離婚時の財産分与に税金はかかる?課税されるケースと節税対策を解説
離婚に伴う財産分与では、原則として贈与税や所得税などの税金は課税されません。
ただし、本来の財産分与の目的を逸脱している場合には、贈与税が課税されます。また、金銭以外の資産を分与する際には、譲渡所得税が課税されることがあります。
どんな財産分与をおこなっても税金がかからないわけではないため、注意が必要です。
この記事では、財産分与で税金がかかるケースと節税対策について解説します。受け取る側と分与する側、それぞれどんな税金が発生するのか、税負担を抑えるにはどうすればいいのかを理解する一助になれば幸いです。
離婚するときの財産分与に税金はかかる?
財産分与により財産を受け取る側には、原則として贈与税や不動産取得税はかかりません。一方、分与する側は、金銭以外の財産を給付した場合、譲渡所得税が課税されることがあります。
【受け取る側】贈与税や不動産取得税は原則としてかからない
財産を受け取る側には、原則として贈与税や不動産取得税はかかりません。相手方から贈与を受けたものではないからです。
財産分与は、夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障を目的としています。したがって、財産分与請求権に基づいて給付を受けたものについては、原則として贈与税はかかりません。
不動産を受け取った場合も、原則として不動産取得税は課税されません。形式的に財産権の移転が行われても、夫婦共有財産の帰属を確認するにすぎず、実質的な財産権の移転が生じないと解されています。
【分与する側】譲渡所得税が課税される場合がある
金銭以外の財産を分与した場合、その種類によっては、資産の譲渡として分与した側に譲渡所得税がかかることがあります。
所得税法の課税対象となる「資産の譲渡」とは、資産を移転させるすべての行為です。財産を引き渡す際に対価が発生しているかどうかは関係ありません。
所得税法の「資産の譲渡」の対象となる資産の例は、以下のとおりです。
- 不動産
- 書画骨董、絵画
- 宝石
- 自動車
- 船舶
- ゴルフ会員権
- 特許権、著作権 など
財産分与時の時価が取得時の価額より高ければ譲渡所得税および住民税が課税され、逆に下がっていれば課税されません。
財産を受け取る側に例外的に税金がかかる4つのケース

財産を受け取る側には、原則として贈与税や不動産取得税は課税されません。ただし、例外的に贈与税や不動産取得税がかかるケースがあります。また、不動産を受け取った後には、登録免許税や固定資産税が課税されます。
受け取った財産が多すぎる場合|贈与税
分与された財産の額が、夫婦の共有財産に比べて明らかに多すぎる場合には、贈与税が課税されます。
財産分与は、婚姻中に協力して築いた財産を公平に分ける制度であり、通常は半分ずつが目安とされます。
そのため、特別な事情がないにもかかわらず、一方が大半の財産を受け取ると、分与ではなく贈与と判断される可能性があります。
受け取った財産が多すぎるかどうかは、以下の要素を総合的に考慮して判断されます。
- 婚姻期間
- 収支状況
- 生活水準
- 職業
- 相手方の財産蓄積に対する寄与の程度
- その他一切の事情
上記を考慮してもなお多すぎると言えるような場合には、多すぎる部分に贈与税が課税されます。
税金逃れのために離婚したと認められる場合|贈与税
贈与税や相続税を免れるために、形式的に離婚したと税務署に判断された場合は、贈与税が課税されます。
真に離婚する意思がなく、生活状況においても離婚の実態が認められない場合は、夫婦間における贈与と評価できるためです。
この場合は、受け取った財産の全額に贈与税が課税されます。悪質な場合は、延滞税や重加算税、不申告加算税などが加算される可能性もあります。
不動産を受け取って登記をした場合|登録免許税・固定資産税
財産分与で取得した不動産の名義変更(所有権移転登記)を行う際には、登録免許税の納付が必要です。
財産分与を原因とする登録免許税の税額は、以下の計算式で求めます。
| 固定資産税評価額(千円未満切り捨て)×2%=税額(百円未満切り捨て) |
通常、分与する側と受け取った側が連帯して登録免許税の納税義務を負いますが、協議により負担者や割合を決めても差し支えありません。
また、財産分与により不動産を取得した翌年以降は、固定資産税や都市計画税の納付も必要です。
固定資産税および都市計画税は、毎年1月1日時点の不動産の所有者に納税義務が発生します。協議や調停で合意できる場合には、これらの税金を日割り計算するのが一般的です。分与後の日数に対応する税金は、不動産を受けた側が納めるものとします。
慰謝料として金銭の代わりに不動産を受け取った場合|不動産取得税
慰謝料として金銭の代わりに不動産を受け取った場合には、不動産取得税が課税されます。
慰謝料は、精神的苦痛に対する損害賠償であり、財産分与とは性質が異なります。そのため、慰謝料として不動産を取得すると、通常の不動産取得と同じ扱いになり、不動産取得税の対象です。
財産分与と慰謝料を明確に区別せずに不動産を受け取ると、思わぬ税負担が生じることがあります。取り決めをする際には、名目や合意内容をはっきりさせておきましょう。
財産を分与する側に課税されることがある譲渡所得税とは?
