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DV被害者は、加害者に対して慰謝料を請求する権利があります。身体的な傷の慰謝料はもちろん、心の傷も慰謝料請求の範囲内です。
なかには「この程度の傷で慰謝料請求できるのか?」と不安になる方もいるかもしれませんが、基本的にはDVの事実が認められれば慰謝料請求はできます。
本記事では、DVの傷の程度による慰謝料の違いについて解説しますので、ぜひDVで悩まれている方、DVが原因で離婚を検討されている方は参考にしてください。
DV被害にはさまざまな形態があり、一般的に次の6種類に分類されます。
DVは身体的な暴力だけを指すものと誤解されがちですが、実際には傷を負わない暴力もDV行為に該当します。
具体的にどのような行為がDVとみなされるのか、以下で事例を見ながら確認していきましょう。
身体的暴力は、DVの中でも目に見える形で被害があらわれやすい暴力です。
以下のような、直接被害者の身体に危害を加える行為が身体的暴力に該当します。
悪質な事例だと、傷跡や後遺症が残ってしまったり、生命に危険がおよんだりするケースも考えられます。
精神的暴力は、暴言や脅迫など、被害者の心に深刻なダメージを生じさせる暴力です。
具体的な行為としては、以下のような内容が挙げられます。
侮辱的な言葉を用いて相手を落ち込ませたり、相手の価値観や意見を常に否定し自尊心を傷つけたりする行為は、精神的暴力に該当します。
性的暴力は、相手が嫌がっているにもかかわらず性的な行為を強要する暴力です。
たとえば以下のような行為は、すべて性的暴力に該当します。
性的暴力は被害者の精神的な健康を害する可能性が高く、後遺症として精神疾患が発生してしまうケースも考えられます。
経済的暴力は、被害者の経済的な自由や安定を脅かす暴力です。
経済的暴力の例として、以下のような行動が挙げられます。
このほかにも、共有の資産や財産を隠したり、お金の使い方を細かくチェックして監視したりする行為も経済的暴力に該当する可能性があります。
社会的暴力とは、被害者の社会的な関わりや人間関係を制限する行為です。
具体的には、以下のような行為がDVの社会的暴力と判断されます。
社会的暴力は、被害者を孤立させて加害者への依存度を高め、支配する目的からおこなわれるケースが多いです。
子どもを利用した暴力とは、子どもを盾や道具として利用して被害者の精神を圧迫する行為を指します。
例として挙げられるのは、以下のような行為です。
これらの行為は、家庭内の安全を奪うだけでなく、子どもの将来的な健康や人間関係に影響を与える可能性があります。
DVによる慰謝料請求の際、行為の悪質性、傷や精神的なダメージの程度に応じて、慰謝料の金額が異なります。
ここでは次の項目別で、請求できる慰謝料の目安について解説します。
どのような事情が慰謝料に影響するのか、以下で詳しく見ていきましょう。
DVによる慰謝料請求が認容される場合、慰謝料額の相場は一般的に50万円~300万円程度とされており、被害の程度や期間によって金額が左右されます。
長期間にわたって繰り返される暴力や、重大な身体的・精神的ダメージをもたらす暴力は、高額な慰謝料の認定につながりやすいです。
たとえば、数年間暴力を受け続けていた場合や、傷が残るほどの身体的暴力を受けた場合などは、DVによる影響が大きいと判断され、相応の慰謝料が認められるでしょう。
DVによるダメージが後遺症として残る場合、慰謝料が増額される傾向にあります。
具体的には、以下のような回復の見込めない身体的・精神的症状が後遺症と判断されやすいです。
後遺症に伴う損害や苦痛が大きいと判断されれば、一般的なDVの相場を超える慰謝料額となるケースも考えられるでしょう。
DVが原因で離婚した場合、暴行や後遺症の慰謝料に追加して、離婚慰謝料を請求できる可能性があります。
離婚慰謝料は、婚姻期間の長さや養育が必要な子どもの年齢・人数などを考慮して算出されるのが一般的です。
たとえば婚姻期間が20年~30年と長く、暴行や侮辱などのDV行為が長期間繰り返されていた事例では、相場を上回る400万円の慰謝料が認められたケースもあります。
