財産分与は離婚後でもできる?時効はいつまで?請求する方法も解説
離婚を進める際は、慣れない手続きに追われたり、十分な話し合いができなかったりして、財産分与が適切におこなわれないままになってしまうケースも少なくありません。
しかし、離婚後でも、財産分与を請求することは可能です。
財産分与に関して納得できていない点がある場合は、弁護士とも相談しながら、しかるべき対応をとるようにしましょう。
本記事では、離婚後の財産分与に関する請求手続きの流れや請求期限、期限を過ぎてしまった場合の対処法などを解説します。
財産分与で悔いが残る状態は、金銭的にも精神的にも負担になるので、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
離婚後も財産分与の請求はできる
離婚後でも財産分与の請求はできます。
前提として、相手の合意さえ得られれば期限を問わず、財産分与をおこなうことが可能です。
また、離婚成立後2年以内であれば、裁判所を利用した法的な手続きをとることもできます。
財産分与は離婚後の生活を支える重要な取り決めなので、妥協せずに、納得のいく解決を目指しましょう。
離婚後の財産分与の対象になる財産・ならない財産
次に、財産分与の対象になる財産・ならない財産を解説します。
- 対象になる財産(共有財産)
- 婚姻中に夫婦で協力して築いた財産
- 預貯金・現金
- 土地・建物などの不動産
- 自動車
- 生命保険などの解約返戻金
- 株式などの有価証券
- 退職金・年金
- 対象にならない財産(特有財産)
- 婚姻前に取得した財産や自分名義で得た財産
- 結婚前に貯めた預貯金
- 結婚前に購入した自動車や不動産
- 親などから相続・贈与された財産
財産分与の対象になる財産
財産分与の対象となる財産は、婚姻中に夫婦が協力して築いた「共有財産」です。
具体的には、以下のようなものが共有財産に該当します。
- 預貯金・現金
- 土地・建物などの不動産
- 自動車
- 生命保険などの解約返戻金
- 株式などの有価証券
- 退職金・年金
どちらの収入で購入したかや、どちらの名義になっているかは関係ありません。
婚姻中に形成された財産の多くは、共有財産とみなされます。
財産分与の対象にならない財産
夫婦の一方のみに帰属する「特有財産」は財産分与の対象外です。
具体的には、以下のようなものが特有財産にあたります。
- 結婚前に貯めた預貯金
- 結婚前に購入した自動車や不動産
- 親などから相続・贈与された財産
お小遣いで貯めたへそくりも特有財産と勘違いされやすいですが、夫婦の収入が原資になっていることに変わりないので、基本的には共有財産として扱われます。
ただし、結婚生活が長くなるほど、特有財産と共有財産の区別は難しくなるものです。
少しでも判断に迷うことがあれば、弁護士にアドバイスを求めてみましょう。
離婚後の財産分与の流れ
ここでは、離婚後の財産分与の流れを解説します。
大まかな流れだけでも理解していれば、先を見据えて戦略的に財産分与を進められるはずです。
1.財産の調査・評価
まずは、婚姻期間中に夫婦で築いた共有財産がどれだけあるかを、正確に把握することから始めましょう。
預貯金・不動産・生命保険・有価証券などの財産を全てリストアップし、それぞれの価値を評価していく作業です。
相手が財産の開示に協力的でない場合や、財産を隠している可能性がある場合には、弁護士に相談してみてください。
弁護士であれば、「弁護士会照会制度」を用いて、金融機関や勤務先などに必要な情報の開示を求めることができます。
2.元配偶者との話し合い(協議)
財産の調査・評価が終われば、財産分与の協議をおこないます。
どの財産を、どちらが、どの程度の割合で取得するのかを具体的に決めていきましょう。
話し合いがまとまった場合は、口約束で終わらせず、合意内容を書面に残すようにしてください。
さらに、強制執行承諾文言付きの公正証書にしておけば、相手が約束を守らなかった場合に、裁判を起こすことなく強制執行に移れるようになります。
3.財産分与調停
当事者間の話し合いで合意に至らない場合や、そもそも相手が話し合いに応じてくれない場合は、家庭裁判所に「財産分与請求調停」を申し立てましょう。
財産分与請求調停とは、調停委員が中立的な立場で双方の主張を聞き、話し合いによる解決を目指す手続きです。
感情的になりがちな当事者同士の話し合いよりも、冷静かつ建設的な議論が期待できます。
申立ての約1ヵ月後に初回の期日が設定され、その後、月1回程度のペースで話し合いが進められます。
4.審判手続き
調停で合意が成立しない場合は、自動的に「審判」へと移行します。
審判とは、調停で提出された資料や双方の主張、家庭裁判所調査官による調査結果などの事情を総合的に考慮して、裁判官が最終的な判断を下す手続きです。
審判で下された決定は裁判での判決と同じ効力を持ち、法的な強制力があります。
相手が審判の内容に従わない場合には、強制執行によって財産を差し押さえることも可能です。
なお、審判の結果に不服がある場合は、告知を受けてから2週間以内に「即時抗告」による不服申立てをおこなうこともできます。
離婚後の財産分与の期限はいつまで?
