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夫の家出で離婚できる?生活費や慰謝料の請求についてもわかりやすく解説

夫の家出で離婚できる?生活費や慰謝料の請求についてもわかりやすく解説
  • 「夫が勝手に家出した。離婚は認められる?離婚をするにはどうすればいい?」
  • 「夫の家出で生活費や慰謝料は請求できる?」

離婚は本来、夫婦が協議して手続きをすすめます。

夫が家出してしまい、話せない状態では離婚ができるか生活費や慰謝料を請求できるか不安になるでしょう。

本記事では夫が家出した場合の離婚の可否や条件、手続きの流れ、生活費・慰謝料請求の可否や相場について解説します。

家出した夫との離婚手続きをなるべくスムーズにすすめ、慰謝料などの面で後悔しないためには正しい離婚の知識が必要です。

本記事の内容を理解することで、生活費や慰謝料請求も含めて適切に離婚手続きをすすめられるようになります。

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夫が家出!離婚は認められる?

夫の家出で離婚が認められるかは、話し合いで合意できるか裁判まですすむかによってかわります。

以下、これらステップごとに可否や条件をみていきましょう。

話し合いや調停で夫が合意するなら理由に関係なく離婚は可能

話し合いや調停で夫が合意するのであれば、家出の理由に関係なく離婚が可能です。

離婚する方法は、以下3つの種類があります。

種類 概要 離婚の理由
協議離婚(話し合い) 夫婦間で話し合って離婚に合意する方法 問われない
離婚調停 家庭裁判所にて、裁判官や調停委員が間に入って離婚に合意する方法 問われない
離婚裁判 家庭裁判所の判決によって離婚を成立させる方法 問われる

夫婦での話し合い(協議離婚)で合意できなければ、調停離婚を目指します。

調停離婚でも合意ができなければ、離婚裁判をしなければなりません。

このうち協議離婚・調停離婚では離婚理由は問われないので、夫婦で合意できさえすれば離婚できるのです。

しかし調停でも合意できず、離婚裁判まですすんだ場合は「法定離婚事由」がなければ、離婚は認められません。

「悪意の遺棄」として裁判でも離婚が認められる可能性がある

問題になるのは、話し合いや調停で夫が離婚を拒否した場合です。

調停でも相手の合意が得られない状態で離婚を成立させるには、家庭裁判所の判決にて離婚を認めてもらう必要があります。

裁判で離婚が認められるには、法律で定められた以下離婚理由(法定離婚事由)のいずれかに当てはまることを証明しなければなりません。

法定離婚事由
  1. 配偶者に不貞な行為があったとき(不倫など)
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき
  3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき※
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

※2026年4月1日に施行される改正民法にて削除される予定

夫の家出は、上記のうち「悪意の遺棄」に該当する可能性があります。

悪意の遺棄とは、正当な理由がないのに夫婦としての義務を果たさないことです。

夫婦には、法律で定められた以下3つの義務があります。

  • 同居義務:夫婦には一緒に住む義務がある
  • 協力義務:夫婦は互いに協力し、生活を維持・継続する義務がある
  • 扶助義務:お互いの生活レベルが同等になるよう、経済的に助け合う義務

夫が正当な理由なく家を出て、これらの義務を放棄した場合は悪意の遺棄とみなされ、裁判で離婚が認められる可能性があるのです。

家出が悪意の遺棄とみなされるかは「正当な理由」があるかどうか

ただし、家出をしたことが必ずしも悪意の遺棄となるわけではありません。

最も重要なポイントは、夫の家出に「正当な理由」があったかどうかです。

たとえば夫があなたの暴力(DV)から逃れるために家を出たのであれば、身を守るための正当な理由があるとみなされ、悪意の遺棄にはなりません。

以下、家出に正当な理由があるとみなされるケースとみなされないケースをみていきましょう。

家出に正当な理由があるとみなされるケース(悪意の遺棄でない) 家出に正当な理由があるといえないケース(悪意の遺棄)
・配偶者の継続的なDV・モラハラから逃れるために家出をした
・長期出張・単身赴任のために家を出て離れて暮らしている
・両親の介護をするため一時的に実家へ戻った
・悪化した夫婦仲を改善するための冷却期間をつくるため、互いに合意のうえで別居を開始した
・愛人と暮らすためや友人と遊ぶため、一方的に家出をした
・配偶者のことが気に入らず、相手の合意なく家を出て別居を開始した
・正当な理由がないのに家出を繰り返した