一方、金銭以外の資産を分与する側には、譲渡所得税が課税されるケースがあります。具体的に、どのようなケースで譲渡所得税が課税されるのか、計算方法とともに解説します。
取得時より価値が上がった不動産や株式を渡す場合に発生する

取得時より価値が上がった不動産や株式などを分与するときは、譲渡所得税が課される可能性があります。
分与時における時価が取得時よりも上がっている場合、その差額は財産を分与する側に利益(譲渡所得)が発生したことになるからです。
具体的には、以下の計算式で求めた額がプラスになる場合には、その額に対して譲渡所得税が課税されます。

取得費がわからない場合は、譲渡収入金額の5%相当額を取得費とすることができます。また、実際の取得費が譲渡収入金額の5%を下回る場合も、この規定を適用できます。
金銭以外の財産を分与する場合には、譲渡所得が生じるかどうかを確認し、課税が生じる場合には納税資金を準備しておきましょう。
譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税の額は、以下の計算で求めます。
| 税額 = 譲渡所得の金額 × 税率 |
不動産の譲渡所得は、所有期間により異なる税率が適用されます。財産を分与(譲渡)した年の1月1日において、所有期間が5年以下である場合には短期譲渡所得、5年を超えている場合には長期譲渡所得です。
それぞれの税率は、下表のとおりです。
| 区分 | 所得税(※) | 住民税 | 合計 |
| 短期譲渡所得 | 30% | 9% | 39% |
| 長期譲渡所得 | 15% | 5% | 20% |
(※)2013年から2037年まで、上記のほか復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%が課税されます。
なお、所有期間が10年を超える居住用財産を分与した場合で、一定の要件を満たすときは、通常の長期譲渡所得の税率よりも低い下表の税率の適用を受けられます。
| 長期譲渡所得の金額(※1) | 所得税(※2) | 住民税 | 合計 |
| 6,000万円以下の部分 | 10% | 4% | 14% |
| 6,000万円越えの部分 | 15% | 5% | 20% |
(※1)居住用財産譲渡の3,000万円の特別控除後の金額
(※2)2013年から2037年まで、上記のほか復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%が課税されます。
財産分与の税金を抑えるための5つのポイント
離婚に伴う財産分与について、課税を回避または軽減することが可能です。具体的なポイントを5つ解説します。
分与額が社会通念上相当な範囲に収まるよう調整する
贈与税の課税リスクを避けるためには、分与額を社会通念上相当な範囲に収まるよう調整することが大切です。財産分与の割合を原則である2分の1を目安とし、極端に偏った分配にならないようにしましょう。
もっとも、夫婦の一方の特別の努力や能力によって高額の資産が形成された場合など、2分の1ルールを修正すべき特段の事情もあり得ます。そのような場合には、後の税務調査に備え、分与対象財産の形成の経過や寄与・貢献の経過がわかるような資料を残しておきましょう。
居住用不動産は離婚後に分与して3,000万円控除を活用する
居住用不動産は、離婚後に分与することで、最高3,000万円の特別控除の特例を利用できる可能性があります。
以下の3つの要件を満たすときは、居住用不動産の所有期間の長短に関わらず、最高3,000万円まで特別控除の適用を受けられます。
- 居住用財産を譲渡したこと
- 譲渡した年の前年または前々年において、この特例または居住用財産を譲渡等した場合の他の特例の適用を受けていないこと
- 譲渡した相手が配偶者、直系血族、その他特別の関係がある者ではないこと
特例の適用を受けるためには、翌年3月15日までに確定申告が必要です。申告を忘れると控除を受けられなくなるため、離婚後の確定申告時期には忘れずに手続きを行いましょう。
婚姻期間が20年以上あれば居住用不動産の離婚前の贈与を検討する
婚姻期間が20年以上の場合には、離婚前に居住用不動産を贈与することも検討してみましょう。
以下の3つの要件を満たす場合には、課税価格から2,110万円(基礎控除110万円を含む)の配偶者控除の適用を受けられます。
- 婚姻期間20年経過後に贈与が行われたこと
- 贈与財産が国内の居住用不動産または居住用不動産の取得資金であること
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与により取得した国内の居住用不動産での居住を開始し、継続して住む見込みがあること
特例を利用すれば、2,000万円相当の不動産は離婚前に贈与して非課税とし、残りは離婚後に財産分与するという方法も可能です。
ただし、離婚直前に離婚を前提として贈与した場合は、実質的には離婚に伴う財産の受け渡しとして配偶者控除の適用外となる可能性もあります。特例の利用を検討する場合は、税務に詳しい弁護士に相談してください。
各種控除制度を活用する
居住用不動産を分与するときは、状況に応じて以下の特例も検討できます。
| 制度 | 制度の概要 |
| 特定の居住用財産の買換えの特例 | 10年以上住んでいたマイホームを買い換えた場合に、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を繰り延べられる |
| 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 | 財産分与で5年以上所有していたマイホームを買い換えた場合に発生した損失を、一定の要件のもと、翌年以後3年間に繰越控除できる |
| 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 | 5年所有していたアンダーローンのマイホームを分与したときの譲渡損失を、翌年以後3年間に繰越控除できる |
特例は併用できないものもあるため、どの特例を使うのが最も有利かは個別の状況によって異なります。特例の利用を検討する場合は、税理士や弁護士に相談してください。
税金の不安は税理士と連携できる弁護士に相談する
財産分与における税金の問題は複雑なため、税務に詳しい弁護士や、税理士と連携している弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、個別の状況に応じた節税対策や、税務署への説明方法について具体的なアドバイスが得られます。特に不動産や非上場株式など評価が難しい財産が含まれる場合は、専門家のサポートを得て手続きを進めるのが賢明です。
税理士と連携している法律事務所なら、離婚問題の法的解決と税務対策をワンストップで対応できるため、手間や時間を削減できます。
大切なのは、財産分与の内容を決める前に相談することです。事前に専門家のアドバイスを受けることで、予期せぬ課税を回避し、安心して離婚手続きを進められます。
財産分与や離婚問題に強い弁護士探しは「ベンナビ離婚」
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財産分与の税金に関するよくある質問(Q&A)
