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離婚時に面会交流のルールを決めていても、監護親の都合で子どもに合わせてもらえないケースが少なくありません。
面会交流を拒否された場合、間接強制によって子どもとの面会を実現できますが、以下のような疑問や不安も多いことでしょう。
間接強制は一定要件を満たすと認められやすくなりますが、確実ではないため、過去の判例も参考にしておかなければなりません。
本記事では、面会交流の間接強制が認められる要件や、弁護士にサポートしてもらうメリットなどをわかりやすく解説します。
間接強制とは、面会交流を拒否している監護親に制裁金を課し、心理的な圧力によって自発的な面会交流を促す措置です。
面会交流の拒否は非監護親の権利を侵害し、子どもの成長にも悪影響を及ぼす可能性があるため、法的問題として考えなければなりません。
しかし、家庭裁判所の権限でも、非監護親と子どもを強引に面会させることはできないので、間接強制を検討するケースがあります。
強制執行とは、借金返済などを履行しない債務者がいる場合、強制的に財産を差し押さえる法的措置です。
慰謝料や養育費の支払いに滞りがあれば、調停調書や審判書などの債務名義をもとに、裁判所へ強制執行の申し立てが可能になっています。
ただし、面会交流においては、強制執行にあたる直接強制が認められていません。
子どもを強制的に連れ出し、非監護親に会わせる行為は人権や福祉の観点から問題になるため、間接強制の手続きを取ることになります。
なお、監護親に面会交流させたいときは、以下の履行勧告も参考にしてください。
履行勧告とは、調停や審判で面会交流のルールを決めているにも関わらず、監護親が履行しないときに、裁判所が面会交流を勧告する措置です。
監護親に面会交流させる場合、まず家庭裁判所に履行勧告の申し出をおこない、相手が従わなかったときに間接強制を申し立てます。
また、調停や審判の手続きを経ていると、電話で履行勧告の申し出が可能になっており、費用もかかりません。
面会交流の拒否が続くようであれば、まず履行勧告を申し出てみましょう。
監護親に間接強制する場合、不履行1回あたりの金額は10万円以下が相場です。
具体的には3万~8万円程度になっており、不履行1回につき、3ヵ月おきに5万円程度を支払うケースもあります。
また、高額所得者の間接強制金は1回あたり100万円になる事例もあり、全体的には増額の傾向となっています。
ただし、監護親の生活権は侵害できないため、支払い可能な範囲の金額になるでしょう。
家庭裁判所が面会交流の間接強制を認める場合、以下の要件を満たしているかどうかが重視されます。
面会交流のルールが決まっている場合や、調停や審判による債務名義の取得があれば、間接強制が認められやすいでしょう。
面会交流の頻度や面会時間などを具体的にルール化していると、間接強制が認められる可能性があります。
監護親が履行すべき内容が具体的に特定されていれば、過去の判例でも間接強制を認めています。
ただし、当事者間で面会交流のルールを決めた場合、履行違反があっても間接強制の申し立てはできないため、以下のように債務名義を取得しなければなりません。
調停調書などの債務名義を取得すると、間接強制が認められる要件を満たします。
面会交流においては、監護親の給付義務が非監護親に対しての債務になるため、裁判所が発行する調停調書や審判書などがあれば、間接強制による権利行使が認められます。
監護親に間接強制したいときは、まず面会交流調停を申し立てておきましょう。
なお、離婚協議書に面会交流のルールを記載し、公正証書にする場合もありますが、公正証書を根拠とする間接強制は認められませんので注意してください。
面会交流調停が成立しても、以下の状況では間接強制が認められない可能性があります。
子どもが面会交流を嫌がったときは、ケースバイケースの判断になるでしょう。
面会交流のルールに具体性がなければ、間接強制を認めてもらえない場合があります。
家庭裁判所の調停でルールを決めるときは、必ず以下の条件を設定してください。
「1ヵ月に1回、日曜日に4時間の面会」などのルールであれば、どの日曜日を指しているのかわからず、時間帯や面会場所の指定もないため、具体性がありません。
面会場所は監護親がその都度指定しても構いませんが、引き渡し方法は特定したほうがよいでしょう。
親同士が顔を合わせたくないときは、第三者に子どもの引き渡しを依頼するなど、細かな条件も必要です。
面会交流は子どもの意思が尊重されるため、本人が拒否している場合は間接強制が認められない可能性があります。
幼い子どもは面会交流の必要性を理解できておらず、本心ではないケースもありますが、一定年齢に達していれば本人の意思が尊重されるでしょう。
