、その結果として女性が妊娠し中絶に至った場合、慰謝料を請求できる可能性があります。
避妊に関する嘘は、女性が「妊娠しない」と信じていた状況を裏切るものであり、望まない妊娠や中絶という深刻な結果を招きます。
具体的には、以下のような嘘を男性がついた場合に慰謝料を請求できる可能性が高いです。
- コンドームを使っていると偽る
- 「不妊手術を受けた」と嘘をつく
- 「パイプカット済み」と虚偽の説明をする
- 避妊具をつけるふりをして実際は使用しない
相手が既婚者であることを隠していた場合
交際相手が既婚者であることを隠して関係を続けた結果、将来を考えられなくなり中絶を選ばざるを得なくなった場合、慰謝料を請求できる可能性があります。
既婚の事実を隠し、あたかも独身であるかのように装って女性と性的関係を持つ行為は、女性をだまして重大な判断を誤らせる違法行為と見なされるからです。
具体的には、以下のようなケースが該当します。
- 結婚を考えていた相手が、妊娠後に既婚者だと判明した
- 独身だと嘘をつかれて交際し、妊娠を機に既婚だとわかった
- 既婚なのに隠したまま、将来を期待させる言動をしていた
なお、相手が既婚者であることを知っていた、または特に隠されていなかった場合は、不倫関係とみなされます。
相手に騙されたわけではなく、自分の意思で関係を持ったと判断されるため、違法行為とはならず、中絶に関する慰謝料は請求できません。
中絶による慰謝料が認められた裁判
裁判所は中絶という事実だけでなく、そこに至るまでの経緯や男性側の対応が不法行為と認められた場合に慰謝料の支払いを命じます。
判例では、男性の不誠実な対応や中絶の強要、婚約破棄などが女性に精神的苦痛を与えたとされ、こうした事情をふまえて慰謝料の金額が決められました。
以下では、実際に慰謝料が認められた判例を紹介します。
判例1:中絶に対する慰謝料請求事件
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概要
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A(女)がB(男)の子供を妊娠したにもかかわらず、産むか中絶するのかの具体的な話し合いは避け、判断を女性側にゆだねた。
その結果、やむを得ず中絶を選ばざるを得なかったという理由に慰謝料の請求をおこなった。
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判決
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114万2,302円の慰謝料の支払い
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裁判年月日
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平成21年 5月27日
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文献番号
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2009WLJPCA05278009
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判例2:慰謝料等請求事件
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概要
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交際中に妊娠したA(女)が中絶を選択せざるを得なかったにもかかわらず、B(男)は父親としての責任を果たさず、協力的な姿勢も見せなかった。
さらに、Bの攻撃的な言動によってAの精神的苦痛が深まり、その結果、Aは慰謝料などの損害賠償を求めた。
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判決
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慰謝料として37万1,465円の支払い
訴訟費用の10分の1の支払い
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裁判年月日
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平成27年 9月16日
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文献番号
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2015WLJPCA09168023
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判例3:中絶による高額な慰謝料請求事件
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概要
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被告による婚約の不当破棄・被告の子を妊娠した原告に対する冷たい対応などにより精神的損害等を被ったとし、慰謝料及び医療費を求めた。
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判決
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350万3,520円の支払い(婚約の不当破棄も考慮しこの金額となっています。)