あなたの状況がどちらに近いか、冷静に考えてみることが大切です。

夫の家出で離婚が認められるには悪意の遺棄を証明できる証拠が必要

夫の家出が裁判で悪意の遺棄と認められるためには、そのことを証明できる証拠が必要です。

原告側が「悪意の遺棄」と主張するだけでは認められません。

夫の家出が悪意の遺棄と認められる証拠の例として、以下が挙げられます。

  • 夫とのLINEやメールなどのやり取り(戻ってくるよう伝えても「戻らない」と断ったり、無視したりした)
  • 夫から家出直前に届いたLINEメッセージやメールなど(別居理由や別居時期がわかるもの)
  • 夫が勝手に住民票をうつしたことがわかる記録
  • 夫が一緒に暮らす家とは異なる賃貸住宅を借りた際の賃貸借契約書など

夫が家出した場合は生活費(婚姻費用)の請求が可能な場合も

夫が家出をしたことで、経済的に困窮するという家庭も少なくないでしょう。

こういった際に、夫に請求できる可能性があるのが「婚姻費用」です。

法律上、夫婦は離婚が成立するまで、お互いの生活を支え合う義務があります。

別居中であっても、妻が夫より収入が少ないのであれば、夫は妻が自分と同じレベルの生活ができるように生活費を支払う義務があるのです。

この生活費のことを「婚姻費用」と呼びます。

婚姻費用は、離婚の原因がどちらにあるかに関わらず請求が可能です。

婚姻費用の金額は、夫婦双方の収入や子どもの人数・年齢に応じて、裁判所が公表している「婚姻費用算定表」を基に算出するのが一般的です。

たとえば、夫の年収が600万円(会社員)、あなたの年収が100万円(パート)、5歳の子どもが1人の場合、算定表によると婚姻費用の相場は月額10万円~12万円となります。

婚姻費用の計算方法については、以下記事で詳しく解説しているので興味があれば参照ください。

以下自動計算機を使って、個別のケースにあわせた婚姻費用の目安を簡単に算出することもできます。

話し合いで相手が拒否した場合は婚姻費用請求調停を申し立てる

婚姻費用を請求する際は、まず夫に連絡をとり話し合いたい旨を伝えます。

夫が話し合いに応じ、婚姻費用を支払う合意ができれば問題はありません。

一方で話し合いに応じなかったり、支払いを拒否したりする場合も考えられるでしょう。

こういった際は、家庭裁判所に婚姻費用請求調停を申し立てます

婚姻費用請求調停は家庭裁判所の調停委員を介して、夫婦で婚姻費用について話し合う手続きです。

仮に調停でも合意できなかった場合は審判へ移行し、相手に支払い命令を出してもらうことが可能です。

夫の家出(=悪意の遺棄)で離婚する場合の流れ

ここからは、夫の家出を理由に離婚を進めるための具体的な流れを、ステップごとに解説していきます。

1.夫の家出が悪意の遺棄であるといえる証拠を集める

裁判までもつれた場合、離婚が認められるには法定離婚事由が必要です。

夫の家出を根拠に裁判で離婚が認められるには、それが悪意の遺棄であるという証拠を提示することが求められます。

前述した例を参考に、悪意の遺棄が証明できる有効な証拠を集めましょう。

2.離婚の準備をする

証拠集めと並行して、離婚に向けた具体的な準備を進めていきましょう。

弁護士に相談・依頼する

離婚したいと決めたら、まず弁護士に相談・依頼することが強く推奨されます。

弁護士に相談することで個別の状況にあわせて、以下のアドバイスを得ることが可能です。

  • どのように離婚手続きをすすめるべきか
  • どのような証拠が有効で、どう集めればよいか
  • 財産分与・婚姻費用(離婚成立まで)・養育費をはじめどういった内容の離婚条件を相手に請求すべきか
  • 財産分与や養育費はどのくらいの金額を請求するのが適正か

