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面会交流は子どものために必要ですが、離婚原因が元パートナーのDVやモラハラなどであれば、「あまり合わせたくない」と考える方もいるでしょう。
しかし、面会交流を拒否したことで嫌がらせに発展し、相手が調停や訴訟を繰り返すなど、リーガルハラスメントの被害に遭うケースも少なくありません。
しつこい面会交流に困っているときは、まず以下の不安や疑問を解消しておく必要があります。
本記事では、面会交流の嫌がらせに対処する方法や、拒否が認められやすいケースなどをわかりやすく解説します。
面会交流の嫌がらせは非監護親に原因があるケースが多く、相手を精神的に追い詰めたい、自分の正当性を主張したいなど、面会以外が目的になっているようです。
具体的には以下のような事例があるので、嫌がらせに困っている監護親だけではなく、自分の行為が嫌がらせになっているかどうか、非監護親も参考にしておきましょう。
面会交流調停が成立した場合、原則として双方が合意したルールに従いますが、非監護親が調停案を無視して嫌がらせを始めた事例です。
調停では面会交流の日時などを双方の協議で決めることにしたものの、非監護親の元夫が元妻の意見を聞き入れず、自分の意見だけを押し通すようになりました。
もともとは非監護親が面会交流の日時を指定し、親権者の元妻が都合を合わせていましたが、指定日の直前で予定変更を迫り、断ると暴言で元妻を威圧しています。
その後も元夫は面会交流のルールに従わず、面会時間の延長などを断ると、子どもに必要な行政機関向けの書類を渡さないなど、嫌がらせがエスカレートします。
元夫は面会交流に関係ないことでも干渉するようになったため、本来の目的である「子どもの利益と福祉」が置き去りにされた状態です。
次の事例は面会交流そのものが嫌がらせになっているケースです。
夫婦は別居生活が長く、妻が子どもを養育しながら離婚裁判を起こし、すでに離婚が成立しています。
また、妻には夫以外のパートナーがおり、子どもも父親と認めているため、再婚しても特に大きな問題はありません。
しかし、元夫が申し立てた面会交流調停では、申立人の主張が通ったため、子どもとの面会が必須条件になりました。
元夫は離婚が成立するまで子どもを養育しておらず、扶養義務を果たしていないことから、元妻は「嫌がらせが目的の面会交流」とみています。
親権者の自覚があれば、別居中でも子どもを養育して当然といえるため、離婚後に面会交流を要求しても監護親の理解は得られないでしょう。
非監護親が面会交流調停を何度も申し立てる場合、子どもとの面会が目的になっていないケースもあります。
一度は調停によって面会交流の条件が決まり、監護親の元妻がルールどおりに履行していたところ、元夫が再び面会交流調停を申し立てた事例です。
元夫は元妻に引っ越し予定があることを知り、引っ越し先の住所を知る目的で面会交流調停を申し立てています。
元妻には新たな住所を隠すつもりがなく、夫に通知する予定があったため、「住所を知りたいだけの目的で調停を申し立てるのか?」と困惑する状況になりました。
調停の申し立てが受理されると、元妻も家庭裁判所に出向かなくてはならないので、嫌がらせの面会交流調停と思われても致し方ないでしょう。
次の事例は、面会交流調停の不成立から審判へ移行し、さらに不服申立てを経て、元夫が慰謝料請求の訴訟を起こそうとしているケースです。
離婚協議は和解しており、当初の面会交流は2ヵ月に1回の頻度でしたが、元夫が毎月の面会を求めて調停を申し立てたところ、不成立となりました。
また、審判では元妻に有利な結果となり、元夫の不服申し立ては却下されています。
しかし、元夫は過去に1回のみ面会交流を拒否されたことについて、訴訟で慰謝料請求を争うつもりです。
元妻には負債があるため、弁護士に依頼する余裕がなく、裁判に勝ったとしても相手から獲得できる金銭はありません。
調停や審判、訴訟には元妻の事情や子どもの気持ちが考慮されていないので、元夫の身勝手なリーガルハラスメントといえます。
監護親が面会交流に積極的であっても、非監護親が嫌がらせのために調停を申し立てる場合もあります。
離婚によって妻が幼い子どもの親権者となり、面会交流のルールはその都度協議することにした事例ですが、離婚原因は妻の不貞です。
妻は面会交流に積極的であり、拒否もしていないので、調停の申し立ては不要といえます。
しかし、元夫から面会交流調停を申し立てる旨の連絡があり、間接強制が目的と推測されるため、場合によっては元妻が制裁金を支払わなければなりません。
また、離婚原因が妻の不貞だったので、元夫は面会交流以外でも嫌がらせを続けていたようです。
元夫は面会交流権を侵害されたわけではないため、子どもの利益や福祉が目的とはいえません。
面会交流の嫌がらせに困ったときは、以下の対処法を検討してください。