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裁判年月日
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平成27年 7月31日
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文献番号
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2015WLJPCA07318020
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慰謝料以外に請求可能な費用

中絶に対する慰謝料とは別に、中絶手術やそれに関連する経済的負担についても、損害賠償として相手に請求することができます。
これらの費用は、男性の不法行為によって生じた損害と法律上の因果関係があると認められるためです。
具体的にどのような費用が請求対象となるのか、以下で詳しく解説します。
中絶手術の費用:8万円~40万円
中絶手術の費用は、妊娠週数によって大きく変わりますが、一般的には8万円から40万円程度が相場とされています。
また、性交渉や中絶が双方の合意による場合、相手に請求できる費用は原則として半額とされるのが一般的です。
ただし、女性側の精神的・肉体的・経済的な負担を考慮し、男性が全額を負担するケースも少なくありません。
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初期中絶(妊娠12週未満)の場合
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中期中絶(妊娠12~22週未満)
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費用
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8万円~20万円程度
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20万円~40万円程度
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入院
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日帰りが可能
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数日間の入院が必要
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体への負担
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比較的軽い
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体への負担が大きい
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中絶手術は原則として健康保険が使えず、費用は全額自己負担です。
手術費用は手術を受ける病院によっても費用は変動するため、事前に確認しましょう。
その他の中絶にかかる費用として考えられるもの
中絶に関連して発生した費用は、手術費用以外にも相手に請求できる可能性があります。
相手の不法行為が原因で生じた費用と判断されれば、損害賠償の対象となるためです。
その他の請求できる可能性がある費用
- 中絶手術前後の入院費
- 診察の際の交通費
- 妊娠による休業に伴う収入の減少(休業損害)
- 術前・術後の診察費用や検査費用
- 薬代
- 後遺症が残った場合の治療費や慰謝料
ただし、すべての費用が必ずしも請求できるわけではなく、状況に応じて判断されます。
請求を検討する際は、領収書や診断書、休業証明書など、実際に費用がかかったことを示す書類をきちんと保管しておきましょう。
中絶費用や慰謝料を請求する3つの方法

中絶に関する費用や慰謝料を相手に請求する方法には、「示談交渉」「民事調停」「裁判」の3つがあります。
まずは、当事者同士で話し合う示談交渉から始め、合意が得られない場合に民事調停や裁判へ進むのが一般的です。
このように段階を踏むことで、時間や費用の負担を抑えながら解決を図ることが可能です。
それぞれの方法について詳しく解説します。
①示談交渉で請求する
示談交渉とは、当事者同士が直接話し合い、慰謝料の金額や支払い方法などを決める手続きです。
裁判所を通さないため、スピーディーで柔軟な解決が期待できます。
示談の内容はすべて当事者の合意で決まるため、相手が同意すれば、中絶にかかった費用をすべて相手側に負担させることも可能です。
合意に至った場合は、後のトラブルを防ぐためにも「示談書(合意書)」を必ず作成しましょう。
交渉の方法としては、直接会って話し合うほか、電話やメールなどで進めることもできます。
ただし、自分で行うとなると相手に言い負けたり、有利な内容での合意が難しいため弁護士へ依頼することをおすすめします。
②民事調停で請求する
民事調停は、簡易裁判所において、調停委員という第三者が間に入り、当事者間の話し合いによる解決を目指す手続きです。
調停委員は中立の立場で双方の意見を聞き、専門的なアドバイスをするため、当事者だけでは感情的になりがちな場面でも冷静に話し合いを進めやすくなります。
また、当事者が直接顔を合わせることなく、調停委員を介して話し合いを進めることも可能です。
合意が成立すれば、その内容は「調停調書」にまとめられ、確定判決と同じ法的効力を持ちます。調停調書は、「債務名義」となるので、相手が調停での支払い約束を履行しなければ、強制執行も可能です。
③裁判で請求する
