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財産分与請求権とは?対象となる財産の範囲や割合、手続きの流れを解説

杉本 真樹
監修記事
財産分与請求権とは?対象となる財産の範囲や割合、手続きの流れを解説
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財産分与請求権とは、婚姻期間中に夫婦で築いた財産を公平に分けるための重要な権利です。

しかし、「どの財産が対象になるの?」「割合はどう決まる?」「請求の手続きはどう進めればいい?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

本記事では、財産分与請求権の基本的な意味から、対象となる財産の範囲、一般的な分け方の割合、請求から支払いまでの手続きの流れまでをわかりやすく解説します。

これから離婚協議や調停を控えている方にとって、損をしないための基礎知識としてぜひ参考にしてください。

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財産分与請求権とは?|婚姻期間中の財産を分け与えるよう請求する権利

財産分与請求権とは、離婚時に夫婦の一方が、もう一方に対して婚姻期間中に築いた財産の分配を求めることができる権利です。

財産分与請求権は、夫婦が協力して築いた財産は平等に扱うべきという考えに基づいており、民法でも明確に定められています。

(財産分与)

第七百六十八条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。

2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。

3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。

引用元:民法|e-Gov 法令検索

離婚が決まっても財産分与を請求しないと、片方だけが財産を保持したままになりかねません。

そのため、請求権の範囲や期限を理解しておくことは、離婚後の生活を安定させるためにも非常に重要です。

まずは、財産分与請求権の対象となる・ならない財産の区別や、財産分与できる割合など基本的な内容について確認しましょう。

対象となる財産|夫婦が婚姻中に協力して築いた財産

財産分与の対象になるのは、夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産、いわゆる「共有財産」に限られます

夫婦のどちらか一方の名義であっても、婚姻中に形成された財産は基本的に共有財産とみなされることを覚えておきましょう。

財産分与の対象となる共有財産には、主に以下のようなものが含まれます。

  • 現金、預貯金
  • 不動産(自宅、土地、マンションなど)
  • 車や貴金属、家具などの動産
  • 生命保険の解約返戻金
  • 有価証券、投資信託
  • 年金の一部(厚生年金・共済年金など婚姻期間中の掛金に相当する部分)
  • 借金やローンなどの負債

たとえ一方が専業主婦(夫)であっても、家事労働や育児を通じて財産形成に貢献したとみなされるため、財産分与を請求することが可能です。

対象とならない財産|夫婦いずれか一方のみで築いた財産

財産分与において、夫婦のどちらか一方だけが築き上げた財産、いわゆる「共有財産」は対象になりません

具体的には以下のようなものは特有財産にあたり、財産分与の対象から外されます。

  • 結婚前から所有していた不動産・預貯金
  • 婚姻期間中に親族から相続したり贈与を受けた財産
  • 慰謝料や損害賠償金(個人に対する賠償として受け取ったもの)
  • 結婚前の借金