なお、客観的にみて嫌がらせではなく、自分が過剰反応しているケースもあるので、相手との話し合いや調停を申し立てる際は、冷静な状況判断が必要です。
相手が話し合いに応じる場合は、面会交流のルールを再協議してみましょう。
面会交流の回数を増やす、時間を延長するなど、許容できる範囲で相手の条件を飲むと、嫌がらせが止まる可能性があります。
ただし、口約束はトラブルになりやすいため、決定内容を書面に残し、署名捺印のうえ、双方で一部ずつ保管してください。
法的効力を担保したいときは、協議内容を公正証書にするとよいでしょう。
面会交流のルールを書面化して公証役場に持ち込むと、公証人が公正証書を作成してくれます。
事前に公証役場に連絡しておけば、スムーズに手続きが進められるでしょう。
一部の民間団体やNPO法人では離婚問題の解決を支援しており、裁判外紛争解決手続きを利用できます。
裁判外紛争解決手続きでは弁護士などの専門家が当事者の間に入り、現実的な解決策を提案してくれるので、相手の理解を得やすくなるでしょう。
また、面会場所の提供や、面会交流に立ち会ってくれる民間団体などがあるので、子どもと非監護親だけで面会させるときも安心です。
調停や訴訟には時間がかかるため、専門家の関与で短期解決を目指すときは、裁判外紛争解決手続きを検討してください。
離婚した相手が話し合いに応じないときや、協議がまとまらないときは、家庭裁判所に面会交流調停を申し立ててみましょう。
調停を申し立てると、調停委員を介して話し合いが進むため、相手と顔を突き合わせるストレスがありません。
資料などを揃えて相手の嫌がらせを立証できれば、面会交流の拒否や回数の見直しを認めてもらえる可能性があります。
話し合いが進むと、調停委員が面会交流のルールを提案してくるので、双方の合意があれば調停成立となります。
なお、調停が不成立になると自動的に審判へ移行し、裁判官が一定の結論を下します。
調停や審判の結果に従う場合、ルール違反には間接強制や履行勧告などがあるので注意してください。
非監護親には面会交流権があるため、面会交流の拒否は正当理由が必要です。
家庭裁判所も原則的に面会交流が必要と考えており、調停や審判で拒否を主張する際は、以下の要素が考慮されます。
裁判所の判断要素 | 詳細 |
---|---|
面会交流の合意 |
離婚時または離婚後に面会交流の合意があったかどうか 合意があった場合、その具体的内容を考慮 |
子どもの意向 | 面会交流をどう捉えているか(積極的か消極的か)、子どもの意思や年齢を考慮 |
監護親と子どもの生活状況 | 生活状況に問題があるかどうか |
非監護親と子どもの関係 | 同居していたときの親子関係に問題はないか、現在はどうか |
非監護親の素行や態度 | 非監護親の生活態度や経済的な状況 |
監護親と非監護親の関係 | 離婚原因や離婚後の関係がどうなっているか |
相手の素行に問題があり、子どもの成長に悪影響を及ぼすようであれば、面会交流を拒否する正当理由になるでしょう。
ただし、以下のようなケースは子どもの福祉にならないため、裁判所も面会交流の拒否を認める可能性があります。
離婚時に面会交流しない旨の協議が成立していれば、非監護親から要求されても面会交流を拒否できます。
ただし、協議内容を書面化していなかった場合、相手が強引に子どもと面会するなど、約束を無視される恐れがあります。
面会交流しない旨は必ず書面に残し、可能であれば公正証書にしておきましょう。
面会交流は子どもの意思が尊重されるため、本人が嫌がっている場合は面会の拒否、または回数制限が認められやすくなります。
ただし、面会交流の捉え方が子どもの本心かどうか、年齢で判断されるケースが多いでしょう。
子どもが幼い場合には、監護親の影響を強く受けて面会交流を拒否している可能性も考えられますので、意向の確認には慎重を期する必要があります。
なお、子どもが15歳に達しているときは、家事事件手続法第152条第2項の規定により、必ず本人の陳述を聴取しなければなりません。
調停で面会交流の条件を決定する場合は、家庭裁判所の調査官による調査を要求し、子どもの意思で拒否していることを立証できる可能性もあります。
離婚前から相手が子どもを虐待していた場合、面会交流の拒否が認められやすくなります。
子どもを虐待する親には何らかのストレスがあり、簡単には原因を解消できないため、面会させると高確率で虐待が再発する可能性があります。
虐待は子どもにとって不利益しかなく、心身の成長にも悪影響を及ぼすので、裁判所も非監護親との接触を否定的に考えてくれるでしょう。
なお、調停で子どもの虐待を主張するときも、証拠を提示する必要があるので注意してください。
証拠を準備できないときは虐待の事実を訴え、家庭裁判所の調査官が動いてくれるように促してみましょう。
離婚原因が相手のDVやモラハラであれば、子どもに危害が及ぶ可能性があります。