示談交渉や調停で解決しない場合の最終手段が裁判です。
裁判では、裁判官が双方の主張や証拠をもとに事実認定を行い、慰謝料の支払いが必要かどうかを法的に判断します。
訴訟では、中絶の強要や誠実さを欠いた対応といった不法行為があったことを、客観的な証拠によって立証する必要があります。
客観的証拠の具体例
- メールやLINEのやり取りの記録
- 電話や会話の録音データ
- 病院の診断書
裁判で慰謝料の支払いを命じる判決が出た場合、その判決には強制力があるため、相手が支払いに応じないときは、財産を差し押さえるなどの強制執行も可能です。
ただし、裁判は法律に基づく複雑な手続きが必要となるため、証拠の整理や主張の準備を含めて、弁護士に依頼するのが一般的です。
婚約中・事実婚だった場合の中絶と関係解消で請求できる慰謝料
婚約中や事実婚(内縁)関係で、相手の都合で中絶し、さらに一方的に関係を解消された場合、中絶に加えて婚約破棄や内縁関係の不当破棄についても慰謝料を請求できます。
正当な理由なく婚約や内縁関係を一方的に破棄する行為は、不法行為として扱われるからです。
たとえば、妊娠を伝えた途端に相手の態度が急に変わり、結婚の約束を取り消されたうえ、中絶をせざるを得なかったケースなどが該当します。
このような状況では、精神的苦痛はより大きいと判断され、慰謝料が高額になる傾向にあります。
内縁関係での中絶・婚約破棄の判例
内縁関係(いわゆる事実婚)にあった相手から一方的に関係を断たれ、その結果として中絶をせざるを得なかった場合、裁判所が慰謝料の支払いを命じた例があります。
これは、内縁が法律上の結婚とほぼ同じように保護されているためで、不当に関係を終わらせることは相手の権利を侵害する行為とみなされるからです。
特に、妊娠や中絶といった事情がある場合には、精神的なダメージが大きいため、慰謝料の金額にも影響します。
以下では、実際に婚約中や内縁関係にある中で、中絶や婚約破棄が起きたケースについて判例を紹介します。
判例1:不当な婚約破棄・中絶への慰謝料請求事件
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概要
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原告(女性)が被告(男性)との間で8年間の交際を経て婚約し、結納の準備を進め、妊娠していたにもかかわらず、理由も明確にせずに婚約の解消を申し出た。原告は中絶・婚約破棄に対し精神的苦痛を味わったとし、慰謝料を求めた事件。
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判決
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300万円の慰謝料の支払い
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裁判年月日
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平成21年 3月25日
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文献番号
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2009WLJPCA03258016
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判例2:人工中絶を迫り中絶に追い込んだ事件
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概要
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被告(男性)は、原告(女性)が妊娠すると、暗に人工妊娠中絶を迫るなどして、原告が中絶手術をせざるを得ない状況に追い込み、これにより原告は同手術をおこなった。また、被告は、原告に対して婚約を一方的に破棄したなどと主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案。
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判決
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55万円の慰謝料の支払い
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裁判年月日
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平成24年 5月16日
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文献番号
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2012WLJPCA05168006
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婚約破棄してきた相手への慰謝料が高額になるポイント
婚約破棄の慰謝料が高額になるポイントは、交際期間の長さ、結婚準備の進み具合、妊娠や中絶の有無、そして相手にどれだけ責任があるかです。
これらの要素を総合的に考慮して慰謝料額が算定されます。
妊娠や中絶は、女性にとって心身の負担が非常に大きいため、精神的な苦しみが強いと認められ、慰謝料の増額に繋がりやすいです。
慰謝料が高額になる具体例
- 交際期間が長かった
- 結婚式の準備がかなり進んでいた(式場の予約など)
- 結婚に向けて仕事を辞めた
- 妊娠や中絶を経験した
- 相手の浮気や暴力が原因で婚約が破棄された