こういった内容のアドバイスを先に得ておけば、離婚手続きをスムーズに進めやすくなります。

財産分与などの金額も、専門家でなければどのくらいの額が適正か判断するのは難しいものです。

自分だけで離婚手続きをすすめれば、相場よりずっと少ない額しか請求しなかったということもありえます。

その点、弁護士に相談しておけば適正額が把握できるので、そういった後悔をせずにすむでしょう。

また弁護士に依頼すれば、夫との離婚協議や調停・裁判などの手続きも代行してもらえます。

夫と直接顔を合わせて離婚について話さずにすむだけでも、精神的な負担を大幅に軽減できるでしょう。

離婚条件を検討する

離婚する際には、お金や子どものことなど、決めなければならないことがたくさんあります。

話し合いを始める前に、あなた自身の希望を整理しておきましょう。

  • 財産分与:結婚生活中に夫婦で協力して築いた財産(預貯金、不動産、保険など)の分配
  • 親権:未成年の子どもがいる場合、どちらが親権者になるか
  • 養育費:子どもが成人するまでにかかる生活費や教育費
  • 面会交流:子どもと離れて暮らす親が、子どもと会う頻度や方法
  • 年金分割:結婚期間中の厚生年金の保険料納付記録を分割する制度

これらの項目について、「これだけは譲れない」という点と、「ある程度は譲歩できる」という点を考えておくと、交渉がスムーズに進みやすくなります。

離婚後の生活に困らないようにめどをつける

離婚後の生活を具体的にイメージし、経済的に自立できる見通しを立てておくことは非常に重要です。

仕事を探したり、住む場所を確保したりします。

離婚後に利用できる児童扶養手当など公的な支援制度について調べておくことも重要です。

生活の基盤を整える準備をしておくことで、安心して離婚の話し合いに臨むことができます。

3.相手と離婚について話し合う

準備が整ったら、夫と離婚に向けた話し合いを始めます。

離婚するか否かをはじめ、財産分与や親権問題など話し合いで決める必要があることは少なくありません。

弁護士に依頼している場合は、弁護士が代理人として交渉を進めてくれます。

合意した内容は離婚協議書にまとめる

話し合いで離婚の条件について合意ができたら、必ずその内容を離婚協議書という書面にまとめましょう。

口約束だけでは、あとから「そんな約束はしていない」と言われてしまうトラブルになりかねません。

さらに、財産分与や養育費など、将来にわたる金銭の支払いがある場合は、離婚協議書を公正証書にしておくことを強くおすすめします。

公正証書は、公証役場という公的な機関で作成する文書で、非常に高い証明力があります。

「強制執行認諾文言」を入れておけば、もし将来夫からの支払いが滞った場合に、裁判を起こさなくても、直ちに夫の給料や預貯金を差し押さえることも可能です。

4.話し合いで合意できない場合は調停を申し立てる

夫婦間の話し合いで合意に至らない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。

調停では、調停委員が間に入ってくれるため、互いに感情的にならず冷静に話し合いをすすめやすい点もメリットです。

夫婦は別々の待合室で待機し、交互に調停室に呼ばれて調停委員と話をするため、相手と直接顔を合わせる必要は基本的にありません。

調停で合意が成立すると、その内容は調停調書という法的な効力を持つ書面にまとめられます。

この調停調書は、裁判の判決と同じ力を持っています。

5.調停でも合意できない場合は離婚訴訟を起こす

調停でも話がまとまらず不成立(不調)となった場合、離婚を望む側は、最終手段として家庭裁判所に離婚訴訟を起こすことになります。

訴訟では、当事者の主張に加え、提出された証拠に基づいて、裁判官が離婚を認めるかどうか、またその条件について法的な判断を下します。

訴訟で離婚を認めてもらうには「悪意の遺棄」を証明する証拠が必要です。

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家出した夫が音信不通の場合も離婚できる?

家出した夫が音信不通で連絡がとれない場合は、どのように離婚手続きをすすめればよいでしょうか。

以下、ケース別で解説します。

行方はわかっているが連絡が取れない場合

夫の実家や新しいアパートなど、居場所はわかっているものの、電話やメールを一切無視されているというケースです。

この場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てれば、裁判所から夫の住所宛に呼出状が送付されます。