慰謝料を請求する際は、DVの事実を証明するために以下のような証拠を用意しましょう。
DVによる慰謝料請求をおこなう際、加害者側は、DVの全部・一部を否定することが多いです。そうなった場合、「やったやってない」「言った言ってない」の争いとなり、裁判所は基本的にはDVの事実を認定しません。
そのため、自らが受けた被害を客観的に証明できる材料・証拠は非常に重要です。
証拠がしっかりとそろっていれば、加害者や裁判所にDVの事実を認めさせられる可能性が高まります。
どのようなものが証拠として認められるのか、次で一つひとつ確認していきましょう。
DVの被害によって傷を負った場合、重要な証拠となるのが医療機関の診断書です。
診断書には、症状の程度や原因・治療方法・治療に要した期間などが詳細に記載されます。
また、治療にかかった費用を示す領収書も、医療機関を受診したと示すための証拠として有効です。
暴行を受けた場合には、可能な限り被害直後に医療機関を受診し、診断書と領収書を取得しておくようにしましょう。
暴力や脅迫がおこなわれた際の日時・場所・具体的な内容は、メモで残しておくと証拠となる可能性があります。
個人的なメモは写真や診断書に比べると証拠能力は低いですが、具体的な情報を継続して記録していれば、証拠として認められやすくなるでしょう。
とくにDV被害を受ける頻度が高い場合や、何度も繰り返される場合は、それぞれの事例を一つひとつ詳細に記録するようにしてください。
他に残っている写真等の客観的記録と、メモの内容の整合性が取れれば、メモの信用力もアップします。
暴行を受けた際の傷やけがの写真は、DVの事実を証明する証拠として有効です。
写真を撮影する際は、傷の位置や大きさがはっきりとわかるように、異なる角度や距離から複数枚撮影しておくといいでしょう。
また、誰のけがの写真なのか客観的に判断できるように、自分の顔や身体全体が写る写真も撮るようにしてください。
DV被害を受けている最中の音声や動画を記録できれば、加害者の態度や現場のリアルな状況を残せるため、重要な証拠となりえます。
記録する媒体には、スマートフォンや小型のICレコーダーなどが活用できます。
ただし、秘密裏に録音・録画をおこなうとプライバシー侵害にあたる可能性もあるため、適切な記録方法・活用方法については弁護士に相談するのがおすすめです。
メールやメッセージアプリでのやりとりにおいて、暴言や脅迫・侮辱的な言葉を使ったメッセージが送られてきた場合、履歴が証拠となる可能性があります。
メッセージのやりとりを保存する際は、日付や送信者の情報も保持するよう心がけましょう。
また、LINEなどのメッセージは送信者側で削除されてしまうケースもあるため、スクリーンショットで残しておくのが有効です。
暴力の影響で荒れた部屋や家の写真は、DVの状況を示す証拠の一つとして考えられます。
たとえば物が散乱している・家具や壁の一部が壊れているなど、通常の生活では起こりえない状態の部屋の写真が撮れれば、DVの激しさを示す証拠となるでしょう。
写真撮影の際は、荒れた部分の詳細がわかるように、異なる角度も含めて複数枚撮影しておくのが望ましいです。
DV被害の証拠として、直接的な物証だけでなく、第三者の証言も重要な役割を果たします。
メールなど記録できる方法で相談していた場合には、証拠として残しておくようにしましょう。
ただし、家族や友人は第三者であっても被害者側の立場であるため、証拠としての信用性を高めるには相談している回数や頻度・人数などもポイントとなります。
DV被害によって、加害者が警察や裁判所から保護命令を受けている場合、その記録や文書は強力な証拠となります。
保護命令によって、裁判所がDVを受けている被害者の保護が必要であると判断した事実の証明になるためです。
保護命令の申し立てをする際は、提出する申立書や証拠のコピーをとって保管しておくようにしましょう。
DVによる一般的な離婚と慰謝料請求の流れは、以下のとおりです。
DVが原因となる離婚・慰謝料請求は非常にデリケートな問題であるため、証拠を集めたうえで手順に沿って手続きを進めましょう。
実際に慰謝料請求を進める際の主要なステップについて、次で具体的に解説していきます。
被害者が身の安全を守るための最初のステップとして、保護命令の申し立てをおこなっておきましょう。