未成年が中絶した場合に知っておくべき基礎知識
未成年者が中絶する場合は、成人とは異なる手続きや法律上の考え方があるため、注意が必要です。
例えば、未成年者の中絶には、親の同意に関する手続き上の問題や、慰謝料請求における年齢の影響など、特有の注意点が存在します。
また、中絶後の心身への影響についても、十分に理解しておく必要があります。
未成年の場合は親の同意がないと中絶は難しい
未成年者が中絶手術を受ける場合、原則として親の同意が必要です。
これは、母体保護法により中絶には「本人と配偶者の同意」が必要とされているものの、未成年者には通常配偶者がいないため、親の同意が必要とされるためです。
また、手術に伴うリスクや未成年者の心身への影響を考慮し、慎重な判断が求められることも親の同意が必要な理由の1つと言えます。
ただし、DVや虐待などの事情で親に相談できない場合は、児童相談所や医師、弁護士といった専門家に相談することで、例外的に親の同意なしで対応が検討されることもあります。
未成年の中絶という理由だけで慰謝料の請求は難しい
双方が未成年であっても、合意のうえで性行為をし、その結果妊娠や中絶に至った場合、「未成年だから」という理由だけで慰謝料を請求するのは難しいです。
慰謝料は、相手の違法な行為によって精神的な損害を受けた場合に請求できるものです。
双方が未成年で、かつ性行為に合意していた場合は、一方だけに法的な責任を負わせるだけの明確な理由がないため、慰謝料の請求は難しくなります。
たとえば、同じ年代の高校生同士が同意のもとで性行為をし、妊娠・中絶に至った場合、どちらか一方に慰謝料の支払い義務を認めることは通常ありません。
未成年の中絶に対する慰謝料が認められた判例
次の判例では成人男性に対して約189万円の支払いが命じられました。
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概要
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原告(当時15歳)が出会い系サイトで出会った被告(当時28歳)との性交渉により妊娠して堕胎し,精神的苦痛等を受けたとして,不法行為責任に基づく損害賠償請求を求める事案。
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判決
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189万1,629円の支払い
訴訟費用の3分の1の支払い
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裁判年月日
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平成25年12月19日
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文献番号
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2013WLJPCA12198014
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この判決で慰謝料が認められたのは、原告が未成年であったにもかかわらず、相手の成人男性が避妊を怠った点が大きな理由です。
成人は未成年を保護すべき立場にあるため、妊娠や中絶という結果を招いた場合には、より重い責任を問われやすくなります。
さらに、妊娠しても結婚や養育ができない関係であることを知りながら避妊をしなかった行為が不法行為と判断されました。
中絶後に後遺症が残る可能性がある
中絶手術には、身体的な合併症だけでなく精神的な後遺症が残る可能性があります。
身体面では、感染症、子宮の損傷、過度の出血などのリスクがあり、手術という医療行為である以上、一定の合併症が起こる可能性は理解しておかなければなりません。
精神面では、罪悪感や喪失感によって「中絶後遺症候群(PAS)」と呼ばれるPTSDの一種を発症し、以下のような症状が現れるケースがあります。
中絶は心身に大きな負担を与える可能性があるため、術後は医療機関や専門家によるサポートを受け、心身両面で適切にケアすることが大切です。
自己判断で中絶した場合に中絶費用・慰謝料は請求できる?
相手に相談せず自己判断で中絶した場合でも、中絶費用の分担を求めることは可能です。
これは、妊娠が双方の行為によって生じたものであり、中絶にかかる費用は原則として両者で負担すべきと考えられているためです。
ただし、慰謝料については事情が異なります。
慰謝料は精神的苦痛に対する賠償であるため、相手に暴力や脅迫、不誠実な対応といった不法行為がない限り、請求は認められません。
例えば、相手が話し合いに応じないなどの事情があり、やむを得ず一人で中絶を決めざるを得なかった場合には、後からでも中絶費用の支払いを求めることができます。
一方で、相手に落ち度がなく、連絡も可能な状況だったにもかかわらず、一方的に中絶を選択した場合には、慰謝料請求が認められる可能性は低いと考えられます。
配偶者に無断で中絶したら慰謝料を請求される?
婚姻関係にある夫婦の場合、妻が夫に無断で中絶手術を受けたときには、夫から慰謝料を請求される可能性があります。
中絶は原則として「配偶者の同意」が必要であり、夫の同意なしに中絶を行うことは、夫の父親になる権利や夫婦間の信頼を損なう不法行為とみなされるからです。
特に、妻が不倫で妊娠し、それを隠して中絶した場合、夫の精神的苦痛は大きく、慰謝料が認められる可能性が高くなります。
ただし、夫からのDVなど、配偶者の同意を得ることが極めて難しい事情がある場合には、例外となることもあります。
彼女から慰謝料や中絶費用を請求されたらどうする?