なお、特有財産に当てはまるものでも、夫婦の協力によって価値が維持されていると判断されるものは共有財産とみなされるケースもあります。

また、相続で取得した土地に夫婦の資金で家を建てたなど、特有財産と共有財産が混ざっている場合は判断が難しいため、弁護士など専門家の助言が不可欠です。

財産分与の割合|原則として2分の1ずつ

財産分与の割合は、特段の事情がない限り原則として夫婦で2分の1ずつとされています。

これは清算的財産分与という考えに基づいており、名義や収入の多少にかかわらず、婚姻中の財産形成への貢献度は対等と考えられているためです。

仮に夫が働き、妻が専業主婦として家事・育児を担っていた場合でも、妻の貢献は金銭的価値と同様に評価されます。

結果として、不動産や預貯金なども基本的に半分ずつ分けることになるのが一般的です。

ただし、夫婦のどちらか一方に離婚の原因がある場合は、慰謝料的財産分与がおこなわれ、精神的苦痛を受けた側が多くの財産を受け取ることもあります。

また、一方が長年にわたり専業主婦として生活しており、すぐに経済的に自立できない場合なども、収入の少ない側が多めに財産分与を受けるケースもあります

財産分与の割合は原則として2分の1ずつですが、離婚に至る経緯や夫婦の経済的事情に応じて調整するケースもあるのです。

権利が消滅するまでの期限|離婚が成立してから2年

財産分与請求権は、離婚成立から永遠に認められているわけではありません

民法第768条により、離婚が成立した日から2年以内に請求しないと時効により権利が消滅します。

たとえば、2024年1月1日に離婚した場合、2026年1月1日までに請求しなければ権利が失われます。

協議が進まないからと放置していると、相手が応じないまま期限が過ぎてしまい、財産分与を受けられなくなるおそれがあるので注意しましょう。

離婚時に財産分与について取り決めができなかった場合、早めに話し合いや調停を進めることが重要です。

【2026年5月までに】民法改正によって財産分与の期限が2年から5年へ

2026年5月までに施行予定の民法改正により、「財産分与請求権の時効」は現行の2年から5年に延長される見込みです。

これは、子どもへの影響などを考えて早期に離婚を決断した場合などに、財産分与の話し合いをする時間が不足している状況を受けての改正です。

改正後は、離婚成立から5年以内に請求すればよいことになりますが、施行前に離婚した場合は従来通り「2年」の期限が適用されます。

過渡期はとくに混乱しやすいため、請求のタイミングには十分注意しましょう。

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財産分与請求権を行使する際の基本的な流れ

離婚にともなって財産分与請求権を行使する際は、以下の流れに沿って手続きを進めましょう

  1. 対象となる財産を洗い出す
  2. 夫婦で話し合う
  3. 話し合いで解決しない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てる
  4. 調停で解決しない場合は、裁判を提起する

それぞれについて、具体的に解説します。

1.対象となる財産を洗い出す

まず、財産分与の対象となる財産を正確に把握することが必要です。

財産分与の対象は、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた共有財産のみであり、不動産、預貯金、車、保険の解約返戻金などが含まれます。

たとえ夫婦どちらかの名義であっても、婚姻中に築かれたものは基本的に共有財産とされます。

なお、財産分与の対象となる財産を洗い出す際は、合わせて根拠となる資料も揃えておきましょう。

具体的には、以下のような証拠を準備しておくと以降の手続きがスムーズに進められます。

  • 不動産の登記事項証明書
  • 銀行口座の明細
  • 保険証券
  • 車検証
  • 退職金がわかる資料

そのほか、住宅ローンや自動車ローンなどの負債も財産分与の対象となるため、借入残高をローン会社に確認しておきましょう。

2.夫婦で話し合う

共有財産を把握できたら、夫婦間で分割割合、分割方法などについて話し合います

離婚時の財産分与は原則2分の1で分け合いますが、夫婦間で合意が得られれば割合も自由に決められます。

話し合いで合意が得られた場合は、合意内容を書面化し、双方が署名押印をしておきましょう。

とくに、不動産などの高額な財産がある場合は、登記変更や名義変更の必要が出てくるため、後々の紛争防止のためにも文書化は必須です。

また、文書を強制執行認諾文言付公正証書にしておけば、相手が合意内容通りの財産分与を怠った際に、強制執行によって財産を差し押さえて回収することもできます。

なお、話し合いは感情的になりやすく、意見が平行線をたどることも多いので、冷静に事実と数字をもとに協議する姿勢を持ちましょう。

当事者だけでの話し合いでは埒が明かない場合は、弁護士に同席してもらうことを検討するのもおすすめです。

3.話し合いで解決しない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てる

夫婦間の話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に「財産分与請求調停」を申し立てます

調停では、裁判所の調停委員が仲介役となり、当事者双方の意見を聞きながら合意点を探ります。

話し合いだけでは難しかった分与の割合や方法も、第三者が間に入ることで解決の糸口が見つかることも多いです。

調停はあくまで話し合いの延長なので、最終的な合意に至るためには双方の同意が必要ですが、裁判よりも柔軟に解決できる可能性が高いでしょう。

4.調停で解決しない場合は、裁判を提起する

調停でも解決しない場合、最終的には家庭裁判所に裁判を申し立てます

裁判では、収集した証拠をもとに裁判官が財産分与の内容を決定し、法的拘束力のある判決が下されます。

裁判は時間と費用がかかるほか、精神的な負担も大きいため、できる限り話し合いや調停で解決するのが望ましいでしょう。

しかし、財産を隠す、話し合いにまったく応じようとしないなど悪質な相手の場合は、裁判で白黒をつける必要があります。

裁判の手続きには専門的な知識が必要となるため、弁護士のサポートが不可欠です。

財産分与請求権に関してよくある質問

ここでは、財産分与請求権に関してよくある質問をまとめました。

これから離婚を検討している人や、離婚後の手続きで悩みがある人はぜひ参考にしてください。

財産分与請求権は放棄することもできる?