DVやモラハラの被害者は一般的に配偶者ですが、子どもに性的虐待や暴力を振るうケースも少なくありません。
非監護親の性格面に問題があり、子どもが被害を受けるリスクがあれば、裁判所も面会交流の強要はしないでしょう。
非監護親が子どもを連れ去れる恐れがある場合、面会交流を拒否しなければなりません。
面会交流はルールに従う大前提があり、監護親が何度も変わると子どもは情緒不安定な状態になります。
子どもの連れ去りは非監護親の身勝手に過ぎないため、調停や審判でも面会交流の拒否が認められるでしょう。
子どもの生活環境に一時的な変化があれば、面会交流を一時的に中止する正当理由になります。
たとえば、進学によって子どもの交友関係が広がったときや、クラブ活動に集中するケースが考えられるでしょう。
また、全寮制の学校に進学した場合、長期休暇で帰省した際に限定してもらうように交渉することもできます。
面会交流のルールを決める際は、子どもの成長や受験シーズンなどを考慮してください。
自分の再婚や、相手の養育費未払いなど、以下のようなケースは面会交流の拒否が認められません。
正当理由のない拒否は不法行為にあたる場合があるので、十分に注意してください。
自分が再婚した場合、子どもが新たな家庭に早く馴染めるよう、非監護親との接触は制限したいところです。
しかし、非監護親には面会交流権や扶養義務があり、親子関係が断たれたわけではないため、自分の再婚だけでは面会交流を拒否する理由になりません。
監護親の再婚相手が子どもを養子にした場合でも、非監護親が法律上の親であることに変わりはないため、普通養子縁組であれば面会交流を続ける必要があります。
なお、特別養子縁組は実親との法律上の親子関係が断たれるため、面会交流を要求されても拒否できます。
非監護親が養育費を払わない場合でも、面会交流は基本的に拒否できないので注意してください。
養育費の支払いと面会交流は別問題になっており、「未払いだから」という理由で非監護親に会わせなかった場合、子どもが受ける利益や福祉を阻害しかねません。
ただし、養育費を払わない親は扶養義務を果たしていないため、面会の際に子どもによい影響を与えるかどうか、疑問が残るところでしょう。
相手に養育費を請求しても未払いが続くようであれば、弁護士に代理交渉してもらう方法も検討してください。
新型コロナウイルスなどに感染する恐れがあっても、基本的には面会交流を拒否する理由になりません。
法務省もコロナ禍における面会交流の考え方を示しており、子どもの安全確保に最大限配慮しつつ、親同士の話し合いで面会を検討するように推奨されています。
相手が話し合いに応じてくれないときや、どのような代替手段を選んでよいかわからないときは、弁護士に相談してみましょう。
相手が子どもを連れ去る恐れなどがあり、面会交流に抵抗を感じているときは、以下の解決策を検討してください。
相手の合意を得られないときは、弁護士に相談してみるとよいでしょう。
当事者間で取り決めた面会交流に抵抗があるときは、以下の方法を検討してください。
本来は直接会うことが望ましいので、あくまでも代替手段にしておきましょう。
また、面会交流が無制限になると、子どもに悪影響を及ぼす可能性もあるため、時間帯や曜日、どちらが連絡するかなど、ある程度のルールも必要です。
面会交流に第三者を交えると、以下のような悩みを解消できます。
民間の支援団体やNPO法人の協力があれば、面会交流に立ち会ってもらえます。
自分が面会交流に立ち会えないときや、適切な面会場所が近くにないときは、支援団体などに相談してみましょう。
面会交流に抵抗があり、非監護親に子どもを会わせたくないときは、弁護士にも相談してください。
離婚に至る経緯や現在の生活状況などを弁護士に伝えると、適切な面会交流のルールを提案してくれます。
非監護親の嫌がらせがエスカレートした場合、子どもの身に危害が及ぶ可能性もあるので、早めに対処しておかなければなりません。
面会交流を拒否するべき状況であれば、調停の申し立ても弁護士にサポートしてもらえます。
相手のDVやモラハラに対して慰謝料請求したいときや、養育費の未払いを解消したいときも、弁護士に相談しておくとよいでしょう。
なお、弁護士の相談料は有料ですが、初回のみ無料相談で話を聞いてくれる事務所もあるので、そういった事務所に相談をおこなえば、費用を気にする必要はありません。
面会交流は子どもと非監護親の権利になるため、基本的には拒否できません。
両親の紛争は子どもに悪影響を与えてしまうので、大人の事情を優先しないように注意してください。
ただし、相手が嫌がらせをしてまで面会交流を求めるようであれば、裁判外紛争解決手続きや調停を利用し、適切に対処しなければなりません。
調停の申し立てなどに不安があるときや、専門家の介入が必要なときは、まず弁護士に相談してみましょう。
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