女性から中絶費用や慰謝料を請求された場合は、まず冷静に事実を確認し、誠実に対応することが大切です。
中絶費用については、法的に分担が認められる可能性がありますが、慰謝料は自分の行為が不法行為と認められる場合に限って支払義務が生じます。
請求額が不当に高い場合や、事実と異なる内容であれば、すぐに支払わず、まずは請求金額の根拠や法的な義務の有無を確認するようにしましょう。
また、不安な場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
支払う前に確認するべきこと
金銭を支払う前には、請求の前提となる事実関係をしっかり確認するべきです。
中には、虚偽の請求や勘違いに基づく請求もあるためです。
例えば、妊娠・中絶の事実や父子関係など、支払義務の前提となる重要な内容については、客観的な証拠を確認するようにしましょう。
確認しないまま支払いに応じると、後から事実と異なることが判明しても、お金を取り戻すのが難しくなることもあるので注意が必要です。
本当に妊娠しているのか
まずは、妊娠や中絶が事実かどうかを、客観的な証拠で確認しましょう。
中には、虚偽の妊娠で金銭を求めるケースもあるため、口頭の説明だけで支払うのは避けるべきです。
確認には、次のような書類が役立ちます。
これらの書類には病院名や日付が記載されており、妊娠や中絶の事実を証明する材料になります。
もし提示を拒まれた場合は、慎重に判断しましょう。
誰の子供か
妊娠が確認できても、自分が父親かどうか確信が持てない場合は、父子関係をはっきりさせる必要があります。
父親でなければ、中絶費用や慰謝料を支払う義務はありません。
疑いがあるのに支払ってしまうと、後から返金を求めるのが難しくなります。
たとえば、以下のようなケースでは自分が父親かどうか疑わしい状況といえます。
- 交際期間が短い
- 相手に他の交際相手がいた
- 妊娠時期と性交渉の時期が合わない
こうした場合は、正直に伝えて話し合い、必要なら出生前DNA鑑定も検討しましょう。
ただし、倫理面の配慮も大切なので、判断に迷うときは弁護士に相談するのがおすすめです。
慰謝料や中絶費用はどのくらい支払うのが相場?
合意の上での性行為による中絶では、男性に慰謝料の支払い義務は原則ありません。
一方で、中絶費用については男性が半額を負担するのが一般的です。
ただし、女性側の精神的・肉体的・経済的な負担を考慮して、男性が全額を負担するケースも多いです。
また、男性に以下のような不法行為があった場合には、50万〜300万円程度の慰謝料が発生する可能性もあります。
- 暴行や脅迫
- 避妊に関する嘘
- 既婚であることを隠していた
中絶後しばらく経った後に金銭を請求された場合|状況対処法
中絶から時間がたって金銭を請求された場合、まずその請求に法的な根拠があるかや、時効が過ぎていないかを確認しましょう。
損害賠償請求権には「消滅時効」という期間の制限があります。
この期間を過ぎると、相手は慰謝料を請求できなくなります。
また、中絶費用なのか慰謝料なのかなど、何に対する請求なのかによって、対応方法が異なるため、内容の正確な把握が必要です。
3年以上後に慰謝料・中絶費を請求された場合|証拠の提示をしてもらう
中絶から3年以上たって慰謝料や中絶費用を請求された場合は、時効が成立している可能性が高いため、まずは請求の根拠となる証拠を求めましょう。
民法では、不法行為による損害賠償請求は、被害者が損害と加害者を知ってから3年以内に行わないと時効で消滅すると定められています。
中絶の事実と相手を認識した時点から時効が進むため、3年を過ぎていれば支払う義務はなくなる可能性があります。
請求を受けたら、中絶時の領収書や診断書などの証拠の提示を求め、なぜ今になって請求するのかについても確認しましょう。
時効が成立していると判断した場合は、「時効を援用する」と伝えれば、支払う必要はなくなります。
中絶行為から派生する損害について慰謝料を請求された場合|相手が法的手段を取るまで待つ
中絶が原因で精神的な病気になったとして損害賠償を求められた場合は、根拠があいまいなら、相手が正式な手続きを取るまで支払いには応じない方が賢明です。
中絶と精神的な損害との因果関係を証明するのは、医学的にも法律的にも簡単ではなく、立証するのは請求する側の責任です。
根拠があいまいなまま支払うと、本来払う必要のないお金を負担することになりかねません。
たとえば、「中絶が原因でうつ病になって働けなくなった」と言われても、本当に中絶だけが原因とは限りません。
中絶を理由に精神的損害の賠償を求められた場合、相手に本気で請求の意思があるなら調停や訴訟を起こすはずです。
実際に法的手続きがあるかを見てから対応するようにしましょう。
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妊娠の慰謝料に関するよくある質問
妊娠や中絶に関する慰謝料の問題では、時効の有無、離婚との関係、別れた後に請求できるかなど、さまざまな疑問が出てきます。
これらの問題は、民法に定められた時効のルール、不法行為にあたるかどうか、親子関係をどう証明するかといった複雑な法律の知識が関わってくるため、正しい理解が必要です。
以下では、妊娠や中絶に関する慰謝料について、よくある質問をQ&A形式でわかりやすく解説します。
妊娠中の離婚で慰謝料は請求できますか?