財産分与請求権は、当事者が自由に放棄することが可能です。

財産分与請求権を放棄する理由としては、以下のようなものが考えられるでしょう。

  • 一刻も早く離婚したい
  • できる限り円満に離婚したい
  • 相手の財産に期待していない
  • 相手に多くの借金がある

離婚時に「財産分与はいらない」と明言し、合意書などにその旨を記載すれば、法的にも放棄が成立します。

後々のトラブルを避けるためには、互いに債権債務がないことの確認である「清算条項」をつけておくのもおすすめです。

ただし、財産分与請求権を軽率に放棄すると、あとから財産の存在を知っても請求できない可能性があるため注意が必要です。

とくに、相手方の財産状況を十分に把握せずに放棄するのは避けるべきです。

不安がある場合は、放棄前に弁護士へ相談しましょう。

財産分与請求権を、相手に放棄させることはできる?

相手に財産分与請求権を放棄させるには、相手の自由意思による合意が必要です。

財産分与請求権は夫婦双方が公平に持っている権利であるため、放棄を強要しても法的に無効となるおそれがあります。

財産分与請求権を放棄してもらうためには、「速やかに離婚できる」「養育費や慰謝料を増額できる」などの放棄するうえでのメリットを伝えて、放棄に合意してもらうように交渉してみましょう。

財産の総額が多い場合は、「不動産の所有権のみ譲る代わりに、ほかの財産は放棄してもらう」といった形で見返りを提示するのも効果的です。

また、財産分与請求権の放棄について合意できた際は、ほかの離婚条件とあわせて離婚協議書にまとめておきましょう。

財産分与請求権は相続の対象になる?

財産分与請求権は、基本的に相続の対象になります。

具体的には、離婚後に元配偶者が財産分与を受け取らずに死亡した場合、相続人がその請求権を引き継げます。

実際に、名古屋高裁昭和27年7月3日判決では、財産分与の意思が表示されたあとの財産分与請求権は、ほかの財産と同様に相続が認められました。

ただし、離婚が確定する前に配偶者が死亡した場合や、死亡前に当事者が財産分与請求権を放棄していた場合などは、相続人が財産分与請求権を主張することはできないので注意しましょう。

財産分与と慰謝料の両方とも請求できる?

財産分与と慰謝料は、別々に請求可能です。

財産分与は、夫婦の共同財産を公平に分ける制度であるのに対し、慰謝料は精神的苦痛などに対する損害賠償です。

配偶者の不倫や暴力が原因で離婚に至った場合は、財産分与とは別に慰謝料請求も認められる可能性があります。

ただし、慰謝料請求には一定の証拠や因果関係の立証が必要となるため、証拠資料の確保が重要です。

また、実務上は手続きが長引いて精神的負担が増えるのを防ぐ目的で、財産分与のみで済ませるケースもあります。

両方を別々で請求する場合、それぞれの条件のバランスを調整すべきケースもあるので、弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。

財産分与の合意をしたのに、払わないとどうなる?

財産分与について書面で合意したにもかかわらず支払いが実行されない場合、法的措置を講じることができます

まずは内容証明郵便などで支払いを催促し、それでも応じない場合には強制執行を申し立てましょう。

なお、財産分与について公正証書で合意書を作成していれば、裁判を経ずに直接、強制執行に移ることもできます

支払いの約束が守られない場合は、専門家のサポートも受けながら、躊躇せずに法的手続きを取ることを検討しましょう。

さいごに|財産分与に関するトラブルは弁護士に相談を!

本記事では、財産分与請求権の対象となる財産や、財産分与請求権を行使する際の手続きの流れなどについて詳しく解説しました。

離婚時の財産分与は、夫婦間で築いた財産を公平に分ける大切な手続きです。

しかし、何が対象となるのか、どれだけ請求できるのか、話し合いで決まらない場合はどうすべきかなど、不安や疑問を抱く人も多いでしょう。

とくに慰謝料や相続、放棄の可否といった法的判断が絡む場面では、専門知識が必要になります。

無理に自力で進めてしまうと損をする可能性があるほか、後々トラブルに発展するおそれもあります。

そのため、財産分与に関する問題で悩んでいるなら、早めに弁護士へ相談するのがおすすめです。

状況に応じた適切なアドバイスを受けることで、安心して手続きを進められるでしょう。

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この記事の監修者
杉本法律事務所
杉本 真樹 (群馬弁護士会)
解決への道筋は一つではありませんので、いくつか選択肢をご提案し、それぞれのメリット・デメリットをしっかりとご説明した上で、一緒に最良の選択肢を考えるように心がけております。

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編集部

本記事はベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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