子どもの年齢は家事事件手続法第152条第2項に規定があり、15歳以上の場合は本人の陳述を聴取することとなっています。
調停調書や審判書などの債務名義を取得している場合、以下のように間接強制を申し立てます。
申立書の書き方がわからないときは、弁護士に相談するとよいでしょう。
間接強制の申立人は調停調書や審判書、判決書などに記載された債権者になるため、基本的には非監護親である自分自身です。
また、申立先は調停調書や審判書、判決書を交付した家庭裁判所に限られます。
面会交流の間接強制を申し立てるときは、以下の書類などが必要です。
申立書の書式と記載例は裁判所のホームページから入手できますが、記載例は養育費の請求用になっているため、書き方に迷ったときは弁護士に相談してください。
郵便切手の額面や内訳は裁判所ごとに異なるので、事前確認しておきましょう。
また、債務名義の正本送達証明書は家庭裁判所で取得できます。
家庭裁判所が申立書などを受理すると、監護親に「審尋」という意見聴取をおこない、間接強制を認めるかどうか決定します。
面会交流を子どもが拒否した場合、過去の判例では本人の年齢などが争点になっています。
監護親の給付義務も判決に影響するので、具体的な内容は以下を参考にしてください。
2013年3月28日の最高裁判決では間接強制を認め、面会交流を拒否できないものとしています。
判決までの経緯を整理すると、夫婦は7年間の婚姻生活を経て離婚し、母親が4歳児の親権者となりました。
その後、「子どもが嫌がるから」との理由で母親が面会交流を拒否したため、父親の申立てによって審判が確定し、月1回の面会交流が認められています。
しかし、母親は子どもに悪影響を及ぼす旨を理由とし、審判確定後も面会交流に応じなかったため、父親が間接強制を申し立てることとなりました。
裁判所は間接強制を認める判断を下し、母親には不履行1回につき5万円を支払うよう命じています。
なお、最高裁は母親の許可抗告を棄却しており、面会交流のルールが具体化されており、裁判所が給付内容を特定できることおよび、子どもが面会交流を拒絶していることそれ自体は間接強制を妨げる事情にはならないことなどが主な理由です。
2017年4月28日付けの大阪高裁決定では、子どもの意思を尊重して面会交流の拒否を認めています。
非監護親の審判申し立てにより、審判書の内容は特定十分であると判断されましたが、15歳の子どもが面会交流を強く拒否していた事例です。
子どもは非監護親から洗脳されておらず、自分の意思で面会交流を拒否していたため、履行できない債務となり、間接強制は認められませんでした。
面会交流の拒否が子どもの意思に基づくものであれば、監護親の給付義務が明確になっていても、本人の利益や福祉にはならないという決定です。
間接強制が認められるかどうかは、子どもの年齢や意思能力が大きく影響するでしょう。
間接強制を申し立てる際は、まず弁護士に相談してみましょう。
離婚原因や現在の親子関係などを弁護士に伝えると、過去の判例と照らし合わせ、債務名義を獲得できるかどうか先読みしてくれます。
弁護士には調停のサポートも依頼できるので、監護親の給付義務を明確化し、具体性のある面会交流のルールも提案してもらえます。
なお、裁判所が間接強制を認めなかった場合、面会交流の実現には監護親との直接交渉が必要です。
監護親に会いたくないときや、当事者間の話し合いがトラブルに発展しそうであれば、弁護士に代理交渉を依頼してください。
弁護士に面会交流の間接強制をサポートしてもらうと、一般的には以下の費用がかかります。
弁護士費用の内訳 | 金額の相場 |
---|---|
法律相談料 |
30分5,500円、1時間1万1,000円程度 ※初回分は無料になるケースがある |
着手金 | 15万~30万円程度 |
報酬金 | 15万~30万円程度 |
日当 | 1時間あたり1万1,000円程度 |
弁護士費用には交通費や通信費などの実費も含まれるので、細かな費用も確認しておきましょう。
支払総額は少なくとも15万円以上になりますが、裁判所に近い法律事務所に依頼すると、日当が発生しない場合もあります。
また、弁護士によっては着手金を無料にしており、まとまった資金がなくても間接強制のサポートを引き受けてくれます。
間接強制を実現させる場合、債務名義を獲得しなければならないため、面会交流のルールに具体性が必要です。
また、子どもが自分の意思によって面会交流を拒否しているかどうか、子どもの年齢なども間接強制の判断材料になるでしょう。
面会交流の間接強制には確実といえる要件がないので、子どもに会えるかどうか判断が難しいときは、必ず弁護士に相談してください。
離婚問題に詳しい弁護士であれば、調停のサポートも依頼できます。
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