ここでは、離婚後の財産分与が認められる期限について解説します。
話し合いによる財産分与なら期限を問わず可能
話し合いにより相手方の合意を得られるのなら、財産分与はいつでも可能です。
後述するように、離婚後2年で法的な請求権は失われますが、当事者間の自由な合意に基づく財産分与を妨げるものではありません。
例えば、離婚から5年が経過したタイミングで新たな共有財産が見つかったとしても、公平に分け合うことにお互いが合意すれば、財産分与は成立します。
ただし、口約束だけではトラブルの原因になりかねません。
金額・支払方法・支払時期などを明記した財産分与契約書を作成し、可能であれば公正証書にしておくことをおすすめします。
離婚後2年以内であれば法的な手続きもとれる
財産分与に関して法的な手続きをとれるのは、離婚後2年以内です。
離婚後2年間の「除斥期間」が経過すると、財産分与の請求権そのものが失われてしまいます。
除斥期間は途中で進行を止めたり、リセットしたりすることができません。
当事者間での話し合いが長引きそうな場合は、早めに法的手続きへ移行することを検討しましょう。
離婚後の財産分与に関する3つの注意点
ここでは、離婚後の財産分与に関する注意点を解説します。
自身の権利を守りながら、スムーズに手続きを進めるためにも、一つひとつのポイントをしっかりと押さえておきましょう。
すでに確定している財産分与の請求期限は10年以内
すでに確定している財産分与に関して、実際に支払うように請求する権利は10年で消滅します。
権利を行使できることを知ったときから10年が経過すると、消滅時効が成立するためです。
例えば、話し合いや調停で100万円を支払ってもらうことが決まったとしましょう。
その後10年間、相手が支払いをせず、こちらが何もアクションを起こさなければ、100万円を受け取れなくなってしまいます。
財産分与の調停を申し立てるには相手方の住所が必要
財産分与についての話し合いがまとまらず、家庭裁判所に調停を申し立てる場合は、相手方の住所が必要になります。
原則として、財産分与請求調停の申立先は「相手方の住所地を管轄する家庭裁判所」です。
そのため、相手方の住所がわからなければ、どの裁判所で申立手続きをすればいいのか判断できません。
また、調停期日などの書類を裁判所から送付するために、申立書には相手方の住所を記載することになっています。
そもそも申立書に住所の記載がない状態では、調停の申立ては認められません。
元配偶者の現住所がわからない場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士は、職務上の権限で戸籍や住民票などを取得できるため、現住所を突き止められる可能性があります。
財産が使われていると回収できない可能性がある
財産分与を請求しても、すでに財産が使われている場合は回収できない可能性があります。
財産分与の計算上は、使い込まれた財産も現存するものとして扱います。
そして、使い込まれた財産の価値に相当する金銭を支払ってもらうケースが一般的です。
しかし、相手に支払い能力がなければ、事実上回収は困難です。
強制執行をしても、相手に資産がないと空振りに終わってしまうこともあります。
離婚後2年が経過したあとで財産分与したいときの対処法
離婚から2年が経過してしまうと、家庭裁判所を通じた法的な財産分与請求は難しくなります。
しかし、状況次第では、2年を過ぎてからでも財産を受け取れる可能性が残されています。
ここでは、離婚後2年が経過したあとで財産分与したいときの対処法を解説します。
任意の財産分与
離婚から2年という法的な請求期限が過ぎてしまったあとでも、元配偶者の同意さえ得られれば、財産分与を進めることは可能です。
法律上の権利として財産分与を請求するのではなく、あくまでもお互いの合意に基づいて財産を分けることになります。
財産分与できるかどうかは相手の意向次第なので、まずは連絡を取り、話し合いの機会を持てないか打診してみましょう。