裁判所からの呼び出しを正当な理由なく無視し続けると、夫の立場は不利になります。

調停は不成立となりますが、その後の裁判で、夫の不誠実な態度が考慮される可能性があります。

なお離婚調停は、相手の住所地を管轄する家庭裁判所で申し立てなくてはなりません。

夫が遠方に住んでいる場合は、遠くの裁判所まで足を運ばなくてはならないので負担が大きくなるので注意ください。

行方がわからない場合

夫の行方がわからない場合は、まずどこに住んでいるか所在を調べる必要があります。

相手の所在がわからなければ、調停などの離婚手続きをすすめられません。

家出したあと住民票を現在住んでいる場所にうつしていれば、住民票や戸籍の附表を取得することで相手の所在を調べられます。

相手の所在が把握できたら、調停を申し立てて離婚手続きをすすめましょう。

一方で調査しても夫の所在がわからない場合は、調停でなく離婚裁判を起こします。

通常、離婚裁判を起こすには、先に調停をしなくてはなりません。

しかし夫の所在がわからない場合は、例外として最初から離婚裁判を起こせるのです。

離婚裁判では公示送達という方法で、所在がわからない相手へ裁判の書類を送ったことになります。

ただし、公示送達を利用するためには、あなたが夫の住民票や戸籍をたどったり、親族に連絡を取ったりして、できる限りの調査を尽くしても行方がわからなかったことを裁判所に報告する必要があります。

夫の家出(=悪意の遺棄)で慰謝料は請求できる?

夫の家出が悪意の遺棄といえる場合、慰謝料は請求できるでしょうか。

夫の不法行為とみなされ慰謝料の請求が可能な場合がある

結論からいうと、夫の家出が「悪意の遺棄」と認められた場合、慰謝料を請求できる可能性があります

正当な理由なく夫が家出をし、同居義務に違反し妻が権利を侵害されたと判断された場合です。

法律にて保護される権利又は利益を故意・過失で侵害した場合は、それによって生じた損害に対する賠償責任を負います。

そのため夫に対して慰謝料を請求できる可能性があります。

慰謝料相場は50万円~300万円

悪意の遺棄による慰謝料の金額は、個別の事情によって大きく異なりますが、一般的には50万~300万円程度が相場とされています。

慰謝料の金額は、以下のようなさまざまな要因を総合的に考慮して決められます。

慰謝料が増額される要因 慰謝料が減額される要因
・婚姻期間が長い
・未成年の子どもがいる
・遺棄の期間が長い、または家出を繰り返している
・遺棄の態様が悪質(例:病気の妻や生まれたばかりの子を置いていく)
・夫の不貞行為(不倫)など、ほかの離婚原因も重なっている
・婚姻期間が短い
・遺棄された側(あなた)にも離婚の原因がある程度ある
・遺棄の期間が比較的短い
・遺棄した夫が反省の態度を示している
・あなたが経済的に自立している

なお、慰謝料を請求できる権利には「時効」があります。

悪意の遺棄の事実を知った時から3年、または離婚が成立した日から3年を過ぎると、請求できなくなる可能性があるので注意が必要です。

さいごに|夫の家出で離婚したい場合は弁護士に相談を!

夫の家出で離婚をしたい場合は、さまざまな点を準備・注意しなくてはなりません。

相手が離婚に合意せず、裁判までもつれることもありえます。

その場合、夫の家出が悪意の遺棄であるといえる有効な証拠が必要です。

また悪意の遺棄といえるような家出で離婚する際は、夫に対して慰謝料を請求できます。

けれど個別のケースにあわせ慰謝料をどのくらい請求できるか、専門家でなければ適切に算出するのは難しいでしょう。

ほかにも財産分与や親権・養育費の問題など、離婚にあたって考慮すべき内容はたくさんあります。

弁護士に相談・依頼すれば、夫の家出による離婚のようなイレギュラーなケースでも、離婚手続きをスムーズにすすめることが可能です。

弁護士に離婚手続きを相談・依頼するメリット
  • 夫の家出が悪意の遺棄とみなされるのに必要な証拠集めについてサポートしてもらえる
  • 夫との離婚交渉・慰謝料請求交渉を任せられる
  • 調停や裁判の手続きも全て任せられる
  • 夫に対して適正な金額の慰謝料や財産分与、養育費などを請求できる

そのため夫の家出で離婚や慰謝料請求を目指す場合は、弁護士に相談・依頼することが強く推奨されます。

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この記事の監修者
東京桜の森法律事務所
川越 悠平 (東京弁護士会)
依頼者様のお気持ちを尊重し、一人ひとりに適したサポートを提供しています。離婚自体を争う事件や財産分与などを争う事件はもちろん、親権や面会交流、養育費などお子さんの関わる事件にも注力しています。

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本記事はベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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