保護命令とは、DV加害者に対して一時的に接近禁止などの制限をする命令で、以下のような種類があります。
保護命令の申し立てには、警察や配偶者暴力相談支援センターへの相談のほか、地方裁判所への申立書提出・裁判官による面接などが必要です。
別居や保護命令によって加害者と距離を置いたら、離婚と慰謝料請求を進めるための交渉をはじめます。
被害者自身で慰謝料請求や離婚請求の書面を作成して送付することも可能ですが、話し合いをスムーズに進めるのは難しいケースが多いでしょう。
そのため、DV加害者との交渉を進める際は、弁護士に相談しサポートを受けるのが望ましいです。
離婚や慰謝料の条件に双方が合意できれば、離婚協議書を作成したうえで、離婚届を提出して離婚成立となります。
加害者側が提案を受け入れずに交渉が中断してしまった場合に、まず検討されるのが離婚調停の申し立てです。
離婚調停とは、家庭裁判所で離婚に関する問題について話し合い、合意による解決を図る手続きです。
調停では裁判官や調停委員が間に入って話し合うため、個人間での交渉よりもスムーズに進む可能性があります。
調停が成立すれば、裁判所によって調停調書が作成され、離婚成立となります。
離婚調停で合意できずに不成立となった場合は、離婚裁判の提起を検討する必要があります。
判の際には、DVの事実を証明するための証拠の提出が不可欠です。
被害者にとって不利な状況となるのを防ぐためにも、専門知識をもつ弁護士への依頼が推奨されます。
裁判では、裁判官が双方の主張と提出された証拠をもとに判断を下し、離婚の成立や慰謝料の支払い命令などの判決を出します。
傷を負ってしまうほど重度のDVを受けた場合、一刻も早く適切な施設や専門家の支援を受ける必要があります。
DV被害者の主な相談先として挙げられるのは、以下4つの機関です。
それぞれどのような相談窓口なのか、次で詳しく紹介していきます。
配偶者暴力相談支援センターは、配偶者からの暴力の防止およびDV被害者の保護の役割をもつ機関です。
都道府県が設置する婦人相談所や、市町村が設置する施設において、以下のような業務をおこなっています。
保護施設の紹介や情報提供もおこなっているため、DV被害による避難の必要性を感じたら早めに相談しましょう。
家庭支援総合センターは、家庭の問題に関する総合的な相談機関です。
DVや児童虐待など、家庭内の複雑かつ多様化した問題について、専門のスタッフが相談にのってくれます。
配偶者のDV行為によって子どもに影響が生じている場合や、ほかの家庭問題も含めて相談したい場合には、総合的に対応してくれる窓口が適しているといえるでしょう。
地域によって名称や相談内容が異なる可能性があるため、居住地域を管轄している機関を確認してみてください。
警察は、DV被害者の安全を守るための第一線に立つ機関です。
身の危険を感じる場面や、暴力がエスカレートしている状況であれば、迷わず最寄りの警察署や交番に駆け込んでください。
警察では、加害者に対する検挙や暴力の制止、被害者の保護などの緊急措置が可能です。
自分や子どもの安全を確保するために、いざというときには即座に行動できるようにしておきましょう。
DV行為による離婚や慰謝料請求を検討しているなら、弁護士に相談するのが適切です。
弁護士は、被害者の権利を守るための具体的な手続きや慰謝料請求、離婚調停・裁判などの法的プロセスに関するアドバイスに対応しています。
加えて、弁護士を通じた加害者との交渉や、必要な書類の作成なども総括してサポートしてくれます。
自身の権利を守り、次のステップに進むためには、信頼のおける弁護士への相談から検討してみてください。
DVには直接身体を傷つける暴力だけでなく、精神的暴力や経済的暴力・社会的暴力など、被害者の精神面を傷つける行為も含まれます。
自身がDVの被害を受けていると感じたら、傷の有無にかかわらず、すぐに専門機関や弁護士へ相談してください。
まずは加害者から距離をおき、さらなるDV被害を防いだうえで、加害者から受けた精神的苦痛に応じた慰謝料の請求を検討しましょう。
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