合意に至った場合は、取り決めた内容を書面に残しておくことが重要です。
共有物分割請求
夫婦で共有名義になっている不動産がある場合は、「共有物分割請求」によって財産の分割を求めることができます。
共有物分割請求とは、共有状態にある不動産の分割を求める手続きのことです。
財産分与のような期限の縛りはなく、「今後〇年間は分割しない」などの取り決めがない限りは、いつでも請求できます。
共有物の分割方法は複数ありますが、代償分割が一般的です。
共有者の1人が不動産を単独で取得し、ほかの共有者は共有持分に相当する代償金を受け取ることができます。
損害賠償請求
離婚後2年が経過したあとで、相手が共有財産を隠していたことが発覚した場合は、損害賠償請求を検討しましょう。
財産隠しは民法上の不法行為にあたり、損害賠償請求の要件を満たす可能性が高いといえます。
損害賠償請求に踏み切れば、財産分与で本来得られたはずの額を取り戻せるかもしれません。
ただし、相手が意図的に財産を隠していたことを証明するのは簡単ではありません。
そもそも損害賠償請求が可能かどうかも含めて、まずは弁護士に相談してみることが重要です。
離婚後の財産分与に関するよくある質問
最後に、離婚後の財産分与に関するよくある質問を紹介します。
離婚後に財産分与を請求する期間を延長する方法はありますか?
財産分与を請求できる期間は離婚成立から2年間と定められており、原則として延長は認められません。
2年間の除斥期間は、時効のように進行を止めたり、リセットしたりできない性質のものです。
離婚成立から2年が経過すれば、自動的に権利が消滅してしまいます。
離婚後、財産分与の請求中に元配偶者が財産を譲渡してしまいました。財産分与できますか?
離婚後、財産分与の請求中に元配偶者が財産を譲渡した場合でも、財産分与は可能です。
財産が譲渡されたからといって、財産分与の請求権が消滅するわけではありません。
譲渡された財産を現物として受け取ることはできませんが、相応の金銭を代償金として請求できます。
離婚後に元配偶者が死亡した場合、財産分与は請求できますか?
離婚後に元配偶者が死亡した場合、相続人に対して財産分与を請求することはできません。
財産分与請求権は、元配偶者との間にのみ認められる一身専属的な権利と考えられているためです。
ただし、生前に財産分与の合意が成立していたり、調停・審判で具体的な支払いが確定していたりした場合には、相続人に対して支払いを求められる可能性があります。
財産分与の調停中・審判中に2年が経過したらどうなりますか?
財産分与の調停中・審判中に2年が経過しても、財産分与を請求する権利は失われません。
重要なのは、離婚成立後2年以内に財産分与請求調停を申し立てていたかどうかです。
期限が迫っている場合は、申立手続きを優先的に進めるようにしましょう。
専業主婦(主夫)でも離婚後に財産分与の請求はできますか?
専業主婦(主夫)でも、財産分与を請求できます。
専業主婦(主夫)の家事・育児・介護などの労働は、夫婦の財産を形成・維持するために不可欠な貢献であると法的に評価されるからです。
自分自身に直接的な収入がなかったとしても、婚姻期間中に夫婦で築いた共有財産については、原則として2分の1を受け取る権利があります。
さいごに|離婚後の財産分与を検討している場合は早めに弁護士へ相談を
離婚後の財産分与請求は、法律で認められた正当な権利です。
2年間の除斥期間を過ぎてしまう前に、公平な財産分与を求めて行動を起こすようにしましょう。
しかし、財産分与を実現させるためには、財産の調査・評価、相手方との交渉、法的な手続きなどが必要になるため、自力で対応するのは困難です。
離婚後の財産分与を進めるつもりなら、まずは離婚問題が得意な弁護士に相談してみましょう。
知識・経験が豊富な弁護士であれば、個々の状況を踏まえて、最適な改善策を提案・実行してくれるはずです。
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