妊娠中に相手の不貞行為やDVなどが原因で離婚に至った場合、慰謝料を請求できます。
妊娠していることが理由で慰謝料請求が制限されることはありません。
離婚原因を作った有責配偶者に対しては、妊娠の有無にかかわらず慰謝料を請求できるためです。
むしろ、妊娠というデリケートな時期に受けた精神的苦痛は大きいと判断され、慰謝料が増額できる可能性があります。
例えば、夫の不倫が発覚し、妊娠中に離婚を決意した場合、不倫に対する慰謝料を請求できます。
慰謝料や中絶費用の請求に時効はありますか?
はい、慰謝料や中絶費用の請求には時効はあります。
慰謝料や中絶費用の請求権は、原則として「損害および加害者を知った時から3年」で時効により消滅します。
中絶に関する慰謝料の請求は、不法行為に基づく損害賠償にあたるため、民法第724条の時効が適用されます。
多くの場合、中絶した時点で損害と相手を認識していると考えられるため、そこから3年が時効期間となります。
たとえば、2025年11月13日に中絶をした場合、慰謝料や費用を請求できるのは原則として2028年11月12日までです。
別れた後に彼女の妊娠が発覚した場合、慰謝料を請求される可能性はありますか?
別れた後に元交際相手の妊娠が発覚した場合でも、中絶に至った経緯によっては中絶費用や慰謝料を請求される可能性があります。
別れた後であっても、交際期間中の性行為によって妊娠したことが明らかであれば、その結果に対する責任は残るからです。
妊娠を知った後に話し合いに応じなかったり、不誠実な態度を取った場合には、慰謝料の請求につながる可能性もあります。
たとえば、別れて数週間後に「妊娠した」と連絡が来た場合には、まずは冷静に事実確認を行いましょう。
もし妊娠が事実であれば、中絶費用の負担や今後の対応について誠実に話し合うことが大切です。
子供を妊娠したら彼氏に逃げられたのですがどうすればいいですか?
妊娠を伝えた途端に彼氏に逃げられた場合は、まず弁護士に相談し、認知や養育費、必要であれば慰謝料の請求も検討しましょう。
子どもの父親には、生まれてくる子を扶養する義務があり、逃げたとしても、その責任がなくなるわけではありません。
法的な手続きを踏むことで、父親としての責任を追及することが可能です。
たとえば、弁護士に依頼すれば、職務上の権限で相手の住民票を調査し、現在の住所を特定できる場合があります。
住所が判明すれば、書面で正式に請求をおこなったり、家庭裁判所で認知や養育費を求める手続きを進めたりすることができます。
交際相手が「胎児の父親は自分ではない」と主張する場合はどうすればいいですか?
家庭裁判所に認知調停を申し立て、DNA鑑定で父子関係を確認しましょう。
相手が否定しても、DNA鑑定という客観的な証拠で認知を求めることができます。
たとえば、相手が「自分の子ではない」と主張して養育費を払わない場合でも、弁護士を通じて調停を申し立て、DNA鑑定で認知が成立すれば養育費の請求が可能です。
調停の申し立てをスムーズに進めるために、交際の記録やメッセージなどの証拠をそろえて、早めに弁護士へ相談しましょう。
まとめ
妊娠や中絶に関する慰謝料の請求は、「中絶をした」という事実だけでは、認められにくいのが現実です。
慰謝料が認められるかどうかは、暴力や強制的な中絶、嘘や不誠実な対応など、相手に不法行為があったかが重要な判断材料になります。
慰謝料の金額は、おおよそ50万円から300万円程度が目安とされていますが、実際には100万円前後となるケースが多いです。
また、慰謝料とは別に、中絶手術にかかった費用などの実費については、妊娠が二人の合意による結果であれば、相手に費用の一部を負担してもらうよう請求することができます。
ただし、妊娠や中絶の問題は、法律の知識だけでなく感情面の対立も含んでいるため、とてもデリケートです。
当事者だけで話し合おうとすると、かえってトラブルが大きくなることも多いので、一人で悩まず、早めに弁護士など専門家に相談することをおすすめします。