財産分与と税金に関してよくある質問にお答えします。
Q. 財産分与を受けたら確定申告は必要ですか?
財産分与を受けたからといって、必ず確定申告しなければいけないわけではありません。
確定申告が必要なのは、主に以下のケースです。
- 財産を受け取った側に贈与税が課される場合
- 財産を分与する側に譲渡所得税が課税される場合
- 居住用財産譲渡の課税の特例(最高3,000万円の特別控除の特例)を利用する場合
- 長期譲渡所得の軽減税率の特例を利用する場合
- 配偶者への居住用不動産の贈与(離婚前の贈与)の特例を利用する場合
- 特定の居住用財産の買換えの特例を利用する場合
- 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
- 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
確定申告の期間は、原則として財産を分与した年の翌年3月15日までです。申告が必要かどうかの判断に迷う場合は、税務署や専門家に確認してください。
Q. 譲渡所得税の計算の基礎となる不動産の時価はどのように算定しますか?
譲渡所得税の計算の基礎となる不動産の時価を算定する方法には、主に以下の4つがあります。
- 近隣物件の売買価格を参考に算定する
- 不動産業者の査定価格を参考に算定する
- 不動産鑑定士の鑑定評価額を参考に算定する
- 公示価格や固定資産税評価額、路線価を実勢価格に割り戻した金額をもとに算定する
一般的に、不動産業者に複数の査定を依頼し、その平均値などを参考にするケースが多いでしょう。
時価の算定に不安がある場合には、算定の根拠となる客観的な資料を揃えて、税務署や専門家に相談することをおすすめします。
Q. 財産分与でいくらから税金がかかりますか?
一概にいくらから税金がかかるとは言えません。
財産分与を受ける側には、原則として贈与税は課税されません。例外的に贈与税が課される場合でも、基礎控除が年間110万円まで認められています。1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税はかかりません。
財産を分与する側は、不動産、有価証券、ゴルフの会員権などを譲渡したときは譲渡所得が課される場合があります。ただし、この場合も財産分与時の当該財産の価格が購入時の価格を上回っているケースに限られます。
ご自身のケースで税金がかかるか不安な方は、税務に詳しい弁護士にご相談ください。
Q. 扶養的財産分与で分けたときに税金はかかりますか?
通常必要と認められる範囲であれば、贈与税は課税されません。
扶養的財産分与とは、離婚により夫婦の一方が生活に困窮するおそれがあるときに、一定期間の生活保障を目的として行われる財産分与です。
そのため、以下のケースでは贈与税がかかる可能性があります。
- 生活保障のために通常必要と認められる範囲を超えた財産を受け取った場合
- 金銭を一括で受領した場合
通常必要と認められる範囲を超えた財産を受け取った場合や、金銭を一括で受領した場合には、贈与税がかかる可能性があります。
通常必要と認められる範囲か否かは、被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して判断されます。
一般的に、都度払い(現金による毎月払い、使用貸借契約に基づく不動産の使用など)のケースでは、贈与税は非課税となることが多いです。
ただし、扶養的財産分与として不動産を取得した場合には、不動産取得税が課税される点に注意してください。
まとめ|財産分与の税金に関する不安は税理士と連携できる弁護士へ相談を
離婚時の財産分与は、夫婦共有財産の清算という位置づけのため、基本的には贈与税や所得税がかかる心配はありません。
しかし、例外的に税金がかかるケースがあります。財産を受け取る側は、分与額が過大な場合や、税金逃れの偽装離婚だと疑われた場合に贈与税の対象です。財産を渡す側も、購入時より価値の上がった不動産などを分与すると、差額に対して譲渡所得税がかかる場合があります。
不動産の名義変更の際には、登録免許税や固定資産税といった税金も忘れてはなりません。
安心して財産分与を進めるためには、分与額が偏りすぎないように調整したり、各種控除制度の活用を事前に検討したりすることが大切です。
少しでも不安に感じたら、一人で抱え込まず、ぜひ税務に詳しい弁護士にご相談ください。前もって相談することで、離婚してから後悔する事態を避けられます。
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